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学生部Sweätersです!
今日、世界中で地球温暖化や大気汚染などの環境問題が深刻化していますね。
これらの環境問題は、動植物の生育に影響するだけでなく、私たち人間の健康や生活にも悪影響を及ぼすかもしれません。環境に配慮した、住み続けられるまちづくりが今後より一層求められるのではないでしょうか。そんな中、環境先進国とも言われるスウェーデンでは環境に優しいサステナブルな都市開発が進んでいます。
今回はその事例について5つご紹介します!
第一章 【都市開発とは】
そもそも都市開発とはより高密度で高機能な都市空間へ転換する行為のことです。既に都市的な土地利用がされている場所を再開発することもあります。道路や公園などの公共空間を整備することも都市開発の1つです。時代や地域に応じて、人々が生活しやすい空間を開発することが求められます。(※1)
第二章 【スウェーデンの都市開発の歴史】
スウェーデンの都市開発には長い歴史があります。スウェーデンの王権が拡大してストックホルムの人口が急増した17世紀から都市開発や再開発が始まりました。
・1950年代
戦後の急速な都市人口の拡大に対応すべく、他のヨーロッパ諸国に先駆けて郊外住宅地開発が進みました。国は”The Million Homes Programme”を策定し、1966年から1975年の間に全国で100万戸の住宅建設を計画しました。また、同時期に交通インフラの整備が行われ、歩車分離の交通システムも取り入れられるようになりました。
・1970年代
この時期から大規模住宅地開発は環境への意識の高まりにより、見直されるようになります。小規模の補足的な開発やリニューアルに移行するようになりました。
・現代
そして、現代では、環境への配慮はもちろんのこと、開発の計画時点で住民の意見が反映されるケースが多くなりました。都道府県レベルの自治体であるカウンティがイニシアチブをとって計画に参加してくるケースも多く見られています。(※2)(※3)
第三章 【事例① ストリートムーブス(Street Moves)】
スウェーデンでは「1分都市」というモデルを提示しています。これは、家から徒歩1分圏内にある空間の充実を図るという考え方のもと生まれました。そこで始まったのが軒先の道路に着目した、ストリートムーブス(Street Moves)というプロジェクトです。2030年までにスウェーデンの全ての道路を持続可能で活気に満ちたものにすることを目的としています。ストックホルムから実験的に始まり、道路には木でつくられた環境に優しいテーブルやベンチなどが設置されています。公共空間の大部分を占める道路が地域交流の場として活躍しています。(※4)

第四章 【事例② 木造都市計画(Stockholm Wood City)】
ストックホルムでは、2025年から世界最大の木造都市建設プロジェクトである木造都市計画(Stockholm Wood City)が始まります。このプロジェクトが始まるストックホルム南部の土地は、20年かけて工業地区から都市地区に変化してきました。エリア内には7000のオフィススペースと2000の住居が建設される予定です。
ストックホルム南部の職場不足を解消するだけでなく、職住近接の都市を実現させることにより通勤時間の短縮にも繋がります。また、木造建築には利点があります。二酸化炭素の排出削減、人々のストレス軽減、建設現場の騒音防止、空気の質改善、生産性の向上など多岐に渡ります。さらに持続可能なまちに発展することが期待されています。(※5)

第五章 【事例③ ハンマルビー・ショースタッド(Hammarby Sjöstad)】
ハンマルビー・ショースタッド(Hammarby Sjöstad)はストックホルム市中心部の南に位置する居住地区です。以前は工業地帯でしたが、1990年代初め、ストックホルム市が2004年の夏季オリンピック開催地に立候補し、その選手村として建設が計画されました。開催地には選ばれませんでしたが、そのまま大規模な都市開発プロジェクトが進められ、現在に至ります。多くの家や遊歩道が水辺に面しており、自然を感じられる居住地区へと移り変わりました。
ハンマルビー・ショースタッドの最大の魅力は環境に配慮している点です。「1990年代前半の住宅地区と比較して、ハンマルビー地区から排出されるCO₂等の環境負荷を半減させる」という全体目標を掲げています。
具体的には、自然エネルギーの循環に注力しています。下水や廃棄物を利用して必要エネルギーの半分を賄い、住宅施設の冷暖房や地域内の公共交通機関の燃料として循環させています。また、交通システムが充実していることも特徴です。歩道の整備やカーシェアリング、LRTの導入など、環境に優しい交通が発達しています。(※6)(※7)(※8)(※9)


