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楽しいミッドサマー(夏至祭) Photo: Anna Hållams/imagebank.sweden.se

沈まぬ太陽の下、花冠を被り踊るミッドサマー(夏至祭)

 スウェーデンの人々は自然との共感意識が高い。毎年ミッドサマーが訪れると5週間の休暇に入り、比較的短い夏の間に急いでやるべきことを済ませようとする。ミッドサマー前夜祭は田舎で行われるので、人々は前日に街を離れ、都会では店が閉まり、通りからは不気味なほど人の姿が消えていくのだ。
 一方、国内の主要な幹線道路は渋滞するのが常である。車の列が遠くまで伸び、満開の花がきらめく白樺の間で待つ家族や友人のもとへ向かっている。

メイポールと踊り

 ミッドサマーには大勢の人が集まる。実のところ、残りの休暇を安らかに楽しむため、家族や近所にしなければならない挨拶をそこで済ませてしまおうと思って参加するスウェーデン人も多い。伝統的な夏の盛りを祝うため、家族全員が一同に集まることが多いのだ。
 メイポールは最も開けた場所に掲げられ、その周りでは子どもや大人が伝統的なリングダンスを楽しむ。10代の若者たちはそれにはあまり参加せず、夜更けにさらに盛り上がるのを待っている。

夏至祭はいつ?

 スウェーデン人は秩序を好むため、夏至祭は常に6月19日から25日の間の金曜日に行われる。人々は、たいていメイポールに飾る花を摘んだりリースを作りながら、この日のお祝いを始めていく。

ニシンと新ジャガ

 夏至祭の典型的なメニューは、様々な種類のニシンの酢漬け、茹でた新ジャガに新鮮なディルやサワークリーム、チャイブを添えたもの。この後、スペアリブやサーモンなどのグリル料理が続き、デザートには夏の初物のイチゴにクリームを添えたものがよく出される。
 伝統的なお供は冷たいビールとシュナップスで、できればスパイスの効いたものが良い。グラスにお酒が注がれるたびに、人々の歌声が響く。
 夏至祭は、ある種のノスタルジーを伴う行事である。心の奥底で、スウェーデン人たちは、夏至祭がどのようなもので、どのように進行されるべきかについて同じ考えを持っている。だから、夕食の後、多くの人は昔のように踊りに出かけたくなる。できれば、湖のほとりの屋外のダンスフロアで、夜霧が立ちこめ、対岸の岩山からオーケストラの音が響いてくるような場所が望ましい。

夢で相手を見つける

 古い伝統では、若い女性がミッドサマーの夜に7種類の異なる花を枕の下に入れると、自分の将来の相手が夢に現れると言われている。(おそらくこれは若い男性でも通用するだろう。)

神秘的なミッドサマー

 ミッドサマーの前夜は、愛のための夢の時間であると言い伝えられている。実はこの日の夜ではカップルの仲の良さが試されるのである。お酒の影響で真実が明かされ、それは結婚にも離婚にもつながる可能性がある。
 キリスト教の聖霊降臨の日のように、ミッドサマーには結婚式やキリスト教の命名式が多く開催される。スウェーデン人の中には、あまり教会に行かないにもかかわらず、花で飾られたアーチ型の門があり、美しい聖歌が歌われている教会で結婚式を挙げたいという人がいる。

スウェーデンのミッドサマーの起源

 農耕時代においては、ミッドサマーは豊穣の季節である夏を歓迎する祝祭であった。一部の地域では、「グリーンメン」としてシダで身を纏う風習もあった。また家や農具を葉で装飾し、葉のついた高いメイポールを掲げてその周りを踊るという風習が、すでに1500年代には存在していたようである。
 ミッドサマーは本来若い人々のための行事であったが、スウェーデン中心部の工場で働く労働者たちも、塩漬けニシンやビール、シュナップスの宴会が行われ、祝祭を行うようになった。しかしこれがスウェーデンで最も伝統的な祭りとなったのは1900年代になってからである。

