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今回は、横浜国立大学経済学部教授で財政学を専門とする伊集守直さんをお迎えして、スウェーデンの財政と民主主義、そしてその担い手を育む教育の出発点でもある保育のあり方についてお話しいただきます。
伊集さんは、東京大学大学院経済学研究科在学中に、ウプサラ大学に客員研究生として留学し、2016年度にはストックホルム商科大学欧州日本研究所で客員研究員として在外研究をされています。これまでスウェーデンの税制や予算制度、国と地方の財政関係に関する研究に取り組まれてきました。
今年9月に、在外研究での経験を踏まえ、スウェーデンの保育研修書である『幼児から民主主義:スウェーデンの保育実践に学ぶ』(光橋翠氏との共訳)を新評論から出版されましたので、その内容も踏まえながら、スウェーデンの財政、民主主義、保育のつながりについてお話しいただきます。

● 講師 伊集守直氏(横浜国立大学経済学部)
● 日時 2021年12月2日(木)18:00 - 19:00
● 開催場所 スウェーデン大使館オーディトリウム、およびオンライン(Zoomミーティング)
 ※スウェーデン大使館における対面でのご参加は、コロナウィルス感染対策のため、会員のみ、かつ人数を制限させていただきます。
● 参加費 会員は無料。非会員(オンライン参加のみ)は、一般1,500円、学生1,000円。非会員の方は、こちらからお申し込みください。
● なお、会員の方には、研究講座を録画したビデオを後ほどご視聴いただくこともできます。ご入会ご希望の方は、新規会員募集よりお申し込みください。
※当日の機器や通信状況によっては、配信に障害が発生することもございます。その場合には講演録画の配信等、代替措置を取らせていただくことがございます旨、予めご了解くださいますようお願い申し上げます。

今回は、本研究所の会員で、現在国立青少年教育振興機構青少年教育研究センターの研究員でいらっしゃる両角達平さんに、スウェーデンにおける若者の社会参加についてお話しいただきます。
両角さんは、1988年生まれで長野県出身。ストックホルム大学教育学研究科の修士課程をご卒業され、現在は国立青少年教育振興機構の研究員として、若者の社会参画について、ヨーロッパ(特にスウェーデン)の若者政策、ユースワークの視点からご研究をしながら、都内の大学で教鞭を執られており、先般『若者からはじまる民主主義』(萌文社)を出版されましたので、そのご著書のご紹介もしていただく予定です。

● 講師 両角達平氏
● 日時 2021年11月2日(火)18:00 - 19:00
● 開催場所 オンライン(Zoomミーティング)
 ※当初、スウェーデン大使館における開催を予定しておりましたが、諸般の事情により中止となりました。
● 参加費 会員は無料。非会員は、一般1,500円、学生1,000円。非会員の方は、こちらからお申し込みください。
● なお、会員の方には、研究講座を録画したビデオを後ほどご視聴いただくこともできます。ご入会ご希望の方は、新規会員募集よりお申し込みください。
※当日の機器や通信状況によっては、配信に障害が発生することもございます。その場合には講演録画の配信等、代替措置を取らせていただくことがございます旨、予めご了解くださいますようお願い申し上げます。

今回は、かつて本研究所の環境教育担当研究員としてもご活躍され、スウェーデンに戻られた現在も、北欧のサステナビリティへの取り組みについて精力的な情報発信を続けていらっしゃるレーナ・リンダル(Lena Lindahl)さんに、風力発電の開発、電気自動車電池の工場設置、過疎対策、インフラ整備など、スウェーデン北部におけるサステナビリティへの取り組みの現状についてお話しいただきます。

