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【Sweden.se日本語版】スウェーデンのサーミ


サーミの女性とトナカイ Photo: Anna Öhlund/imagebank.sweden.se

その文化は今も色あせることなく、スウェーデンには約2万人のサーミが暮らしている

 サーミの国は、スカンジナビアの北部とロシアのコーラ半島にまたがっており、サプミ(Sápmi)として知られている。当初はもっと大きな集落だったが、1650年代から農業に、その後は林業や鉱業などの産業にと、サーミ人は徐々に土地を手放さざるを得なくなった。
 サーミの国勢調査はないが、人口は約8万人と推定され、スウェーデンに約2万人、ノルウェーに約5万人、フィンランドに約8千人、ロシアに約2千人と4カ国に散らばっている。
 サーミは世界の先住民族のひとつであり、スウェーデンの正式な少数民族のひとつだ。少数民族であるということは、つまり、彼らが特別な権利を持ち、彼らの文化、伝統、言語が法律で保護されていることを意味する。

トナカイに関する事実
・スウェーデンには約26万頭のトナカイがいる。
・スウェーデンのトナカイは半ば家畜化しており、北部の山林に生息している。
・スオバス(Suovas)はトナカイの燻製肉を意味する、保護された言葉である。ミネラルが豊富で脂肪が少ない。
・トナカイのミルクは甘味があり、溶けたアイスクリームのようである。
・トナカイの皮は靴や手袋を作るのに使われる。

トナカイの飼育の伝統

 もともと狩猟採集民だったサーミ人は、17世紀に家畜化されたトナカイの放牧に転換した。トナカイは放牧のために広大な土地を移動するのが自然で、サーミ人は歴史的にトナカイの群れを追って生活していた。
 現代ではその代わりに、牧場のシーズン中は山中に定住し、山小屋を持つのが普通になっている。また、トナカイを飼い続けている人たちは、スキーの代わりにスノーモービルやAWD車、ヘリコプターを使うようになって久しい。現在、スウェーデンのサーミの約10%がトナカイ産業で生計を立てており、その多くは観光や漁業、工芸品などの商売で収入を補っている。
 放牧権をめぐる政府との紛争、合法的なトナカイ飼育者の制限、土地の喪失など、トナカイの取引に関する問題が続いているため、多くの人が別の収入源を探すことを余儀なくされている。
 トナカイ飼いの放牧権と地主の伐採権との間には歴史的な争いがある。2011年、最高裁はサーミ人を支持する判決を下し、特定の地域の土地に対する権利をサーミ人に与えた。

サーミの村

 サーミの村であるサーメビー(sameby)は、伝統的な村ではなく、特定の地理的範囲にある複合的な経済・行政連合である。そのメンバーは、この地域で必要なあらゆる施設の建設も含めたトナカイの飼育に従事する権利を持っている。また特定の地域では、漁業や狩猟の権利も持っている。これはトナカイ飼育法(Reindeer Husbandry Act)と呼ばれるスウェーデンの法律で規定されている。51のサーミ村があり、最大の村はヨックモック(Jokkmokk)市のシルイェス(Sirges)である。
 19世紀末になると、多くのサーミが農場とトナカイ飼育の両方を永続的に運営するようになった(混牧)。しかし、政府はいくつかの論争を引き起こす決定を下し、その影響は20世紀にも長く続いた。
 1928年のトナカイ放牧法(Reindeer Pasture Law)では、トナカイの所有権とサーミの村の会員権が、放牧者とその家族に限定された。この新しい制限により、混農の農家はトナカイ放牧か他の農業のどちらかを選ばなければならなくなった。
 人々は何世代にも渡って他の職業に転職していったが、サーミの人々は、トナカイを所有しなくてもサーミの村に所属できるように、政府の規制を緩和しようと試みている。

真実と和解

 サーミ人は、自分たちの家である土地に建てられた国民国家と、長い間交渉を行ってきた。その中で、彼らは自分たちの生活の変更を強いられてきた。それは虐待と暴力、人種差別の歴史であった。
 2021年11月、スウェーデン政府はサーミ人に対するスウェーデンの政策の歴史と、それらの政策がサーミの人々に与えた影響について見直す「真実委員会」を設置すると発表した。その報告書は2025年12月1日までに作成される。
 それに先立つ2019年に、サーミ議会は政府に対して「真実と和解の委員会」の設置を正式に要求する文書を提出していた。その翌年には「真実委員会」設置の基礎作業のため、スウェーデン政府からサーミ側に120万クローナ(144,000ユーロ)が授与された。