癒しの水、魔法の夜、ミッドサマーの起源

 6世紀以降、夏至祭の焚き火はヨーロッパ中で行われており、スウェーデンでは、主に南部の地域で行われていた。若者たちは聖なる泉を訪れ、聖なる水を飲み、ゲームやダンスを楽しんだ。これは洗礼者ヨハネがヨルダン川でキリストに洗礼を授けた事を思い起こさせる。
 ミッドサマーの夜は、一年でもっとも明るく、人々の未来を占うのに最適な時期として古くから魔法の夜と考えられてきた。少女たちは夢の中で、将来のパートナーが喉の渇きを癒すようにお水をもってきてくれることを願い、塩粥を食べた。さらに月の光の反射から財宝を見つける夢を見た。またその夜には、水がワインに代わり、シダが花に変わると言われてきた。その一夜限り、多くの植物が癒しの力を手に入れるからである。


伝統的ではないミッドサマーの柱の立て方 Photo: Simon Paulin/imagebank.sweden.se

花摘みは夏至祭の必須の活動 Photo: Vilhelm Stokstad/imagebank.sweden.se

スウェーデンの夏は完璧な花冠の材料をもたらしてくれる Photo: Alexander Hall/imagebank.sweden.se

さあダンスを始めよう! Photo: Anna Hållams/imagebank.sweden.se

夏至祭のために伝統的な衣装を着る人もいる Photo: Per Bifrost/imagebank.sweden.se

ニシンは夏至祭の食卓には最も重要なものである Photo: Anna Hållams/imagebank.sweden.se

良い気候の年には、ちょうど夏至祭の時期にスウェーデンのいちごが熟している Photo: Anna Hållams/imagebank.sweden.se

ミッドサマーには友達や家族と会うのが常である Photo: Carolina Romare/imagebank.sweden.se

乾杯! Photo: Lieselotte van der Meijs/imagebank.sweden.se

これは「ダンスバナ」というスウェーデンの典型的な野外ダンスフロア Photo: Vilhelm Stokstad/imagebank.sweden.se

寝る前に7つの花を積むことを忘れないでね! Photo: Asaf Kliger/imagebank.sweden.se

原資料掲載ページ:https://sweden.se/culture/celebrations/midsummer
翻訳時点の最終更新日 2022年5月25日
翻訳 小池桃佳 高原涼輔 中村太星 平川鈴弓
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表はSweden.seに掲載されたものをそのまま転載しています。他サイトへのリンクは転載しておりません。

イケア(IKEA)とボルボ(Volvo)はスウェーデンの企業だとわかると思うが、このリストの残りの企業はどうだろうか


キーレス・キー Photo: Assa Abloy
1.アッサアブロイ(Assa Abloy)

 その名は知らずとも、誰しもがホテルのルームドアのカードキーをかざした経験はあるだろう。近年の解錠システムのグローバルリーダーとして、アッサアブロイのセキュリティロックは個人宅にも、多様な業界のビジネスにも使われている。1994年、スウェーデンのアッサ(Assa)とフィンランドのアブロイ(Abloy)が合併し、国際的な力を持つようになった。今日、アッサアブロイは世界70ヵ国以上の国に展開し、約49,000人の従業員を擁している。その入室システムは家庭用セキュリティドアやモバイルアクセスからバイオメトリックスその他の認識システムまで多岐に渡っている。


1964年に発売したルクソマティック(Luxomatic)掃除機の広告 Photo: Electrolux
2.エレクトロラックス(Electrolux)

 エレクトロラックスといえばすぐにキッチン家電を思い浮かべる人が多いと思うが、この会社が世界で十指に入る家電メーカーであることを知っている人は少ないだろう。創業は1919年で、元々は掃除機を販売し、後に冷蔵庫、洗濯機、食洗機など様々な家電製品が製造ラインに加わった。S&P Globalによるサステナビリティ・イヤーブックでは、家庭用耐久財部門で長年に渡り金賞、銀賞を受賞している。