● 講師 レーナ・リンダル(Lena Lindahl)氏
● 日時 2021年9月30日(木)20:00 - 21:00
● 開催場所 オンライン(Zoomミーティング)
● 参加費 会員は無料。非会員は、一般1,500円、学生1,000円。非会員の方は、こちらからお申し込みください。
● なお、会員の方には、研究講座を録画したビデオを後ほどご視聴いただくこともできます。ご入会ご希望の方は、新規会員募集よりお申し込みください。
※当日の機器や通信状況によっては、配信に障害が発生することもございます。その場合には講演録画の配信等、代替措置を取らせていただくことがございます旨、予めご了解くださいますようお願い申し上げます。

電気バスが走り蜂が飛ぶ-スウェーデンは気候中立に向かっている

1.新たにエコになった電動バス

スウェーデンのいくつかの都市では、排気ガスを放出しない電動バスの運用を開始した。電動バスとは、電気のみで走り、エネルギーを貯蔵するバッテリーを備えるバスのことである。再生可能電力を公共交通機関で利用することは、大気の質を改善し、住民に対する騒音を減らし、環境への負荷を減らすのに役立つ。

これらの理由はスウェーデンの電動バスへの移行を進める原動力となっている。ヨーテボリは2015年に電動バス路線を開始し、電動バスを早期に導入した。2021年には同市でおよそ150もの新しい電動バスの運用が始まった。ノールテリエ(Norrtälje)は全てのバスを電動にする取り組みを2018年に開始した。そして北部の町ピーテオ(Piteå)でも2021年に電動バスの導入を開始する計画がなされている。

Aerial view of lots of buses parked close together.

ヨーテボリの電気バス Photo: Jesper Wiberg

2.世界で最も高い木造建築の1つ

北部の町シェレフテオ(Skellefteå)はサーラ文化センター(Sara Cultural Centre)という普通でない新しい建物を建設しようとしている。この建物は完全に木で作られ、80メートルにも及ぶ世界で最も高い木造建築の1つになる。サーラ(Sara)という名前は有名なスウェーデンの作家であるサーラ・リドマン(Sara Lidma)から発想を得たもので、同センターは2021年秋の開業を予定している。

スウェーデンは真の森林の国である。事実、スウェーデンの3分の2は森林であり、木造建築の大きな可能性を秘めている。木材は再生可能・再利用可能な資源であるため、木造建築は持続可能性の観点からも完全に理にかなっている。20階建てのサーラ文化センターは、全ての木材が地元で調達されているので、輸送を不要とし、二酸化炭素排出量の減少にも役立っている。

スウェーデン全土では、2045年までにカーボンニュートラルを達成するという全体的な目標の取り組みの一環として、より多くの木造高層ビルが建設されている。

Sara Cultural Centre under construction. One photo with a towering building and a crane, one close-up of wooden walls.

木造のサーラ文化センターは、シェレフテオの町の景色を支配している。Photos (collage): Martinsons/ Jonas Westling

3.都市農業によるサステナビリティ

スウェーデンで食べられている野菜の半分以上は輸入品である。おそらくそれが都市農業の人気がますます高まっている理由の1つである。しょう。これは農業を消費者へ近づけることなのだ。

1921年に発足した市民農園協会(Koloniträdgårdsförbundet)は、スウェーデンで最も古い市民運動の一つであり、現在は持続可能な食品消費行動に焦点を当てている。会員は全国の市民農園を利用できる。都市に緑地を持つことの最大の利点の一つは生物多様性の増加であり、市民農園の様々な作物のもとで様々な生物が繁殖している。

垂直農法の人気も伸びている(ダジャレです)。グロンスカ(Grönska)はストックホルム郊外を拠点にしている食品技術のスタートアップで、屋内でハーブや野菜を栽培し、高い棚に植物をつり上げている。その利点は、食物を消費者に近づけながら、土地と水をあまり使用せず、1年を通して生産できることである。

Shelves with green plants.

