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アメリカの雑誌U.S.Newsが毎年発表している「ビジネスがしやすい(Open for Business)国」ランキングで、スウェーデンは73カ国中で第7位でした。
これは、それぞれの国が官僚主義、安い製造コスト、汚職、優遇税制、政府の透明性という5つの要素についていかなる評価を受けているかを反映したものです。

出所:U.S.News

2019年のスウェーデンの順位は第4位で、北欧諸国の中で最も高かったのですが、2020年については、代わりに第4位にランクを上げたデンマークに抜かれてしまいました。第9位のフィンランドは前年と変わりませんが、第8位であったノルウェーが第10位に後退しました(アイスランドは調査対象国には含まれていません)。ちなみに日本は前年の第22位から第25位と順位を下げ、北欧諸国からはかなり水をあけられています。

2019年におけるスウェーデンの1人当たり国民総所得(GNI)は55,780ドル、同年の日本円換算で約608万円で、世界第11位。他の北欧諸国は、第2位のノルウェーを筆頭にアイスランドが第5位、デンマークが第8位、フィンランドが第16位となっています。他方、日本は第25位で41,710ドル(約455万円)ですから、スウェーデンの豊かさは日本の1.3倍以上ということになります。

注:Atlas methodによる。
出所:World Bank, World Development Indicators

1991年から2019年にかけての動きを見ると、1990年代は日本が北欧諸国を上回っていましたが、その後に伸び悩んでいる間にすっかり追い越されてしまいました。なおアイスランドはリーマンショックの際に大きな打撃を受けて一時急下降しましたが、その後は順調に回復し、ここ最近は北欧の5カ国とも日本を上回る状況が続いています。

出所:同上


Photo: Helena Wahlman/imagebank.sweden.se

 スウェーデンのヘルスケアは主に税金で賄われ、誰もがヘルスケアのサービスを平等に利用できるシステムである。資金、サービスの質、効率性が課題となっている。

地方分権されたヘルスケア

 スウェーデンは290の市と21の県に分けられる。スウェーデンのヘルスケアは地方分権化されており、県議会が、そして場合によっては市議会や市役所が、責任を有している。これは保健医療サービス法によって規定されている。中央政府の役割は基準やガイドラインを設けたり、健康や医療の為の政治的目標を掲げたりすることである。

 県議会は国政選挙と同日に行われる4年に1回の地方選挙によって選ばれた代表たちによる政治機関である。

市や県の役割

 スウェーデンの政策は全ての県議会がその県民に質の高い保健と医療を提供し、全ての県民の健康を促進するために働くこととしている。2019年現在、県は23歳までの県民に対して歯科ケアの費用負担も行っている。24歳からは国からの補助を受ける形になる。

 スウェーデンの市は自宅や老人ホームで過ごす高齢者のケアを任されている。市の担う役割には、身体や精神に障害を持つ人々のケア、退院した人や学校保健に対しての支援・サービス提供も含まれている。

スウェーデンのCovid-19に関する保健アドバイス
・たとえ症状が軽くても、気分がすぐれなければ自宅にとどまる。
・高齢者との面会を避ける。
・カゼをひいている人と同居している場合は、自宅にとどまる必要はない。
・石鹸と消毒液で手を清潔にする。
・鼻をすすったり咳をする時にはヒジをつける。
・顔をさわるのを避ける。

スウェーデンでは、病院に行く必要がある人に検査を提供するのが基本である。
1177.seというウェブサイトで、一般的およびCovid-19に特定した保健アドバイスを行っている。
公共保険庁(Public Health Agency of Sweden/Folkhälsomyndigheten)がさらなる情報を提供している。


スウェーデンの高齢者は、自宅でケアを受ける権利を有している。
Photo: Kristin Lidell/imagebank.sweden.se

高齢化する人口

 他の先進国同様、スウェーデンの人々はますます長生きになっている。寿命の平均は現在、女性が84歳で男性は81歳。これは心臓発作や脳卒中の死亡率の低下が原因の1つといえる。約5人に1人は65歳かそれ以上。これはスウェーデンがヨーロッパの中でも相対的に高齢社会であることを示している。一方、スウェーデンに生まれる子供の数がほぼ毎年増えてきたのは1990年代後半以降のことである。高齢者の人口はスウェーデンの医療制度に圧力をかけている。