シスタ(Kista)のエリクソン本社 Photo: Ericsson
3.エリクソン(Ericsson)

 電気通信技術市場の大手であるエリクソンは、モバイル技術やネットワークで世界的な知名度を誇り、世界の様々な大学や研究機関と強力なパートナーシップを結んでのイノベーションへのアプローチで、世界をリードしてきた。ラース・マグヌス・エリクソン氏は1876年のストックホルムで、後にエリクソンとなる会社を始めた。今日、同社は世界で約10万人の従業員を抱えている。


エシティは衛生上の重点項目の1つとして手洗いを推進している。 Photo: Melker Dahlstrand/imagebank.sweden.se
4.エシティー(Essity)

 赤ちゃんや小さなお子さんがいる家庭なら、ベビーケアとおむつのブランドであるリベロ(Libero)を知っているかもしれない。エシティはそのベビーケアのリベロ、フェミニンケアのリブレッセ(Libresse)、ティッシュペーパーのクッシェル(Cushelle)など多くのブランドを展開している世界有数の保健衛生企業の1つである。かつては1929年に創業した林業会社SCAの一部であったが、2017年に分社化し、今では自立した業界最大級の企業になっている。エシティのグローバルな取り組みは、月経衛生の日(Menstural Hygiene Day)や世界手洗いの日(World Hand Hygiene Day)への参加から、衛生関連の意識を高める写真展まで、多岐に渡っている。


ヴェステロース(Västerås)のH&M第1号店 Photo: H&M

東京のH&M旗艦店 Photo: H&M
5.H&M

 スウェーデンの典型的なミニマルかつシックなファッションを世界に発信しているへネス・アンド・マウリッツ、通称H&M。1947年にヴェステロースでヘネス(Hennes)という婦人服店としてスタートした創業者のアーリン・ペーション(Erling Persson)は、後に狩猟・釣り具店のマウリッツ・ウィドフォース(Mauritz Widforss)を買収し、公式の名称を正式に名前をへネス・アンド・マウリッツに改名し、1968年にはメンズとキッズの衣料品を加えた。それ以降、H&Mは世界各国に約5,000店舗を展開し、流行の服やアクセサリーを手頃な価格で展開しており、いくつかのサブブランドも加えてきた。H&Mは、児童労働や職場の安全問題などに関して、サブライヤーが行動規範を満たしているかの監査を受けることを約束している。
 また、2020年にH&Mは新しいリサイクルサービスとしてループス(Looop)を開始した。古くて不要になった衣類を機械で裁断し、古い繊維から新しい衣類を編む。この取り組みは、H&Mの完全な循環型社会の達成に向けた一歩となっている。


イケアでの買い物は、好きでもあり嫌いでもある Photo: Simon Paulin/imagebank.sweden.se
6.イケア(IKEA)

 1943年にイングヴァル・カンプラードが創業した家具の巨大企業イケアは、現在50カ国以上で460店舗近くを展開するまでに成長した。スタイリッシュなDIY(自作組み立て)インテリアや家具で知られるイケアは、人々の手先の器用さを引き出し続け、あまりお金のない多くの大学生にとって、なくてはならない存在となっている。1950年代に基本コンセプトである「フラットパック」を導入して以来、「クリッパン(Klippan)」「ポエング(Poäng)」「ビリー(Billy)」などのベストセラーを中心に、北欧テイストの家具を手頃な価格で提供することができるようになった。


ストックホルムの新カロリンスカ病院の巨大プロジェクト Photo: Skanska
7.スカンスカ(Skanska)

