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 昨年英語に翻訳された Claudia Wallin 著「Sweden -The Untold Story」(2014年にポルトガル語で出版され、ブラジルでベストセラーになる)の日本語版「あなたの知らない政治家の世界-スウェーデンに学ぶ民主主義」の出版(11月末予定)を記念し、著者の Claudia Wallin 氏をスウェーデンから招いて講演会を行います。この機会に民主主義とは何か、民主主義が機能するには何が必要かを考えてみませんか? (English with Japanese translation 言語:英語、日本語通訳あり)

● 日時 2019年12月3日(火)19:00-20:30 (18:30開場・受付開始)
● 場所 スウェーデン大使館1階ノーベルオーディトリウム
● 参加料 無料(ただし登録が必要です。https://democracy.confetti.events/ よりお願いいたします。)
● プログラム
【開会挨拶】スベン・オストベリ参事官(スウェーデン大使館)、鈴木賢志教授(明治大学国際日本学部教授・一般社団法人スウェーデン社会研究所代表理事)
【講演】 クラウディア・ワリン(通訳:アップルヤード和美) その後、質疑応答

【Claudia Wallin 著「Sweden -The Untold Story」のご紹介 日本語版/英語版】
 スウェーデンが人口では日本のわずか10分の一でありながら、イノベーションに優れ多くのユニコーン企業を生み出し、発信力があり、また一人当たりGDPでは日本をはるかに上回る豊かな福祉国家であることは皆の知るところです。そんなスウェーデンの国会議員はいくら議員報酬を貰っていて、どんな生活をしているのでしょう。北欧5か国の中でもGDPは一番大きいスウェーデンですが、その国会議員の報酬は北欧中最低だということを知っていましたか?地方議会の議員に至ってはほとんどの議員に報酬はありません。国会議員の宿舎はかわいそうなほど質素で、通勤や移動には公共交通機関を使うのが普通です。それはなぜでしょうか。
 スウェーデンは「閣下」などという敬称を廃止、誰もがシンプルに「あなた」と呼ばれる平等社会な社会です。政治家も同じで、庶民を代表する政治家は庶民感覚が分かる人でなければならなりません。権限のある人は説明責任があり、全ての情報は一般に公開されなければなりません。スウェーデンの民主主義はまさに政治権力の透明性が鍵となっています。そして、それは憲法で保障された世界最古の透明性を確保する法律(情報公開法)によって監視されています。この法律のおかげで、ジャーナリストがあらゆる情報にアクセスでき、国民も情報開示によって権力の監視ができるのです。ただもちろん国民が政治に関心がなければ監視の意味もないのですが、高額の税金を払っているスウェーデンの国民はその使い途にも敏感です。
 民主主義の先進国と言われるスウェーデンの知られざる姿がスウェーデン在住ブラジル人ジャーナリストによってこの本で明らかにされ、徹底した情報公開と国民の政治参加と監視が民主主義の根幹を担っていることがよくわかります。民主主義が揺れている今、この本の著者と一緒に、スウェーデンのような改革は日本でも可能なのか、本物の機能する民主主義には何が必要なのかを考えてみたいと思います。

Claudia WALLIN (クラウディア・ワリン)
 ブラジル人ジャーナリストで、2003年からスウェーデンを拠点にして活動。ロンドンで「TV Globo」のヨーロッパ支局長、「International Herald Tribune TV」のディレクター、「BBC World Service」のプロデューサーを務め、現在も特約記者として寄稿している。

In Sweden, politicians use public transport, earn modest wages, work in humble offices, wash and iron their own clothes and are treated just like everyone else.
Sweden has long been viewed as a beacon for democratic government and progressive social policies. In this witty and insightful book, journalist and writer Claudia Wallin takes a fascinating look at the Swedish model of government, its commitment to transparency and openness, and its deep-seated aversion to politicians, judges and public servants enjoying any special privileges or advantages.
Welcome to the Swedish reality of members of Parliament commuting by bus, living in 16-square-meters studio apartments in the capital and working from 10-square-metre offices. No one in public life earns an obscene multiple-digit salary. At the local level, Swedish councillors are not even paid, nor do they have the right to an office - they work from home.
Politicians who dare pay for a taxi ride with taxpayers’ money, instead of riding the train, end up on news headlines. And in some cases, are forced to step down.
Without official cars or private drivers, Swedish politicians travel in crowded buses and trains, just like the citizens they represent. Without any right to parliamentary immunity, they can be tried like any other citizen. With no private secretaries at the door or private bathrooms and breakfast bars, their bare-bones parliamentary offices are spartan and tiny like a public clerk's office.

