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Photo: Maskot/Folio/imagebank.sweden.se

スウェーデンは世界で最もゲイフレンドリーな10か国のうちのひとつであり、人々はそのさらなる向上のために戦い続けている。

差別の余地なし

 私たちは法律や規制が日常生活に大きな影響を与えることを知っている。過去数十数年にわたり、スウェーデンはLGBTQコミュニティが他の人々と同じ権利や機会を享受できるようにするために重要な措置を講じてきた。

 最近では、ジェンダーに中立な結婚の法律(2009年)、ゲイやレズビアンのカップルの養子縁組の権利(2003年)、レズビアンの受精権(2005年)、そしてスウェーデンの憲法に追加された性的指向に基づく差別の禁止(2011年)などの法律が可決されてきた。

プライド

 ストックホルムプライドパレードには、通常約45,000人の参加者と400,000人の観客が集まる。これはLGBTQ(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クィア)コミュニティがスウェーデン社会に歓迎されていることの一つの表れだ。2020年、ストックホルムプライドはやむなくデジタルで行った。2021年は、マルメがデンマークの首都コペンハーゲンと共同でWorldPride を開催することが計画されている。このイベントはマルチスポーツイベントのEuroGamesと一緒に行われる予定である。

 国際レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、インターセックス協会(ILGA‐ヨーロッパ)のヨーロッパ支部は、レインボーヨーロッパと呼ばれる年次報告において、法整備の状況に基づいて世界各国をランク付けしている。

レインボーヨーロッパランキング-LGBTQの権利
ヨーロッパ諸国を0%(全く人権に違反し差別している状態)から100%(人権を尊重し完全に平等である状態)で評価した場合の上位10カ国

出所:Sweden.seウェブサイトより(原出所:rainbow-europe.org)

スウェーデンにおけるLGBTQの進展
1944年 同性愛関係の合法化
1972年 世界で初めて合法的な性別変更の容認
1979年 スウェーデン社会庁(Socialstyrelsen)が同性愛はもはや精神障害ではないと認定
1987年 企業や政府による同性愛者の差別禁止
1988年 同性愛者が同棲法の対象とされる
1995年 同性カップルの登録制パートナーシップ法が成立
1999年 LGBTの人々のためのオンブズマンであるHomOの設立
2003年 性的指向に基づくヘイトスピーチを違法とする憲法改正
2003年 同性カップルの養子縁組の権利の認定
2005年 レズビアンの受精権の認定
2009年 ジェンダーに中立な結婚法の施行
2009年 同性婚合法化
2011年 性的指向に基づく差別の禁止を憲法に追加
2013年 法的性別の変更に関する法律から不妊手術の義務化を削除
2019年 スウェーデンの基本法の一つである「報道の自由法」による、トランスジェンダーの人々へのヘイトクライムに対する法的保護の強化

トランスジェンダーの権利についての課題

 しかし法整備に関する国際的なランキングが高いから、スウェーデンに改善の余地がないと言うなら、それは自己満足に過ぎない。レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クィアのためのスウェーデンの権利団体であるRSFLによれば、トランスジェンダーの権利はそのような分野の一つである。法的な基準は最終目標ではなく、平等へと向かうスウェーデンの努力におけるステップなのである。

 1972年に、スウェーデンは性別の法的変更を認めた世界で最初の国となった。しかし残念ながら、このような大胆な動きがあったものの、2013年になってようやく法律から削除された不妊手術の義務化など、いくつかの欠点が残されていた。

未だに待ち受ける変化

 一般的に、スウェーデン人は政府当局に高い信頼を置いている。この信頼は公的機関の透明性、平等主義の政治、個人の権利を保護する法律や制度の長い歴史から生まれたものである。たとえば個人の利益を代表する公的機関であるオンブズマンシステムは1809年から施行されてきたものである。

 差別されていると感じた人は、あらゆる種類の差別に反対する政府機関である平等オンブズマンに相談することができる。

 平等オンブズマンが扱うケースとしては、たとえば、人々が医療センターでどのように対応されているか、というのがある。差別があってはならないことは法律で明確にされているが、時として無知と偏見が働いてしまう。たとえば、医療専門家は病気(普通の風邪でさえ)と患者の性同一性、または性表現との間に非論理的な関係性を作り上げることができてしまう。LGBTQ関連の問題に関する知識は、医療の専門家になる上では、全く要求されていないのである。