 スカンジナビア発祥をほのめかす名前であるスカンスカは建設と開発計画において世界をけん引する企業である。1887年に創業し、現在は約34,000人の従業員を持つ企業へと成長を遂げ、道路や橋、線路から病院やオフィス、空港に及ぶ、注目を浴びる建設計画に取り組んでいる。スカンスカのプロジェクトで興味深いものとしては、ストックホルムの新カロリンスカ病院、ニューヨークのラガーディア空港のターミナルB再開発、ニュージャージー州のメットライフスタジアム、デンマークへとつながるスウェーデンの有名なオーレスン橋(オーレスン・リンク)がある。


スポティファイのようなストリーミングサービスは、音楽をより身近なものにした。 Photo: CS/Sweden.se
8.スポティファイ(Spotify)

 オンライン上で著作権付きの音楽を共有することや配信することは熱心に議論されている問題だが、スウェーデンの企業であるスポティファイは海賊版の音楽ファイル共有サイトの代わりとして合法なオンライン上の音楽配信サービスを提供することにより、その架け橋をつくることを可能にした。ダニエル・エク(Daniel Ek)とマーティン・ローレンツォン(Martin Lorentzon)によって2006年に創業されたスポティファイはユーザーに数百万もの楽曲をコンピュータやスマートフォンといったような携帯端末で聞くことや、共有することを可能にした。この企業は世界中に3億8,100万人のユーザーがおり、そのうち1億7200万人が定額利用ユーザーであると推計している。


スウェーデン北部のルーレ(Lule)川にあるポリュス(Porjus)水力発電所 Photo: Vattenfall

ハイブリット(HYBRIT)は化石燃料なしの製鉄を目指している。 Photo: Viveka Österman
9.バッテンフォール(Vattenfall)

 世界中に数百万もの顧客を持つヴァッテンフォールは100年以上の間、住宅や企業にガスや熱、電気を供給している大手エネルギー会社である。同社は化石燃料を漸次廃止することを約束し、一世代以内に化石燃料の使用をやめることを目指している。2020年8月に、ヴァッテンフォールと鉄鋼会社のSSAB、国有の鉱業会社であるLKABは共同で、化石燃料を使用しない鉄鋼製造であるHYBRIT(HYdrogen BReakthrough Ironmaking Technologyの略称)のために、世界で初めてのパイロットプラント(試験的生産を行う工場)を始動した。その目的は2035年までに製法を完全に脱炭素化すべく、製鉄において使用する燃料を石炭から水素に代えることである。2021年には、同じくスウェーデン企業であるボルボグループ(下記)に対して、HYBRITが脱炭素鉄鋼を供給したことが発表された。


ボルボは電気自動車の開発を進めている Photo: Volvo Trucks
10.ボルボ(Volvo)

 ミートボール並みにスウェーデンを象徴するボルボは、年間売上高において、依然としてスウェーデン最大の企業である。ボルボの名は、エステートカー(アメリカで言うステーションワゴン)の愛すべき代名詞として世界中の家庭で知られているが、同社は他にもおよそ190の製品で知られている。
 中国の自動車メーカージーリーホールディンググループ(Greely Holding Group)は、2018年に、ボルボグループのトラック、バス、建設機器を中心とした部門を買収した。ボルボ・カーズは2010年から所有している。ただしボルボの本社は、依然としてスウェーデンのヨーテボリにある。
 1927年に創業したボルボグループは、10万人近くの従業員を抱え、世界18カ国に生産設備を有している。さらにボルボ・カーズには、さらに約4万人が働いている。

編者による註
 本リストに掲載した企業は、編者が選択したものであり、いかなる公式のランキングに基づくものでもない。掲載はアルファベット順である。データの出所は、StatistaのSweden’s 20 largest companies by turnover、ForbesのThe World's Most Innovative Companies、Fast CompanyのWorld Changing Ideas Awardなどである。

