Photo: Lena Granefelt/Agent Molly & Co/imagebank.sweden.se
スウェーデンの学校システムは税金で賄われ、教育法のもとで運営されている。同法は、全ての子どもが6歳になった年から10年間、学校に通うことを義務付けている。
プリスクール
スウェーデンでは、自治体が1〜5歳の子どもたち向けのフォースクーラ(プリスクール、就学前学校)を運営している。自治体による補助金の額は子どもの年齢や両親の仕事、学歴、失業者かどうかや育児休暇の状況によって決められる。
スウェーデンのプレスクールは子どもたち個々のニーズや興味を確認できることを狙いとしたカリキュラムを用い、子ども達の成長に重点を置いている。子どもたちに男女関係なく同じ機会を与えようと努力する、ジェンダーを意識した教育がますます普及している。
義務教育
スウェーデンの義務教育は4つのステージで構成されている。フォースクーラクラス(プレスクールクラス、0年生)、ローグスターディエット(1〜3年生)、メランスターディエット(4〜6年生)、ヘーグスターディエット(7〜9年生)。6〜13歳の子どもたちは学校の前後で学童保育を利用することができる。
また、義務教育の中にはサーミ民族のためのサーミスクーラも含まれる。
高校
ジムナーシウム(高校)は義務教育ではない。国が定めた18種類の3年プログラムがあり、そのうち6つは大学進学に向けての高等教育で、残りは職業教育が行われるプログラムである。
入学条件はプログラムによって異なるが、いずれのプログラムでも義務教育最終学年で英語、スウェーデン語、数学が修了と認める成績を修めていることが求められる。
2017年、スウェーデンの9年生のうち18%がその資格を持っていなかったが、そういった生徒たちには5つの導入プログラムが用意されており、その導入プログラムを終えた後に、高校のプログラムに入学することができる。
さらに知的障がい者やアスリートのためのプログラムも設けられている。
2017年には約90%の学生が高校の卒業資格(学位)を取得することができた。
5つの政府機関
スウェーデン学校調査庁:教育法に基づいて、全国の学校での教育の質を調査・監督する。
www.skolinspektionen.se
教育庁:教育の情報提供、教育に対する理解促進、資金や助成金の管理を行う。
www.skolverket.se
特別教育学校庁:障がいのある若者・成人に対しても、他の全ての人々の同じ発達・教育の機会を与える。
www.spsm.se
高等就職教育庁:労働市場での労働教育の需要を分析しどのプログラムを職業教育に含めるべきかを決め、公的資金を学校尾に割り当てる。さらにこれらの質や成果の評価・調査も行う。
www.myh.se/In-English
サーミ教育委員会:サーミスクールやその関連の活動のための行政機関であり、サーミスクール条例に基づいて運営されている。
www.sameskolstyrelsen.se
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近年、スウェーデンでは、生徒の成績の向上を目指していくつかの改革が行われてきた。
Photo: Ann-Sofi Rosenkvist/imagebank.sweden.se
世界を手本に
国際比較におけるスウェーデンの生徒の学力低下にともなって、スウェーデンの教育の質についての熱心な議論がこの十年間続けられてきた。そして長期的な利益の為にパフォーマンスを改善し、教員の地位を上げようという方向にようやく動き始めたところである。
経済協力開発機構(OECD)による学習到達度調査(PISA)や、国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)などの国際的な研究では、近年のスウェーデンの子どもたちの能力の低下が指摘されてきた。
ただし2019年のPISAの評価ではスウェーデンの15歳のスコアが、数学、読解、科学の分野でOECDの平均を上回り、教育の質について前向きな傾向を示し始めている。
近年の改革
PISA研究の重要性は、スウェーデン内外の教育者や政治家から疑問視されている。標準化されたテストを批判する人々は、それが数学と理科にフォーカスしすぎていて、自己成長や、道徳、創造力などを推定する教育の分野を除外していると論じている。