グロンスカによる垂直農業 Photo: Claudio Britos

4.フードバンク

スウェーデン人の食品廃棄物は年間およそ130万トンである。フードバンクは食品の再配分によって食品廃棄物の削減を進める、つまりレストランやスーパーマーケットからの食品の寄付を、困窮している人々に受け渡すものである。

スウェーデンの都市ミッション慈善団体(stadsmissioner)は、いくつかのフードバンクを国内の各地で運営している。ストックホルムではマートミッションネン(Matmissionen)を運営しており、食品を割引価格で販売している。ヨーテボリでは、草の根の活動団体であるソリダリティ・フリッジ(Solidarity Fridge)がボランティアの「フードセーバー」たちから寄付された食品を市内の冷蔵庫のネットワークに配達し、人々がそこから無料で入手できるようにしている。この活動はヨーテボリ近郊の町アルビカ(Arvika)にも広がっている。

A dairy fridge in the Matmissionen supermarket.

「我々の乳製品は賞味期限切れが近いものが多いが、パンケーキの材料にすれば変わらず美味しい。」マートミッションネンの冷蔵庫 Photo: Anna Z Ek

5.都市に蜂の力を!

スウェーデンの都市部では養蜂ブームが起きている。ビー・アーバン(Bee Urban) などのいくつかのスウェーデン企業が、都市部の生態系や生物多様性の保全に寄与することを目的として、蜂の巣箱を保有する機会を自治体、企業、個人に提供している。ミツバチは蜂蜜を作るだけでなく、私たちが口にする作物の3分の1の受粉に関わっている。しかしながら蜂たちは気候変動、現代の農業活動、生物多様性の破壊によって絶滅の危険に瀕している。そこで今、都市部の庭や建物の屋上に蜂の巣箱を設置し、蜂に優しい環境づくりが進められているのである。

ヨーテボリにある人気レストランのアッパーハウス(Upper House)は地上83メートルの場所に小さな屋上庭園を所有し、そこにエコ認証された蜂の巣箱を設置している。このレストランは、都市の健全な生態系の維持に寄与しながら、そのミツバチが作った蜂蜜を食材として提供している。

養蜂ブームはスウェーデンの蜂(Svenka Bin)という新たな団体の設立も促した。同団体は、どれだけ蜂が私たちの都市に必要かという知識や認識を広げる活動を行っている。

Bees in a beehive.

たまには蜂の好きにさせよう(Let it bee)Photo: Simon Paulin/ imagebank.sweden.se

6.温暖化防止に貢献するシェアと思いやり

南部の都市マルメにあるセーゲ公園(Sege Park)は、持続可能で環境に優しい都市開発の新たなモデルとなっている。ここでは、安価な住まいの提供と地域におけるシェア経済の構築とを組み合わせている。住民たちが物やサービスを共有しやすくなることで、所有するものを減らしつつ、より多くのものを利用できるようにする、というのが、このシェア経済の考え方である。

木造の駐車場もこの計画の一部に含まれている。車の駐車スペースだけでなく駐輪場もあり、住人が自転車の修理を行う「自転車キッチン」や、車や自転車をシェアする「移動手段プール」が設けられる予定である。

セーゲ公園プロジェクトの将来的な構想は、都市の中心地に近い緑の多い地域に新しい静穏なコミュニティーを作り、そこでは再生可能エネルギーを用いて二酸化炭素排出が無い地域を作るというものである。この古い病院のある公園地域は、改築や新築によっておよそ1,000件の新たな家を構える予定である。同プロジェクトはCEEQUALという根拠に基づく国際的なサステナビリティ評価システムにマルメ地域で初めて認証されたものである。

Illustration showing the vision for Sege Park: lots of green, people walking and children playing.

セーゲ公園の再開発構想 Illustration: Tyrens

Aerial view of the city Malmö, with Sege Park in the middle.