原資料掲載ページ:https://sweden.se/work-business/business-in-sweden/10-companies-you-didnt-know-were-swedish
翻訳時点の最終更新日 2022年1月25日
翻訳 駒村英美、鹿野 葵、東 花子
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表はSweden.seに掲載されたものをそのまま転載しています。他サイトへのリンクは転載しておりません。


新型コロナウィルス流行に関する記者会見に臨むスウェーデンのレーナ・ハーレングレン厚生社会大臣 Photo: Magnus Liljegren/Regeringskansliet

新型コロナウイルスの流行に対するスウェーデンの対応の概要

 スウェーデンでコロナウイルスが流行している間、スウェーデン政府はコロナウイルスに打ち勝つため、いくつかの分野で多くの様々な対策を講じてきた。独立した専門の政府機関は提言を行い、政府は決定を下してきた。それらの決定が常に目的としていたのは、以下のことである。
・国内における流行の拡大を抑えること
・医療資源を十分に確保すること
・重要な社会サービスの影響を抑えること
・人とビジネスへの影響を軽減すること
・情報供給等により不安を軽減すること

 様々な対策が様々な時点で効果をもたらすと考えられるため、コロナウイルスの感染拡大に対するスウェーデンの対応は、適切なタイミングに適切な対策を取ることが常に検討されてきた。この国の対応は、自発的な行動を部分的に頼りにしてきた。例えば、政府は全国的なロックダウンを施行するよりも、症状が現れた場合は自宅療養し、他者と距離を保ち、可能な限り公共交通機関の使用を避けることなどを提案するという形を取った。

・新型コロナウイルス流行拡大に関する、より多くの公式情報はkrisinformation.seで確認すること。
・ビジネスに関する新型コロナウイルスの情報はverksamt.seで確認すること。

ワクチン

 スウェーデンの新型コロナウイルスのワクチン接種は2020年12月に開始された。2022年3月末の時点では、12歳以上の国民の87パーセントが少なくとも2回接種している。18歳以上の国民については、62パーセントが3回接種をしている。
 スウェーデンの公衆衛生庁(Folkhälsomyndigheten)によると、高いレベルのワクチン接種率が制限解除のために最も重要な条件である。
 公衆衛生庁はワクチン接種を国民に推奨し続けている。この提言には12歳以上の子どもたちと、上気道感染症に非常に弱い5歳以上の子どもたちを含んでいる。

制限措置

 スウェーデン政府は、2022年2月9日に新型コロナウイルス関連の制限措置の大半を解除した。
 公衆衛生局によると、高いワクチン接種率と深刻な病状がみられにくいオミクロン変異体の組み合わせのおかげで、医療システムの負担は軽減された。

 ただしいくつかの制限措置はまだ実施されている。
・12歳以上の人は新型コロナウイルスのワクチン接種を受けることが推奨されている。
・新型コロナウイルスが疑われる症状がある場合は、自宅待機をし、人との接触を避ける必要がある。
・ワクチン接種を受けていない人は、屋内での混雑や人ごみを避ける必要がある。
 その他の公式の情報はkrisinformation.seで確認すること。

渡航禁止令の解除 2022年4月1日

 2022年4月1日の時点で、制限が解除されすべての国からの入国が可能となっている。 またこれによって、旅行者がスウェーデンに入国する際に予防接種や検査証明書を提示する必要はなくなった。
 渡航禁止令に関するより詳細な情報はgovernment.seで確認すること。


新型コロナウィルス流行における英雄の1人 Photo: Naina Helén Jåma/imagebank.sweden.se

感染流行の間は、ワークライフバランスの様子が少し変わった Photo:Melker Dahlstrand/imagebank.sweden.se

新型コロナウィルス流行暫定法

 2021年1月10日、スウェーデンは新型コロナウィルス流行暫定法を施行し、新型コロナウイルスの蔓延を制限すべく一時的な法的権限を政府に与えた。この法律によって、政府が人数や営業時間の制限を導入するなどの措置を講じることができるようになった。
 COVID19法は2022年3月31日まで有効であった。