PISA存続の是非の議論はともかく、スウェーデン政府は教育システムを改善する方法を探求している。とりわけ、教師の給料が高い隣国フィンランドや韓国、そして少人数クラスが通例となっているオランダに注目している。
過去数年に実施されたいくつかの改革では、生徒の成績の向上と、教職員の地位の上昇を目指してきた。
新しい教育法
2011年からのスウェーデン教育法には、義務教育とそ子から先の教育、プリスクール、プリスクールイヤー、学童保育、成人教育に関する、基本理念と規定を含んでいる。これは、より良い監督、選択の自由、生徒の安全・安心を促進している。
新しいカリキュラム
2011年7月1日から義務教育の生徒、サーミスクール、特別学校、高校のための新たな統合カリキュラムが施行された。このカリキュラムは新たに全体的な目標や、シラバスのガイドラインを定めている。プリスクールのカリキュラムには、生徒・児童の言語とコミュニケーション能力の発達や、科学や技術への明確な目標が含まれている。必須の全国共通テストは義務教育の3、6、9年生を対象として、生徒の進度を評価するために行われる。また、これらは高校への進学等における新たな資格要件となっている。
新しい評価システム
スウェーデンの古い評価システムである、「優」から「落第」までの4段階の評価は、2011年に「A」から「F」までの6段階の新しい成績評価に取って代わられた。AからEであれば進級、Fは落第である。これらの評価は6年生から始められる。この新しい評価システムはヨーロッパの高等教育の標準的な評価システムであるECTSに非常に近いものである。
教師の資格
2013年12月1日から、期限の定めのない雇用契約を結んでいる学校とプリスクールの教員は、教員免許が必須とされるようになった。スウェーデンの教育政策の節目をなすこの決断は、教育という職業の地位を引き上げ、その発展を支え、その結果として教育の質を向上させることを目標としている。
チャータースクール
公的資金で成り立つ私立の学校であるチャータースクールの数は、スウェーデンで年々増えている。1990年台の法律改正に伴って、子どもやその親は授業料なしの学校の中で公立か私立かを選べるようになった。
私立学校はスウェーデンで義務教育が開始されて以来存在していたが、公的資金による援助が1992年の法令によって認められるまでは、公立学校と肩を並べるほど普及していなかった。
このように公的資金によって運営しながらも公立には区分されない学校を、授業料がかかる一握りの私立学校と区別するため、チャータースクール(スウェーデン語でフリースコーラ)と呼んでいる。
同じルールが適用
スウェーデンではチャータースクールは、普通の公立学校と同様に、学校調査庁による承認を受け、また国が定めたカリキュラムとシラバスに従わなければならない。
2017年におけるチャータースクールの割合は、義務教育では17%、高校では33%であった。生徒数ではそれぞれ15%、27%を占めた。
スウェーデンには、学校を営利目的で経営することについて懐疑的な見方がある。すなわち、教育の質よりも利益を優先するのではないかという懸念がある。他方、私立学校の普及を主張する人々は、私立学校の方が、統計的な調査において良い結果が見られると述べている。例えば、子どもを私立学校に通わせている親たちの方が、公立に通う子どもの親たちよりも満足度が高くなっている。
Photo: Emelie Asplund/imagebank.sweden.se
子どもの権利
スウェーデンの教育法と反差別法は、差別や屈辱的な扱いから子どもや生徒を守ることを目指している。基本的に、プリスクールや、学校、成人教育プログラムの校長は、差別は屈辱的な扱いの禁止を定め、平等な扱いを促進する責任がある。
全ての生徒が、学校医や看護士、精神科医や福祉士のケアを受けることができ、またそれらは全て税金によって賄われている。
また、2020年1月1日より、児童の権利に関する国連協定がスウェーデンの法律となる予定である(訳注:翻訳時点で施行されている)。
掲載ページ:https://sweden.se/society/education-in-sweden/
翻訳時点の最終更新日 2020年11月25日
翻訳 須賀萌花、田中真菜
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表は著作権上・技術上転載可能なもののみ転載し、他サイトへのリンクは転載しておりません。
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