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インターネットへのアクセスは民主制の促進に役立っている。
Photo: Melker Dahlstrand/imagebank.sweden.se

スウェーデンは自由で開放的な社会である。人々には言論の自由と出版・報道の自由、そして権力者たちを精査する権利、デモに参加する権利がある。

開放性の保護

 開放性と透明性はスウェーデンの民主主義において重要な点である。民主主義社会は統治法、出版自由法、表現自由法、王位継承法という4つの基本法によって保護されている。これらの法律がスウェーデンの憲法を構成しており、他のいかなる法律にも先行する。

 スウェーデンの憲法は全ての国民に自由に情報を求める権利、デモを組織する権利、政党を結成する権利、そして宗教の教えを実践する権利があると定めている。

出版の自由

 出版の自由は、ほとんどの民主主義の礎となる表現と言論の自由に基づいている。1766年、スウェーデンは世界で初めて出版の自由を憲法に取り込んだ国となった。出版自由法では、権力者は必ず説明責任を果たさなければならないこと、そして全ての情報は自由に利用できなくてはならないと定めている。出版者や編集者、報道機関に情報を提供した者の身元は保護され、その情報源を明らかにするようにジャーナリストが強制されることは、決してあってはならない。

 しかし、意見を表明する権利は絶対的な権利ではない。濫用されると、言論の自由は攻撃的になったり、差別や暴力を煽動したり、また個人や社会に否定的な結果をもたらしてしまいかねない。出版や表現の自由に関する犯罪の容疑については、政治的な圧力とは切り離された司法庁(Office of the Chancellor of Justice)が取り扱う。

 2020年の国境なき記者団による世界報道自由度ランキングにおいて、スウェーデンは第4位であった。この順位は、各国のジャーナリストや報道機関の自由度やその保護のための官庁による努力の度合いに基づいている。

報道に対する補助金
 スウェーデンでは、新聞が他のメディアに対抗できるように税金による補助金で支援している。これによって多様性を促進し、多面的な情報入手を人々に確保している。

テレビとラジオの独立性
 公共放送のSVT(スウェーデンテレビ)とSveriges Radio(スウェーデンラジオ)は広告なしで様々な番組を提供している。多くの人はこれに加えて民間のチャンネルやストリーミングサービスにアクセスしている。

学術出版物への自由なアクセス
 オープンアクセスプログラムは、スウェーデンの高等教育機関における電子出版を支援し、研究者や教員、学生による成果へのアクセスと可視化を最大限に促進している。


2019年9月27日にストックホルムで行われた気候変動対策を訴えるデモ。
Photo: Jann Lipka/imagebank.sweden.se

情報の自由

 情報の自由の原理は一般大衆やマスメディアが公文書にアクセスすること、つまり国、地域、地方の全てのレベルで行政を精査する機会を有するということを意味する。
 透明性は権力が濫用されるリスクを減らすものである。

 公務員その他の政府で働く人々も同様に、メディアや第三者に情報を自由に提供することができる。ただし、たとえば国家の安全保障の内容に関わるような特定の文書は機密として守られる。

平等と人権

 スウェーデンでは人権は主に、統治法、出版自由法、表現自由法によって守られている。公権力は、すべての人々の平等、個人の自由や尊厳を尊重して行使されなければならない。

 法律やその他の規制は、いかなる市民に対しても、性別、トランスジェンダーのアイデンティティあるいは表現、民族起源、宗教、障害、性的指向あるいは年齢といったマイノリティに属することを理由として、不利益を与えることがあってはならない。


スウェーデンは、法令や規則によって全ての人が平等な扱いを受けられるように努力している。
Photo: Magnus Liam Karlsson/imagebank.sweden.se

人権に対する世界的な闘争

 欧州人権条約は1995年からスウェーデンの法律に組み入れられている。スウェーデンはまた、国際連合、国際労働機関、ヨーロッパ評議会の内で、いくつかの人権協定に署名し批准してきた。スウェーデンの外交政策のすべての領域、つまり安全、発展、移住、環境、貿易政策は、人権、民主主義、そして法律の規則に基づかなくてはならない。


