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天然資源ガバナンス研究所(Natural Resource Governance Institute)とブルッキングス研究所に所属するダニエル・カウフマン(Daniel Kaufmann)と世界銀行のアート・クレイ(Aart Kraay)が世界銀行の支援を受けて開発した世界ガバナンス指標(Worldwide Governance Indicators)の1つに、政府の効率性(Government Effectiveness)指標というのがあります。これは様々なデータを統合して政府の効率性を-2.5から2.5の範囲で示したものですが、ここでも北欧諸国が上位を占めており、スウェーデンは第7位です。

出所:The Worldwide Governance Indicators (WGI) project

広く知られているように、北欧諸国は高福祉高負担、つまり高いレベルの福祉は得られるけれども、その代わりに税負担の割合も高いです。しかし、その税金が効率的に無駄なく使われているのであれば国民はその負担を受け入れるということを、北欧諸国の例は示しています。これは逆に、国民に高い負担を求めるのであれば、政府は効率的でなくてはならないということでもあります。

負担の割合をどの程度に調整するかは、それぞれの国の判断によって異なりますが「高負担=悪」とは必ずしも言えないということは、私たちにとっての大きな教訓であるように思います。

 

アメリカのイェール大学やコロンビア大学などの研究機関が様々な分野で世界各国を評価し、それを総合したものを環境パフォーマンス指数として公表しています。2020年におけるトップはデンマーク。スウェーデンは第8位で、その前後に第7位のフィンランド、第9位のノルウェーが名前を連ねています。

資料:Environmental Performance Index

なお、研究チームは各国の現在の指数だけでなく、それが10年前と比べてどの程度向上したかについても示しています。それによるとスウェーデンの向上率は5.3%でした。これに対して日本の向上率は-0.5%、つまり10年前よりも後退しています。現在の順位は第12位と決して悪くはありませんが、非常に不安な状況です。

優れたビジネス環境を提供し、高福祉を維持しながら高負担を抑制し、男女平等を促進し、着実な経済成長を実現する。このような理想的な国家運営を実現している基盤となっているのが、選挙における高い投票率です。

注:OECD加盟37カ国中の順位。2020年3月時点で直近の議会(二院制の場合は下院)選挙における結果。
資料:International Institute for Democracy and Electoral Assistance

上のグラフは、OECD諸国において直近に実施された国会議員選挙の投票率の上位国と日本です。2018年に選挙が実施されたスウェーデンは87.2%で第4位。北欧以外の上位の国々(オーストラリア、ルクセンブルグ、ベルギー、トルコ、オランダ)では強制投票制度が採用されている、もしくはかつて採用されていたので、純粋に自発的な投票における投票率という意味では、北欧諸国の投票率が国際的にみて非常に高いことがわかります(ただしフィンランドは投票率68.7%、第17位にとどまっており、この点では例外的です)。

スウェーデンが「女性が働く国」であることは、よく知られています。15歳~64歳の女性のうち、高校生や大学生などを除き、実際に働いている、もしくは働きたくて仕事を探している人の割合(労働力参加率)を見ると、スウェーデンは81.1%と、84.4%のアイスランドに次ぐ高さです。

注:OECD加盟37カ国中の順位
資料:OECD, OECD Data

スウェーデンでは、結婚しても子どもが生まれても、働ける人は働くものとされています。その理由は単純で、パートナーが2人とも働かなければ、生活が成り立たないからです。国としても、高い教育を受けた優秀な労働力が、女性であるというだけの理由で家事労働しか行わないというのは、大きな損失です。その部分のロスが少ない(ただし全くないわけではありません)のが、スウェーデンの好調な経済を支えている理由の1つです。

もちろん、消費者としての国民は男女ほぼ半数ですから、商品開発その他の事業活動の意思決定が男性目線でのみ行われるというのは、そもそもおかしな話です。もちろん日本にもそのことに気がついて女性社員をうまく活用している企業が最近増えてきました。とはいえ、「わが社は女性の働く環境が整っている」と胸を張れる経営者は、この国にいったいどれだけいるのでしょうか。

あなたが考えうる最良の人生を10点、最悪の人生を0点とすると、あなたは自分の人生に何点をつけますか。国際連合の支援を受けた「持続可能な開発の解決ネットワーク(Sustainable Development Solutions Network)は、このような方法で集めた回答を国ごとに平均したデータを用いて世界各国の幸福度について分析した結果を「世界幸福度報告書(World Happiness Report)」に毎年発表しています。

出所:John F. Helliwell et al. eds. 2020. World Happiness Report 2020.

これによると、フィンランドは2018年から2020年にかけて3年連続トップでしたが、その前はノルウェー、その前はデンマークと、近年は北欧諸国が首位を独占しています。2020年におけるスウェーデンの順位は第7位で、そこまでの7カ国の中に北欧の5カ国が全て含まれています。
むろん、どんな人生を幸せと感じるかは人によって大きく異なります。少しうがった見方をすれば、北欧の人々は単に「おめでたい」だけなのかもしれません。逆に日本の順位が低いのは、自分が幸せと感じていても人に聞かれると控えめな点数をつけてしまうということなのかもしれません。
しかしもしそうだったとしても、北欧諸国の社会システムには、人々が幸せに暮らせるのだろうなと思わせるような仕組みがいろいろと整っていることもまた事実なのです。