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スウェーデンは宗教色が比較的薄いが、無宗教の国にはほど遠い。今でも宗教は儀式や文化に影響を与え、その姿は移民の増加とともに多様化し複雑化している。以下はスウェーデンの宗教に関する10の基礎知識である(訳注:10とあるが掲載項目数は9つとなっている)。

#1 政教分離

スウェーデン教会は、福音派のルター派で、中世以来スウェーデンの教会の中心地となっているウプサラに事務局がある。2000年にスウェーデン教会は国家から分離されたため、それ以降、スウェーデンに公式な国教は存在しない。世界のほとんどの国は国教を持たないが、ノルウェー、デンマーク、アイスランド、フィンランドはすべて国教を保持しており、スウェーデンは実のところ国教がない唯一の北欧の国である。

現在、スウェーデンの人口の約58%がスウェーデン教会に所属している。近年、記録的な数のスウェーデン人が教会を去った。 スウェーデンの若者たちは上の世代よりも加入率が低く、会員数の継続的な減少が予測されている。また、定期的に礼拝に参加する人が減少しているという調査結果が示されている。

#2 儀式と宗教

宗教や教会が多くのスウェーデン人の生活に根付いていることが最も明確になるのは、伝統的な儀礼や式典が行われる時である。洗礼命名式、結婚式、葬式がその主たるものである。ルチア祭のようにスウェーデンの文化的伝統を色濃く反映した祭事にも、礼拝や賛美歌が含まれている。

未だスウェーデンのカレンダーに散在するいくつかのキリスト教の休日にも宗教的な名残が見られる。十二夜(一月六日)、昇天祭、聖霊降臨祭、諸聖人の祝日、復活祭に関する一連の祝日がそれである。ただしそれらを礼拝で祝うスウェーデン人はあまりいない。西洋の他の国々と同様に、スウェーデンのクリスマスはキリスト教の伝統に則っており、待降祭はスウェーデン人がクリスマスイブまでのカウントダウンをしながら、パーティを盛んに行う時期である。現代のスウェーデンがどれほど宗教的でなかろうが、これらの休日が信仰の強さとは関係なく、広く受け入れられているのは確かである。


スウェーデンの伝統であるルシア祭は12月13日に行われる。宗教とは切り離された、クリスマス前の大きなイベントの1つである。
Photo: Lena Granefelt/imagebank.sweden.se

#3 宗教色の薄いスウェーデン人

儀式はさておき、スウェーデンは非常に宗教色が薄く、スウェーデン人は信仰心と幸福の関係が殆どないように見受けられる。WIN/Gallup Internationalの調査によると、スウェーデンは中国、日本、エストニア、ノルウェー、チェコ共和国と並んで、世界で最も宗教色の薄い国の1つである。例えば、アメリカ人の半数以上が自らを宗教的であるとするのに対して、そのようなスウェーデン人は5人に1人にも満たない。

教会の文化的役割が際立つことがあるのを、スウェーデン人がみな良く思っているわけではなく、様々な儀式を別の形式で行う人も多い。スウェーデンでは最近結婚する人が増えているが、その結婚式のほぼ3分の1が民事婚である。また宗教色の濃い洗礼ではなく、出生のお祝いを目的とした新生児の命名式を行う人々もいる。

#4 スウェーデンにおける他の大きな宗教

スウェーデン教会の加入者数が減少している一方で、近年、他の教会や宗教への加入者数の増加が見られる。ただしスウェーデンの法律では宗教に基づいて人々を登録することが禁じられており、スウェーデンにおける加入者数の報告はあくまで推計値であることに注意したい。

スウェーデン教会に次いで多いキリスト教会は自由教会である。プロテスタントではあるが、自由教会はスウェーデン教会から独立しており、福音派、ペンテコステ派、メソジスト教派、バプテスト派の要素が特徴である。スモーランド地方のヨンショーピン市周辺地域は、自由教会活動が伝統的に高いことから「スウェーデンの聖書地帯」と呼ばれることさえある。

さらに、移民の増加が宗教の多様化を進めてきた。イスラム教はスウェーデンで拡大しており、これまでに5つのモスクが建設されている。カトリック教も加入者数の増加を報告しており、移民をその主な理由としている。一方、様々な国の東方正教会も存在する。中でも一番大きいのはシリア正教会である。

スウェーデンには、さらに約2万人を擁するユダヤ教徒のコミュニティがあり、そのうち8,000人以上が教えを実践している。イディッシュ(訳注:中東欧のユダヤ人の間で話されるドイツ語に近い言語)はスウェーデンの5つの公認少数言語の1つである。

#5 北欧諸神からカトリック改宗まで
スウェーデンにおける宗教の歴史は、しばしばキリスト教以前の北欧神話に基づく宗教に遡る。古代北欧の信仰は、組織化された宗教ではなく、文化システム全体の基礎を形成した。その信仰の実践の中心にあったのは「儀式」であり、それは動物供犠であったり、時には人身御供もあった!集会では、神との交流において飲食を共有し、さらなる繁栄の予兆を探った。北欧神の中でおそらく最も有名なオーディンとトールは、それぞれ戦争と天空を司る神であった。

古代北欧の宗教的信仰は12世紀まで続き、スウェーデンは、カトリックの宣教師の布教によってキリスト教化された最後のスカンジナビアの国となった。1164年に、スウェーデンはカトリックのいわゆる教会管区の1つとなり、カトリックの教義が確立した。スウェーデンは、最も有名な聖ビルギッタを筆頭に、多くの聖人を輩出した。またスウェーデン人はフィンランドとバルト諸国への布教活動に乗り出すという独自のスタイルで、カトリック十字軍にも参加していた。

