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2020年万博のスウェーデンのパビリオンは「ザ・フォレスト」(下記のNo.13)と呼ばれた。 Photo: Johannes Edberg

ターニング・トルソ(Turning Torso)からツリーホテル(Treehotel)まで、25の素敵なスウェーデンの建造物を見ていこう

1.古いものと新しいもの

 ウィンゴーズ(Wingårdhs)のアウラ・メディカ(Aula Medica)は、1771 年に建てられた伝統的なコテージ、ステンブロッテット(Stenbrottet、採石場)の上にそびえ立ち、新旧のスウェーデン建築が融合している。医学または生理学のノーベル賞受賞者を選出する医科大学カロリンスカ研究所(Karolinska Institutet)のため、2013年に完成した。


ストックホルムにあるアウラ・メディカの講堂の座席は1,000席ある。 Photo: Cecilia Larsson Lantz/imagebank.sweden.se
2.ねじれた摩天楼

 サンチアゴ・カラトラバ(Santiago Calatrava)によって設計された、マルメ(Malmö)のターニング・トルソ(Turning Torso)は、世界初のねじれた超高層ビルであり、スカンジナビアで最も高い190メートルのタワーである。2015年に創立10周年を迎え、同年、高層ビルおよび都市居住者協議会(CTBUH)の「10年賞」を受賞した。

3.移動する教会

 1912 年に建てられたグスタフ・ウィックマン(Gustav Wickman)のキルナ教会は、スウェーデンで最も愛されている建物だ。大規模な採掘のため、北部キルナ(Kiruna)市の他の施設と一緒に、今後数年間で解体されて移動し、新しい場所に再建築される予定である。


キルナ協会は伝統的なスウェーデンの赤に塗られ、タールの臭いがする。 Photo: Hans-Olof Utsi/imagebank.sweden.se
4.顕微鏡

 ヨーロッパで最も精密な電子顕微鏡。振動、音、電磁場に非常に敏感で、独自の建物が必要な機器であるためチタン板で覆われている。リンショーピン大学のキャンパス内にあり、研究室や教室の中でも際立っている。


エレクトロン顕微鏡、別名オングストロムフセット(Ångströmhuset)はリンシェーピン大学にある。 Photo: Cecilia Larsson Lantz/imagebank.sweden.se
5.ミクロネーション

 ラテン語で「多すぎる」を意味するニミス(Nimis)は、1980年にラース・ヴィルクス(Lars Vilks)によって開始されたサイト・スペシフィック・アート・インスタレーションで話題となった。クーラベリ(Kullaberg)の自然保護区の架空の国ラドニア(Ladonia)に建設された印象的な建物である。2016年に大部分が焼失したが、再建された。流木でできた建物には、登ったり入ったりすることができる。


ニミスは自称の小国ラドニアの一部で、100カ国以上の国から23,000人以上の「市民」を受け入れている。 Photo: Thomas Olsson (CC BY-NC2.0)
6.リサイクルサウナ

 ヨーテボリのフリハムネン(Frihamnen)では新しい地区が開発されており、サウナ-スベッテショーカ(Svettekôrka、「汗の教会」)はその最初のステップになった。この壮大でありながら気取らない小規模なランドマークは、地元でリサイクルされた材料と地元のボランティアによって建設された。サウナはイェータ川(Göta älv)の一部である盆地に建てられており、無料で一般に公開されている。設計はベルリンを拠点とするラウムラボール(Raumlabor)事務所の、ジャン・リーゼガング(Jan Liesegang)とフランチェスコ・アプッゾ(Francesco Apuzzo)による。


これがヨーテボリの「汗の教会」スベッテショーカだ。一般的なサウナではない。Photo: Marie Ullnert/imagebank.sweden.se
7.趣のある市民ホール

 スウェーデンでおそらく最も豪華な市民会館(Medborgarhuset)は、南部の小さな町エスレフ(Eslöv)にある。1957年にハンス・アスプルンド(Hans Asplund)によって、若手建築家の最初の主要な建物として完成した。豪華な市民ホールの素材は、価格のみ、技術のみにこだわらず慎重に選ばれた。最初は批判されたが、市民ホールの素材と美しさは、今日ではこまやかで表現力があり、かつ空間を豊かに活かした市民建築の最高水準と見なされている。


エスレフの市民会館は、スウェーデンでおそらく最も有名な建築家であるグンナル・アスプルンドの息子であるハンス・アスプルンドによって、国連の建物に触発されて建てられた。 Photo: Ola Torkelsson/TT
8.木々に囲まれたホテル

 マイクロキューブ(Mirrorcube) は、スウェーデン北部のハラッズ(Harads)にあるツリーホテル(Treehotel)の6つの現代建築の楽園の1つだ。有名なスウェーデンの建築家タム&ヴィデゴード(Tham & Videgård)、シレン&シレン(Cyrén & Cyrén)、インレドニングスグルッペン(Inredningsgruppen)、サンデル・サンドベリ(Sandell Sandberg)が建物に携わっている。


マイクロキューブは、鏡の壁が周囲を映してカモフラージュしている4×4×4メートルの隠れ家だ。 Photo: Tina Stafrén/imagebank.sweden.se
9.橋

 エーレスンド橋(The Öresund Bridge)は、トンネルと人工島を含む構造で、スウェーデンとデンマークを結び、COWIによって設計された。世界最長のケーブルで結ばれた道路と鉄道の橋で、1999 年 8 月に完成した。2002年にIABSE Outstanding Structure Awardを受賞した。


エーレスンド橋は水上から水中に続くという劇的な形で始まって/終わっている。 Photo: Jan Kofod Winther/Öresundsbron
10.白樺の小屋