教会の公式謝罪

 2021年、スウェーデン教会はサーミに対する歴史的な虐待について、公式謝罪を行った。謝罪はウプサラ大聖堂で11月24日に開催された総会にて、アンシェ・ヤケレン(Antje Jackelén)大司教によって行われた。
 さらなる公式謝罪は、2022年10月21〜23日にルレオ(Luleå)で開催される、サーガスタラマット(Ságastallamat)2会議にて行われる予定だ。
 さらにスウェーデン教会の中央委員会は、2022〜2031年の間に、和解プロセスのための戦略的開発基金として、4,000万クローナを割り当てる予定だ。
 全ての教区からの返信を経て全体の計画が立案され、その後、スウェーデン教会のサーミ委員会との緊密な対話によって、今後10年間の行動計画が策定される。

サーミ議会

 自治権を求めるサーミの組織的な政治的活動は、1950年代からサーミ協会の設立と共に始まり、1993年にはサーメティンゲット(Sametinget)というサーミ議会が設立された。これは議会であると同時に、政府機関でもある。
 政府機関としては約50人の職員を擁し、サーミの文化、言語、トナカイの放牧などの産業に関する職務を担当している。なお、政府機関としてのサーミ議会はスウェーデン文化省が直轄している。
 議会としてのサーミ議会は31人の議員で構成されており、任期は4年で、年に3回召集される。サーミ選挙人名簿に名前が載っている人には投票権がある。サーミ語を話し、自身がサーミ社会の一員だという人であれば、選挙人になることができる。
 サーミ議会の統計によると、1993年の最初の選挙以来、登録者数は選挙ごとに増加しているという。2021年5月16日に行われた前回の選挙では、選挙人名簿に9220人の名前があった。

自治権の拡大

 歴史的に、サーミ議会の全ての政党を団結させてきた一つの政治的な目標がある。それは自治権の拡大だ。
 スウェーデン憲法は2011年に改正され、サーミが文化的・社会的生活を保護・発展させる機会を推進するという義務を政府に課した。
 フィンランド、ノルウェー、スウェーデンのサーミ議会は、サーミの先住民族としての地位を強化し、サーミに関連する問題の決定に影響力を与えるために、北欧規模の共同体の結成を模索している。しかし、この共同体は北欧政府の承認をまだ得られていない。

新たな道と古い伝統

 2010年に施行された、スウェーデンの少数民族と少数言語のための法は、少数言語を保護するための資金を提供し、サーミが文化、伝統、言語を維持するための機会を与えてきた。
 この法はサーミに資する新たな機会を提供している。具体的には、サーミ語を話す介護施設のスタッフ、小学校で行われるサーミの歴史の授業、学校や自治体の施設にあるサーミ語の案内表示などが挙げられる。
 サーミの食文化は、国際的な影響を受けて思わぬ発展を遂げつつ、サーミの人々からもそうでない人々からも、新たな支持を得るようになっている。

サーミの旗
 1986年に制定されたサーミの旗の色(青・赤・黄・緑)は、伝統的なサーミの服装に共通して使われているものである。円の赤い部分は太陽で、祈祷師の太鼓に描かれる。円の青い部分は月を表している。サーミには11の祝日があり、その1つは2月6日のサーミ・ナショナル・デーである。

サーミの旗は国籍にかかわらず全てのサーミの人々のためにある。 Photo: Silje Bergum Kinsten/norden.org (CC BY-NC-SA 4.0)

伝統的なサーミの衣装を着た新婚カップル Photo: Håkan Hjort/Johnér Bildbyrå

サーミのトナカイ産業は、それぞれの季節に応じて出産・印付け・頭数確認・去勢・屠殺を行っている。 Photo: Hans-Olof Utsi/imagebank.sweden.se

サーミの人々が着ている伝統のコルトドレスによって、どの地方の出身かを知ることができる。 Photo: Lola Akinmade Åkerström/ imagebank.sweden.se

柄がトナカイの角の手作りサーミナイフ。伝統的なサーミの彫刻が飾りとなっている。 Photo: Jessica Lindgren/imagebank.sweden.se

サプミ・ネイチャー・キャンプは、小規模なグランピング場で、利用者は伝統的なサーミ文化をほんの少し味わうことができる。 Photo: Lennart Pittja/Sápmi Nature/imagebank.sweden.se
サーミの言語

 2000年に、サーミ語はスウェーデン公式の少数派言語として認められ、スウェーデン政府はバリエーション豊かなサーミ言語を守るため、サーミの議会に、より大きな影響力と資金を与えている。粉雪から溶けかけている雪まで、300種類以上の雪の表現があることを想像してみると分かりやすいだろう。
 サーミ語は、東部サーミ語、中部サーミ語、南部サーミ語の大きく3つの系統に分かれている。それらはさらに9つに分けることができる。その内の1つである北部サーミ語が最も広く使われており、サプミ地方全体で17,000人のネイティブスピーカーがいると推定されている(スウェーデン国内のみでは6,000人)。
 1950年までサーミ語の文字はスウェーデン語のアルファベットに結び付いていなかった。当時サーミ語には、スウェーデン語のアルファベットに加えて7種類の文字があり、それらはスウェーデン語には見られない歯擦音であった。サーミ語がスウェーデンの学校の科目になったのは1962年のことであり、言語の正書法に関するガイドラインが印刷されたのは、1979年のことである。