Photo: Melker Dahlstrand/imagebank.sweden.se

診察料の患者負担
-入院:1日最大100クローナ
-初期診療:0~300クローナ(県によって異なる)
-専門診療・救急診療:最大400クローナ

最大負担額
 1人の患者は12カ月間で1,150クローナ以上負担することはなく、それ以上かかった分は無料となる。
薬代は12カ月間で2,350クローナ以上負担することはない。

患者の安全と治療の質

 医療機関へのアクセス、サービスの質、効率性、資金といったスウェーデンの医療制度が直面する課題の多くは他の国々にも見られるものであるが、最も優先されるのは患者の安全である。2011年にスウェーデンは患者の安全についての新たな法律を制定した。この法律は患者やサービスの受け手、そしてその家族のメンバーが医療制度の質に影響を与えることができる新しい機会を与えるものであった。

 国民患者調査(National Patient Survey)は、患者がどのように医療制度の質を理解しているかについて、毎年調査している。その質問は、治療、治療方針への患者の参加、提供されるケアや情報への信頼度に関するものである。その結果は、県や市によってまとめられ、ケアの向上のために用いられている。

イーヘルス(eHealth)のビジョン
「2025年に、スウェーデンはデジタル化による機会とイーヘルスを活用において世界一となる。それによって国民が良質かつ平等な医療と福祉をより手軽に受けられるようにし、さらにより一層の自立と社会生活への参加のための方策を発展・強化する。」
出所:Vision for eHealth 2025 – common starting points for digitisation of social services and health care

90日以内の専門治療

 白内障や人工股関節置換手術などの前もって予定されている治療への待ち時間は長年にわたって不満の種であった。その結果、スウェーデンは2005年に治療保証を導入した。

 その内容は、全ての患者が助けを求めた当日に、地元の保健センターと連絡が取れるようにすること、そして3日以内に医療的な所見をもらえるようにするというものである。最初の診察を終え、どのような治療が必要か決まったら、すべての患者は90日以内に専門医に診てもらい、そのさらに90日以内に手術や治療を受けられるようにしなければならない。この待ち時間を超えた場合には、交通費も含めて追加負担なく、別の病院で治療を受けられる。

 2020年1月以降の統計によると、患者さんの88%は90日以内に専門医に診てもらい、82%はそのさらに90日以内に治療を受けるか、または手術を受けている。ただし、これらの統計はコロナウイルスのパンデミックによって変わるだろう。他国のようにスウェーデンもコロナウイルスとの戦いを目的とする治療を優先していかなければならないからである。


助産師が死亡率を下げている
 スウェーデンは長らくプロの助産師を重視してきた。これによって出産時の母親の死亡率が急激に減少したことが研究で示されている。
 出産時の死亡率は18世紀の時点で100件中でおよそ1人であったが、20世紀の初めには100,000件の出生で命を落とす母親の数は250人にまで減った。現在、スウェーデンは出産時の死亡率が世界で最も低い国の1つであり、死産は1,000件中3件未満、母親の死亡率は100,000件中4件未満となっている。
Photo: Simon Paulin/imagebank.sweden.se

治療への公共支出

 スウェーデンの国内総生産(GDP)に占める健康へのコストと医療費は他のヨーロッパ諸国に劣らずかなり安定している。2018年時点で、健康へのコストと医療費はGDPの中で11%である。スウェーデンの健康へのコストと医療費の大部分は県と市の税金でまかなわれている。これにさらに中央政府からの税金が加わり、患者自身の費用負担は非常に小さい。

 政府が保健、医療、社会的なケアに使う金額は2018年時点で78.4億クローネと、政府による最大の支出の1つとなっている。

民間の医療提供者

 県が民間の医療提供者からサービスを購入するという仕組みは、現在ますます普及している。2018年には13.5パーセントの医療について、県が資金を出し、民間の業者がケアを提供するという仕組みが取られている。民間の業者であっても、市が提供するケアと同様の規制や料金によって患者が保護されるということが協定によって保証されている。

 また現在は、患者と医師をつなぐアプリのように、多くのデジタルによる医療解決策も取られている。より詳しい情報は「10 innovations you didn’t know were Swedish」を参照のこと。

保健行政に関する国の組織
保健福祉理事会(The National Board of Health and Welfare/Socialstyrelsen)は中央政府の専門家・監督当局である。