責任の原則とは

 スウェーデンでは、危機管理は責任の原則の上に成り立っている。つまり、平時にさまざまな責任を持つ政府機関が、危機発生時においても同じく責任を持つということである。
 スウェーデンでは、政府機関は独立した専門家としての存在であり、新型コロナウィルスの感染拡大を抑え地域社会での感染拡大の影響に対抗するためにどのような対策が必要かを助言してきた。そしてその後に、政府が対策や方針を決定してきた。これらの機関は、感染管理に関する一定の独立した決定を行うこともできる。

政府機関への信頼

 スウェーデン社会では、一般に、政府機関に対する信頼が比較的強い。そのため一般市民や民間の関係者は、担当する機関のアドバイスに従う傾向がある。
 2020年3月以降、市場調査会社Kantar/Sifoは、一般市民の信頼、態度、行動を監視する「新型コロナウィルス世論調査(Covid-19 barometers)」を定期的に行っている。パンデミックの期間中、スウェーデンの最も中心的な機関の中には、国民からの信頼や支持が状況に応じて変動しているところがある。

スウェーデンにおける新型コロナウィルス流行期間中の学校生活

 スウェーデンの就学前学校と6歳から16歳までの基礎学校は、パンデミックの期間中も、いくつかの例外を除いて開校していた。スウェーデン公衆衛生庁は、スウェーデンの状況や社会全体に起こりうる影響を分析した上で、スウェーデンのすべての学校を閉鎖することは意味のある措置ではないとの判断を下したのである。
 スウェーデンの高校については、部分的に遠隔授業が推奨されたが、公衆衛生庁はこれを2021年4月1日に削除した。

原資料掲載ページ:https://sweden.se/life/society/sweden-and-corona-in-brief
翻訳時点の最終更新日 2022年4月1日
翻訳 飯島里彩、東 花子、和田安純
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表はSweden.seに掲載されたものをそのまま転載しています。他サイトへのリンクは転載しておりません。

スウェーデンの高齢者福祉システムは、人々の自立した生活の支援を目指している


多くの高齢者にとって、健康な生活には自立し続けていることが重要である。Photo: Moa Karlberg/imagebank.sweden.se

 高齢者へのヘルスケアとソーシャルケアはスウェーデンの福祉政策を語る上でとても重要なことである。スウェーデンの1,000万の人口に対し、20%が標準的な定年退職年齢である65歳を越えている。1940年代に出生数が多かったことから、この数値は2040年には23%まで上がると予想されている。

高い平均余命

 スウェーデンの平均余命は男性は81.21歳、女性は84.82歳と、世界的に最も高い水準である。スウェーデンの人口のうち5%は80歳かそれ以上である。この年代の国民はより健康に過ごせるようになり、彼らに対するケアの必要性は1980年代以降に下がっている。

主に税金でまかなわれている

 高齢者ケアは社会サービス法によって定められており、主に地方自治体の責任となっている。スウェーデンの高齢者ケアは主として地方税と国からの補助金でまかなわれている。2020年のスウェーデンの高齢者ケアにおける地方自治体の費用は1,353億クローナであった。高齢者自身が負担する医療費は公的な補助を受けている。

一緒に暮らす権利

 スウェーデンの社会サービス法においては、長年同居してきた高齢者のカップルは、そのうち一人が介護施設に引っ越す必要がある場合でも、同居し続けることができると定めている。

公的機関と民間事業者

 より多くの自治体が高齢者介護の一部を民営化することを選択しており、民間の介護提供者に運営を任せている。すべての利用者は、公的機関または民間事業者が提供する在宅介護または施設介護を選ぶことができる。ただし資金繰りや在宅支援、介護施設の提供については、地方自治体が常に全責任を負っている。

