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【Sweden.se日本語版】ジェンダー平等

目次


Photo: Asaf Kliger/imagebank.sweden.se

女性にとっても、男性にとっても平等な権力と影響力―それがスウェーデンの目指すところだ

権力と影響力
 スウェーデンは男女差別禁止法を掲げており、政府は自らをフェミニスト政権と宣言している。しかし企業の経営陣は依然として男性が主導権を握る形となっている。以下、詳しく見てみよう。

スウェーデンの取り組み

 スウェーデンは長らく男女平等を主導する国として力を持ってきた。スウェーデンは性別に関わらず誰もが働けること、自分自身で生活していくこと、キャリアと家庭生活のバランスの取れた生活を送れること、虐待や暴力に怯えることなく生活できることを基本原則として掲げている。
 男女平等とはただ単に男女が社会のあらゆる場面で同じ数だけ配置されることを意味しているわけではない。男女両方の知識と経験が社会を良くするためのあらゆる面において活用されることを保証するという意味での、質的な面に関するものでもある。

「Fワード」を発信する

 スウェーデンの現政権は、自らの政権のことをフェミニスト政権と宣言しており、フェミニスト外交に専念している。この考え方については、国内外から称賛と批判の両方が寄せられている。フェミニズムという言葉や、その意味についてはスウェーデン国内でも議論がなされているが、この言葉は他の多くの国々ほど批判されているわけではない。この「Fワード」を使うことによって、政府は男女平等がいかに社会にとって重要か、またその実現のためにはもっと努力が必要ということを強調したいと考えている。
 首相を含む23人の大臣のうち12人が女性であるのは偶然ではない。1947年にカリン・コック(Karin Kock)氏が女性初の大臣になって以降、確実に状況は良くなってきている。現在のスウェーデンの議員のほぼ半数を女性が占めている。

ジェンダーの主流化

 スウェーデン政府はスウェーデン男女共同参画庁に委託し、政府機関のすべての業務にジェンダーの視点を取り入れることを支援している。この取り組みは「政府機関における ジェンダー主流化プログラム(Gender Mainstreaming in Government Agencies (GMGA))」と呼ばれており、各機関の仕事のあらゆる側面においてジェンダー平等を取り入れることを目標としている。

男性優位の経営陣-現状

 その一方で、ビジネス分野においてはまだ男性優位の体制が続いている。スウェーデン統計局による2020年からのジェンダー平等に関する2年に1度の報告書によると、ストックホル証券取引所の上場企業において、女性社長の割合は10%、女性取締役の割合は35%であった。政治家の中には経営におけるジェンダー平等を達成する手っ取り早い方法として女性のクォータ制を取り入れるのはどうかと提案する政治家もいる。またオールブライト財団(Allbright foundation)はテクノロジー系の起業における男女不平等に関する批判的な報告書を作成している。

職場におけるジェンダー平等

 職場において男女が平等に扱われるようになるまでの道のりは長いものであった。職場においての男女差別は1980年から違法とされている。2009年に制定されたスウェーデン差別禁止法では、雇用主に対して男女間における平等を積極的に促進するだけでなく、ハラスメントに対しても対策をするように求めている。2017年の法改正による法の適用範囲の拡大を受けて、雇用者の性別、トランスジェンダーのアイデンティティや表現、民族、宗教その他の信条、障害、性的志向、年齢といった、あらゆる差別に関連するハラスメントが防止活動の対象とされた。が含まれた。
 同法は、育児休業を取得中、取得した、もしくはこれから取得する雇用者や就職希望者を不当に扱ってはならないことも規定している。
 差別があった場合は、平等の権利を守る政府機関である差別オンブズマン(Diskrimineringsombudsmannen)に通報することができる。この「差別」には、育児取得に関連した雇用者からの不当な扱いを含んでいる。

世界的なジェンダー格差

 毎年、世界経済フォーラムという国際機関が、健康、教育、経済、政治の指標に基づき、男女格差についておよそ150の国をランク付けしている。2006年以来、スウェーデンは一度も5位を下回ったことがない。このグローバルジェンダーギャップ報告書と国際労働機関(ILO)によると、世界の労働市場はジェンダー平等とは程遠い。世界的に見ると、男性の約72%は労働力となっているが、女性は47%に過ぎない。
 2022年のグローバルジェンダーギャップ報告書(世界経済フォーラム、2022年7月)によれば、世界規模で男女格差が解消されるまでには、あと132年かかるようである。

経済的平等

 スウェーデンでは長い時間をかけて男女間の経済的平等を大きく進展させた。しかし給料にはまだ格差がある。このことはスウェーデンの男女平等における重大な課題の1つとなっている。

なぜ賃金が平等にならないのか

 2021年時点で、スウェーデンの女性の平均月収は男性の90.1%である。
 男女間の賃金格差は専門性、業種、職位、就業経験、年齢などの違いで起こると言われるが、それらの中には性別との関係が深いように見えるものがある。
 スウェーデン差別禁止法は、雇用主と従業員が、給料の平等の実現のために積極的に努力し、また給料を引き上げるべく男女の機会均等を促進すべきであると定めている。
 スウェーデン女性ロビー(The Swedish Women’s Lobby、Sveriges Kvinnolobby)は、性別に関わらず全員が平等な給与を得られるように保証する、などの目標を掲げている。2012年には、女性が基本的にフルタイム分の給料を得ていないという表現で差別を明らかにする「全日分の給料を払え(pay all day)運動」を始めた。この運動には女性政治連合、労働組合、女性運動協会が協力している。