 2008年にラムンドベリエット(Ramundberget)で家族経営のスキーリゾートとして建造されたムルマン・アーキテクターズ・レストラン・トゥッセン(Murman Arkitekter’s Restaurang Tusen)は、地元料理とサーミ料理を提供している。この建物は、その高度で唯一生育できる地元の木である白樺で作られており、自然と調和している。


レストラン・トゥッセンは、2009年の世界建築祭(ホリデー部門)で1等を受賞した。 Photo: Åke Eäson Lindman
11.フェリー・ターミナルビル

 マーゲ・アーキテクター(Marge Arkitekter)によって建てられたストロームカイエン(Strömkajen)のフェリー・ターミナルビルはストックホルムの群島への入り口。正方形の真鍮を使って建てられた三角錐の形をした船着き場は周囲の記念碑のような建物(王宮、グランドホテル、国立美術館)を引き立たせるよう、やや小さめである。


ストックホルムにあるマーゲ・アーキテクターのフェリー・ターミナルビルは、周囲の建物と水を反射している。 Photo: Johan Fowelin/Marge
12.アイスホテル

 北極圏より200キロメートル北にあるユッカスヤルビィ(Jukkasjärvi)の世界初のアイスホテルは1989年に作られた。新進の芸術家と氷の彫刻家が、毎年10月から12月までの8週間で部屋を新しく作る。1,000トンの氷と3万平方メートルの雪と氷からなるホテルは3カ月かけて解け、毎年春には元の自然の姿に戻る。ただしアイスホテルの一部(アイスホテル365)は太陽光エネルギーを用いて氷を十分に冷たく保っているおかげで、一年中提供されている。


アイスホテルは寒さをクールにする。 Photo: Asaf Kliger/imagebank.sweden.se
13.ザ・フォレスト

 本物の木の幹と森林のような雰囲気を主役にすることで、ドバイで開催された2020年万博(Expo 2020)に展示されたスウェーデンのパビリオンは、スウェーデンの森林体験を再現することを目的としている。建物は高さ18メートルであり全て木でできている。これはスウェーデンのアレサンドロ・リペリーノ・アーキテクト(Alessandro Ripellino Arkitekter)、フランスのアドリアン・ガーデレ・スタジオ(Studio Adrien Gardère)、イタリアのルイージ・パルド・アーキテッティ(Luigi Pardo Architetti)という3カ国の3チームによって設計された。

14.モール(エンポリア・ショッピングセンター)

 エンポリア(Emporia)の巨大な金の割れ目、大胆な色づかいと曲がった視線はショッピングセンターの常識を壊した。これはウィンゴーズ(Wingårdhs)が2012年に建てたもので、マルメ(Malmö)におけるオフィス・住宅・商業施設の多目的開発の都市計画プロジェクトの一部を成している。


エンポリアは数々の建築賞を受賞している。 Photo: Susanne Nilsson (CC BY-SA 2.0)
15.コンサートホール

 ヘニング・ラーセン・アーキテクト(Henning Larsen Architects)によって設計されたウプサラ・コンサート&コングレス(Uppsala Konsert & Kongress)は2007年に開業した。つやのある金属のような外見と回顧感のあるピアノ鍵盤はウプサラという歴史的な学生町の重要な集いの場となっている。


ウプサラ・コンサート&コングレスは、スウェーデンで最高のコンサート・会議場の1つである。 Photo: Magnus Hörberg
16.フラワーショップ

 マルメにある東方教会墓地(Östra kyrkogården)のそばにある、1969年にシグルド・ルヴェレンツ(Sigurd Lewerentz)によって建てられたブルータリズムのフラワーショップは、激しい賛否両論を引き起こしたスウェーデン建築物の象徴である。有名な建築家による小さく極端な建物は、ほとんどが立方体や黄金の区画からなっており、世界中の建築ファンをいまだに魅了している。


シグルド・ルヴェレンツによるマルメのシンプルなフラワーショップは、彼の最後の作品であった。 Photo: trevor.patt
17.スキーホテルThe ski hotel

 1950年に建造されたラルフ・エルスキン(Ralph Erskine)のボーガフェール(Borgafjäll)スキーホテル(ホテル・ボーガフェール)は、この有名な建築家の最も原点となるプロジェクトの1つである。周囲の気候の影響を受けて作られた長いスロープの屋根は、雪で覆われるとこの地方のラップランドの風景の一部となる。この屋根はスキースロープとしても使用することができる。


ホテル・ボーガフェールの建物は、その場所と条件に対応したものとして有名である。 Photo: Hotell Borgafjäll
18.ビジターセンター

 カルメン・イズキエルド(Carmen Izquierdo)は、ルンド大聖堂にあるビジターセンター、カテドラル・フォーラム(Domkyrkoforum)の設計者である。千年近い歴史を持つこの教会には、毎年約70万人の人々が訪れている。真鍮とガラスで覆われたビジターセンターには、芸術的なランタン窓があり、そこから外を眺めると、まるで絵画のように大聖堂を縁取ることができる。この建物により、イズキエルドは2012年に優れた建築に贈られるカスパー・サリン(Kasper Salin)賞を受賞した。


ルンドのカテドラル・フォーラムはカテドラルの訪問者を歓迎する。 Photo:Åke E:son Lindman
19.ザ・グローブ

 アヴィーチー・アリーナ(グローベンとして知られている)は、2021年にスウェーデンのミュージシャン、故アヴィーチーにちなんで改名された。それは世界で最も大きな球体の建物で、住宅地に囲まれた巨大なゴルフボールのように突き出ている。ベリ・アーキテクトコントール(Berg Arkitektkontor)によって設計されたアリーナは、1989年に開業し、直径は110メートル、高さは85メートルである。