多くのスウェーデン人にとって、ソーシャルメディアは日常生活の一部である。
Photo: Emelie Asplund/imagebank.sweden.se

インターネット上の開放性

 スウェーデン人の96%がインターネットの利用者である。1,000万人の人口のうち、98%が家でインターネットへアクセスできる(2020年)。スウェーデン政府は2025年までに、「完全に接続されたスウェーデン」を目指している。

スウェーデンの決済アプリSwishやBankIDという身元証明アプリなど、モバイルによるインターネット利用が、この発展を促進している。

スウェーデンのソーシャルメディア

 2020年時点で、スウェーデン人の10人に9人がソーシャルメディアを利用している。これはコロナ禍が促進している面もある。Facebookは81%の人が利用し、26~35歳にもっとも人気がある。Instagramは71%の人が利用し、16~25歳では90%に達している。またこの年代では91%がSnapchatを利用しているが、全年代では42%にとどまっている。Twitterの利用者はこの中では最も少なく24%に過ぎない。ただし最も若い世代では44%が利用している。

オープンエイド

 スウェーデンには、透明性という考え方に基づいて、政府のオープンデータをもとに作成された「openaid.se」というウェブサイトがある。「openaid.se」は、個人、NGOs、援助を受ける人や援助当局に、政府の公式データにアクセスし学ぶ機会を提供する。その目的は、人道的努力における透明性や開放性をさらに高めることと、他の期間に一般の人々に向けて透明性や開放性を高めさせることである。

オンブズマン
 オンブズマンという言葉はスウェーデン語から来ており、代表者として活動する人を意味している。

議会オンブズマンは、自分や他人が公的機関や公務員から誤った扱いを受けたという不服申し立てを扱う。スウェーデン国民か否かに関わらず、誰でも不服を申し立てることができる。
jo.se

法務官(The Chancellor of Justice)は、政府のために省庁や裁判所を監督する。
jk.se

平等オンブズマンは、差別と闘い、全ての人が平等な権利と機会を得るように努める。
do.se

メディアオンブズマンは、報道倫理を扱う。調査の結果さらなる処置が必要な場合には、スウェーデン報道理事会に送致する。
medieombudsmannen.se

消費者オンブズマンは、企業がマーケティングや製品安全に関する法令を遵守しているかを監視しており、誤解を招く広告や不適切な契約条件、誤った価格表示、危険な製品などを取り締まっている。
konsumentverket.se


子どもオンブズマンは子どもの権利と利益を守り、国連の子どもの権利条約が守られているかを監視している。
barnombudsmannen.se
Photo: Ann-Sofi Rosenkvist/imagebank.sweden.se

掲載ページ:https://sweden.se/society/openness-shapes-swedish-society/
翻訳時点の最終更新日 2021年2月12日
翻訳 押谷彩瑛、庄司弥奈、本澤由紀
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表は著作権上・技術上転載可能なもののみ転載し、他サイトへのリンクは転載しておりません。


Photo: Helena Wahlman/imagebank.sweden.se

 スウェーデンのヘルスケアは主に税金で賄われ、誰もがヘルスケアのサービスを平等に利用できるシステムである。資金、サービスの質、効率性が課題となっている。

地方分権されたヘルスケア

 スウェーデンは290の市と21の県に分けられる。スウェーデンのヘルスケアは地方分権化されており、県議会が、そして場合によっては市議会や市役所が、責任を有している。これは保健医療サービス法によって規定されている。中央政府の役割は基準やガイドラインを設けたり、健康や医療の為の政治的目標を掲げたりすることである。

 県議会は国政選挙と同日に行われる4年に1回の地方選挙によって選ばれた代表たちによる政治機関である。

市や県の役割

 スウェーデンの政策は全ての県議会がその県民に質の高い保健と医療を提供し、全ての県民の健康を促進するために働くこととしている。2019年現在、県は23歳までの県民に対して歯科ケアの費用負担も行っている。24歳からは国からの補助を受ける形になる。

 スウェーデンの市は自宅や老人ホームで過ごす高齢者のケアを任されている。市の担う役割には、身体や精神に障害を持つ人々のケア、退院した人や学校保健に対しての支援・サービス提供も含まれている。

スウェーデンのCovid-19に関する保健アドバイス
・たとえ症状が軽くても、気分がすぐれなければ自宅にとどまる。
・高齢者との面会を避ける。
・カゼをひいている人と同居している場合は、自宅にとどまる必要はない。
・石鹸と消毒液で手を清潔にする。
・鼻をすすったり咳をする時にはヒジをつける。
・顔をさわるのを避ける。