雇用における差別
 リンシェーピン大学で2020年に発表された研究では、スウェーデンの雇い主はトランスジェンダーの人々からの応募を不採用とする確率がより高く、その傾向は特に男性が支配的な職種において強いことが示された。トランスジェンダーの人々は、ジェンダーおよびトランスジェンダーのアイデンティティーや表現を理由に差別を受けている。
(出所:sciencedirect.com)


ストックホルムプライドが初めて行われたのは1998年のことであった。写真は2016年のプライドパレードの模様
Photo: Magnus Liam Karlson/imagebank.sweden.se

手を差し伸べること

 スウェーデンを世界で最もゲイフレンドリーな国のひとつにしているのは、さらなる向上のための人々の絶え間ない闘いだろう。

 RFSLに加えて、イベントやキャンペーン、情報、教育、サポートなどを行うLGBTQ団体が数多く存在し、それらはよく国際的な手助けも行う。ストックホルムプライドが有するストックホルムプライド国際連帯基金は2006年に設立され、他の国のプライドイベントを支えている。

 同性愛は未だ世界の約80の国や地域で違法行為とされているために、スウェーデンの多くの団体は、母国で迫害された人々がスウェーデンに亡命する権利のために戦っている(スウェーデンは1944年に合法化)。スウェーデンの法律は同様に、移民庁(Migration Agency)が性的指向や性別が原因で母国で迫害を受けた人々に対して亡命を認める、とも述べている。


ヨーテボリのプライドの模様
Photo: Sofia Sabel/imagebank.sweden.se

教会で行う同性の結婚式

 宗教はしばしば、人々が同性愛やトランスジェンダーの人々に反感を持つ理由として引き合いに出される。しかし、スウェーデン国教会は全ての形の愛を認めるという明確な態度を取っている。

 2009年にジェンダー中立な結婚法が施行されてからまもなく、スウェーデン教会は同性婚の挙式を許可した。各聖職者には抵抗する権利があるが、その場合は挙式を行う他の者を教区が見つけなければならない。

 スウェーデン教会はまた、レインボーミサを実施している。これは、LGBTQの観点からみて、全ての人々の平等な価値を反映することを目的としている。レインボーミサの聖職者、マリン・ストリンドベリはこう述べる。

「ほとんどの聖職者は、同性愛が他のどのような種類の愛情とも同じ価値があることを十分に理解している。」

著者 Rikard Lagerberg
掲載ページ:https://sweden.se/society/for-the-right-to-be-who-you-are/
翻訳時点の最終更新日 2020年8月26日
翻訳 押谷彩瑛、庄司弥奈、本澤由紀
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表は著作権上・技術上転載可能なもののみ転載し、他サイトへのリンクは転載しておりません。


Photo: Ulf Lundin/imagebank.sweden.se

スウェーデンでは、子どもたちは、どのように過ごしているのだろうか。ここではスウェーデンの学校制度や子どもの権利、そして子どもたちの自由時間の過ごし方について概観する。

#1 学校教育

1842年以降、スウェーデンでは、全ての子どもたちが学校に行く権利を法律で定めている。現在、義務教育は10年間で、これはFörskoleklass (0年生 - 未就学児に対する教育)、Lågstadie (1~3年生)、Mellanstadiet (4~6年生)、Högstadiet (7~9年生)の4段階で構成されている。その後、義務ではないが大半の子どもたちがアメリカの高校に相当する Gymnasium に進学し、18歳~19歳で卒業する。

6歳~13歳の子どもたちは学外の時間に学童保育に行くことができる。また先住民であるサーミ族の子どもたちは、義務教育としてサーミ学校 Sameskolor で学ぶことも認められている。

#2 法

スウェーデンの1,000万の住民の5分の1は18歳以下であり、スウェーデンの法は、子どもたち自身と彼らの権利が十分に守られることを保証している。

1993年、スウェーデン政府は子どもたちの権利を守るためのオンブズマンを任命した。スウェーデンの子どもオンブズマンは、1989年の「児童の権利に関する条約(UNCRC)」に従い、それをスウェーデン社会で遂行することを義務付けられている。スウェーデンはこの条約に原署名国の1つである。2020年の1月1日より、スウェーデンはこの条約を国内法に取り込むことになった。