訪問者は2台の球場のゴンドラでアヴィーチー・アリーナの周りを巡ることができ、そこから何にも遮られることなくストックホルムを一望できる。 Photo: Tommy Andersson/imagebank.sweden.se
20.ストックホルム市庁舎

 ストックホルム市庁舎は、ラグナル・エストベリ(Ragnar Östberg)によるスウェーデンのナショナルロマンティシズムの代表作で、1923年に完成した。高さ106mの鐘楼には365段の階段があり、その尖塔にはスウェーデンの国章である黄金の「3つの王冠」があしらわれている。2010年には、その東側にホワイト・アーキテクター(White Arkitekter)によるサステナブルなストックホルム・ウォーターフロント・ビルが併設された。


ノーベル賞の晩餐会が開かれるストックホルム市庁舎は、ストックホルムで最も有名なシルエットの1つだ。 Photo: Werner Nystrand/Folio/imagebank.sweden.se
21.ネイチャーセンター

 水の国のビジターセンター(Naturum Vattenriket)は、クリスチャンスタッド(Kristianstad)の市街地から徒歩5分の湿地帯保護区にある。その建物は、訪れた人と湖畔をつなぐ窓口の役割を果たし、遊歩道を通じて市内から自然へと歩いていくことができ、様々な角度から湖の風景を探索することができる。スウェーデンには、自然保護区のビジターセンターである「ナチュールム(naturum)」が30カ所以上ある。


水の国のビジターセンターはクリスチャンスタッドの生物保護区にある。 Photo: Per Pixel Petersson/imagebank.sweden.se
22.高齢者施設

 トレッドゴーダルナ(Trädgårdarna、「ザ・ガーデン」)は、ストックホルムから数時間東に位置するエーレブロー(Örebro)にあり、これからの高齢者ケアの新しいスタンダードを示している。建築事務所のマーゲ・アーキテクター(Marge Arkitekter)は、実際に高齢者の視点を建物に取り入れたと評価されている。その結果、機能的でありながら、家庭的な雰囲気のある施設となった。


高齢者施設トレッドゴーダルナには温室の大きな庭がある。 Photo: Johan Fowelin/Marge
23.市立図書館

 グンナル・アスプルンド(Gunnar Asplund)によって設計されたストックホルム市立図書館は、天井高23mのロタンダ形式の円形図書館として有名である。比較的小さな建物であるが、円筒形の中央塔を3つの立方体の棟が取り囲むユニークな形状は、歴史的建造物としての性格を強く打ち出している。

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24.墓地

 グンナル・アスプルンド(Gunnar Asplund)とシグルド・ルヴェレンツ(Sigurd Lewerentz)によって1920年より設計された100ヘクタールの森の墓地(Skogskyrkogården)を訪れると、繊細なロマンを感じさせる美しく起伏した風景の中で、悲しく気品のある旅ができる。また、万聖節を過ごすには世界で最も幻想的な場所であるだろう。悲しいことに、森の火葬場に最初に埋葬されたのはアスプルンド自身であった。シンプルな石碑には「彼の作品は生き続ける(His work lives)」と書かれている。


ストックホルムにある森の墓地はユネスコ世界遺産における数少ない20世紀の建造物の1つである。 Photo: Larsson Lantz/imagebank.sweden.se
25.鉄道駅

 マルメのトリアンゲルンプロジェクト(Triangeln project)によって、エンジニア・建築家・環境技術のコンサルタント会社であるSwecoは、スウェーデンで3番目に利用客の多い駅を、当初の予定より6か月早く、また10%予算を削減して2010年に完成させた。外観は小さく見えるが、内部は広々としており、多くのスウェーデン人とデンマーク人が2つの国を行き来する上で重要な役割を担っている。


深さ25メートルのトリアンゲルン鉄道駅は、天井がガラスのドームとなった岩の洞窟のイメージである。 Photo: Werner Nystrand/Folio/imagebank.sweden.se

原資料掲載ページ:https://sweden.se/culture/arts-design/swedish-architecture
翻訳時点の最終更新日 2021年10月21日
翻訳 高木浩志 中村太星 福戸山実李
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表はSweden.seに掲載されたものをそのまま転載しています。他サイトへのリンクは転載しておりません。


ノーラ・キャビン Photo: Martin Edström/imagebank.sweden.se

スウェーデンの南から北へ、注目の宿泊施設10選を紹介する。今度行ってみてはいかが?

1.ファルクネステット(Falknästet)

 南部のクラーベリ半島にあるクーレン灯台(Kullens fyr)は、スウェーデンで最も高い場所に立つ灯台である。その足元にある「ファルクネステット(鷹の巣)」は、天井から丸いベッドがぶら下がり、パノラマウィンドウから夕日を正面から眺められるワンルームホテルである。結婚式の夜にも平日の夜にも使える。

2.ファブリケン・フリレン(Fabriken Furillen)

 ファブリケン・フリーレンは、古い石灰岩の採石場の真ん中に、コンクリートと堅木で作られた作品である。建物は、荒れた工業地帯を反映しながらも、そこから逃れるための居心地の良いシェルターとして機能している。ホテルの部屋にしても隠遁小屋にしても、このデザインホテルはゴットランド島のフリレン半島という人里離れた場所にあって、特別な滞在を経験させてくれる。