スウェーデン地方当局・地域連盟(The Swedish Association of Local Authorities and Regions/SALAR)は、スウェーデンの290の自治体と21の地域協議会において保健行政や専門性、雇用に関わる問題を扱う。

医療責任評議会(The Medical Responsibility Board/Hälso- och sjukvårdens ansvarsnämnd)は、専門家が基準に違反したかどうかを調査する政府機関である。

保健技術評価・社会サービス評価庁(The Swedish Agency for Health Technology Assessment and Assessment of Social Services、SBU – Statens beredning för medicinsk och social utvärdering)は、患者にとって最善の治療法や資源の最も効果的な利用法を追求する。

歯科・薬科便益庁(The Dental and Pharmaceutical Benefits Agency、Tandvårds- och läkemedelsförmånsverket)は、薬剤・医療器具・歯科施術に対する国の補助の可否を定める役割を担っている。

医薬製品庁(The Medical Products Agency、Läkemedelsverket)は、医薬品の開発、製造、販売を規制・監視する責任を負う国の当局である。

掲載ページ:https://sweden.se/society/health-care-in-sweden/
翻訳時点の最終更新日 2020年5月5日
翻訳 野池真帆、堀口真緒
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表は著作権上・技術上転載可能なもののみ転載し、他サイトへのリンクは転載しておりません。


Photo: Tina Stafrén/imagebank.sweden.se

 衣料は長持ちし、その後リサイクルやリユースできるようにデザインすることで、ファッションは循環型の生産に向かう必要がある。スウェーデンのファッション産業はそのための研究に多くを投資し、より持続可能な方法の追求に努力している。

先駆的な企業

 スウェーデンのファッションは、一方通行型の産業を循環型に変えることを目指している。資材は使用後処分するのではなく、リサイクルや他の方法で使用する。そうすれば廃棄物の量を最低限に維持することができる。

 “ファッション”という用語を構成する要素を根本的に見直して再定義し、それに基づいた新しいビジネスモデルが現在模索されている。Klädoteketはそのようなビジネスモデルの1つである。これは「ファッションライブラリー」として、デザイナーブランドの衣料を借りることができるというものである。

ファッションライブラリー スウェーデンの物語

長期的な視野

 伝統的に、ファッションは変化や絶え間なく新しいデザインへの欲求によって定義づけられてきた。しかし現在は、企業においても、より長持ちするような衣料の開発を積極的に進めている。たとえそれが短期的に考えて、自社製品でお金を稼げないことを意味したとしても、である。また多くのブランドが、進歩のスピードを上げるべく、解決策の発見と知識の共有を目指して互いのコラボレーションを進め始めている。

 Mistra Future Fashionという野心的な研究プログラムにおいては、持続可能なファッションを目指して体系的な変化を実現する努力をしている。する。そこではデザイン、ユーザー、サプライチェーン、リサイクルという4つの分野に焦点が当てられている。また科学的な成果がファッション産業に行き渡り、H&M、Lindex、Eton、Nudie Jeansといったいくつかの重要な業界パートナーにおいて機能する仕組みを確立している。

https://vimeo.com/253938475

長持ちする衣料

企業に持続可能性を統合しているという意味で、Flippa Kはスウェーデンのブランドの 中で第一線を走っている。同社は2014年以来、「持続可能性は成長への道に通ずる」というモットーを掲げ、衣料の寿命にまず焦点を当てて事業を展開してきた。2015年には、前の季節の衣料を貸し出すというFlippa Kリースという新たなコンセプトを開拓した。同社はこれによって新しいビジネスモデルと、より持続可能な消費の方法を模索することができるようになった。

 Houdini Sportswear は、衣料の寿命を延ばし、修繕を提供し、レンタルと中古販売を実施することで、製品の半数を循環型にしようと努力している。同社はまた自社の製品んを堆肥化する実験を行っている。


ヌードジーンズの修繕店
Photo: Tina Stafrén/imagebank.sweden.se

古着を修繕する

 ヨーテボリに拠点を置くNudie Jeansは厳格な行動規範を設けて、委託するサプライヤーを厳選し、また継続的な報告、行動計画、認証の提出を求めている。

 また、彼らは古くなったジーンズを修理してくれるので、顧客は新しいものを買う必要がない。これはファッションが常に更新され、流行に乗っているべきだという考えに挑戦するものである。