スウェーデンでは、病院に行く必要がある人に検査を提供するのが基本である。
1177.seというウェブサイトで、一般的およびCovid-19に特定した保健アドバイスを行っている。
公共保険庁(Public Health Agency of Sweden/Folkhälsomyndigheten)がさらなる情報を提供している。


スウェーデンの高齢者は、自宅でケアを受ける権利を有している。
Photo: Kristin Lidell/imagebank.sweden.se

高齢化する人口

 他の先進国同様、スウェーデンの人々はますます長生きになっている。寿命の平均は現在、女性が84歳で男性は81歳。これは心臓発作や脳卒中の死亡率の低下が原因の1つといえる。約5人に1人は65歳かそれ以上。これはスウェーデンがヨーロッパの中でも相対的に高齢社会であることを示している。一方、スウェーデンに生まれる子供の数がほぼ毎年増えてきたのは1990年代後半以降のことである。高齢者の人口はスウェーデンの医療制度に圧力をかけている。


Photo: Melker Dahlstrand/imagebank.sweden.se

診察料の患者負担
-入院:1日最大100クローナ
-初期診療:0~300クローナ(県によって異なる)
-専門診療・救急診療:最大400クローナ

最大負担額
 1人の患者は12カ月間で1,150クローナ以上負担することはなく、それ以上かかった分は無料となる。
薬代は12カ月間で2,350クローナ以上負担することはない。

患者の安全と治療の質

 医療機関へのアクセス、サービスの質、効率性、資金といったスウェーデンの医療制度が直面する課題の多くは他の国々にも見られるものであるが、最も優先されるのは患者の安全である。2011年にスウェーデンは患者の安全についての新たな法律を制定した。この法律は患者やサービスの受け手、そしてその家族のメンバーが医療制度の質に影響を与えることができる新しい機会を与えるものであった。

 国民患者調査(National Patient Survey)は、患者がどのように医療制度の質を理解しているかについて、毎年調査している。その質問は、治療、治療方針への患者の参加、提供されるケアや情報への信頼度に関するものである。その結果は、県や市によってまとめられ、ケアの向上のために用いられている。

イーヘルス(eHealth)のビジョン
「2025年に、スウェーデンはデジタル化による機会とイーヘルスを活用において世界一となる。それによって国民が良質かつ平等な医療と福祉をより手軽に受けられるようにし、さらにより一層の自立と社会生活への参加のための方策を発展・強化する。」
出所:Vision for eHealth 2025 – common starting points for digitisation of social services and health care

90日以内の専門治療

 白内障や人工股関節置換手術などの前もって予定されている治療への待ち時間は長年にわたって不満の種であった。その結果、スウェーデンは2005年に治療保証を導入した。

 その内容は、全ての患者が助けを求めた当日に、地元の保健センターと連絡が取れるようにすること、そして3日以内に医療的な所見をもらえるようにするというものである。最初の診察を終え、どのような治療が必要か決まったら、すべての患者は90日以内に専門医に診てもらい、そのさらに90日以内に手術や治療を受けられるようにしなければならない。この待ち時間を超えた場合には、交通費も含めて追加負担なく、別の病院で治療を受けられる。

 2020年1月以降の統計によると、患者さんの88%は90日以内に専門医に診てもらい、82%はそのさらに90日以内に治療を受けるか、または手術を受けている。ただし、これらの統計はコロナウイルスのパンデミックによって変わるだろう。他国のようにスウェーデンもコロナウイルスとの戦いを目的とする治療を優先していかなければならないからである。


助産師が死亡率を下げている
 スウェーデンは長らくプロの助産師を重視してきた。これによって出産時の母親の死亡率が急激に減少したことが研究で示されている。
 出産時の死亡率は18世紀の時点で100件中でおよそ1人であったが、20世紀の初めには100,000件の出生で命を落とす母親の数は250人にまで減った。現在、スウェーデンは出産時の死亡率が世界で最も低い国の1つであり、死産は1,000件中3件未満、母親の死亡率は100,000件中4件未満となっている。
Photo: Simon Paulin/imagebank.sweden.se