ゴットランドのフリレンは、見た目がハードだが中は居心地が良い。 Photo: Furillen
3.72時間キャビン

 72時間キャビンは、当初は仕事でストレスを抱えた5人が3日間自然のそばで過ごしたら健康上どのような結果が出るかを経験してみるというプロジェクトであった。これらの木枠とガラスの家で過ごすというアイデアは、スウェーデンの自然の中にストレスを埋め込んでしまうというものであった。ダールスランド地方にある多くの湖の1つのそばにあるガラスのキャビンは、今では誰でも予約することができる。


72時間キャビンは自然に囲まれた、真にくつろげる場所である。 Photo: Jonas Ingman/imagebank.sweden.se
4.ホテル・アタイン(Hotell Utter Inn)

 ヴェステロース郊外のメーラレン湖に、一軒の赤いコテージが浮かんでいる。これは水中ホテル、ホテル・アタインの入り口だ。水上には炊事場があり、水面下には窓からは水中世界を眺めることができるベッドルームがある。ミカエル・ゲンベリ(Mikael Genberg)がアートプロジェクトとして立ち上げたアタインは、4月から10月のシーズン中、大変な人気を博している。


アタインはヴェステロースの水中ホテルである。 Photo: Pia Nordlander
5.ノーラ・キャビン(Nolla Cabin)

 ストックホルム群島にあるノーラ・キャビン(Nolla Cabin)は、ゼロエミッションを目指したものである。ロビン・ファルク(Robin Falck)が設計したこのキャビンは、太陽エネルギーで稼働し、現代の技術を利用して、どのように自給自足と再生可能エネルギー源の利用が達成できるのかを示している。
 持続可能なコテージのプロトタイプであるノーラ・キャビンは、自然を楽しむ時間を増やしながら、より少ないもので生活する方法を示す実験である。このキャビンはリーデ・ヴェルズフス(Lidö Värdshus)を通じて予約することができ、ネステ(Neste)という企業によるプロジェクト「ゼロ・アイランド(Zero Island)」の一環で建てられた。


ストックホルム郊外のノーラ・キャビンは炭素ガスの排出を最小限にする。 Photo: Martin Edström/imagebank.sweden.se
6.コラービン・エコロッジ(Kolarbyn Ecolodge)

 コラービン・エコロッジは、最も原始的なところがぜいたくである。その12棟のキャビンは泥と草に覆われ、屋根からはブルーベリーやキノコが生えている。電気やシャワーから逃れ、新鮮な空気、平和な環境、野生動物を体験してほしい。コラービンはストックホルムから車で2時間、スキンスカッテベリ(Skinnskatteberg)という村のすぐ郊外にある。


コラービン・エコロッジは、最も原始的なところがぜいたくである。 Photo: Johan von Helvert/Kolarbyn Ecolodge
7.自然の中でのキャンプ

 スウェーデンでは、公共アクセスの権利(allemansrätten、自然共有権)によって、自然の中のほぼすべての場所にテントを張る権利が認められている。ただし、人家からは一定の距離を保ち、農地には近づかないなど、いくつかのルールがある。
 スウェーデンのユニークな自然体験をするには、テントを持参し、野原や岩の上の人里離れた場所を見つけてテントを張り、静寂を満喫しよう。すべて無料である。


無料のキャンプ-スウェーデンらしさか? Photo: Erik Leonsson/imagebank.sweden.se
8.ツリーホテル(Treehotel)

 ツリーハウスがブティックホテルになったようなイメージで、森の中に広がる6棟のカスタムメイドのツリーハウスがツリーホテルだ。一流の建築家たちが、この自然の中に現代的なデザインの小さな隠れ家をつくり、訪れる人は手つかずの風景に浸ることができる。ルレオ(Luleå)から1時間ほど北に行くと、木立の中にあなたの家が見つかるだろう。


北スウェーデンのツリーホテルの鏡のキューブの部屋 Photo: Lola Akinmade Åkerström/imagebank.sweden.se
9.サーミネイチャーキャンプ(Sápmi Nature Camp)

 北極圏でキャンプ? サーミネイチャーキャンプは、世界遺産ラポニア(Laponia)地区のイェリヴァーレ(Gällivare)とヨックモック(Jokkmokk)の町の郊外にあり、サーミ式のグランピングを楽しみたい人のための施設だ。ラヴ(Lavvu)テント(ティピーのようなテント)には、ダブルベッド、ストーブ、自然やサーミの文化からインスピレーションを得た調度品が備えられている。食事は、魚、トナカイ、ヘラジカと地元のベリーやハーブを使ったサーミ料理が基本である。


サーミネイチャーキャンプの典型的なサーミのテント Photo: Lennart Pittja/Sápmi Nature/imagebank.sweden.se
10.アイスホテル

 毎年4月になると、ユッカスヤルヴィのアイスホテル全体、いやとにかく一部は、溶けてしまう。アイスホテルの一部は、一年中オープンしている。ソーラーパネルが太陽からエネルギーを得て、そのエネルギーを使って氷が溶けないようにしているのだ。残りの部分は溶けてしまい、寒い季節になると近くのトルネ(Torne)川の氷や雪を使って再び建てられる。アーティストが内装を飾り、ホテルはアート展にもなる。また、一年中暖かい宿泊施設も備えている。


おそらくスウェーデンで最も国際的に有名なホテル、アイスホテル。 Photo: Hans-Olof Utsi/imagebank.sweden.se (Artist: Petros Dermatas and Ellie Souti)

原資料掲載ページ:https://sweden.se/culture/arts-design/10-amazing-places
翻訳時点の最終更新日 2022年6月14日
翻訳 熊木裕一 平川鈴弓 布施香南
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表はSweden.seに掲載されたものをそのまま転載しています。他サイトへのリンクは転載しておりません。


Photo: Melker Dahlstrand/imagebank.sweden.se

スウェーデンで起業したい? 少しでも計画的に行うことで長続きするよ

1.調査しよう!