ファッション・カウンシル
 ファッション・カウンシルは、1979年よりスウェーデンのファッション産業の発展の強化・促進・支援し、ファッション産業をあらゆる分野で持続可能なものとし、国際的な地位を確保するよう努めている。
swedishfashioncouncil.se

著者 Philip Warkander & Sweden.se
掲載ページ:https://sweden.se/culture-traditions/making-fashion-sustainable/
翻訳時点の最終更新日 2020年8月20日
翻訳 大久保咲季、横渡礼奈
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表は著作権上・技術上転載可能なもののみ転載し、他サイトへのリンクは転載しておりません。


Photo: Lena Granefelt/Agent Molly & Co/imagebank.sweden.se

 スウェーデンの学校システムは税金で賄われ、教育法のもとで運営されている。同法は、全ての子どもが6歳になった年から10年間、学校に通うことを義務付けている。

プリスクール
 スウェーデンでは、自治体が1〜5歳の子どもたち向けのフォースクーラ(プリスクール、就学前学校)を運営している。自治体による補助金の額は子どもの年齢や両親の仕事、学歴、失業者かどうかや育児休暇の状況によって決められる。

 スウェーデンのプレスクールは子どもたち個々のニーズや興味を確認できることを狙いとしたカリキュラムを用い、子ども達の成長に重点を置いている。子どもたちに男女関係なく同じ機会を与えようと努力する、ジェンダーを意識した教育がますます普及している。

義務教育

 スウェーデンの義務教育は4つのステージで構成されている。フォースクーラクラス(プレスクールクラス、0年生)、ローグスターディエット(1〜3年生)、メランスターディエット(4〜6年生)、ヘーグスターディエット(7〜9年生)。6〜13歳の子どもたちは学校の前後で学童保育を利用することができる。
 また、義務教育の中にはサーミ民族のためのサーミスクーラも含まれる。

高校

 ジムナーシウム(高校)は義務教育ではない。国が定めた18種類の3年プログラムがあり、そのうち6つは大学進学に向けての高等教育で、残りは職業教育が行われるプログラムである。

 入学条件はプログラムによって異なるが、いずれのプログラムでも義務教育最終学年で英語、スウェーデン語、数学が修了と認める成績を修めていることが求められる。

 2017年、スウェーデンの9年生のうち18%がその資格を持っていなかったが、そういった生徒たちには5つの導入プログラムが用意されており、その導入プログラムを終えた後に、高校のプログラムに入学することができる。

 さらに知的障がい者やアスリートのためのプログラムも設けられている。
 2017年には約90%の学生が高校の卒業資格(学位)を取得することができた。

5つの政府機関

スウェーデン学校調査庁:教育法に基づいて、全国の学校での教育の質を調査・監督する。
www.skolinspektionen.se

教育庁:教育の情報提供、教育に対する理解促進、資金や助成金の管理を行う。
www.skolverket.se

特別教育学校庁:障がいのある若者・成人に対しても、他の全ての人々の同じ発達・教育の機会を与える。
www.spsm.se

高等就職教育庁:労働市場での労働教育の需要を分析しどのプログラムを職業教育に含めるべきかを決め、公的資金を学校尾に割り当てる。さらにこれらの質や成果の評価・調査も行う。
www.myh.se/In-English

サーミ教育委員会:サーミスクールやその関連の活動のための行政機関であり、サーミスクール条例に基づいて運営されている。
www.sameskolstyrelsen.se


近年、スウェーデンでは、生徒の成績の向上を目指していくつかの改革が行われてきた。
Photo: Ann-Sofi Rosenkvist/imagebank.sweden.se

世界を手本に

 国際比較におけるスウェーデンの生徒の学力低下にともなって、スウェーデンの教育の質についての熱心な議論がこの十年間続けられてきた。そして長期的な利益の為にパフォーマンスを改善し、教員の地位を上げようという方向にようやく動き始めたところである。

 経済協力開発機構(OECD)による学習到達度調査(PISA)や、国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)などの国際的な研究では、近年のスウェーデンの子どもたちの能力の低下が指摘されてきた。

 ただし2019年のPISAの評価ではスウェーデンの15歳のスコアが、数学、読解、科学の分野でOECDの平均を上回り、教育の質について前向きな傾向を示し始めている。

