目次
- 1 スウェーデンの高齢者福祉システムは、人々の自立した生活の支援を目指している
- 1.0.1 高い平均余命
- 1.0.2 主に税金でまかなわれている
- 1.0.3 一緒に暮らす権利
- 1.0.4 公的機関と民間事業者
- 1.0.5 利用しやすい住居
- 1.0.6 在宅介護は生活を楽にする
- 1.0.7 個々に合わせた支援
- 1.0.8 高齢者福祉を受けるために個人が負担すべき料金はどれくらいか?
- 1.0.9 輸送サービス
- 1.0.9.1 多くの人が年をとってもアクティブに生きている。Photo: Sofia Sabel/imagebank.sweden.se
- 1.0.9.2 スウェーデンの高齢者福祉は、それぞれの人に適切なレベルの支援を見つけることを目指している。Photo: Folio/imagebank.sweden.se
- 1.0.9.3 スウェーデンの法律では、可能であればカップルが一緒に暮らせるようにすることを目指している。Photo: Susanne Walström/imagebank.sweden.se
- 1.0.9.4 寿命が長くなるほど、ヘルスケアと高齢者ケアの必要性は高くなり続ける。Photo: Maskot/Folio/imagebank.sweden.se
- 1.0.10 スウェーデンの年金制度
- 1.0.11 高齢化への対策
- 1.0.12 予防的ケアは高齢者を健康に保っている
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スウェーデンの高齢者福祉システムは、人々の自立した生活の支援を目指している
多くの高齢者にとって、健康な生活には自立し続けていることが重要である。Photo: Moa Karlberg/imagebank.sweden.se
高齢者へのヘルスケアとソーシャルケアはスウェーデンの福祉政策を語る上でとても重要なことである。スウェーデンの1,000万の人口に対し、20%が標準的な定年退職年齢である65歳を越えている。1940年代に出生数が多かったことから、この数値は2040年には23%まで上がると予想されている。
高い平均余命
スウェーデンの平均余命は男性は81.21歳、女性は84.82歳と、世界的に最も高い水準である。スウェーデンの人口のうち5%は80歳かそれ以上である。この年代の国民はより健康に過ごせるようになり、彼らに対するケアの必要性は1980年代以降に下がっている。
主に税金でまかなわれている
高齢者ケアは社会サービス法によって定められており、主に地方自治体の責任となっている。スウェーデンの高齢者ケアは主として地方税と国からの補助金でまかなわれている。2020年のスウェーデンの高齢者ケアにおける地方自治体の費用は1,353億クローナであった。高齢者自身が負担する医療費は公的な補助を受けている。
一緒に暮らす権利
スウェーデンの社会サービス法においては、長年同居してきた高齢者のカップルは、そのうち一人が介護施設に引っ越す必要がある場合でも、同居し続けることができると定めている。
公的機関と民間事業者
より多くの自治体が高齢者介護の一部を民営化することを選択しており、民間の介護提供者に運営を任せている。すべての利用者は、公的機関または民間事業者が提供する在宅介護または施設介護を選ぶことができる。ただし資金繰りや在宅支援、介護施設の提供については、地方自治体が常に全責任を負っている。
利用しやすい住居
住宅供給や居住地区を計画しているスウェーデンの地方自治体は、高齢者や障害を持った人たちのニーズに見合う内容にすることが求められている。こうした住居の利用しやすさの要件は、長年の間に法令において明示されるようになってきた。
「高齢者住宅」は、55歳以上の人々(70歳以上の場合もある)向けの通常の住宅であり、そのような住居では、利用しやすさが最優先される。新しく建てられたものもあるが、もともとあった普通の住居を、改築や修繕を経て利用しやすくしたものもある。
在宅介護は生活を楽にする
高齢者や障害を持った人たちが、自立した人生を送れるようになることが高齢者支援の目標の1つである。これには、可能な限り自分たちの家に住むことも含まれている。
自分の家に住み続けている高齢者は、生活を楽にするための様々な援助を受けることができる。例えば、スウェーデンのほとんどの自治体は、調理済みの食事の宅配を行っている。
2020年には、在宅介護スタッフはおよそ23万6千人の65歳以上の高齢者を援助した。ほぼ半数の自治体は、デイケア施設で高齢者に給食を提供している。その一方で、いくつかの自治体では、高齢者を集めて自炊のための小さなチームを組織したりもしている。
個々に合わせた支援
高齢者が毎日の生活ができなくなってしまった場合、市営の在宅介護サービスによる援助を申請することができる。そのような支援の範囲は、どれくらい支援が必要かに左右される。
障害を持っている高齢者は24時間支援を受けることができる。つまり、ほとんどの人が、一生涯自分の家に居続けることができるということである。これは重い病気を抱えた人も同じで、ヘルスケア、ソーシャルケアを自分の家で受けることができるようになっている。
高齢者福祉を受けるために個人が負担すべき料金はどれくらいか?