 スウェーデンのオンライン社会では、情報は手に入れやすい!だから、ビジネスを始める前に適当な研究をしない手はない!
 「Statistics Sweden」というスウェーデンや人口統計に関する情報の宝庫のサイトがある。このサイトには人口や年齢から景況感、工業力まであらゆる情報が掲載されている。
 もちろん、あなたが目指している業界をカバーしている業界団体もチェックすべきだ。それらは特定の業界における企業の規模や事業方式に関して、また適用される規則や市場の概況に関して情報や統計を提供しているかもしれない。


ネットワーキングは仕事につながる可能性がある。 Photo: Liselotte van der Meijs/imagebank.sweden.se
2.あなたのネットワークを活かそう!

 ビジネスで成功するための秘訣の1つは、どの国にいるかに関わらず自分なりのネットワークをつくること!
 スウェーデンにいる友人や同僚、親戚の他に、あなたと似たような考えを持っている人をどうやって、またどこで見つけられるだろうか。
 新規ビジネスのアドバイスや定期的なイベントを各国中で開催しているスウェーデン新規起業センター(Nyföretagarcentrum)の支店に連絡することもできる。Business Sweden(スウェーデン経済団体連合会)も他の企業と関係を作る助けになるだろう。
 アドバイザーを見つけてネットワークを作るための他の方法として、企業登記局・税務署・経済地方成長庁という3つの関係省庁が立ち上げたVerksamt.seというウェブサイトを活用するのも良いだろう。そこにはあなたの住んでいる地域に応じたアドバイザーを見つける手助けをしてくれるページがある。
 スウェーデン人はオンラインでのつながりを好むので、より多くの人と知り合うには、LinkedInやFacebook等のソーシャルネットワークサービスを使って新しい出会いを開拓し、ネットワークを拡大させよう。

3.免許を取ろう

 スウェーデンにおいては、特定の業種で事業を起こすには免許が必要である。Verksamt.seには、免許を必要とする様々な取引や職業、ビジネスの一覧と、それらの免許を交付する団体の詳細が記載されている。


税務署への登録と課税は別である。 Photo: Liselotte van der Meijs/imagebank.sweden.se
4.あなたのビジネスを税務署に登録しよう!

 個人事業者として、あなたの新しい事業はスウェーデンの税務署(Skatteverket)が交付した個人識別番号(personnummer)によって識別される。
 個人事業者としてビジネスを始めるにあたって最初に行うべきことはF-skattに登録すること。一般的にF-skattはあなたが従業員としてではなく事業者(företagare)として働くことを意味している。そのため、あなたが契約において税金や社会保障費を管理しなければ、全てあなたの責任となる。
 税務署は「F-tax certification」というウェブページから手続きを始められるようにしている。そこには申請方法についても書かれている。実際の申請用紙はスウェーデン語のみの表記である。正しく記入することが重要なので、会計士に依頼するかガイダンスを受けるために税務署に個人相談の予約をとるべきかもしれない。
 また税務署は無料相談会をスウェーデン語と英語で行っており、そこでは起業の手続きについて順を追ってサポートしてくれる。
 スウェーデンは移住して起業する人たちに対して、それぞれ国籍によって異なるルールや規則、居住要件を設けている。北欧(デンマーク・フィンランド・ノルウェー・アイスランド)の国民は、スウェーデン移民局での登録や住居申請が必要ない。EUやEEA圏内の国民も同様にスウェーデン移民局での登録をせずに個人識別番号を申請することができる。
 スイスの国民が3カ月以上の滞在を望む場合は、居住許可が必要である。
 EU・EEA・スイス以外の国民がスウェーデンで事業を始めようとする場合には、渡航前に居住許可を申請する必要がある。詳細や必要書類は、スウェーデン移民局のウェブサイトで確認すること。
 もしあなたがスウェーデンに一時的に滞在している場合、調整番号(co-ordination number)を税務署で申請することができる。この調整番号は個人識別番号に代わるものとしてF-taxの申請に用いられる。

5.会社名を登記して保護しよう

 これは必須の手順ではないが、賢明な方法である。これにより、他の人が同じ商号で営業することが許可されないよう保証できる。会社名の登記はスウェーデン企業登記局(Bolagsverket)が有料で行っているので、ウェブサイトを参照すること。

6.事業計画を立てよう

 売りたい商品やサービスが決まり、それに対する市場があることが分かったら、いよいよあなたの夢を紙に書き起こす段階に入る。銀行員や投資家、見込み客などほかの人に話を聞いてもらうためには良い事業計画が必要不可欠である。
 事業計画は長く複雑なものである必要はない。ただ、あなたが何をどのように行おうと計画しているかを記したものであればよい。
 履歴書と同様、事業計画のフォーマットは国によってさまざまである。ある国ではアイデアがすべてであるし、他の国では健全な財務基盤がカギとなる。Verksamt.seではスウェーデンの銀行や投資家、当局が事業計画に何を求めているかについての優れたガイドを提供している。


自分の権利と義務を知ろう。 Photo: Margareta Bloom Sandebäck/imagebank.sweden.se
7.合法的にスタッフを雇おう