治療への公共支出

 スウェーデンの国内総生産(GDP)に占める健康へのコストと医療費は他のヨーロッパ諸国に劣らずかなり安定している。2018年時点で、健康へのコストと医療費はGDPの中で11%である。スウェーデンの健康へのコストと医療費の大部分は県と市の税金でまかなわれている。これにさらに中央政府からの税金が加わり、患者自身の費用負担は非常に小さい。

 政府が保健、医療、社会的なケアに使う金額は2018年時点で78.4億クローネと、政府による最大の支出の1つとなっている。

民間の医療提供者

 県が民間の医療提供者からサービスを購入するという仕組みは、現在ますます普及している。2018年には13.5パーセントの医療について、県が資金を出し、民間の業者がケアを提供するという仕組みが取られている。民間の業者であっても、市が提供するケアと同様の規制や料金によって患者が保護されるということが協定によって保証されている。

 また現在は、患者と医師をつなぐアプリのように、多くのデジタルによる医療解決策も取られている。より詳しい情報は「10 innovations you didn’t know were Swedish」を参照のこと。

保健行政に関する国の組織
保健福祉理事会(The National Board of Health and Welfare/Socialstyrelsen)は中央政府の専門家・監督当局である。

スウェーデン地方当局・地域連盟(The Swedish Association of Local Authorities and Regions/SALAR)は、スウェーデンの290の自治体と21の地域協議会において保健行政や専門性、雇用に関わる問題を扱う。

医療責任評議会(The Medical Responsibility Board/Hälso- och sjukvårdens ansvarsnämnd)は、専門家が基準に違反したかどうかを調査する政府機関である。

保健技術評価・社会サービス評価庁(The Swedish Agency for Health Technology Assessment and Assessment of Social Services、SBU – Statens beredning för medicinsk och social utvärdering)は、患者にとって最善の治療法や資源の最も効果的な利用法を追求する。

歯科・薬科便益庁(The Dental and Pharmaceutical Benefits Agency、Tandvårds- och läkemedelsförmånsverket)は、薬剤・医療器具・歯科施術に対する国の補助の可否を定める役割を担っている。

医薬製品庁(The Medical Products Agency、Läkemedelsverket)は、医薬品の開発、製造、販売を規制・監視する責任を負う国の当局である。

掲載ページ:https://sweden.se/society/health-care-in-sweden/
翻訳時点の最終更新日 2020年5月5日
翻訳 野池真帆、堀口真緒
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表は著作権上・技術上転載可能なもののみ転載し、他サイトへのリンクは転載しておりません。


Photo: Tina Stafrén/imagebank.sweden.se

 衣料は長持ちし、その後リサイクルやリユースできるようにデザインすることで、ファッションは循環型の生産に向かう必要がある。スウェーデンのファッション産業はそのための研究に多くを投資し、より持続可能な方法の追求に努力している。

先駆的な企業

 スウェーデンのファッションは、一方通行型の産業を循環型に変えることを目指している。資材は使用後処分するのではなく、リサイクルや他の方法で使用する。そうすれば廃棄物の量を最低限に維持することができる。

 “ファッション”という用語を構成する要素を根本的に見直して再定義し、それに基づいた新しいビジネスモデルが現在模索されている。Klädoteketはそのようなビジネスモデルの1つである。これは「ファッションライブラリー」として、デザイナーブランドの衣料を借りることができるというものである。

ファッションライブラリー スウェーデンの物語

長期的な視野

 伝統的に、ファッションは変化や絶え間なく新しいデザインへの欲求によって定義づけられてきた。しかし現在は、企業においても、より長持ちするような衣料の開発を積極的に進めている。たとえそれが短期的に考えて、自社製品でお金を稼げないことを意味したとしても、である。また多くのブランドが、進歩のスピードを上げるべく、解決策の発見と知識の共有を目指して互いのコラボレーションを進め始めている。

 Mistra Future Fashionという野心的な研究プログラムにおいては、持続可能なファッションを目指して体系的な変化を実現する努力をしている。する。そこではデザイン、ユーザー、サプライチェーン、リサイクルという4つの分野に焦点が当てられている。また科学的な成果がファッション産業に行き渡り、H&M、Lindex、Eton、Nudie Jeansといったいくつかの重要な業界パートナーにおいて機能する仕組みを確立している。