高齢者福祉の利用料金は、それぞれの自治体が決めており、支援のレベルや種類、利用者の収入といった要因によって変わる。在宅介護やデイサービスその他のケアの利用料金の最大限度額は、月に約2,200スウェーデンクローナ(約29,000円)となっている。
自治体は、心身に刺激を与えリハビリをする必要のある高齢者や障害者に対してデイサービスを提供している。これらは、主に認知症や精神障害を患っている人を対象としており、多くの人が自分の家に住み続ける一助となっている。
スウェーデン赤十字といった組織のボランティアをはじめとした人たちが、家に住んでいる高齢者や施設にいる高齢者を訪ねることもある。お喋りしたり、歩いたり、一緒にお医者さんについていったりすることが、この訪問の目的である。
輸送サービス
高齢者や障がい者は、タクシーや特別に装備された乗り物を交通手段として利用する資格がある。これは通常の公共交通機関を利用できない人々のためのもので、有料のサービスである。
多くの人が年をとってもアクティブに生きている。Photo: Sofia Sabel/imagebank.sweden.se
スウェーデンの高齢者福祉は、それぞれの人に適切なレベルの支援を見つけることを目指している。Photo: Folio/imagebank.sweden.se
スウェーデンの法律では、可能であればカップルが一緒に暮らせるようにすることを目指している。Photo: Susanne Walström/imagebank.sweden.se
寿命が長くなるほど、ヘルスケアと高齢者ケアの必要性は高くなり続ける。Photo: Maskot/Folio/imagebank.sweden.se
スウェーデンの年金制度
全てのスウェーデン国民は退職後、国民退職年金を受け取る資格があり、62歳から年金の受け取りを開始できる。また68歳まで働く権利が法的に認められている。
2010年から2021年までの間に、65歳から74歳で働く人の数は70%にまで増え、2020年の平均定年は65歳であった。
スウェーデンの年金はいくつかの異なる財源から構成されている。スウェーデンに住み、働いてきた人々は、スウェーデン年金庁が管理する国民年金を受給する。これは所得年金・保険料積立年金・保証年金から構成されており、年金の額は課税対象となる所得により決められている。
2022年1月の平均年金受給額は14,000スウェーデンクローナ(約18万円)であった。これに加え、スウェーデンで働く大半の人は雇用先からの職域年金も受給している。
更なる生活の安定を得るために、多くの年金受給者は民間の年金貯蓄で退職後の収入を補っている。
高齢化への対策
世界中の国々と同様、スウェーデンでも高齢化が始まっている。そのため高齢者向けの福祉は重要な要素となってきており、政府はこの分野での将来の課題に対応するための措置を講じている。
2040年には、人口の約4分の1が65歳以上になり、そのうちの多くは現役で健康であると予想されている。将来のニーズに応えることを目的としたいくつかの取り組みが、現在全国各地で行われている。福祉水準を低下させることなく、来るべき人口動態の課題に対応するためには、人々がより長く働かなければならないことは明らかであると考えられている。
予防的ケアは高齢者を健康に保っている
近年、高齢者に効果的な新たな予防的ヘルスケアが紹介され、関心が高まっている。
一つの例として挙げられるのは、予防や治療のための身体運動である。高齢者は、一般的な運動だけでなく、特定の身体活動が推奨される。時には投薬と組み合わせて、医師がその結果を観察することもある。
高齢者の健康問題のひとつにケガがあり、転倒によるケガを減らすべく多くの努力がなされている。高齢者向けの情報提供、カーテン掛けや電球の交換を手伝うなど、自治体独自の「修繕屋」によるサポートが行われている。
音楽、映画、読書、絵画などの文化的な活動を通じて刺激を得ることもまた、幸福に繋がるとされている。このことは高齢者介護施設でますます認識されており、多くの人が毎日少なくとも1回はこのような活動に取り組んでいる。
原資料掲載ページ:https://sweden.se/life/society/elderly-care-in-sweden
翻訳時点の最終更新日 2022年5月2日
翻訳 内田優理、鹿野 葵、高松奏音
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表はSweden.seに掲載されたものをそのまま転載しています。他サイトへのリンクは転載しておりません。