 少し話が進むと、他の人に仕事を提供できる幸せな立場にいることに気づくかもしれないーそうなれば、スウェーデンの雇用法の基本的な考え方について知っておくのが良い。
 スウェーデンの雇用条件は、雇用保護法(Lagen om Anställningsskydd/LAS)によって規制されている。この法律によると、雇用契約は明示的に記載されていない限り、無期限であるとされる。また、一時的な代替勤務から67歳以上の特別法まで4種類の有期雇用契約についての説明も記載されている。
 スウェーデンの雇用法は育児休暇や休日、年金など幅広い規定があり、雇用を決定する前に、法律について熟知しておくのが良いだろう。
 労働力を確保する別の方法としては、あなたのような他の個人事業主に下請けに出すという方法が挙げられる。ただし、彼らがF-taxに登録していることを確認してほしい。関連する労働法及び法令の翻訳は、スウェーデン政府のウェブサイトに掲載されている。

8.簿記を正しく理解しよう

 会計事務所を設立するのでなければ、会計士を雇おう。自分の才能を最大限に活かすことが独立のポイントであるため、数字や税金、法規制に疎いのであれば、お金を払ってでも専門家を雇うべきである。
 小さな会社を専門に支援する会社がたくさんあり、その料金はサービスにかかる時間に応じて決まる。良い、信頼できる会計士を見つけるための最良の方法は、同じ業界の他の事業者に紹介を依頼することである。
 スウェーデンの会計コンサルト協会に連絡をとれば、あなたの地域で適切な業者を見つけてくれるだろう。会計コンサルトは、スウェーデンの規制や法律に従った正しい請求書の書き方も教えてくれるだろう。
 しかし会計士を雇ったからといって、基本的な簿記を理解する責任が免除されるわけではないため、まだの方は時間をかけて基本的なことを学ぼう。

9.ベンチャー企業の資金調達

 当たり前のことだが、最初から仕事が舞い込んでくるのでなければ、ベンチャーを軌道にのせるまで、通常の生活費の支払いが出来るかを確認しておかなければならない。最初の数カ月は貯金で賄うか、フルタイムまたはパートタイムの仕事と並行してゆっくり事業を始めるのがよい。
 もちろん、銀行に事業ローンを申し込むことも可能だが、ほとんどのビジネスは最初から利益がでるわけではないため、何らかの担保を設定することが求められる。
 資金調達の選択肢としては、国営のアルミ(Almi Företagspartner)が、資金調達やアドバイスで企業を支援している。金利は銀行よりも高いことが多いが、要求される担保は通常少ない。アルミが提供するサービスについては、公式サイトを参照のこと。

10.事業のためのルーティンをつくろう

 より一般的な話として、自分自身を律することが重要である。多くの起業家は、まず販売面でできる限りの努力をするが、管理面も慎重に行う必要がある。これは世界のどこにいても企業を志す人には当てはまる。
 毎月必ず時間をとって進捗状況を確認し、どのような税金や費用が必要なのかアドバイザーに相談しよう。そうすることで、合法的なやり方を維持しながら、事業計画と進捗状況を比較し、それに基づいた調整を加えていけるようになるだろう。

原資料掲載ページ:https://sweden.se/work-business/business-in-sweden/starting-a-business-in-sweden
翻訳時点の最終更新日 2022年2月16日
翻訳 青木 瞳 高木浩志 布施香南
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表はSweden.seに掲載されたものをそのまま転載しています。他サイトへのリンクは転載しておりません。

スウェーデン人はミートボール以外のものも食べる。以下の10の珍味のうち、あなたはどれか試したことがあるだろうか

1.リンゴンベリーは何にでも合う

 ケチャップやマスタードと同じように、リンゴンベリーのジャムは、ミートボールやパンケーキ、お粥やブラッドソーセージ(blodpudding)など、さまざまな料理に使用される。しかしながら、甘いにも関わらず、パンに塗られることは滅多にない。自然享受権(allemansrätten)という、自然を自由に散策したり楽しんだりできることを認める権利のおかげで、多くのスウェーデン人は、森でリンゴンベリーを摘んだり、この小さくて酸っぱい果物からジャムのような保存食を作りながら大きくなった。


リンゴンベリーは基本的にどんな料理にも合う Photo:Magnus Carlsson/imagebank.sweden.se
2.酢漬けニシン-スモーガスボードの主役

 スモーガスボード(スウェーデンの伝統的なビュッフェ)では、ミートボール(köttbullar)の代わりに小さなソーセージ(prinskorvar)を使ったり、スモークサーモンの代わりに塩漬けサーモン(gravlax)を使ったりすることがあるが、酢漬けニシン(sill)無しには成り立たない。この魚の食べ物は全ての典型的なスウェーデンビュッフェの基本であり続けている。
 北海とバルト海はニシンが大量に生息しているので、スウェーデン人は中世からニシンを酢漬けにしており、その主な目的は魚を保存し輸送することだった。酢漬けニシンには様々な味があり、数例挙げるなら、マスタード、オニオン、ガーリックやディルなどがあり、ボイルポテト、サワークリーム、刻んだチャイブ、癖のある硬めのチーズ、時にはゆで卵やクリスプレッドと一緒に食べられる。


発酵ニシンのラップ包みは、次第にクセになる味だ Photo:Magnus Skoglöf/imagebank.sweden.se

スウェーデンスタイルのニシンには、様々な形や味がある。 Photo:Matilda Lindeblad/Johnér/imagebank.sweden.se
3.クリスプブレッド-あなたのお気に入りのトッピングはどれ?