1979年に、スウェーデンは子どもへの体罰を禁止した最初の国となった。民法の1つである両親法の中にその禁止規定を導入し、両親が育児の一環として暴力やその他の侮辱的な扱いをすることを禁止した。この法律は親たちに罪を与えるためではなく、子どもたちへの態度を変えることを目指したものである。とはいえ、子どもを殴ったり叩いたりするのはスウェーデンの刑法上、犯罪とされる行為である。

#3 援助と支援

子どもたちが困った際に頼れる機関や組織がスウェーデンにはたくさんある。その一つであるChildren’s Rights in Society (BRIS)は、電話のヘルプラインやチャット・メールによるカウンセリング等、様々な支援を行っている。

Friendsは学校内、またスポーツなどの校外活動外におけるいじめの根絶に力を入れている組織である。

Save the Children Swedenは子どもの権利を守る組織である。

#4 家庭生活

スウェーデンの子どもたちのほとんどは、親と生活している。親は結婚している場合も結婚していない場合もあり、子どもは1家庭に1人もしくは2人いるのが平均的である。ただし別居も珍しいことではない。今日では18歳未満の子どもの75%は自分が生まれた両親と一緒に暮らしているが、18%はどちらか一方と、5%は継母や継父とともに暮らしている。

また、スウェーデンにいる子どもの4人に1人は他の国のルーツがある家庭に生まれており、その場合はシリアやソマリア、イラク、アフガニスタン、ポーランドからきていることが多い。60%以上の子どもたちが一戸建てや長屋に暮らし、40%がアパートに暮らしている。

#5 働く両親

20歳から64歳の女性の80%が働いているという事実から、大半の子どもたちの母親が働いているといえる。また男性については、20歳から64歳までの85%が働いており、やはり大半の子どもの父親が仕事を持っていることがわかる。両親は子育てのために、子ども1人当たり480日間の育児休業を取得することができる。これは、子どもが8歳に達するまでに受給できる。育児休業の多くは母親が取得するが、父親の育児休業取得の割合も増えてきている。現在は育児休業の約30%を男性が取得している。


Photo: Martin Jakobsson/imagebank.sweden.se

学校の1年


8月半ばに新しい学年が始まり、子どもたちが進級する。スウェーデンは国土の半分以上が森なので、この時期はキノコやベリー摘みが人気である。10月下旬か11月上旬には1週間の秋休みがある。最近はスウェーデンでも10月31日に仮装とかぼちゃでハロウィーンを祝うようになった。その翌日の諸聖人の日には、多くの人が家族の墓や墓地の公園にロウソクを灯す。

ルシア
12月13日にスウェーデン人はルシアを祝う。全ての学校と就学前学校ではルシアの行進が行われる。ルシアに選ばれた女の子が白いドレスとロウソクの冠をつけてキャロルの合唱隊を先導する。

クリスマス
学校はクリスマスイブ(12月24日)前に終業し、1月初めまで冬休みとなる。

ウィンタースポーツ
春学期は1月の第2週に始まる。2月下旬か3月上旬に1週間のスポーツ休みがあり、この時には多くの家族がクロスカントリーやダウンヒルのスキーやスノーボードをするために、スウェーデンの北部に向かう。また多くの湖が凍るので、アイススケートも人気である。

イースター
3月もしくは4月には1週間のイースター休みがある。スウェーデンのどこに暮らしているかによって、春の息吹や最後の雪を楽しむことになる。

夏休み
夏休みは6月半ばから8-10週間ある。外国に旅行する家族、田舎のコテージで過ごす家族、家で過ごす家族と様々である。サマーキャンプで過ごす子どもたちも多い。スウェーデンには多くの湖と2,700キロに渡る海岸線があり、夏はほとんどの子どもたちが湖や海で泳いでいる。スウェーデンの教育指導要領では、6年生(12歳/13歳)までに背泳ぎ50メートルを含む200メートルを泳げるようになり、また水難事故に対処できなくてはならないとされている。


スウェーデンでは、徒歩が自転車で学校に行く子どもが多い。
Photo: Ann-Sofi Rosenkvist/imagebank.sweden.se

#6 趣味と娯楽

世界のほとんどの子どもたちと同じように、スウェーデンの子どもたちも音楽を聴いたり友達と遊んだりして楽しんでいる。彼らは、自分の興味を深めるよう奨励されてもいる。歌ったり楽器を演奏したりするのは人気の習い事である。12歳~15歳の子どもたちの約4人に1人は、この半年以内にコンサートに行っている。これは男の子よりも女の子の方が多い。