マルメ市の航空写真。前方に再開発前のセーゲ公園、後方に高層タワーのターニング・トルソ(Turning Torso)とエーレスンド(Öresund)橋が見える。Photo: Perry Nordeng

7.カンを見せよう

スウェーデンでは使用済みペットボトルや、アルミ缶の84%がリサイクルされている。誰でもペットボトルやアルミ缶を購入すると必ずデポジットを払わなければならないが、このデポジットは、リサイクルすれば戻ってくる仕組みになっている。

リサイクルの仕組みはかなり整備されているように見えるが、まだ改善の余地がある。目標は90%のリサイクルである。

スウェーデンのデポジットシステムは、小売店や飲料メーカーが所有する会社であるレトゥーパック(Returpack)が運営している。消費者はパントアウトマット(pantautomat)というスーパーなどに設置されている回収機にペットボトルや缶を入れる。消費者は多くの場合、デポジットを取り戻すか、その分をチャリティーに寄付するかを選ぶことができる。リサイクルされたボトルや缶はノルチェピング(Norrköping)市の回収拠点に運ばれ、リサイクルされて新たなボトルや缶に生まれ変わる。

この持続可能なリサイクルの仕組みはヨーロッパの中で最も古い施策の一つである。スウェーデンでは、消費を目的とした全ての飲料ボトルや缶は市場に出る前に、認可されたリサイクルシステムの中に組み込まれることが法律で義務付けられている。

Drink cans pressed together for recycling.

新たな命が吹き込まれるのを待つ古いカンたち。Photo: Crelle Fotograf

8.走行中に充電できるスマート道路

スウェーデンのゴットランド(Gotland)島では、電気トラックやバスが走行中に充電できる世界初のワイヤレス電気道路が開通した。これはヴィスビー(Visby)空港と市内中心部を結ぶ短い道路で、電動歯ブラシの充電器の働きと同様に、電磁場を利用した誘導によって電気自動車に電力が伝えられる。

スウェーデンの気候に関する目標の1つは、国内交通機関からの排出量を、2030年までに2010年と比べて少なくとも70%削減することである。その一環として、スウェーデン運輸庁(Trafikverket)は、2030年までに国内で最も交通量の多い2,000kmの道路を電化する計画を託されている。

この目標を達成するために、スウェーデン国内のさまざまな場所で電気道路の実験が行われている。ストックホルム・アーランダ(Arlanda)空港近くの道路では、2017年から車道に設置された電気レールで貨物車を充電している。またすでに2016年には、スウェーデンの都市イエブレ(Gävle)とサンドビーケン(Sandviken)を結ぶ高速道路で、公道上の世界初の電気道路区間が開通している。この電気道路は架空電力線を使用し、トラックには路面電車のようにパンタグラフが搭載されていた。このプロジェクトは2020年に終了した。
*国内航空は、EUの排出権取引制度(EU Emissions Trading System)に含まれるため、ここでは取り上げない。

Left: workers installing a rail in a road. Right: An electric lorry driving on the rail.

ストックホルム郊外のイーロード(e-road)プロジェクトでは、道路に敷設された線路から電気トラックに電気を供給している。Photo: (collage): eRoad Arlanda

9.太陽電池式の水素充填ステーション

2019年、スウェーデンのマリエスタッド(Mariestad)という町に、世界初のオフグリッドの(=送電網につながっておらず自給自足の)太陽光発電による水素製造・充填ステーションが一般公開された。このステーションは、近くの太陽電池設置場からの太陽エネルギーのみで100%稼働している。

この太陽エネルギーを利用して、電力網のバックアップ電源として使用可能な排出ガスのない水素ガスを製造することで、太陽光発電によるエネルギーを四六時中供給することができる。この水素ガスは、自動車、トラック、電車そして将来的には飛行機の燃料としても利用可能である。

このように、水素は、電気自動車が使用する高価なリチウム電池を必要とせず、化石燃料も不使用の、競争力ある輸送用燃料源となる可能性がある。

Aerial view of the town of Mariestad.