長持ちする衣料

企業に持続可能性を統合しているという意味で、Flippa Kはスウェーデンのブランドの 中で第一線を走っている。同社は2014年以来、「持続可能性は成長への道に通ずる」というモットーを掲げ、衣料の寿命にまず焦点を当てて事業を展開してきた。2015年には、前の季節の衣料を貸し出すというFlippa Kリースという新たなコンセプトを開拓した。同社はこれによって新しいビジネスモデルと、より持続可能な消費の方法を模索することができるようになった。

 Houdini Sportswear は、衣料の寿命を延ばし、修繕を提供し、レンタルと中古販売を実施することで、製品の半数を循環型にしようと努力している。同社はまた自社の製品んを堆肥化する実験を行っている。


ヌードジーンズの修繕店
Photo: Tina Stafrén/imagebank.sweden.se

古着を修繕する

 ヨーテボリに拠点を置くNudie Jeansは厳格な行動規範を設けて、委託するサプライヤーを厳選し、また継続的な報告、行動計画、認証の提出を求めている。

 また、彼らは古くなったジーンズを修理してくれるので、顧客は新しいものを買う必要がない。これはファッションが常に更新され、流行に乗っているべきだという考えに挑戦するものである。

ファッション・カウンシル
 ファッション・カウンシルは、1979年よりスウェーデンのファッション産業の発展の強化・促進・支援し、ファッション産業をあらゆる分野で持続可能なものとし、国際的な地位を確保するよう努めている。
swedishfashioncouncil.se

著者 Philip Warkander & Sweden.se
掲載ページ:https://sweden.se/culture-traditions/making-fashion-sustainable/
翻訳時点の最終更新日 2020年8月20日
翻訳 大久保咲季、横渡礼奈
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表は著作権上・技術上転載可能なもののみ転載し、他サイトへのリンクは転載しておりません。


Photo: Lena Granefelt/Agent Molly & Co/imagebank.sweden.se

 スウェーデンの学校システムは税金で賄われ、教育法のもとで運営されている。同法は、全ての子どもが6歳になった年から10年間、学校に通うことを義務付けている。

プリスクール
 スウェーデンでは、自治体が1〜5歳の子どもたち向けのフォースクーラ(プリスクール、就学前学校)を運営している。自治体による補助金の額は子どもの年齢や両親の仕事、学歴、失業者かどうかや育児休暇の状況によって決められる。

 スウェーデンのプレスクールは子どもたち個々のニーズや興味を確認できることを狙いとしたカリキュラムを用い、子ども達の成長に重点を置いている。子どもたちに男女関係なく同じ機会を与えようと努力する、ジェンダーを意識した教育がますます普及している。

義務教育

 スウェーデンの義務教育は4つのステージで構成されている。フォースクーラクラス(プレスクールクラス、0年生)、ローグスターディエット(1〜3年生)、メランスターディエット(4〜6年生)、ヘーグスターディエット(7〜9年生)。6〜13歳の子どもたちは学校の前後で学童保育を利用することができる。
 また、義務教育の中にはサーミ民族のためのサーミスクーラも含まれる。

高校

 ジムナーシウム(高校)は義務教育ではない。国が定めた18種類の3年プログラムがあり、そのうち6つは大学進学に向けての高等教育で、残りは職業教育が行われるプログラムである。

 入学条件はプログラムによって異なるが、いずれのプログラムでも義務教育最終学年で英語、スウェーデン語、数学が修了と認める成績を修めていることが求められる。

 2017年、スウェーデンの9年生のうち18%がその資格を持っていなかったが、そういった生徒たちには5つの導入プログラムが用意されており、その導入プログラムを終えた後に、高校のプログラムに入学することができる。

 さらに知的障がい者やアスリートのためのプログラムも設けられている。
 2017年には約90%の学生が高校の卒業資格(学位)を取得することができた。

5つの政府機関

スウェーデン学校調査庁:教育法に基づいて、全国の学校での教育の質を調査・監督する。
www.skolinspektionen.se

教育庁:教育の情報提供、教育に対する理解促進、資金や助成金の管理を行う。
www.skolverket.se

特別教育学校庁:障がいのある若者・成人に対しても、他の全ての人々の同じ発達・教育の機会を与える。
www.spsm.se

高等就職教育庁:労働市場での労働教育の需要を分析しどのプログラムを職業教育に含めるべきかを決め、公的資金を学校尾に割り当てる。さらにこれらの質や成果の評価・調査も行う。
www.myh.se/In-English