要因の1つはパートタイム

 スウェーデンでは、女性の3人に1人、男性の10人に1人がパートタイムで働いている。その主な理由はフルタイムの雇用不足であるが、女性ではその次に育児、さらに親族の介護が大きな理由となっている。
 女性は子供がいる場合、男性に比べてパートタイムで働く傾向がある。これは女性の積極的なキャリア形成や、賃金の向上を妨げ、年金が少なくなるという問題を引き起こす。育児休業を取った後、10年間をフルタイムの50%で働き、さらに10年間をフルタイムの75%で働いた女性の年金は、全期間をフルタイムで働いた人の年金の71%分にしかならない。

仕事と家庭の方程式は難しい! Photo: Liselotte van der Meijs/imagebank.sweden.se
スウェーデンにおける女性と男性の平均賃金の格差は縮小し続けている。 Photo: Sofia Sabel/imagebank.sweden.se
男性の子守り? いいえ、父親が育児休業を取っただけ。 Photo: Magnus Liam Karlsson/imagebank.sweden.se
育児休業

 スウェーデンの両親は有給で480日の休業を取得する権利がある。このうち90日はそれぞれの親が自分で取る必要がある。

仕事と家族

 スウェーデンは仕事と家庭の両立がかなりうまくいっている。スウェーデン人女性は平均1.7人(EU諸国の平均は1.5人)の子どもを生むが、それと同時に働く女性(15歳から74歳)の割合は比較的高く、64.4%に上る。

子供と仕事の方程式

 スウェーデンでは、男性も女性も同等の権利と義務を持ち働く親を支援するという家族政策によって、満足なワークライフバランスが実現しやすくなっている。
 保育は全ての親に保証され、保育園は誰にとっても手の届くものであることを目指している。共働き世帯の支援を促進するために、公共の保育園が改変・拡大されたのは、1970年代のことであった。

父親の育児はどうなっている?

 1974年に、スウェーデンは世界で初めて、女性に限られていた妊娠・出産休業を育児休業に置き換えた。いわゆる両親保険によって子ども1人あたり半年間の休業を得て、それぞれの親が半分ずつの日数を取得することが出来るようになった。しかしながら、父親は自分の休業日数を母親に譲ることが出来たため、その20年後には90%の育児休業が母親のみによって利用される結果となった。
 そこで1995年、最初の「パパの月」(pappamånad)が導入された。この制度は父親に30日間の休業を確保したものであり、もし父親がこれを利用しないと決めると、そのカップルは1ヶ月間の有給休業の資格を失うこととなった。2002年には、これが2ヶ月(60日間)に延長された。さらに2016年には3ヶ月(90日間)の有給休業が父親に確保され、今日では、両親の取得可能日数のおよそ30%を父親が利用している。
 外国のジャーナリストたちはスウェーデンにおける男性の育休取得率の高さを不思議に思っており、彼らのことを“latte dads”と呼ぶ者もいる。

買春という犯罪

 スウェーデンは1999年に性的サービスの購入を法律で禁止したが、売春した側を処罰せず買春を違法としたのは世界初であった。これは2005年にスウェーデン刑法典に統合された。

男性による女性への暴力

 国際的な指標によると、世界中でおよそ3人に1人の女性が身体的もしくは性的な暴力を受けたことがあり、そのうちの多くは夫婦などのパートナー間で発生している。スウェーデンでは女性と女子の権利を守り、強化するよう積極的に取り組んでいる。

レイプや性的暴行

 レイプの統計は、国によって犯罪の定義や登録方法に違いがあるため、比較が難しい。
 2018年にスウェーデンでは新たな性行為の同意に関する法律が適用され、明確な同意なしで行われる性行為は暴力や恐喝がなくてもレイプであるとした。
 スウェーデンは他の国々と異なり、報告されたレイプのひとつひとつが別々の犯罪として登録される。例えば、ある加害者が同じ被害者を3回レイプし、その3回の事件がすべて訴えられた場合、3件のレイプ事件が記録されることになる。また、被害者がそれを訴えようと思う気持ちも国によって異なる場合がある。スウェーデン国家犯罪防止委員会(Brå)はスウェーデンのレイプに関する統計を発表している。

犠牲の多い暴力

 スウェーデンでは、ここ数年で女性に対する暴力の報告件数が大幅に増加している。これは、今までよりも多くの女性が声を上げるようになったという意識の変化が一つの原因であるとされているが、報告されないケースも多く、女性に対する暴力が増えたかどうかを判断するのは容易でない。2021年、スウェーデンでは18歳以上の女性に対する暴力が約28,900件記録され、そのうちの81%のケースで、加害者はその女性が知っている人物であった。スウェーデンの「女性に対する暴力に関する法律」は1998年に施行され、女性に対する身体的攻撃や性的・心理的侮辱がそれぞれ考慮されるようになっている。
 なお犯罪統計の国際比較は非常に難しいことが知られており、注視する必要がある。より詳しくはスウェーデン国家犯罪防止委員会の説明を参照すること。

ガイ・トーク

 グローバル・ガイ・トークは、スウェーデンの非営利財団Make Equalが行っている活動である。スウェーデンで、#killmiddagというスローガンのもと始まり、現在では世界中に広まっている。そのコンセプトはシンプルで、グループで集まった男性がめったに話さないようなこと-弱さ・愛・友情など-について話そう、というものである。このプロジェクトは、男性が自分自身から始めることで、より平等な社会に貢献する機会を提供することを目的としている。

原資料掲載ページ:https://sweden.se/life/equality/gender-equality
翻訳時点の最終更新日 2022年7月15日
翻訳 内田優理 田辺莞菜 和田安純
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表はSweden.seに掲載されたものをそのまま転載しています。他サイトへのリンクは転載しておりません。