マリエスタッドは、よりサステナブルなエネルギーの解決策を見つけるべく積極的に活動している。この町のオフグリッド水素ステーションは世界初の大きな一歩である。Photo: Tuana/ Mariestads kommun

10.廃棄物から地域暖房に

1948年にスウェーデンで最初の地域暖房システムが導入されて以来、家庭の暖房のためのエネルギー効率の高い方法を提供すべく、さまざまな努力がなされてきた。スウェーデンの2番目に大きな都市であるヨーテボリでは、ほとんどのビルや家が地域暖房システムの地下パイプやケーブルのネットワークに接続されている。

電気や石油で各建物を個々に暖房する代わりに、この気候に配慮した廃棄物をエネルギーにする方法は、ゴミを燃やしたり、工業生産やデータセンターから集めた余剰熱などの地域資源を利用して水を温め、システムに接続されているすべての人々に供給するというものである。これにより、システム内の全エネルギーの93%をリサイクルまたは再生可能な資源から調達している。

ヨーテボリ市は、市営のエネルギー会社であるヨーテボリ・エナジー(Göteborg Energi)社を通じて、この効率的な方法を先導している。この方法は、市内のアパートのほか、約12,000軒の個人住宅、多くの産業、オフィス、店舗、公共施設で使用される暖房の90%をカバーしている。

スウェーデンでは、地域暖房が最も一般的な暖房の熱源となっている。ストックホルムでは、暖房の80%が地域暖房による。地域暖房は、コスト削減や二酸化炭素の排出量の削減など、環境面で大きなメリットがある。

A distric heating facility in Gothenburg, a tall and wide tower to the left; a tall and slim tower to the right.

ヨーテボリはシャレを利かせることで有名であり、写真左の60メートルの高い蓄積タンクは「魔法瓶」と呼ばれている。このタンクは地域暖房システムの余剰熱を蓄え、必要に応じて再供給できるようになっており、あたかも魔法瓶で飲み物を保温するようになっている。Photo: Göteborg Energi CC

原資料掲載ページ:https://sweden.se/climate/sustainability/10-ways-to-a-greener-future
翻訳時点の最終更新日 2021年6月1日
翻訳 廣田啓、吉田杏香、雜喉恋子
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表はSweden.seに掲載されたものをそのまま転載しています。他サイトへのリンクは転載しておりません。

偉大な精神を持つ人は異なる考え方をする。ノーベル賞は優秀さを祝うものだ。

ノーベル賞は、世界で最も権威のある賞だと言われている。ノーベル賞は「前の年に、人類に最大の利益をもたらした者」に授与される賞である。物理学賞、化学賞、医学/生理学賞、文学賞、平和賞は1901年から、経済学賞は1968年から授与されている。

The Nobel Prize award ceremoni in Stockholm Concert Hall, with Queen Silvia, Prince Daniel, King Carl XVI Gustaf and Crown Princess Victoria seen to the right.

ノーベル賞授賞式 Fredrik Sandberg/TT

アフレッド・ノーベル(Alfred Nobel)記念経済学賞は、1968年にスウェーデンの中央銀行(国立銀行)によって設立された。これは1968年に、スウェーデン中央銀行が銀行の300周年を記念してノーベル財団に贈った寄付をもとに作られた。この賞はノーベル賞と同じ原則に従い、スウェーデン王立科学アカデミーによって授与されている。

発表は10月

ノーベル賞の受賞者は毎年10月の初めに発表される。そして12月10日の「ノーベル・デー」に、スウェーデンの首都ストックホルムとノルウェーの首都オスロで受賞式典が開催される。
これまで受賞した発見には、X線や放射線、ペニシリンなどがある。平和賞の受賞者には、ネルソン・マンデラ(Nelson Mandela)やダライ・ラマ14世(14th Dalai Lama)がいる。文学賞の受賞者は、ガブリエル・ガルシア・マルケス(Gabriel García Márquez)の「百年の孤独(One Hundred Years of Solitude)」やドリス・レッシング(Doris Lessing)の「草は歌っている(The Grass is Singing)」といった作品があり、読者をワクワクさせている。