利用しやすい住居

 住宅供給や居住地区を計画しているスウェーデンの地方自治体は、高齢者や障害を持った人たちのニーズに見合う内容にすることが求められている。こうした住居の利用しやすさの要件は、長年の間に法令において明示されるようになってきた。
 「高齢者住宅」は、55歳以上の人々(70歳以上の場合もある)向けの通常の住宅であり、そのような住居では、利用しやすさが最優先される。新しく建てられたものもあるが、もともとあった普通の住居を、改築や修繕を経て利用しやすくしたものもある。

在宅介護は生活を楽にする

 高齢者や障害を持った人たちが、自立した人生を送れるようになることが高齢者支援の目標の1つである。これには、可能な限り自分たちの家に住むことも含まれている。
 自分の家に住み続けている高齢者は、生活を楽にするための様々な援助を受けることができる。例えば、スウェーデンのほとんどの自治体は、調理済みの食事の宅配を行っている。
 2020年には、在宅介護スタッフはおよそ23万6千人の65歳以上の高齢者を援助した。ほぼ半数の自治体は、デイケア施設で高齢者に給食を提供している。その一方で、いくつかの自治体では、高齢者を集めて自炊のための小さなチームを組織したりもしている。

個々に合わせた支援

 高齢者が毎日の生活ができなくなってしまった場合、市営の在宅介護サービスによる援助を申請することができる。そのような支援の範囲は、どれくらい支援が必要かに左右される。
 障害を持っている高齢者は24時間支援を受けることができる。つまり、ほとんどの人が、一生涯自分の家に居続けることができるということである。これは重い病気を抱えた人も同じで、ヘルスケア、ソーシャルケアを自分の家で受けることができるようになっている。

高齢者福祉を受けるために個人が負担すべき料金はどれくらいか?

 高齢者福祉の利用料金は、それぞれの自治体が決めており、支援のレベルや種類、利用者の収入といった要因によって変わる。在宅介護やデイサービスその他のケアの利用料金の最大限度額は、月に約2,200スウェーデンクローナ(約29,000円)となっている。
 自治体は、心身に刺激を与えリハビリをする必要のある高齢者や障害者に対してデイサービスを提供している。これらは、主に認知症や精神障害を患っている人を対象としており、多くの人が自分の家に住み続ける一助となっている。
 スウェーデン赤十字といった組織のボランティアをはじめとした人たちが、家に住んでいる高齢者や施設にいる高齢者を訪ねることもある。お喋りしたり、歩いたり、一緒にお医者さんについていったりすることが、この訪問の目的である。

輸送サービス

 高齢者や障がい者は、タクシーや特別に装備された乗り物を交通手段として利用する資格がある。これは通常の公共交通機関を利用できない人々のためのもので、有料のサービスである。


多くの人が年をとってもアクティブに生きている。Photo: Sofia Sabel/imagebank.sweden.se

スウェーデンの高齢者福祉は、それぞれの人に適切なレベルの支援を見つけることを目指している。Photo: Folio/imagebank.sweden.se

スウェーデンの法律では、可能であればカップルが一緒に暮らせるようにすることを目指している。Photo: Susanne Walström/imagebank.sweden.se

寿命が長くなるほど、ヘルスケアと高齢者ケアの必要性は高くなり続ける。Photo: Maskot/Folio/imagebank.sweden.se
スウェーデンの年金制度

 全てのスウェーデン国民は退職後、国民退職年金を受け取る資格があり、62歳から年金の受け取りを開始できる。また68歳まで働く権利が法的に認められている。
 2010年から2021年までの間に、65歳から74歳で働く人の数は70%にまで増え、2020年の平均定年は65歳であった。
スウェーデンの年金はいくつかの異なる財源から構成されている。スウェーデンに住み、働いてきた人々は、スウェーデン年金庁が管理する国民年金を受給する。これは所得年金・保険料積立年金・保証年金から構成されており、年金の額は課税対象となる所得により決められている。
 2022年1月の平均年金受給額は14,000スウェーデンクローナ(約18万円)であった。これに加え、スウェーデンで働く大半の人は雇用先からの職域年金も受給している。
更なる生活の安定を得るために、多くの年金受給者は民間の年金貯蓄で退職後の収入を補っている。