教育

 現在、スウェーデンで唯一のサーミの高校は、極北部のヨックモックにある。一般のカリキュラムとは異なり、同校はトナカイの飼育、伝統料理、手工芸品、そしてサーミ語の訓練を提供している。
 スウェーデンには、12歳までの子どもたち向けのサーミの学校が数校ある。地方自治体が提供しているサーミの育児支援も、サーミ語の維持や若い世代への継承に役立っている。
 サーミ語の講座は、ウメオ大学とウプサラ大学で受講することができる。ヴァートゥ(Vaartoe)と呼ばれるサーミ語の研究センターもあり、そこはサーミの文化、言語、歴史、そしてコミュニティについて研究しており、さらに新しい研究も始めている。

若者も着るサーミの伝統的な服装

 サーミの伝統に対する誇りは伝統的な服装、特にコルト(kolt)やガクティ(gákti)と呼ばれる民族衣装の中に見られる。それらは元々作業着であったが祭服へと変化した。コルトのデザインは地縁によって異なる。伝統的な衣装は少なくとも12種類の異なるスタイルがあり、男性用か女性用であるかによっても異なる。また、デザインを一新し、特徴的な家紋を施したものもある。現代的なファッションも影響を与えている。
 コルトは洗礼や儀式、婚礼、成人の儀など、常に特別な場面で着用される。男性用は女性用のものより短いが、北部のサーミより南部のサーミの方が長い傾向にある。ベルトやレースアップシューズ、肩掛け、装飾が施された首飾り、帽子がコルトと合わせて着用される。アクセサリーが付いた子供用のコルトは大人用のコルトをそのまま小さくしたものである。
 装飾は様々であるが、北部のサーミは大抵シルバーを身に着けているが、南部のサーミとルレ川周辺に住んでいるサーミはピューターの刺繍を用いている。しかし、いずれも色とりどりの生地を使い、手作業で縁取りを施している。

サーミの手工芸品-デュオージ

 トナカイは食料や生活用品の原材料として、サーミ文化の大きな部分を占めている。サーミは正式な教育を通してトナカイについての知識を代々伝えている。伝統的に、靴やナイフの材料となる皮や角、調理や加工に使う肉など、トナカイのすべての部位が保存され使用されている。
 サーミの手工芸品であるデュオージ(duodji)は天然素材を使用し、柔らかな丸みを帯びた形状が多く、手触りがよく、機能的である。精巧な装飾は、今も昔も作り手が技巧を凝らし、家や文化のデザインを保持する上で重要である。
 多くのサーミは、トナカイの飼育に加え、手工芸品作りや観光関連などの副業を行っている。サーミの手工芸品の品質証明書は、購入者に対して正規品であることを保証し、メーカーが業界内で認められていることを示している。
 新しいスタイルや素材がサーミの工芸品に取り入れられ、現在では鋳金や ビジュアルアート、写真など、さまざまな技法が使われている。

年中行事
・2月 ヨックモック・マーケット
・2月/3月 ウメオのサーミ・ウィーク
・7月 先住民族の国際祭典
音楽、演劇、ダンス

 ヨイク(Yoik)は伝統的なサーミの歌で、それは元々サーミの宗教と密接に結びついていた。ヨーロッパでもっとも古い音楽形態の一つであるが、異教徒的で非文化的な行為と見なされ、スウェーデンのルーテル教会では長い間禁止されていた。
 ヨイクは極めて個人的なものであり、多くの場合、人や動物、風景の一部に捧げられ、それらを忘れないための方法とされている。代々受け継がれており、その起源によってスタイルが異なる。
 現代のサーミ音楽は、ヨイクとロック、ポップ、ヒップホップが融合したものが多く、マキシダ・メラク(Maxida Märak)、ソフィア・ヤンノク(Sofia Jannok)、ヨン・ヘンリク・フェールグレン(Jon Henrik Fjällgren)が代表的である。
 サーミには語り継がれる文化が豊富にあり、それらは演劇を通じて新たな視点を獲得している。キルナにあるザ・ジロン・サーミ・シアター(The Giron Sami Theatre、Gironはサーミ語でキルナ)では、毎年いくつかの作品を上演している。

原資料掲載ページ:https://sweden.se/life/people/sami-in-sweden
翻訳時点の最終更新日 2022年6月9日
翻訳 熊木裕一、中村由芽、福戸山実李
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表はSweden.seに掲載されたものをそのまま転載しています。他サイトへのリンクは転載しておりません。

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