受賞者の統計

1901年から2020年までの間に、ノーベル賞と経済学賞は57人の女性に授与された。マリー・キュリー(Marie Curie)は女性で2回の受賞歴があり、1903年に物理学賞、1911年に化学賞を受賞した。1909年に文学賞を受賞したスウェーデンのセルマ・ラーゲルレーヴ(Selma Lagerlöf)は女性で初めてノーベル文学賞を受賞した。

これまでで最年長のノーベル賞受賞者は、2019年に97歳で化学賞を受賞したジョン・グッドイナフ(John B. Goodenough)である。

2014年に17歳で平和賞を受賞したマララ・ユスフザイ(Malala Yousafzai)が最年少の受賞者である。

これまで4人の受賞者が強制的に辞退させられた。ドイツ人のリヒャルト・クーン(Germans Richard Kuhn)とアドルフ・ブテナント(Adolf Butenandt)は化学賞の受賞を、ゲルハルト・ドーマク(Gerhard Domagk)は医学・生理学賞の受賞を、アドルフ・ヒトラーによって禁じられた。ボリス・パステルナーク(Boris Pasternak)は、1958年に文学賞を受賞したが、のちにソビエト当局によって辞退させられた。

ヒトラーによって辞退させられた3人のドイツ人はのちに受賞したが、受賞金は受け取らなかった。

2名の辞退者

ジャン・ポール・サルトル(Jean-Paul Sartre)は、従来より全ての公的な賞与を断っており、1964年のノーベル文学賞も辞退した。
レ・ドュク・ト(Lê Ðức Thọ)は1973年にノーベル平和賞を辞退した。この賞は、彼がアメリカ国務長官のヘンリー・キッシンジャーと共にベトナム平和条約の交渉に尽力した事に対してのものであったが、当時のベトナムの現状では平和賞を受け取ることはできないとして断ったのである。

賞の設立者

ノーベル賞はスウェーデンの科学者、エンジニア、発明家、そして起業家でもあるアルフレッド・ノーベルの遺産である。
彼は1833年10月21日にスウェーデンのストックホルムで生まれ、1896年の12月10日にイタリアのサン・レモで亡くなった。
彼が1895年に書いた最後の遺書に、「資産の多くを基金に寄付し、その基金からの利子を年に一度の賞与として分配する」と書いてあり、これを元にノーベル賞が生まれた。
ノーベル自身の発明品としては、ブラストキャップ、ダイナマイト、無煙火薬などがある。彼が世界的に有名になったのは、1881年にスイスのアルプスにあるセント・ゴットハード・トンネル(St. Gotthard Tunnel)が初めてダイナマイトを大規模に使用して作られたことがきっかけである。
死亡時に、ノーベルは様々な国に355の特許を保有していた。彼は20カ国以上に会社を持ち、約90の工場でその特許に基づきあらゆる爆薬が製造されていた。ノーベルはスウェーデン、ロシア、フランス、イギリス、ドイツ、イタリアなど、多くの国々で生活していた。

A painting of a man by a window.

エステルマン(E Österman)によるアルフレッド・ノーベルの死後に描かれた肖像画 Copyright © The Novel Foundation

A black-and-white photo of a pile of dynamite.

ノーベルはダイナマイトを自分の商売にした。Copyright © The Novel Foundation

A bust of Alfred Nobel in front of a wall of flowers.

アルフレッド・ノーベルはノーベル賞を通じて生きている。Copyright © Nobel Media AB 2016. Photo: Pi Frisk

Two hands holding a glass bottle with an old label and some dark fluid inside.