誰もがスポーツをすることを奨励されており、12歳~15歳の子どもたちの66%がスポーツクラブに所属している。その中でも人気なのはサッカー、アイスホッケー、フロアボール (訳注:室内で行うホッケーのような競技) である。乗馬は女の子の間で特に人気である。全体としてみると、体操のような個人競技が最近人気を増やしている。これは女の子だけでなく男の子の間でも同様であるが、これはおそらくパルクール(訳注:しばしば街中や公園などで、特別な道具を用いずに、障害物を乗り越えたり素早く移動したりするスポーツ)のクラブが増えたことによる。

#7 インターネットとテレビ

スウェーデンの若者はテレビを見るよりも多くの時間をインターネットに費やしている。12歳~15歳の子どもたちのうち、テレビを1日3時間以上視聴している者は13%であるが、それと同じ時間だけネットサーフィンをしている者は半数を超える。12歳~15歳の男の子の30%が1日3時間以上ビデオゲームをしているが、その割合は女の子では5%にとどまっている。一般に動画の視聴は人気だが、何をするかは子どもたちの年齢や性別に応じて異なっている。

年長の子どもたちは、学校の宿題、チャットやSNS、スマートフォンのアプリをして自由な時間を過ごすことが一般的である。小さな子どもたちはゲームをする傾向が強く、半数の2歳児がインターネットのゲームをしている。

#8 映画

スウェーデンの映画監督は子ども向けの映画を作る際にも難しいトピックを避けたりはしない。ロイダ・セケルソスRojda SekersözによるBeyond dreams (Dröm vidare, 2017) は大人になるというのがどういうことなのかを誠実に描いている。主人公ミリヤMirjaは盗難未遂で初めて禁固刑に服した。出所後に彼女は仕事につかなければならない。彼女は、病を患う母と、いつも自分の本当の家族でいてくれたかつての仲間たちとの間で板挟みになりながら、自分の進む道を探そうとする。

アレクサンドラーテレサ・ケイニングAlexandra-Therese KeiningによるGirls Lost (Pojkarna, 2016)は、3人の14歳の女の子が飲むと男の子になれる奇妙な花の蜜を見つける物語である。この映画はティーンエイジャーの不安を新しい視点で表現している。

Monky(2017)は、悲劇のあった翌日に家の裏庭に現れたサルと11歳のフランクFrank少年の物語である。このサルは普通のサルではないことがやがて明らかになり、その謎を探るべく、フランクとその家族はスウェーデンの小さな片田舎からタイのジャングルへと旅立っていく。

#9 本

アストリッド・リンドグレン Astrid Lindgrenは、長くつ下のピッピ Pippi Longstocking 、エーミル Emil、やねの上のカールソン Karlsson-on-the-Roof や他にもたくさんのキャラクターの生みの親である。彼女はスウェーデンで最も読まれている児童作家である。彼女の本はスウェーデン人作家の中でも最も広く普及している。100以上の言語に翻訳され、世界で約1億6,500万部の本が売れた。多くの作品が映画や演劇にもなっている。

グニラ・バーグストロームGunilla Bergströmは現実の世界を描きたくて、アルフィー・アトキンスAlfie Atkins (アルフォンス・オーベリAlfons Åberg)という小さな男の子の主人公を生み出した。彼女は物語を心理的なレベルのミニドラマとして描写した。いたずらをしたり、お化けを怖がったり、友達を恋しがったり、喧嘩をしたり、クリスマスが終わってしまったり…といった子どもなら誰でも共感できる瞬間を描いている。このシリーズは現在まで26作に及び、およそ30か国語で出版されている。

スベン・ノードクビスト Sven Nordqvist の ペッツソンとフィンダスの物語Pettsson and Findus storiesやアンダッシュ・ヤコブソン Anders Jacobsson とソーレン・オルソン Sören Olsson のスーネ Sune も広く読まれている。マーティン・ウィドマークMartin Widmark とヘレナ・ウィリス Helena Willis のジェリーマヤ JerryMaya (ラッセ・マヤ Lasse Maja)のシリーズは19か国語に翻訳されている。これらの本はベストセラーとなり、スウェーデンの図書館において最も人気のある児童書である。

