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スウェーデンのヘルスケア


Photo: Helena Wahlman/imagebank.sweden.se

 スウェーデンのヘルスケアは主に税金で賄われ、誰もがヘルスケアのサービスを平等に利用できるシステムである。資金、サービスの質、効率性が課題となっている。

地方分権されたヘルスケア

 スウェーデンは290の市と21の県に分けられる。スウェーデンのヘルスケアは地方分権化されており、県議会が、そして場合によっては市議会や市役所が、責任を有している。これは保健医療サービス法によって規定されている。中央政府の役割は基準やガイドラインを設けたり、健康や医療の為の政治的目標を掲げたりすることである。

 県議会は国政選挙と同日に行われる4年に1回の地方選挙によって選ばれた代表たちによる政治機関である。

市や県の役割

 スウェーデンの政策は全ての県議会がその県民に質の高い保健と医療を提供し、全ての県民の健康を促進するために働くこととしている。2019年現在、県は23歳までの県民に対して歯科ケアの費用負担も行っている。24歳からは国からの補助を受ける形になる。

 スウェーデンの市は自宅や老人ホームで過ごす高齢者のケアを任されている。市の担う役割には、身体や精神に障害を持つ人々のケア、退院した人や学校保健に対しての支援・サービス提供も含まれている。

スウェーデンのCovid-19に関する保健アドバイス
・たとえ症状が軽くても、気分がすぐれなければ自宅にとどまる。
・高齢者との面会を避ける。
・カゼをひいている人と同居している場合は、自宅にとどまる必要はない。
・石鹸と消毒液で手を清潔にする。
・鼻をすすったり咳をする時にはヒジをつける。
・顔をさわるのを避ける。

スウェーデンでは、病院に行く必要がある人に検査を提供するのが基本である。
1177.seというウェブサイトで、一般的およびCovid-19に特定した保健アドバイスを行っている。
公共保険庁(Public Health Agency of Sweden/Folkhälsomyndigheten)がさらなる情報を提供している。


スウェーデンの高齢者は、自宅でケアを受ける権利を有している。
Photo: Kristin Lidell/imagebank.sweden.se

高齢化する人口

 他の先進国同様、スウェーデンの人々はますます長生きになっている。寿命の平均は現在、女性が84歳で男性は81歳。これは心臓発作や脳卒中の死亡率の低下が原因の1つといえる。約5人に1人は65歳かそれ以上。これはスウェーデンがヨーロッパの中でも相対的に高齢社会であることを示している。一方、スウェーデンに生まれる子供の数がほぼ毎年増えてきたのは1990年代後半以降のことである。高齢者の人口はスウェーデンの医療制度に圧力をかけている。


Photo: Melker Dahlstrand/imagebank.sweden.se

診察料の患者負担
-入院:1日最大100クローナ
-初期診療:0~300クローナ(県によって異なる)
-専門診療・救急診療:最大400クローナ

最大負担額
 1人の患者は12カ月間で1,150クローナ以上負担することはなく、それ以上かかった分は無料となる。
薬代は12カ月間で2,350クローナ以上負担することはない。

患者の安全と治療の質

 医療機関へのアクセス、サービスの質、効率性、資金といったスウェーデンの医療制度が直面する課題の多くは他の国々にも見られるものであるが、最も優先されるのは患者の安全である。2011年にスウェーデンは患者の安全についての新たな法律を制定した。この法律は患者やサービスの受け手、そしてその家族のメンバーが医療制度の質に影響を与えることができる新しい機会を与えるものであった。

 国民患者調査(National Patient Survey)は、患者がどのように医療制度の質を理解しているかについて、毎年調査している。その質問は、治療、治療方針への患者の参加、提供されるケアや情報への信頼度に関するものである。その結果は、県や市によってまとめられ、ケアの向上のために用いられている。

イーヘルス(eHealth)のビジョン
「2025年に、スウェーデンはデジタル化による機会とイーヘルスを活用において世界一となる。それによって国民が良質かつ平等な医療と福祉をより手軽に受けられるようにし、さらにより一層の自立と社会生活への参加のための方策を発展・強化する。」
出所:Vision for eHealth 2025 – common starting points for digitisation of social services and health care