ノーベルの研究所にあったいくつかの古いボトルは保存されている。© Nobel Prize Outreach. Photo: Dan Lepp

A black-and-white photo of an old-looking laboratory.
「私が働いている場所が私の家であり、私はどこでも働いている」とノーベルは言った。これはイタリアのサンレモの研究所である。Photo: Image provided by the Novel Foundation

ノーベル財団

1900年にノーベル賞を授与する4つの機関がアルフレッド・ノーベルの意思に基づく民間機関であるノーベル財団の設立に同意した。ノーベル財団は、当時の通貨で3,100万クローナ、現在では46億クローナ(約600億円)以上となったノーベルの資産を管理し、公的な発表や授賞式の運営を行なっている。

ノーベル賞を授与する機関は4つある。
① スウェーデン王立科学アカデミー(Royal Swedish Academy of Sciences)
物理学賞、化学賞、経済学賞を授与。
②スウェーデン・アカデミー(Swedish Academy)
文学賞を授与。
③カロリンスカ研究所(Karolinska Institutet)ノーベル委員会
医学・生理学賞を授与。
④ノルウェーノーベル委員会
平和賞を授与。唯一ノルウェーにある機関で、ノルウェー議会によって任命された5人の議員で構成されている。

各ノーベル賞の賞金は、現在1,000万クローナである。各賞最大3人までが受賞でき、受賞者が複数の場合、賞金は受賞者の間で按分される。

ノーベル晩餐会
毎年12月10日のノーベル賞授賞式に続いてストックホルム市庁舎で晩餐会が開かれるのが伝統になっている。晩餐会には、約1,300人のゲストが招待される。

 

年表

ノーベル賞は、1901年から2020年までに603回の授与が行われ、962の人と組織が受賞した。

1901年
ヴィルヘルム・コンラッド・レントゲン(Wilhelm Conrad Röntgen)が✕線の発見により、初めてのノーベル物理学賞を受賞した。

1903年
マリー・キュリー(Marie Curie)が放射線の研究で女性初の物理学賞を共同受賞。彼女は1911年にも新元素ラジウムの発見によって化学賞を受賞している。

1905年
オーストリアの伯爵令嬢で作家のベルタ・フォン・スットナー(Bertha von Suttner)がドイツとオーストリアでの平和主義運動を評価され、女性初の平和賞を受賞。彼女は生前ノーベルと親交があり、平和賞の創設を促した人物として知られている。

1912年
スウェーデンの投資家で発明家のグスタフ・ダレンがAGA灯台の発明によって物理学賞を受賞。AGA灯台は以前のものよりガスの消費を90%の抑えることができた。

1914年〜1918年
第一次世界大戦により授与数が減少した。この間の唯一の平和賞は、負傷した兵士や捕虜、その家族を治療したとして赤十字国際委員会(International Committee of the Red Cross)が1917年に受賞した。赤十字国際委員会は、1944年、1963年にも平和賞を受賞している。1963年は赤十字社連盟(League of Red Cross Societies)との共同受賞であった。

1922年
アルバート・アインシュタイン(Albert Einstein)が理論物理学賞の研究・光学効果の法則の発見によって物理学賞を受賞。アインシュタインは1921年に受賞の知らせを受けていたが、実際の受賞は1922年であった(訳注 これにはアインシュタインがユダヤ人であったことも含め、アインシュタインの相対性理論の科学的有用性に対する批判が背景にあった)。

1939年〜1945年
第二次世界大戦のため、いくつかの賞が平時のように授与できなかった。

1945年
アレクサンダー・フレミング(Alexander Fleming)がペニシリンの発見によって医学・生理学賞を受賞。ペニシリンは20世紀後半に数百万人の命を救った。

1952年
セルマン・アブラハム・ワクスマン(Selman Abraham Waksman)が結核に効く初めての抗生物質であるストレプトマイシンを発見し、医学・生理学賞を受賞した。

1968年
経済学賞が新たに創設された。

1975年
腫瘍ウイルスと細胞の遺伝物質との相互作用に関する発見によりデビッド・ボルティモア(David Baltimore)、レナート・ドゥルベッコ(Renato Dulbecco)、ハワード・マーティン・テミン(Howard Martin Temin)が医学・生理学賞を共同受賞した。