第六章 【事例④ セーゲ公園(Sege Park)】
スウェーデン南部の都市マルメにあるセーゲ公園(Sege Park)は、マルメ市と地元企業が協力して開発した住宅地域です。この地域ではシェア経済を重視しており、住民はモノやサービスを共有することで所有物を減らしつつ、より多くのものを利用できる仕組みを整備しています。今後は約1,000戸の住宅が建設予定です。
また、木造駐車場や住民が自転車の修理を行う自転車キッチン、車や自転車をシェアする移動手段プールなどの施設の建設も計画されています。再生可能エネルギーを活用した二酸化炭素排出ゼロのコミュニティを目指して整備が進んでいます。(※10)(※11)

第七章 【事例⑤ エコライフモデル地区グリーンハウス(Greenhouse Malmö)】
マルメ市にあるエコライフモデル地区グリーンハウス(Greenhouse Malmö)では、持続可能なライフスタイルを実現することができます。環境に配慮した設備が整備されていること、その設備を利用することでコミュニティ形成に繋がることが特徴です。
例えば、屋上には共有庭園があります。居住者が自由に栽培する環境が整っています。家庭菜園や緑ある生活を楽しめるだけでなく、他の居住者と交流を深めることができます。また、ランドリールームやグリーンハウス内のゴミ捨て場もあります。共有施設を設けることが個々の家庭のコストや環境負荷の削減に貢献すると同時に、社会的なコミュニティの形成機会にもなっています。(※12)(※13)

まとめ
昨今、環境問題が注目されている中、スウェーデンでは時代の変化に応じて環境に配慮したさまざまな都市開発が進められてきました。加えて、近年の都市開発はその都市に住まう人々の生活の質向上にも意識が向いています。
今回ご紹介したスウェーデンにおける事例のように、持続可能なまちであり続けるためには環境に配慮した都市空間の実現を目指すことはもちろんのこと、人々の快適なライフスタイルも共に考慮して開発していく必要があるのではないでしょうか。
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参考文献
※1 中西正彦. 2022. 「初学者のための都市計画論 2023年版」.
※2 松本忠. 1996. 「スウェーデンの街並みと都市計画制度その①」『住宅生産振興財団』家とまちなみ 34, 18-24.
※3 松本忠. 1997. 「スウェーデンの街並みと都市計画制度その②」『住宅生産振興財団』家とまちなみ 35, 63-68.
※4 Bloomberg. 2021. 「Make Way for the ‘One-Minute City’」『Bloomberg Citylab Design』<https://www.bloomberg.com/news/features/2021-01-05/a-tiny-twist-on-street-design-the-one-minute-city>(2024/07/16 最終アクセス).
※5 ATRIUM LJUNGBERG. 2024. 「STOCKHOLM WOOD CITY」『ATRIUM LJUNGBERG』<https://www.al.se/en/sickla/>(2024/09/03 最終アクセス).
※6 HSFF. 「Hammarby Sjöstad」『Hammarby Sjöstad Ekonomisk Förening』<https://www.hsef.se/en/hammarby-sjostad/hammarby-sjostad/>(2024/09/09 最終アクセス).
※7 国土交通省. 2012. 「国土交通白書」1, 2, 85-86.
※8 大和ハウスグループ. 2018. 「スウェーデンのハマービー・ショースタッド」『大和ハウス工業 サステナブルな街』<https://www.daiwahouse.co.jp/sustainable/sustainable_journey/smartecotowns/hammarby/>(2024/09/09 最終アクセス).
※9 小泉隆, ディビッド・シム. 2023. 「北欧のパブリックスペース 街のアクティビティを豊かにするデザイン」学芸出版社.
※10 一般社団法人スウェーデン社会研究所. 2021. 「環境にやさしい未来のための10の方法」『Sweden.se 日本語版』<https://jissnet.com/archives/4303#i-7>(2024/09/03 最終アクセス).
※11 Emma Roertson. 2021. 「スウェーデン ー あたりまえの先、常識の先を進む国」.
※12 Spaceship Earth. 2023. 「スウェーデンが緑豊かな未来のために行う都市開発の現状」『Spaceship Earth』<https://spaceshipearth.jp/sweden-urban-development/>(2024/09/09 最終アクセス).
※13 Baldrich Architectes. 2018. 「Green-house Living. Mälmo」『Architecture, Marbella, Costa del Sol, News』<https://www.rb-aa.com/green-house-living/>(2024/09/09 最終アクセス).
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