自然と環境
スウェーデンはその大きさに比べて人口が少なく、1平方キロ当たり24.5人である(EUの平均は100人以上)。つまり多くの人にとって自然が非常に身近なものであり、自然を楽しむことが成長の過程で大きな割合を占めている。公共アクセス件により、誰もが田舎を自由に探索することができる。

クラブに参加する
Guides and Scouts of Swedenなどの多くのクラブが子ども向けの野外活動を主催している。森の妖精の名前にちなんだ野外学校の「森のムッレ」(Skogsmulle)はその例である。そこでは約200万人の子どもが自然を楽しみ、保護する活動を支援している。


スウェーデンでの平均的な書籍の値段は120クローネ(約2000円)である。スウェーデンでは紙の本とオーディオ書籍は25%の一般消費税率ではなく6%の軽減税率が適用されている。
Photo: Lina Roos/imagebank.sweden.se

#10 イノベーション

スウェーデンの学校では様々な機関と協力し若者のテクノロジーや起業への興味を後押ししている。

Finn upp (発明の意)という青少年プログラムは、学校の子どもたちの知識への探究心を呼び覚ますような教育方法を用いている。同プログラムは学びの助けとして発明することを奨励している。同プログラムは12歳~15歳の若い発明家を対象に毎年コンテストを開催し、新しい世代の発明家やイノベーター、起業家たちにインスピレーションを与え、新しいアイディアを発表する場を設けることを目指している。同プログラムは、スウェーデンエンジニア協会(Ingenjörsamfundet)によって1979年に創設された。

非営利団体 Snilleblixtarna (‘the flashes of genius’ 天才の閃き) は未就学児から6年生を対象として設立された団体で、子どもたちにテクノロジーや自然科学、企業に興味をもってもらうことを目指している。同団体は教員や教育者に子どもたちの好奇心や知的探究心、批判的思考力を伸ばすような教育モデルやツールを提供している。

翻訳時点の最終更新日 2020年1月9日
掲載ページ:https://sweden.se/society/children-and-young-people-in-sweden/
翻訳 岩月万依、伊藤留美奈
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表は著作権上・技術上転載可能なもののみ転載し、他サイトへのリンクは転載しておりません。

スウェーデンは宗教色が比較的薄いが、無宗教の国にはほど遠い。今でも宗教は儀式や文化に影響を与え、その姿は移民の増加とともに多様化し複雑化している。以下はスウェーデンの宗教に関する10の基礎知識である(訳注:10とあるが掲載項目数は9つとなっている)。

#1 政教分離

スウェーデン教会は、福音派のルター派で、中世以来スウェーデンの教会の中心地となっているウプサラに事務局がある。2000年にスウェーデン教会は国家から分離されたため、それ以降、スウェーデンに公式な国教は存在しない。世界のほとんどの国は国教を持たないが、ノルウェー、デンマーク、アイスランド、フィンランドはすべて国教を保持しており、スウェーデンは実のところ国教がない唯一の北欧の国である。

現在、スウェーデンの人口の約58%がスウェーデン教会に所属している。近年、記録的な数のスウェーデン人が教会を去った。 スウェーデンの若者たちは上の世代よりも加入率が低く、会員数の継続的な減少が予測されている。また、定期的に礼拝に参加する人が減少しているという調査結果が示されている。

#2 儀式と宗教

宗教や教会が多くのスウェーデン人の生活に根付いていることが最も明確になるのは、伝統的な儀礼や式典が行われる時である。洗礼命名式、結婚式、葬式がその主たるものである。ルチア祭のようにスウェーデンの文化的伝統を色濃く反映した祭事にも、礼拝や賛美歌が含まれている。

未だスウェーデンのカレンダーに散在するいくつかのキリスト教の休日にも宗教的な名残が見られる。十二夜(一月六日)、昇天祭、聖霊降臨祭、諸聖人の祝日、復活祭に関する一連の祝日がそれである。ただしそれらを礼拝で祝うスウェーデン人はあまりいない。西洋の他の国々と同様に、スウェーデンのクリスマスはキリスト教の伝統に則っており、待降祭はスウェーデン人がクリスマスイブまでのカウントダウンをしながら、パーティを盛んに行う時期である。現代のスウェーデンがどれほど宗教的でなかろうが、これらの休日が信仰の強さとは関係なく、広く受け入れられているのは確かである。


