スウェーデン人はミートボール以外のものも食べる。以下の10の珍味のうち、あなたはどれか試したことがあるだろうか
1.リンゴンベリーは何にでも合う
ケチャップやマスタードと同じように、リンゴンベリーのジャムは、ミートボールやパンケーキ、お粥やブラッドソーセージ(blodpudding)など、さまざまな料理に使用される。しかしながら、甘いにも関わらず、パンに塗られることは滅多にない。自然享受権(allemansrätten)という、自然を自由に散策したり楽しんだりできることを認める権利のおかげで、多くのスウェーデン人は、森でリンゴンベリーを摘んだり、この小さくて酸っぱい果物からジャムのような保存食を作りながら大きくなった。
リンゴンベリーは基本的にどんな料理にも合う Photo:Magnus Carlsson/imagebank.sweden.se
2.酢漬けニシン-スモーガスボードの主役
スモーガスボード(スウェーデンの伝統的なビュッフェ)では、ミートボール(köttbullar)の代わりに小さなソーセージ(prinskorvar)を使ったり、スモークサーモンの代わりに塩漬けサーモン(gravlax)を使ったりすることがあるが、酢漬けニシン(sill)無しには成り立たない。この魚の食べ物は全ての典型的なスウェーデンビュッフェの基本であり続けている。
北海とバルト海はニシンが大量に生息しているので、スウェーデン人は中世からニシンを酢漬けにしており、その主な目的は魚を保存し輸送することだった。酢漬けニシンには様々な味があり、数例挙げるなら、マスタード、オニオン、ガーリックやディルなどがあり、ボイルポテト、サワークリーム、刻んだチャイブ、癖のある硬めのチーズ、時にはゆで卵やクリスプレッドと一緒に食べられる。
発酵ニシンのラップ包みは、次第にクセになる味だ Photo:Magnus Skoglöf/imagebank.sweden.se
スウェーデンスタイルのニシンには、様々な形や味がある。 Photo:Matilda Lindeblad/Johnér/imagebank.sweden.se
3.クリスプブレッド-あなたのお気に入りのトッピングはどれ?
パンとバターに加えて、クリスプブレッド(knäckebröd)がメインの料理と共によく提供される。これこそスウェーデン人が求めているものだ。かつては貧しい人の食べ物とされていたが、スウェーデンのクリスプブレッドには500年以上の歴史があり、適切に保存すれば最低でも一年は保存が効く、最も用途の広い食品の一つだ。
スウェーデン社会庁(Socialstyrelsen)は、1970年代のキャンペーンで、スウェーデン人がクリスプブレッドを含むパンを、一日に6から8スライス食べることを推奨していた。クリスプブレッドには様々な形、厚み、味があり、店の棚を埋めつくしている。朝食にはスライスしたゆで卵やチューブのキャビアをトッピングし、昼食にはハムやチーズ、きゅうりのスライスなどをのせ、夕食にはシンプルにバターを塗って食べられている。
クリスプブレッドは軽食に最適 Photo:Jakob Fridholm/imagebank.sweden.se
4.エビサンドイッチ(Räksmörgås)その他のオープンサンドイッチ
サンドイッチを注文した時に、一枚のパンで出てきても驚かないでほしい。それが典型的なスウェーデンのオープンサンドイッチだ。スウェーデンのオープンサンドの概念は厚い板状のパンをお皿として利用していた1400年代にさかのぼる。
スウェーデンのエビサンドイッチ(räksmörgås or räkmacka)は、今でも王様の献立の1つである。ゆで卵とレタス、トマト、キュウリを高く積み上げ、生クリームにディルや魚卵をあえたクリームソース(romsås)をかけて食べる。エビサンドイッチはスウェーデンの文化に欠かせないものであり、何もしていないのに有利になるという意味で’glida in på en räkmacka’(文字通りに訳せば「エビサンドイッチに滑り込む」だが、ざっくり言うと「ただ乗りする」と同義)という表現があるほどだ。
王様にも提供されるエビサンドイッチ Photo: Marie Ullnert/imagebank.sweden.se
5.エンドウ豆のスープとパンケーキ
多くのスウェーデン人は毎週木曜日にエンドウ豆のスープとパンケーキ(ärtsoppa och pannkakor)を食べて育つ。この伝統は、第二次世界大戦以降にスウェーデンの軍隊が支えてきた。その起源については、カトリック教徒が金曜日に肉を食べなかったため、木曜日に豆のスープでお腹を満たしたとか、豆のスープは木曜日を半日勤めにしている給仕が簡単に作ることができたとか、さまざまな説があるが、この伝統は確実に根付いている。伝統的なランチレストランでは、木曜日に豆のスープとリンゴンベリージャムその他のジャム(sylt)が添えられたパンケーキを提供することが多い。