近年の改革

 PISA研究の重要性は、スウェーデン内外の教育者や政治家から疑問視されている。標準化されたテストを批判する人々は、それが数学と理科にフォーカスしすぎていて、自己成長や、道徳、創造力などを推定する教育の分野を除外していると論じている。

 PISA存続の是非の議論はともかく、スウェーデン政府は教育システムを改善する方法を探求している。とりわけ、教師の給料が高い隣国フィンランドや韓国、そして少人数クラスが通例となっているオランダに注目している。

 過去数年に実施されたいくつかの改革では、生徒の成績の向上と、教職員の地位の上昇を目指してきた。

新しい教育法

 2011年からのスウェーデン教育法には、義務教育とそ子から先の教育、プリスクール、プリスクールイヤー、学童保育、成人教育に関する、基本理念と規定を含んでいる。これは、より良い監督、選択の自由、生徒の安全・安心を促進している。

新しいカリキュラム

 2011年7月1日から義務教育の生徒、サーミスクール、特別学校、高校のための新たな統合カリキュラムが施行された。このカリキュラムは新たに全体的な目標や、シラバスのガイドラインを定めている。プリスクールのカリキュラムには、生徒・児童の言語とコミュニケーション能力の発達や、科学や技術への明確な目標が含まれている。必須の全国共通テストは義務教育の3、6、9年生を対象として、生徒の進度を評価するために行われる。また、これらは高校への進学等における新たな資格要件となっている。

新しい評価システム

 スウェーデンの古い評価システムである、「優」から「落第」までの4段階の評価は、2011年に「A」から「F」までの6段階の新しい成績評価に取って代わられた。AからEであれば進級、Fは落第である。これらの評価は6年生から始められる。この新しい評価システムはヨーロッパの高等教育の標準的な評価システムであるECTSに非常に近いものである。

教師の資格

 2013年12月1日から、期限の定めのない雇用契約を結んでいる学校とプリスクールの教員は、教員免許が必須とされるようになった。スウェーデンの教育政策の節目をなすこの決断は、教育という職業の地位を引き上げ、その発展を支え、その結果として教育の質を向上させることを目標としている。

チャータースクール

 公的資金で成り立つ私立の学校であるチャータースクールの数は、スウェーデンで年々増えている。1990年台の法律改正に伴って、子どもやその親は授業料なしの学校の中で公立か私立かを選べるようになった。

 私立学校はスウェーデンで義務教育が開始されて以来存在していたが、公的資金による援助が1992年の法令によって認められるまでは、公立学校と肩を並べるほど普及していなかった。

 このように公的資金によって運営しながらも公立には区分されない学校を、授業料がかかる一握りの私立学校と区別するため、チャータースクール(スウェーデン語でフリースコーラ)と呼んでいる。

同じルールが適用

 スウェーデンではチャータースクールは、普通の公立学校と同様に、学校調査庁による承認を受け、また国が定めたカリキュラムとシラバスに従わなければならない。

 2017年におけるチャータースクールの割合は、義務教育では17%、高校では33%であった。生徒数ではそれぞれ15%、27%を占めた。

 スウェーデンには、学校を営利目的で経営することについて懐疑的な見方がある。すなわち、教育の質よりも利益を優先するのではないかという懸念がある。他方、私立学校の普及を主張する人々は、私立学校の方が、統計的な調査において良い結果が見られると述べている。例えば、子どもを私立学校に通わせている親たちの方が、公立に通う子どもの親たちよりも満足度が高くなっている。


Photo: Emelie Asplund/imagebank.sweden.se

子どもの権利

 スウェーデンの教育法と反差別法は、差別や屈辱的な扱いから子どもや生徒を守ることを目指している。基本的に、プリスクールや、学校、成人教育プログラムの校長は、差別は屈辱的な扱いの禁止を定め、平等な扱いを促進する責任がある。
 全ての生徒が、学校医や看護士、精神科医や福祉士のケアを受けることができ、またそれらは全て税金によって賄われている。
 また、2020年1月1日より、児童の権利に関する国連協定がスウェーデンの法律となる予定である(訳注:翻訳時点で施行されている)。

掲載ページ:https://sweden.se/society/education-in-sweden/
翻訳時点の最終更新日 2020年11月25日
翻訳 須賀萌花、田中真菜
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表は著作権上・技術上転載可能なもののみ転載し、他サイトへのリンクは転載しておりません。