Claudia Wallin also focuses on how the triple pillars of the Swedish system – transparency (Sweden has the world’s oldest transparency law), social equality and a well-educated population - combine to create a high degree of social trust. In virtually every area of public life, incidences of corruption or profiting from public office are relatively rare and, when transgressions occur, politicians and officials are swiftly brought to account, aided by an ever-vigilant media.
Not even celebrities are immune. Under suspicion of tax fraud, the legendary Swedish filmmaker Ingmar Bergman was once arrested inside a theatre and taken to a police station.
In little over 100 years, Sweden has transformed itself from an impoverished, agricultural society into one of the wealthiest, most socially just and least corrupt countries in the world, where nobody is above anybody else. The Swedish experience demonstrates perhaps more than any other how change is possible.
Sweden - The Untold Story is a best-seller in Brazil, where it was originally published.

CLAUDIA WALLIN is a Brazilian journalist and author based in Sweden since 2003. Prior to moving to Stockholm, she worked for ten years in London as the bureau chief of TV Globo in Europe, director at International Herald Tribune TV and producer at the BBC World Service, for whom she still contributes as a permanent stringer correspondent. She holds a bachelor´s degree in Journalism from the Federal University of Rio de Janeiro (UFRJ), a masters degree in Russian and Eastern European Studies from the University of Birmingham in the United Kingdom, where she held a Chevening Foreign and Commonwealth Office scholarship, and a certificate in Swedish language from the University of Stockholm.

第379号(2019年1月)

【特集】2018年総選挙
【2018年5月研究講座】マグヌス・ローバック大使ご講演
【2018年7月研究講座】「北欧に学ぶ男女平等」
【2018年10月研究講座】「スウェーデンの総選挙」「スウェーデンと日本の現代美術の交流」
【2018年11月研究講座】日瑞外交150 周年記念コンサート
【2018年12月研究講座】リンドグレーン朗読会
第379号(2019年1月)

第380号(2019年9月)

【スウェーデンの点描】新政権発足
【2019年1月研究講座 第1部】『スウェーデンの物語を〈絵〉にする、〈言葉〉にする-私たちがつくった本-』
【2019年1月研究講座 第2部】『スウェーデンの教育 ―日本への示唆-』
【2019年4月研究講座】『スウェーデンの障害者福祉』
【2019年5月研究講座】『原子力は女性の発明か(Nuclear Energy – a women’s invention?)』
【2019年6月研究講座】マグヌス・ローバック大使ご講演
【2019年7月研究講座】『スウェーデンの医療現場における職場環境〜子育てとの両立』
第380号(2019年9月)

スウェーデン国会の政党別議席数(2014年・2018年)

2018年の選挙の結果、スウェーデン国会の政党別議席数(定員349)の構成は上のようになった。第3党のスウェーデン民主党は49議席から62議席へと大幅に(+13)議席を増やしたが、2014年選挙と同様に、社会民主党、穏健党に次ぐ第3党にとどまった。右派連合(穏健党、自由党、中央党、キリスト教民主党)が141議席から143議席へと微増したが、左党、社会民主党、環境党の3党の議席の合計が144議席と、右ブロック対左ブロックという意味ではかろうじて左ブロックが上回ったが、その差は1議席に過ぎず、かつ左党の全面的な協力が必要となることから、与党社会民主党の立場はますます不安定になった。

各政党の特徴は以下の通り。
 社会民主党
1914年以降、国会で第1党を維持し続け、過去100年のうち80年近く政権についている、スウェーデンを代表する政党。労働組合の支持を受け、主に労働者や弱者の立場に立つが、政権政党としての長い経験から、他の立場に対して妥協することも少なくない。

 穏健党
社会民主党のライバルで右派ブロックのリーダー。「保守」ではなく「穏健」なのは、社会民主主義的な改革を否定しているわけではないが穏やかに進めたいという考え方のためである。さらに2006年に「新穏健党」となってからは、社会民主主義的な改革の方向性を全面的に受け入れている。主な支持層は企業や高所得者。同じく保守的な立場を取るスウェーデン民主党に支持者を奪われているとされる。スウェーデン民主党と協力するか否かはしばしば党の火種となっている。

 スウェーデン民主党
反移民、反EUを掲げる政党。スウェーデンでは極右政党とされ、党員が問題を起こしてマスコミ沙汰になることも多く、国会でも他の政党から協力関係を拒まれている。ただし企業が必要とする労働力の受け入れは認めるなど、現在の日本の主要政党の立場よりも排外的かというと、あながちそうでもない。2010年に初の国政進出を果たして20議席を獲得、2014年には議席数を約2.5倍の49に伸ばした。