 パンとバターに加えて、クリスプブレッド(knäckebröd)がメインの料理と共によく提供される。これこそスウェーデン人が求めているものだ。かつては貧しい人の食べ物とされていたが、スウェーデンのクリスプブレッドには500年以上の歴史があり、適切に保存すれば最低でも一年は保存が効く、最も用途の広い食品の一つだ。
 スウェーデン社会庁(Socialstyrelsen)は、1970年代のキャンペーンで、スウェーデン人がクリスプブレッドを含むパンを、一日に6から8スライス食べることを推奨していた。クリスプブレッドには様々な形、厚み、味があり、店の棚を埋めつくしている。朝食にはスライスしたゆで卵やチューブのキャビアをトッピングし、昼食にはハムやチーズ、きゅうりのスライスなどをのせ、夕食にはシンプルにバターを塗って食べられている。

クリスプブレッドは軽食に最適 Photo:Jakob Fridholm/imagebank.sweden.se
4.エビサンドイッチ(Räksmörgås)その他のオープンサンドイッチ

 サンドイッチを注文した時に、一枚のパンで出てきても驚かないでほしい。それが典型的なスウェーデンのオープンサンドイッチだ。スウェーデンのオープンサンドの概念は厚い板状のパンをお皿として利用していた1400年代にさかのぼる。
 スウェーデンのエビサンドイッチ(räksmörgås or räkmacka)は、今でも王様の献立の1つである。ゆで卵とレタス、トマト、キュウリを高く積み上げ、生クリームにディルや魚卵をあえたクリームソース(romsås)をかけて食べる。エビサンドイッチはスウェーデンの文化に欠かせないものであり、何もしていないのに有利になるという意味で’glida in på en räkmacka’(文字通りに訳せば「エビサンドイッチに滑り込む」だが、ざっくり言うと「ただ乗りする」と同義)という表現があるほどだ。

王様にも提供されるエビサンドイッチ Photo: Marie Ullnert/imagebank.sweden.se
5.エンドウ豆のスープとパンケーキ

 多くのスウェーデン人は毎週木曜日にエンドウ豆のスープとパンケーキ(ärtsoppa och pannkakor)を食べて育つ。この伝統は、第二次世界大戦以降にスウェーデンの軍隊が支えてきた。その起源については、カトリック教徒が金曜日に肉を食べなかったため、木曜日に豆のスープでお腹を満たしたとか、豆のスープは木曜日を半日勤めにしている給仕が簡単に作ることができたとか、さまざまな説があるが、この伝統は確実に根付いている。伝統的なランチレストランでは、木曜日に豆のスープとリンゴンベリージャムその他のジャム(sylt)が添えられたパンケーキを提供することが多い。

エンドウ豆にチャンスを Photo:Susanne Walström/imagebank.sweden.se
6.プリンセストータ(Prinsesstårta)-王家の楽しみ

 スウェーデン中のパン屋さんのウインドウを彩っているのが、鮮やかなピンクのシュガーローズをトッピングした人気のグリーンプリンセスケーキ(prinsesstårta)だ。ジャムとバニラカスタードを塗った黄色のスポンジケーキを何層にも重ね、ホイップクリームをたっぷり乗せて、甘いグリーンのマジパンで丁寧に封をしたケーキである。
 スウェーデンでプリンセスケーキが誕生したのは比較的最近のことで、1920年代、イェニー・オーケルストレム(Jenny Åkerström)が考案した。国王グスタフ5世の弟カール・ベルナドッテ王子の娘たち、マルガレータ、メルタ、アストリッドの3王女がこよなく愛したことから、その名がついたという。
 9月の第3週がプリンセスケーキ週間とされているが、今は特別なお祭りの時に食べられたり、人生の節目に使われたりしている人気のケーキである。現在では、定番の緑をはじめ、イースターの黄色、クリスマスの赤、ハロウィンのオレンジ、ウエディングの白など、さまざまな色が用意されている。

マジパンとクリームでできたプリンセスケーキ Photo:Magnus Carlsson/imagebank.sweden.se
7.楽しみな甘いものカレンダー

 スウェーデンでは、甘いものを食べる口実がいつでも見つかる。というのも、特定の砂糖菓子を祝う日がカレンダーに定められている。10月4日は「シナモンパンの日(Kanelbullens dag)」である。
 クリームとアーモンドペーストを挟んだパン「セムラ」は、四旬節の初日であり、灰の水曜日(askonsdagen)の前日にあたるざんげの火曜日(Shrove Tuesday やFat Tuesday)に食べられる。
 3月25日はワッフル(våfflor)の日で、11月6日にはグスタフ2世アドルフ王のシルエットをかたどったチョコレートやマジパンを飾ったスポンジケーキ(Gustav Adolfs-bakelse)が食べられているが、これは1632年のこの日にリュツェンの戦いで命を落としたスウェーデン君主を悼んでのものとされている。

毎日がシナモンパンの日 Photo: Simon Paulin/imagebank.sweden.se
8.ザリガニに夢中

 8月になると、スウェーデン中の庭やバルコニーで一口サイズの淡水または海水ザリガニ(かつてラングスティーヌ、あるいは面白いことにノルウェーロブスターと呼ばれていた)を食べながら、暖かい夏の夜を過ごすザリガニパーティー(kräftskivor)があちこちで行われる。
 1500年代にはスウェーデンの上流市民と貴族だけが食べていたザリガニは、大量輸入により価格が数世紀かけて大幅に下がり、今や国民全員が楽しめる珍味となっている。

ザリガニパーティーでは、少々おバカな格好をしていても大丈夫 Photo: Anna Hållams/imagebank.sweden.se
9.シュールストレミングは臭い

 どんな文化にも、地元の人や観光客を唸らせる名物料理が少なくともひとつはある。8月下旬から9月上旬にかけて、スウェーデン、特に北部では悪臭を放つ伝統が残っている。発酵させた酸っぱいバルト海のニシン(surströmming)の缶詰を開けて楽しむ人が、少なくとも何人かいる。この「珍味」は16世紀から取引されてきた。缶詰の開封は腐った卵や下水に例えられるほど強烈で不快な臭いがするため、できれば屋外で行われるのが望ましい。毎年8月の第3木曜日がSuströmmingの初開封の日とされている。