サーミ教育委員会:サーミスクールやその関連の活動のための行政機関であり、サーミスクール条例に基づいて運営されている。
www.sameskolstyrelsen.se


近年、スウェーデンでは、生徒の成績の向上を目指していくつかの改革が行われてきた。
Photo: Ann-Sofi Rosenkvist/imagebank.sweden.se

世界を手本に

 国際比較におけるスウェーデンの生徒の学力低下にともなって、スウェーデンの教育の質についての熱心な議論がこの十年間続けられてきた。そして長期的な利益の為にパフォーマンスを改善し、教員の地位を上げようという方向にようやく動き始めたところである。

 経済協力開発機構(OECD)による学習到達度調査(PISA)や、国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)などの国際的な研究では、近年のスウェーデンの子どもたちの能力の低下が指摘されてきた。

 ただし2019年のPISAの評価ではスウェーデンの15歳のスコアが、数学、読解、科学の分野でOECDの平均を上回り、教育の質について前向きな傾向を示し始めている。

近年の改革

 PISA研究の重要性は、スウェーデン内外の教育者や政治家から疑問視されている。標準化されたテストを批判する人々は、それが数学と理科にフォーカスしすぎていて、自己成長や、道徳、創造力などを推定する教育の分野を除外していると論じている。

 PISA存続の是非の議論はともかく、スウェーデン政府は教育システムを改善する方法を探求している。とりわけ、教師の給料が高い隣国フィンランドや韓国、そして少人数クラスが通例となっているオランダに注目している。

 過去数年に実施されたいくつかの改革では、生徒の成績の向上と、教職員の地位の上昇を目指してきた。

新しい教育法

 2011年からのスウェーデン教育法には、義務教育とそ子から先の教育、プリスクール、プリスクールイヤー、学童保育、成人教育に関する、基本理念と規定を含んでいる。これは、より良い監督、選択の自由、生徒の安全・安心を促進している。

新しいカリキュラム

 2011年7月1日から義務教育の生徒、サーミスクール、特別学校、高校のための新たな統合カリキュラムが施行された。このカリキュラムは新たに全体的な目標や、シラバスのガイドラインを定めている。プリスクールのカリキュラムには、生徒・児童の言語とコミュニケーション能力の発達や、科学や技術への明確な目標が含まれている。必須の全国共通テストは義務教育の3、6、9年生を対象として、生徒の進度を評価するために行われる。また、これらは高校への進学等における新たな資格要件となっている。

新しい評価システム

 スウェーデンの古い評価システムである、「優」から「落第」までの4段階の評価は、2011年に「A」から「F」までの6段階の新しい成績評価に取って代わられた。AからEであれば進級、Fは落第である。これらの評価は6年生から始められる。この新しい評価システムはヨーロッパの高等教育の標準的な評価システムであるECTSに非常に近いものである。

教師の資格

 2013年12月1日から、期限の定めのない雇用契約を結んでいる学校とプリスクールの教員は、教員免許が必須とされるようになった。スウェーデンの教育政策の節目をなすこの決断は、教育という職業の地位を引き上げ、その発展を支え、その結果として教育の質を向上させることを目標としている。

チャータースクール

 公的資金で成り立つ私立の学校であるチャータースクールの数は、スウェーデンで年々増えている。1990年台の法律改正に伴って、子どもやその親は授業料なしの学校の中で公立か私立かを選べるようになった。

 私立学校はスウェーデンで義務教育が開始されて以来存在していたが、公的資金による援助が1992年の法令によって認められるまでは、公立学校と肩を並べるほど普及していなかった。

 このように公的資金によって運営しながらも公立には区分されない学校を、授業料がかかる一握りの私立学校と区別するため、チャータースクール(スウェーデン語でフリースコーラ)と呼んでいる。