スウェーデンの伝統であるルシア祭は12月13日に行われる。宗教とは切り離された、クリスマス前の大きなイベントの1つである。
Photo: Lena Granefelt/imagebank.sweden.se

#3 宗教色の薄いスウェーデン人

儀式はさておき、スウェーデンは非常に宗教色が薄く、スウェーデン人は信仰心と幸福の関係が殆どないように見受けられる。WIN/Gallup Internationalの調査によると、スウェーデンは中国、日本、エストニア、ノルウェー、チェコ共和国と並んで、世界で最も宗教色の薄い国の1つである。例えば、アメリカ人の半数以上が自らを宗教的であるとするのに対して、そのようなスウェーデン人は5人に1人にも満たない。

教会の文化的役割が際立つことがあるのを、スウェーデン人がみな良く思っているわけではなく、様々な儀式を別の形式で行う人も多い。スウェーデンでは最近結婚する人が増えているが、その結婚式のほぼ3分の1が民事婚である。また宗教色の濃い洗礼ではなく、出生のお祝いを目的とした新生児の命名式を行う人々もいる。

#4 スウェーデンにおける他の大きな宗教

スウェーデン教会の加入者数が減少している一方で、近年、他の教会や宗教への加入者数の増加が見られる。ただしスウェーデンの法律では宗教に基づいて人々を登録することが禁じられており、スウェーデンにおける加入者数の報告はあくまで推計値であることに注意したい。

スウェーデン教会に次いで多いキリスト教会は自由教会である。プロテスタントではあるが、自由教会はスウェーデン教会から独立しており、福音派、ペンテコステ派、メソジスト教派、バプテスト派の要素が特徴である。スモーランド地方のヨンショーピン市周辺地域は、自由教会活動が伝統的に高いことから「スウェーデンの聖書地帯」と呼ばれることさえある。

さらに、移民の増加が宗教の多様化を進めてきた。イスラム教はスウェーデンで拡大しており、これまでに5つのモスクが建設されている。カトリック教も加入者数の増加を報告しており、移民をその主な理由としている。一方、様々な国の東方正教会も存在する。中でも一番大きいのはシリア正教会である。

スウェーデンには、さらに約2万人を擁するユダヤ教徒のコミュニティがあり、そのうち8,000人以上が教えを実践している。イディッシュ(訳注:中東欧のユダヤ人の間で話されるドイツ語に近い言語)はスウェーデンの5つの公認少数言語の1つである。

#5 北欧諸神からカトリック改宗まで
スウェーデンにおける宗教の歴史は、しばしばキリスト教以前の北欧神話に基づく宗教に遡る。古代北欧の信仰は、組織化された宗教ではなく、文化システム全体の基礎を形成した。その信仰の実践の中心にあったのは「儀式」であり、それは動物供犠であったり、時には人身御供もあった!集会では、神との交流において飲食を共有し、さらなる繁栄の予兆を探った。北欧神の中でおそらく最も有名なオーディンとトールは、それぞれ戦争と天空を司る神であった。

古代北欧の宗教的信仰は12世紀まで続き、スウェーデンは、カトリックの宣教師の布教によってキリスト教化された最後のスカンジナビアの国となった。1164年に、スウェーデンはカトリックのいわゆる教会管区の1つとなり、カトリックの教義が確立した。スウェーデンは、最も有名な聖ビルギッタを筆頭に、多くの聖人を輩出した。またスウェーデン人はフィンランドとバルト諸国への布教活動に乗り出すという独自のスタイルで、カトリック十字軍にも参加していた。

#6 プロテスタント優位から信教の自由まで

スウェーデン人は中世後期まで良心的なカトリック教徒であったかもしれないが、その後はプロテスタントの砦として知られるようになる。スウェーデンは1500年代末までにカトリックからプロテスタントへの移行を完了し、その後はルター派との結びつきを強めて、国に認められた信仰から外れた人々を処罰した。1858年まで、カトリックへの改宗は国外追放という形で処罰される可能性があった。1600年代には、スウェーデン王のグスタフ2世がドイツの30年戦争にスウェーデンを参戦させたが、その名目はプロテスタントの信仰を保護することであった。