1983年
アメリカ人のバーバラ・マクリントック(Barbara McClintock)は可動遺伝因子を発見したことによりノーベル生理学・医学賞を受賞した。

1993年
トニ・モリソン(Toni Morrison)が文学賞を受賞。スウェーデンアカデミーは「洞察力と詩的要素に性格付けられた彼の小説は、アメリカの現実の重要な側面に活気を与える」と述べている。

2004年
アーロン・チカノーバー(Aaron Ciechanover)、アブラム・ハーシュコ(Avram Hershko)、アーウィン・ローズ(Irwin Rose)は、ユビキチン介在性のたんぱく質分解を発見したことにより、化学賞を共同受賞した。

2010年
イギリスのロバートG.エドワーズ(Robert G. Edwards)が体外受精の開発により生理学賞・医学賞を受賞した。

2011年
スウェーデンの詩人であるトーマス・トランストマー(Tomas Tranströmer)が文学賞を受賞した。スウェーデンアカデミーは「彼は、濃縮された半透明のイメージを通じて、現実への新鮮な入り口を与えた」ことを受賞理由として述べている。

2018年
文学賞の授賞がなかった。当時危機の只中にあったスウェーデンアカデミーは、その年に賞を授与しなかった理由として、審査員の減員と国民の信頼の低下を挙げた。ただし2019年に、ペーター・ハントケ(Peter Handke)に授賞するのと並行して、オルガ・トカルチュク(Olga Tokarczuk)に2018年の文学賞を授与すると発表した。

2019年
エチオピアと隣の国のエリトリアの国境紛争の解決のために努力したとして、エチオピアの首相アビィ・アハメド・アリ(Abiy Ahmed Ali)に平和賞を授与した。この賞は、エチオピアと北アフリカ、東アフリカ地域で、平和と和解のために働いているすべての関係者に光を当てることも意図されていた。

他にも、マーティン・ルーサー・キング(Martin Luther King、1964年)、マザー・テレサ(Mother Teresa、1979年)、バラク・オバマ(Barack Obama、2009年)らが平和賞を受賞している。

2020年の受賞者
化学賞:フランスのエマニュエル・シャルパンティエ(Emmanuelle Charpentier)と、アメリカのジェニファー・A・ダウドナ(Jennifer A. Doudna)がゲノムの編集方法の開発によって受賞した。

文学賞:アメリカのルイーズ・グリュック(Louise Glück)が受賞した。その理由は、彼女の詩が「厳格で美しさを伴いながら、個人の存在を普遍的なものにする明白な詩的な声」であると評価されたことによる。

平和賞:国連世界食糧計画(WPF)が平和賞を受賞。「飢餓と戦う努力、紛争の影響がある地域に対して、平和のために状況を改善するための貢献、また、飢餓を戦争や紛争の武器として使用することを防止する原動力としての役割を果たした」ことが授賞理由である。

物理学賞:イギリスのロジャー・ペンローズ(Roger Penrose)、 ドイツのラインハルト・ゲンツェル(Reinhard Genzel)、アメリカのアンドレア・ゲズ(Andrea Ghez)が受賞。ブラックホールの構造が、相対性理論を強固に予測するものであるという発見をしたことによる。

医学・生理学賞:アメリカのハーベイ・J・アルター(Harvey J. Alter)、イギリスのマイケル・ホートン(Michael Houghton)、アメリカのチャールズ・M・ライス(Charles M. Rice)が受賞。 C型肝炎ウイルスの発見による。

経済学賞:アメリカのポール・R・ミルグロム(Paul R. Milgrom)とロバート・B・ウィルソン(Robert B. Wilson)が、オークション理論の改良と、新たなオークション形式を開発したとして受賞。

原資料掲載ページ:https://sweden.se/work-business/study-research/the-swedish-nobel-prize
翻訳時点の最終更新日 2021年6月1日
翻訳 若槻英里香、馬田萌水
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表はSweden.seに掲載されたものをそのまま転載しています。他サイトへのリンクは転載しておりません。