同じルールが適用

 スウェーデンではチャータースクールは、普通の公立学校と同様に、学校調査庁による承認を受け、また国が定めたカリキュラムとシラバスに従わなければならない。

 2017年におけるチャータースクールの割合は、義務教育では17%、高校では33%であった。生徒数ではそれぞれ15%、27%を占めた。

 スウェーデンには、学校を営利目的で経営することについて懐疑的な見方がある。すなわち、教育の質よりも利益を優先するのではないかという懸念がある。他方、私立学校の普及を主張する人々は、私立学校の方が、統計的な調査において良い結果が見られると述べている。例えば、子どもを私立学校に通わせている親たちの方が、公立に通う子どもの親たちよりも満足度が高くなっている。


Photo: Emelie Asplund/imagebank.sweden.se

子どもの権利

 スウェーデンの教育法と反差別法は、差別や屈辱的な扱いから子どもや生徒を守ることを目指している。基本的に、プリスクールや、学校、成人教育プログラムの校長は、差別は屈辱的な扱いの禁止を定め、平等な扱いを促進する責任がある。
 全ての生徒が、学校医や看護士、精神科医や福祉士のケアを受けることができ、またそれらは全て税金によって賄われている。
 また、2020年1月1日より、児童の権利に関する国連協定がスウェーデンの法律となる予定である(訳注:翻訳時点で施行されている)。

掲載ページ:https://sweden.se/society/education-in-sweden/
翻訳時点の最終更新日 2020年11月25日
翻訳 須賀萌花、田中真菜
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表は著作権上・技術上転載可能なもののみ転載し、他サイトへのリンクは転載しておりません。


Photo: Maskot/Folio/imagebank.sweden.se

スウェーデンは世界で最もゲイフレンドリーな10か国のうちのひとつであり、人々はそのさらなる向上のために戦い続けている。

差別の余地なし

 私たちは法律や規制が日常生活に大きな影響を与えることを知っている。過去数十数年にわたり、スウェーデンはLGBTQコミュニティが他の人々と同じ権利や機会を享受できるようにするために重要な措置を講じてきた。

 最近では、ジェンダーに中立な結婚の法律(2009年)、ゲイやレズビアンのカップルの養子縁組の権利(2003年)、レズビアンの受精権(2005年)、そしてスウェーデンの憲法に追加された性的指向に基づく差別の禁止(2011年)などの法律が可決されてきた。

プライド

 ストックホルムプライドパレードには、通常約45,000人の参加者と400,000人の観客が集まる。これはLGBTQ(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クィア)コミュニティがスウェーデン社会に歓迎されていることの一つの表れだ。2020年、ストックホルムプライドはやむなくデジタルで行った。2021年は、マルメがデンマークの首都コペンハーゲンと共同でWorldPride を開催することが計画されている。このイベントはマルチスポーツイベントのEuroGamesと一緒に行われる予定である。

 国際レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、インターセックス協会(ILGA‐ヨーロッパ)のヨーロッパ支部は、レインボーヨーロッパと呼ばれる年次報告において、法整備の状況に基づいて世界各国をランク付けしている。

レインボーヨーロッパランキング-LGBTQの権利
ヨーロッパ諸国を0%(全く人権に違反し差別している状態)から100%(人権を尊重し完全に平等である状態)で評価した場合の上位10カ国

出所:Sweden.seウェブサイトより(原出所:rainbow-europe.org)

スウェーデンにおけるLGBTQの進展
1944年 同性愛関係の合法化
1972年 世界で初めて合法的な性別変更の容認
1979年 スウェーデン社会庁(Socialstyrelsen)が同性愛はもはや精神障害ではないと認定
1987年 企業や政府による同性愛者の差別禁止
1988年 同性愛者が同棲法の対象とされる
1995年 同性カップルの登録制パートナーシップ法が成立
1999年 LGBTの人々のためのオンブズマンであるHomOの設立
2003年 性的指向に基づくヘイトスピーチを違法とする憲法改正
2003年 同性カップルの養子縁組の権利の認定
2005年 レズビアンの受精権の認定
2009年 ジェンダーに中立な結婚法の施行
2009年 同性婚合法化
2011年 性的指向に基づく差別の禁止を憲法に追加
2013年 法的性別の変更に関する法律から不妊手術の義務化を削除
2019年 スウェーデンの基本法の一つである「報道の自由法」による、トランスジェンダーの人々へのヘイトクライムに対する法的保護の強化