過去にはこのように厳格な措置を取ってきたが、現在のスウェーデンは、信教の自由を支持する国となった。1951年に信教の自由がスウェーデンの法律に明記され、現在のスウェーデンでは、全ての人が自由に宗教を実践する権利を持つべきであると、大多数のスウェーデン人が答えていることが研究で示されている。

#7 寛容と文化的衝突

スウェーデンは、世界で最も寛容な国の1つとして高い評価を受け続けているが、他の多くの国と同様に、外国人恐怖症や文化的衝突という形の不寛容という課題にも直面している。

例えば、2013年にスウェーデンで、ヒジャブベールを着用しているイスラム教徒の女性に対して嫌がらせをする事件があった。それに対して、スウェーデンの人権擁護活動と反人種差別主義の活動家たちは団結の表明として、ベールを着用した。ただし本件では、活動家たち自身がイスラム教徒の女性をステレオタイプ化したとか、女性抑圧と結び付けられることもあるシンボルの存在を支持したという理由で、フェミニストたちに批判されることにもなった。

また、スウェーデンの芸術家ラーシュ・ヴィルクスが「roundabout dogs」(訳注:様々な街角に展示されている犬型の現代美術作品)にムハンマドを描いた作品が2007年に新聞で発表されると、一部の人がそれを不敬であると感じたことから、国内外で大騒ぎとなった。これは言論の自由、信仰の自由、芸術の独立性に関する議論を巻き起こし、ヴィルクス自身が死の脅迫まで受けるに至った。

一般の人々の間で、宗教の多様性についての態度は、ある特定の側面については、より消極的になっている。イェブレ大学が毎年発行している「多様性指標」の2018年版によると、イスラム教徒の女性はスウェーデン人の女性より抑圧されている、イスラム教の学校は社会統合をより困難にしている、イスラム教の礼拝の呼びかけは教会の鐘の音よりも不快である、と感じている人が増えている。しかし他方で、女性がブルカやニカブを着用することは受け入れられると考える人も増えている。


すぐ近くに並び立つストックホルムのカタリーナ教会(左)とストックホルム・モスク(右)
Photo: Poxnar/https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=11122807

#8 教会の財政と信仰の支援
スウェーデン教会は、その国内及び国際的な活動の財政支援のために、加入者に税(教会利用料)を課している。これは現在、加入者の収入の平均1パーセントである。教会の支出の優先事項には、スウェーデン国内の3,600の教会建造物の保持と修繕が含まれる。

スウェーデン教会は約470億クローナの資産を持っており、その年間総経費は約220億クローナである。スウェーデンの公的機関における透明性と開放性に準じて、市民は年次報告書によりスウェーデン教会の活動と財政状況を精査することができる。

他の宗教団体も、国から財政援助の支援を受けることができる。宗教団体支援庁は、財政援助をスウェーデン教会以外の宗教団体に提供する政府機関である。この支援の狙いは宗教団体がその活動とサービスの持続可能性を確保できるようにすることである。

#9 スウェーデン教会と女性

2014年に、アンシェ・ヤケレンは、国内外に対してスウェーデン教会を代表する主席代表であるウプサラ大司教を務める最初の女性となった。また、大司教はスウェーデンにおける新しい司教を選定する(聖別する)責任がある。

1960年、スウェーデン教会に最初の女性司祭が就任した。現在、司祭の半数は女性であり、司祭になるために勉強している人々の過半数は女性である。

キリスト教と教会は、かつてスウェーデンにおいて儀式と文化の重要な地位を保持していたかもしれない。しかし、これはスウェーデンが世界で最も自由な社会の一つになることの妨げにはならなかった。中絶の権利のように、宗教的・社会的な保守主義が優勢になることの多い分野においても、スウェーデンでは深刻な論争が見られない。結婚せずに一緒に暮らして、子供を持つことも社会的に受け入れられている。

スウェーデン教会は自由な社会の変革を妨害するのではなく、むしろ寄り添うことの方が多かった。たとえば、2009年にスウェーデンでの同性結婚が合法化された時には、その同じ年に教会が同性結婚の挙式の開催を始めることを決定している。

伝統的でありながら新しい考えも生み出し、世俗的でありながら宗教的であり、寛容でありながら挑戦的でもある。これらのすべてがスウェーデンにおける事実である。宗教というものは、他の国々と同様、スウェーデンにおいても常に複雑な問題である。