シュールストレミングは、本当に勇気のある人だけが食べることができる Photo:Tina Stafrén/imagebank.sweden.se
10.土曜日のお菓子(Lördagsgodis)

 スウェーデンの平均的な家庭は、大人2人と子供2人で、週に1.2キロのお菓子を食べるが、そのほとんどが「お菓子の日」である土曜日に消費される。歯を守るため、虫歯を防ぐためと言われているこの週1回のお菓子の習慣は、歴史的には、やや疑わしい医学的な施策と関係がある。
 1940年代から1950年代にかけて、ルンドにあるヴィペホルム(Vipeholm)精神病院で、お菓子に関して非常に賛否の分かれる実験が行われた。研究のための人体実験の一環として患者に大量のお菓子を食べさせ、意図的に虫歯を作らせたのである。1957年にお菓子と虫歯に直接的な関係があることが分かったことから、医療委員会はスウェーデン人がお菓子を食べるのを週に一度だけにするように勧告したのである。そして、この不文律が今でも多くの家庭で守られているというわけだ。

お菓子に目がない Photo: Lieselotte van der Meijs/imagebank.sweden.se

原資料掲載ページ:https://sweden.se/culture/food/10-things-to-know-about-swedish-food
翻訳時点の最終更新日 2021年11月18日
翻訳 青木 瞳 小池桃佳 中村由芽 
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表はSweden.seに掲載されたものをそのまま転載しています。他サイトへのリンクは転載しておりません。


さあパーティーを始めよう! Photo: Anna Hållams/imagebank.sweden.se

ザリガニをお供に、ビール、シュナップス、友達、そして愉快な歌を用意しよう

 1900年代初頭、スウェーデンは川でのザリガニ漁に規制を設けた。これは乱獲の恐れがあるためで、8月から数カ月間が漁期とされた。こうしてザリガニは高級な珍味として人気を集めるようになった。また、川や湖に生息するザリガニは、カビの寄生によって何度も壊滅的な打撃を受けた。
 現在では、輸入されたザリガニが一年中販売されているが、この季節の風物詩を捨てようとするスウェーデン人はほとんどいない。8月初旬になると、メディアはその年のザリガニを詳しく調べ、有名人から情報をもらい、スーパーで売られている様々なザリガニのブランドをランキングで紹介し、この宴のための舞台を用意する。
 ある年は中国産が、またある年はアメリカ産が最高と目されたが、言うまでもなくスウェーデン産ザリガニがいつも優勝する。しかし、スウェーデン産は高価な点が問題だ。スウェーデンではザリガニは、原産地がどこであれスウェーデン人が好むように塩水で調理され、たっぷりとクラウンディルが添えられる。
 もちろん、ごく少数ながら自分でザリガニを見つけて捕ってくる人もいる。この小さな生き物は暗闇を好むので、底を這っているのを見つけることができる。餌は腐った魚や生魚で、針金仕掛けの罠で捕まえることが出来る。ただし、捕まえたザリガニは食品衛生上、生きたまま鍋に入れなければならない。

伝統的なザリガニパーティー

 かつては富裕層のものであったザリガニパーティーは、現在では誰もが参加できる行事となった。このザリガニパーティーは長い間続く伝統的なものとなっている。
 ザリガニは屋外で食べ、テーブルには色とりどりのランタンが吊るされる。最もポピュラーなのは、微笑むような満月を描いたランタンである。テーブルクロスも色とりどりの皿も紙製でなければならない。首にはビブスをつけ、頭には紙でできたコミカルな帽子を被る。
 そして、宴会が始まる。ザリガニは冷たいまま、指で食べる。ザリガニの汁を吸うときは、音をたててもかまわない。そして、パンとヴェステルボッテンなどの強いチーズを付け合わせに食べる。飲み物はビールとシュナップスが中心だ。

スウェーデンのザリガニ祭り、その起源

 スウェーデンでは1500年代からザリガニが食べられ始めた。貝類を食べることへの疑いが人々の間に広まっていたこともあり、ザリガニのような珍味を楽しんだのは貴族だけであったが、その肉はソーセージやラグー、パテ、プディングに用いられていた。

ザリガニ祭りの起源をより詳しく

 1800年代半ばに、ザリガニは今日のように食べられるようになった。8月のザリガニの祝宴や夕食は中流階級に広まりを見せた。1900年代になるとザリガニは国家的な珍味となり、社会のあらゆる人々が親しむようになった。トルコをはじめとした他国からの輸入も進み、ザリガニの価格は下落していった。人々が集まり、食卓を囲み、飲み、賑やかな時間を過ごすザリガニ祭りは、夏の終わりを告げるスウェーデンの典型的なお祭りだ。


伝統的なザリガニパーティー Photo:Patrik Svedberg/imagebank.sweden.se

まずはザリガニを捕まえよう! Photo: Anna Hållams/imagebank.sweden.se

さあ食べよう! Photo:Emma Ivarsson/imagebank.sweden.se

面倒くさいし少々臭いため、ザリガニを食べるときは外が一番だ。 Photo:Patrik Svedbergimagebank.sweden.se

原資料掲載ページ:https://sweden.se/culture/celebrations/the-crayfish-party
翻訳時点の最終更新日 2022年6月13日
翻訳 小池桃佳 高原涼輔 中村太星 平川鈴弓
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表はSweden.seに掲載されたものをそのまま転載しています。他サイトへのリンクは転載しておりません。