 環境党
党名の通り、環境保護を明確にしている政党。1970年代末の反原発運動を母体としている。党首を定めずに2人の共同代表を立てるなど革新的なことを好み、若者の支持が高い。移民受け入れに積極的で親EU。現政権を含め、近年は社会民主党の連立パートナーとなることが多い。

 中央党
もとは農民の党であった。農業人口の減少に対応して党名を変えたが、農民の党の流れをくんで、地方の利益を重視する。農家を含む中小企業の利益を重視するという立場から、右派連合に属している。環境重視でもあり、右派連合内の環境問題担当と位置づけられている。

 左党
もとは共産党であったが、ソ連と東欧共産圏の崩壊後に党名を左党に変えた。基本的な立場は社会民主党に近いが、社会民主党が政権政党としてしばしば現実的(右派政党と融和的)な立場を取ることを批判して、公的サービス重視、高福祉高負担の立場を明確にしている。

 自由党
経済・社会のグローバル化を推進するリベラリズムの立場を取る。EU推進、ユーロ導入に賛成。移民受け入れに積極的。NATO加盟にも積極的である。内政では、グローバル化に対応できる人材の育成とうことで、教育に力を入れていることがよく知られている。右派連合の一員。

 キリスト教民主党
ドイツなど他のヨーロッパにおけるキリスト教民主政党と異なり、国会に進出したのは1991年と遅く、国会では常に小さな勢力である。伝統的な家族愛や高齢者福祉を重視し、移民については人類愛という観点からは寛容だが、最近のイスラム教徒の流入を受けて厳しくなった。右派連合の一員。

自分が働く理由(60歳以上で今後も収入を伴う仕事をしたい・続けたいという人)

資料:内閣府『平成27年度 第8回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査』

OECD(経済協力開発機構)の統計によると、日本の60歳~69歳人口における就業率は53.9%で、OECD加盟の中ではアイスランド、ニュージーランド、韓国に次いで高い。スウェーデンも46.0%でOECD加盟国中第8位と、比較的高い。
このように、日本もスウェーデンも60歳代の約半数が働いているという点では共通しているが、その働く理由は非常に対照的である。日本では、約半数の49%が「収入がほしいから」働くと述べているのに対して、スウェーデンでは「仕事そのものが面白いから、自分の活力になるから」が過半数(54%)を占めている。
よく知られているように、スウェーデンは老後を普通に暮らしてゆけるだけの年金制度があるので、生活のために無理して働く必要があるわけではない。それでも半数近くの人々が働いているのは、まさに生きがいのためである。
日本もスウェーデンも、ともに平均寿命が長いことで知られているが、同じく長生きをして、年をとっても多くの人が働き続けるのであれば、スウェーデンのような社会でありたい、と考える人は少なくないだろう。

自分の政治的立場の位置付け(30歳未満)

資料:ISSP 2014

ISSP(国際社会調査プログラム)の2014年調査には、自分の政治的立場を0(=左翼)から10(=右翼)の尺度で評価する質問があります。この質問に対する日本とスウェーデンの若者(日本は16歳~29歳、スウェーデンは17歳~29歳)の回答を比べると、両者の傾向が非常に異なることがわかります。

すなわち、スウェーデンの若者の回答は全体にばらつきがあるのに対して、日本の若者の回答は「5」に集中しています。実に半数以上の若者が「5」を選んでいるのです。

その理由について断定することはできませんが、これは「日本人が中庸を好む」という日本人論的な説明よりも、「多くの人は右と左の意味が分かっていないので、とりあえず真ん中あたりを選ぶ」という説明の方が妥当であるように思います。

実際、現在の日本政治において、何が右・左の立場を決めるのかを学校で正面から教わる機会は、あまりないと思います。もちろんこれは教育だけの問題ではなく、政治的立場を曖昧にしている(もしくはそもそも立場を持っていない)政党や政治家が巷にあふれていることの証左でもあります。

むろん、この複雑な世の中を「右-左」という1つの軸で表すことに無理があるという批判は理解できます。しかしそういうことを一切わかっていなければ、知名度や上っ面のパフォーマンスで政党や政治家を選ぶか、何もわからず無関心になり、他人に決定を委ねてしまうことでしょう。ですから、最低限の政治的リテラシー(政治状況を読み解く力)は、きちんと教育すべきことであると思います。