90日以内の専門治療

 白内障や人工股関節置換手術などの前もって予定されている治療への待ち時間は長年にわたって不満の種であった。その結果、スウェーデンは2005年に治療保証を導入した。

 その内容は、全ての患者が助けを求めた当日に、地元の保健センターと連絡が取れるようにすること、そして3日以内に医療的な所見をもらえるようにするというものである。最初の診察を終え、どのような治療が必要か決まったら、すべての患者は90日以内に専門医に診てもらい、そのさらに90日以内に手術や治療を受けられるようにしなければならない。この待ち時間を超えた場合には、交通費も含めて追加負担なく、別の病院で治療を受けられる。

 2020年1月以降の統計によると、患者さんの88%は90日以内に専門医に診てもらい、82%はそのさらに90日以内に治療を受けるか、または手術を受けている。ただし、これらの統計はコロナウイルスのパンデミックによって変わるだろう。他国のようにスウェーデンもコロナウイルスとの戦いを目的とする治療を優先していかなければならないからである。


助産師が死亡率を下げている
 スウェーデンは長らくプロの助産師を重視してきた。これによって出産時の母親の死亡率が急激に減少したことが研究で示されている。
 出産時の死亡率は18世紀の時点で100件中でおよそ1人であったが、20世紀の初めには100,000件の出生で命を落とす母親の数は250人にまで減った。現在、スウェーデンは出産時の死亡率が世界で最も低い国の1つであり、死産は1,000件中3件未満、母親の死亡率は100,000件中4件未満となっている。
Photo: Simon Paulin/imagebank.sweden.se

治療への公共支出

 スウェーデンの国内総生産(GDP)に占める健康へのコストと医療費は他のヨーロッパ諸国に劣らずかなり安定している。2018年時点で、健康へのコストと医療費はGDPの中で11%である。スウェーデンの健康へのコストと医療費の大部分は県と市の税金でまかなわれている。これにさらに中央政府からの税金が加わり、患者自身の費用負担は非常に小さい。

 政府が保健、医療、社会的なケアに使う金額は2018年時点で78.4億クローネと、政府による最大の支出の1つとなっている。

民間の医療提供者

 県が民間の医療提供者からサービスを購入するという仕組みは、現在ますます普及している。2018年には13.5パーセントの医療について、県が資金を出し、民間の業者がケアを提供するという仕組みが取られている。民間の業者であっても、市が提供するケアと同様の規制や料金によって患者が保護されるということが協定によって保証されている。

 また現在は、患者と医師をつなぐアプリのように、多くのデジタルによる医療解決策も取られている。より詳しい情報は「10 innovations you didn’t know were Swedish」を参照のこと。

保健行政に関する国の組織
保健福祉理事会(The National Board of Health and Welfare/Socialstyrelsen)は中央政府の専門家・監督当局である。

スウェーデン地方当局・地域連盟(The Swedish Association of Local Authorities and Regions/SALAR)は、スウェーデンの290の自治体と21の地域協議会において保健行政や専門性、雇用に関わる問題を扱う。

医療責任評議会(The Medical Responsibility Board/Hälso- och sjukvårdens ansvarsnämnd)は、専門家が基準に違反したかどうかを調査する政府機関である。

保健技術評価・社会サービス評価庁(The Swedish Agency for Health Technology Assessment and Assessment of Social Services、SBU – Statens beredning för medicinsk och social utvärdering)は、患者にとって最善の治療法や資源の最も効果的な利用法を追求する。

歯科・薬科便益庁(The Dental and Pharmaceutical Benefits Agency、Tandvårds- och läkemedelsförmånsverket)は、薬剤・医療器具・歯科施術に対する国の補助の可否を定める役割を担っている。

医薬製品庁(The Medical Products Agency、Läkemedelsverket)は、医薬品の開発、製造、販売を規制・監視する責任を負う国の当局である。

掲載ページ:https://sweden.se/society/health-care-in-sweden/
翻訳時点の最終更新日 2020年5月5日
翻訳 野池真帆、堀口真緒
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表は著作権上・技術上転載可能なもののみ転載し、他サイトへのリンクは転載しておりません。

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