トランスジェンダーの権利についての課題

 しかし法整備に関する国際的なランキングが高いから、スウェーデンに改善の余地がないと言うなら、それは自己満足に過ぎない。レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クィアのためのスウェーデンの権利団体であるRSFLによれば、トランスジェンダーの権利はそのような分野の一つである。法的な基準は最終目標ではなく、平等へと向かうスウェーデンの努力におけるステップなのである。

 1972年に、スウェーデンは性別の法的変更を認めた世界で最初の国となった。しかし残念ながら、このような大胆な動きがあったものの、2013年になってようやく法律から削除された不妊手術の義務化など、いくつかの欠点が残されていた。

未だに待ち受ける変化

 一般的に、スウェーデン人は政府当局に高い信頼を置いている。この信頼は公的機関の透明性、平等主義の政治、個人の権利を保護する法律や制度の長い歴史から生まれたものである。たとえば個人の利益を代表する公的機関であるオンブズマンシステムは1809年から施行されてきたものである。

 差別されていると感じた人は、あらゆる種類の差別に反対する政府機関である平等オンブズマンに相談することができる。

 平等オンブズマンが扱うケースとしては、たとえば、人々が医療センターでどのように対応されているか、というのがある。差別があってはならないことは法律で明確にされているが、時として無知と偏見が働いてしまう。たとえば、医療専門家は病気(普通の風邪でさえ)と患者の性同一性、または性表現との間に非論理的な関係性を作り上げることができてしまう。LGBTQ関連の問題に関する知識は、医療の専門家になる上では、全く要求されていないのである。

雇用における差別
 リンシェーピン大学で2020年に発表された研究では、スウェーデンの雇い主はトランスジェンダーの人々からの応募を不採用とする確率がより高く、その傾向は特に男性が支配的な職種において強いことが示された。トランスジェンダーの人々は、ジェンダーおよびトランスジェンダーのアイデンティティーや表現を理由に差別を受けている。
(出所:sciencedirect.com)


ストックホルムプライドが初めて行われたのは1998年のことであった。写真は2016年のプライドパレードの模様
Photo: Magnus Liam Karlson/imagebank.sweden.se

手を差し伸べること

 スウェーデンを世界で最もゲイフレンドリーな国のひとつにしているのは、さらなる向上のための人々の絶え間ない闘いだろう。

 RFSLに加えて、イベントやキャンペーン、情報、教育、サポートなどを行うLGBTQ団体が数多く存在し、それらはよく国際的な手助けも行う。ストックホルムプライドが有するストックホルムプライド国際連帯基金は2006年に設立され、他の国のプライドイベントを支えている。

 同性愛は未だ世界の約80の国や地域で違法行為とされているために、スウェーデンの多くの団体は、母国で迫害された人々がスウェーデンに亡命する権利のために戦っている(スウェーデンは1944年に合法化)。スウェーデンの法律は同様に、移民庁(Migration Agency)が性的指向や性別が原因で母国で迫害を受けた人々に対して亡命を認める、とも述べている。


ヨーテボリのプライドの模様
Photo: Sofia Sabel/imagebank.sweden.se

教会で行う同性の結婚式

 宗教はしばしば、人々が同性愛やトランスジェンダーの人々に反感を持つ理由として引き合いに出される。しかし、スウェーデン国教会は全ての形の愛を認めるという明確な態度を取っている。

 2009年にジェンダー中立な結婚法が施行されてからまもなく、スウェーデン教会は同性婚の挙式を許可した。各聖職者には抵抗する権利があるが、その場合は挙式を行う他の者を教区が見つけなければならない。

 スウェーデン教会はまた、レインボーミサを実施している。これは、LGBTQの観点からみて、全ての人々の平等な価値を反映することを目的としている。レインボーミサの聖職者、マリン・ストリンドベリはこう述べる。

「ほとんどの聖職者は、同性愛が他のどのような種類の愛情とも同じ価値があることを十分に理解している。」

著者 Rikard Lagerberg
掲載ページ:https://sweden.se/society/for-the-right-to-be-who-you-are/
翻訳時点の最終更新日 2020年8月26日
翻訳 押谷彩瑛、庄司弥奈、本澤由紀
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
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