高齢化への対策

世界中の国々と同様、スウェーデンでも高齢化が始まっている。そのため高齢者向けの福祉は重要な要素となってきており、政府はこの分野での将来の課題に対応するための措置を講じている。
 2040年には、人口の約4分の1が65歳以上になり、そのうちの多くは現役で健康であると予想されている。将来のニーズに応えることを目的としたいくつかの取り組みが、現在全国各地で行われている。福祉水準を低下させることなく、来るべき人口動態の課題に対応するためには、人々がより長く働かなければならないことは明らかであると考えられている。

予防的ケアは高齢者を健康に保っている

 近年、高齢者に効果的な新たな予防的ヘルスケアが紹介され、関心が高まっている。
 一つの例として挙げられるのは、予防や治療のための身体運動である。高齢者は、一般的な運動だけでなく、特定の身体活動が推奨される。時には投薬と組み合わせて、医師がその結果を観察することもある。
 高齢者の健康問題のひとつにケガがあり、転倒によるケガを減らすべく多くの努力がなされている。高齢者向けの情報提供、カーテン掛けや電球の交換を手伝うなど、自治体独自の「修繕屋」によるサポートが行われている。
 音楽、映画、読書、絵画などの文化的な活動を通じて刺激を得ることもまた、幸福に繋がるとされている。このことは高齢者介護施設でますます認識されており、多くの人が毎日少なくとも1回はこのような活動に取り組んでいる。

原資料掲載ページ:https://sweden.se/life/society/elderly-care-in-sweden
翻訳時点の最終更新日 2022年5月2日
翻訳 内田優理、鹿野 葵、高松奏音
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表はSweden.seに掲載されたものをそのまま転載しています。他サイトへのリンクは転載しておりません。

前回2018年の総選挙から、はや4年が経ちました。スウェーデンといえば投票率が90%近くに達する安定した国というイメージでとらえられがちですが、実はこの間、同国は政治的に非常に不安定な状況にありました。まず新型コロナ感染症の流行やロシアのウクライナ侵攻を契機としたNATO加盟申請という世界的に大きな影響を与える出来事がありました。さらに国内政治においては、選挙から組閣まで4カ月以上を経てようやく政府が発足するという危うい船出から、昨年夏にはスウェーデン政治史上初の不信任案決議の可決によって首相が辞任、昨年秋には、初の女性首相が誕生するも、その直後に与党の予算案が否決され野党の予算案が可決されるという異常事態が起こりました。この結果、長らく連立与党であった環境党が政権から離脱し、第1党ながら議席が全体の3分の1にも満たない社会民主党が単独で政権を運営するという、世界でも稀なレベルの不安定な政治状況にあります。
果たして本年の総選挙によって、この状況が解消されるのか、それともさらに混迷を深めるのか。これまでのスウェーデンの政党政治の流れや、今回の選挙の争点を見据えて考えていきます。

● 日時 2022年9月8日(木)18:00 - 19:00
● 講師 鈴木賢志(一般社団法人スウェーデン社会研究所 代表理事・所長/明治大学国際日本学部 教授・学部長)
● 開催場所 オンライン(Zoomミーティング)
● 参加費 会員は無料。非会員は、一般1,500円、学生1,000円。非会員の方は、こちらからお申し込みください。
● なお、会員の方には、研究講座を録画したビデオを後ほどご視聴いただくこともできます。ご入会ご希望の方は、新規会員募集よりお申し込みください。
※当日の機器や通信状況によっては、オンライン配信に障害が発生する可能性があります。その場合には講演録画の配信等、代替措置を取らせていただくことがございます旨、予めご了解ください。