#6 プロテスタント優位から信教の自由まで

スウェーデン人は中世後期まで良心的なカトリック教徒であったかもしれないが、その後はプロテスタントの砦として知られるようになる。スウェーデンは1500年代末までにカトリックからプロテスタントへの移行を完了し、その後はルター派との結びつきを強めて、国に認められた信仰から外れた人々を処罰した。1858年まで、カトリックへの改宗は国外追放という形で処罰される可能性があった。1600年代には、スウェーデン王のグスタフ2世がドイツの30年戦争にスウェーデンを参戦させたが、その名目はプロテスタントの信仰を保護することであった。

過去にはこのように厳格な措置を取ってきたが、現在のスウェーデンは、信教の自由を支持する国となった。1951年に信教の自由がスウェーデンの法律に明記され、現在のスウェーデンでは、全ての人が自由に宗教を実践する権利を持つべきであると、大多数のスウェーデン人が答えていることが研究で示されている。

#7 寛容と文化的衝突

スウェーデンは、世界で最も寛容な国の1つとして高い評価を受け続けているが、他の多くの国と同様に、外国人恐怖症や文化的衝突という形の不寛容という課題にも直面している。

例えば、2013年にスウェーデンで、ヒジャブベールを着用しているイスラム教徒の女性に対して嫌がらせをする事件があった。それに対して、スウェーデンの人権擁護活動と反人種差別主義の活動家たちは団結の表明として、ベールを着用した。ただし本件では、活動家たち自身がイスラム教徒の女性をステレオタイプ化したとか、女性抑圧と結び付けられることもあるシンボルの存在を支持したという理由で、フェミニストたちに批判されることにもなった。

また、スウェーデンの芸術家ラーシュ・ヴィルクスが「roundabout dogs」(訳注:様々な街角に展示されている犬型の現代美術作品)にムハンマドを描いた作品が2007年に新聞で発表されると、一部の人がそれを不敬であると感じたことから、国内外で大騒ぎとなった。これは言論の自由、信仰の自由、芸術の独立性に関する議論を巻き起こし、ヴィルクス自身が死の脅迫まで受けるに至った。

一般の人々の間で、宗教の多様性についての態度は、ある特定の側面については、より消極的になっている。イェブレ大学が毎年発行している「多様性指標」の2018年版によると、イスラム教徒の女性はスウェーデン人の女性より抑圧されている、イスラム教の学校は社会統合をより困難にしている、イスラム教の礼拝の呼びかけは教会の鐘の音よりも不快である、と感じている人が増えている。しかし他方で、女性がブルカやニカブを着用することは受け入れられると考える人も増えている。


すぐ近くに並び立つストックホルムのカタリーナ教会(左)とストックホルム・モスク(右)
Photo: Poxnar/https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=11122807

#8 教会の財政と信仰の支援
スウェーデン教会は、その国内及び国際的な活動の財政支援のために、加入者に税(教会利用料)を課している。これは現在、加入者の収入の平均1パーセントである。教会の支出の優先事項には、スウェーデン国内の3,600の教会建造物の保持と修繕が含まれる。

スウェーデン教会は約470億クローナの資産を持っており、その年間総経費は約220億クローナである。スウェーデンの公的機関における透明性と開放性に準じて、市民は年次報告書によりスウェーデン教会の活動と財政状況を精査することができる。

他の宗教団体も、国から財政援助の支援を受けることができる。宗教団体支援庁は、財政援助をスウェーデン教会以外の宗教団体に提供する政府機関である。この支援の狙いは宗教団体がその活動とサービスの持続可能性を確保できるようにすることである。

#9 スウェーデン教会と女性

2014年に、アンシェ・ヤケレンは、国内外に対してスウェーデン教会を代表する主席代表であるウプサラ大司教を務める最初の女性となった。また、大司教はスウェーデンにおける新しい司教を選定する(聖別する)責任がある。

1960年、スウェーデン教会に最初の女性司祭が就任した。現在、司祭の半数は女性であり、司祭になるために勉強している人々の過半数は女性である。

キリスト教と教会は、かつてスウェーデンにおいて儀式と文化の重要な地位を保持していたかもしれない。しかし、これはスウェーデンが世界で最も自由な社会の一つになることの妨げにはならなかった。中絶の権利のように、宗教的・社会的な保守主義が優勢になることの多い分野においても、スウェーデンでは深刻な論争が見られない。結婚せずに一緒に暮らして、子供を持つことも社会的に受け入れられている。

スウェーデン教会は自由な社会の変革を妨害するのではなく、むしろ寄り添うことの方が多かった。たとえば、2009年にスウェーデンでの同性結婚が合法化された時には、その同じ年に教会が同性結婚の挙式の開催を始めることを決定している。

伝統的でありながら新しい考えも生み出し、世俗的でありながら宗教的であり、寛容でありながら挑戦的でもある。これらのすべてがスウェーデンにおける事実である。宗教というものは、他の国々と同様、スウェーデンにおいても常に複雑な問題である。

Quick fact
アンシェ・ヤケレン大司教
2014年よりアンシェ・ヤケレンがスウェーデンで初めての女性大司教を務めている。彼女はドイツ出身で、ウプサラに移住する前はテュービンゲンで学んだ。彼女は1999年にルンド大学で博士号を取得し、ルンド主教区で司教となった後に現職に昇格した。ヤケレンは社会問題に積極的に関与することで知られ、「熟練したオピニオンメーカー」と呼ばれている。
Photo: Jan Nordén/Sweden.se

著者 Scott Sutherland
掲載ページ:https://sweden.se/society/10-fundamentals-of-religion-in-sweden/
翻訳時点の最終更新日 2020年7月20日
翻訳 ニニ、内田健太郎
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表は著作権上・技術上転載可能なもののみ転載し、他サイトへのリンクは転載しておりません。