Quick fact
アンシェ・ヤケレン大司教
2014年よりアンシェ・ヤケレンがスウェーデンで初めての女性大司教を務めている。彼女はドイツ出身で、ウプサラに移住する前はテュービンゲンで学んだ。彼女は1999年にルンド大学で博士号を取得し、ルンド主教区で司教となった後に現職に昇格した。ヤケレンは社会問題に積極的に関与することで知られ、「熟練したオピニオンメーカー」と呼ばれている。
Photo: Jan Nordén/Sweden.se

著者 Scott Sutherland
掲載ページ:https://sweden.se/society/10-fundamentals-of-religion-in-sweden/
翻訳時点の最終更新日 2020年7月20日
翻訳 ニニ、内田健太郎
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表は著作権上・技術上転載可能なもののみ転載し、他サイトへのリンクは転載しておりません。

Covid-19の流行により、大学生たちの日常も大きく変わりました。特に現在の大学4年生たちは対面授業の機会が大きく損なわれた上に、就職活動において大きな変更を迫られた者も少なくありません。
しかしそのような環境の変化にもめげずに、明治大学国際日本学部鈴木ゼミでは、日本社会とスウェーデン社会の比較研究にひたむきに取り組んで参りました。
今回は、例年のようにスウェーデン大使館のオーディトリウムの舞台に立たせてあげられないのが誠に悔やまれるところではありますが、オンライン開催の利点を活かして、下記の通り、3週間連続で発表会を実施したいと考えております。
また今回は無料の一般公開といたしますので、JISS会員の方はもちろんのこと、ご興味のある方に広くお声がけいただき、なるべく多くの方にご参加いただければと考えております。

【第1部 Covid-19流行下のスウェーデンから学ぶこと】
(2021年1月11日 20時~21時)
本郷雅也 『Covid-19が明らかにした政策評価と政府への信頼感の関係性』
井上葉月 『医療から見るスウェーデン~人々はどのように医療と向き合ったのか』
菅野岳史 『日本の未来のニューモデルとしてのスウェーデンの思考様式』
稲垣拓朗 『Covid-19報道に観るメディアと信頼の関係』
鈴木宗太郎『スウェーデンは「移民統合」に失敗したのか』

【第2部 スウェーデンのIT・教育・イノベーション】
(2021年1月18日 20時~21時)
市川莉子 『スウェーデンにおけるIT化と平等意識』
滝口奈菜 『主体性を形成するスウェーデンの教育』
三浦久実 『スウェーデン人の知的好奇心の高さとその理由』
上野彩夏 『イノベーティブな企業を数多く輩出する国から紐解く才能の育て方』

【第3部 スウェーデンの働き方と子育て】
(2021年1月25日 20時~21時)
川本春菜 『労働時間からみる日本とスウェーデンの働き方』
國立琳花・和田はるひ
『日本で女性管理職を増やすには~スウェーデンから得られるヒント』
荒原沙輝 『性別役割分業観と子育ての実態に関する日本とスウェーデンの違い』
野中梨沙・根本遥
『なぜスウェーデンの女性は仕事と子育てを両立できるのか』

● 開催場所 オンライン(Zoomミーティング)
● 参加費 無料(非会員の方もご参加いただけます)
● ご参加ご希望の方は、下記のフォームにご記入ください。それぞれご登録された回の前日までにZoomのリンクをお送りいたします。

本日の講座の受付は終了いたしました。

なお、年会費をお支払いいただいている会員の皆様におかれましては、研究講座を録画したビデオを後ほどご視聴いただけるようにいたします。
ご入会ご希望の方は、新規会員募集よりお申し込みください。
※当日の機器や通信状況によっては、配信に障害が発生することもございます。その場合にはご容赦いただきますよう、予めお願い申し上げます。

スウェーデンの公的機関であるThe Swedish Instituteのウェブサイト「Sweden.se」には、スウェーデンに関する様々な情報(ファクトシート)が掲載されていますが、それらの情報は全て英語です。そこで、日本でスウェーデンのことを少しでも多くの人に知ってもらおうと、在日スウェーデン大使館の許諾の下で、明治大学国際日本学部鈴木ゼミの学生が翻訳した日本語版を順次発表していきますので、よろしくお願いします。
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