エンドウ豆にチャンスを Photo:Susanne Walström/imagebank.sweden.se
6.プリンセストータ(Prinsesstårta)-王家の楽しみ
スウェーデン中のパン屋さんのウインドウを彩っているのが、鮮やかなピンクのシュガーローズをトッピングした人気のグリーンプリンセスケーキ(prinsesstårta)だ。ジャムとバニラカスタードを塗った黄色のスポンジケーキを何層にも重ね、ホイップクリームをたっぷり乗せて、甘いグリーンのマジパンで丁寧に封をしたケーキである。
スウェーデンでプリンセスケーキが誕生したのは比較的最近のことで、1920年代、イェニー・オーケルストレム(Jenny Åkerström)が考案した。国王グスタフ5世の弟カール・ベルナドッテ王子の娘たち、マルガレータ、メルタ、アストリッドの3王女がこよなく愛したことから、その名がついたという。
9月の第3週がプリンセスケーキ週間とされているが、今は特別なお祭りの時に食べられたり、人生の節目に使われたりしている人気のケーキである。現在では、定番の緑をはじめ、イースターの黄色、クリスマスの赤、ハロウィンのオレンジ、ウエディングの白など、さまざまな色が用意されている。
マジパンとクリームでできたプリンセスケーキ Photo:Magnus Carlsson/imagebank.sweden.se
7.楽しみな甘いものカレンダー
スウェーデンでは、甘いものを食べる口実がいつでも見つかる。というのも、特定の砂糖菓子を祝う日がカレンダーに定められている。10月4日は「シナモンパンの日(Kanelbullens dag)」である。
クリームとアーモンドペーストを挟んだパン「セムラ」は、四旬節の初日であり、灰の水曜日(askonsdagen)の前日にあたるざんげの火曜日(Shrove Tuesday やFat Tuesday)に食べられる。
3月25日はワッフル(våfflor)の日で、11月6日にはグスタフ2世アドルフ王のシルエットをかたどったチョコレートやマジパンを飾ったスポンジケーキ(Gustav Adolfs-bakelse)が食べられているが、これは1632年のこの日にリュツェンの戦いで命を落としたスウェーデン君主を悼んでのものとされている。
毎日がシナモンパンの日 Photo: Simon Paulin/imagebank.sweden.se
8.ザリガニに夢中
8月になると、スウェーデン中の庭やバルコニーで一口サイズの淡水または海水ザリガニ(かつてラングスティーヌ、あるいは面白いことにノルウェーロブスターと呼ばれていた)を食べながら、暖かい夏の夜を過ごすザリガニパーティー(kräftskivor)があちこちで行われる。
1500年代にはスウェーデンの上流市民と貴族だけが食べていたザリガニは、大量輸入により価格が数世紀かけて大幅に下がり、今や国民全員が楽しめる珍味となっている。
ザリガニパーティーでは、少々おバカな格好をしていても大丈夫 Photo: Anna Hållams/imagebank.sweden.se
9.シュールストレミングは臭い
どんな文化にも、地元の人や観光客を唸らせる名物料理が少なくともひとつはある。8月下旬から9月上旬にかけて、スウェーデン、特に北部では悪臭を放つ伝統が残っている。発酵させた酸っぱいバルト海のニシン(surströmming)の缶詰を開けて楽しむ人が、少なくとも何人かいる。この「珍味」は16世紀から取引されてきた。缶詰の開封は腐った卵や下水に例えられるほど強烈で不快な臭いがするため、できれば屋外で行われるのが望ましい。毎年8月の第3木曜日がSuströmmingの初開封の日とされている。
シュールストレミングは、本当に勇気のある人だけが食べることができる Photo:Tina Stafrén/imagebank.sweden.se
10.土曜日のお菓子(Lördagsgodis)
スウェーデンの平均的な家庭は、大人2人と子供2人で、週に1.2キロのお菓子を食べるが、そのほとんどが「お菓子の日」である土曜日に消費される。歯を守るため、虫歯を防ぐためと言われているこの週1回のお菓子の習慣は、歴史的には、やや疑わしい医学的な施策と関係がある。
1940年代から1950年代にかけて、ルンドにあるヴィペホルム(Vipeholm)精神病院で、お菓子に関して非常に賛否の分かれる実験が行われた。研究のための人体実験の一環として患者に大量のお菓子を食べさせ、意図的に虫歯を作らせたのである。1957年にお菓子と虫歯に直接的な関係があることが分かったことから、医療委員会はスウェーデン人がお菓子を食べるのを週に一度だけにするように勧告したのである。そして、この不文律が今でも多くの家庭で守られているというわけだ。
お菓子に目がない Photo: Lieselotte van der Meijs/imagebank.sweden.se
原資料掲載ページ:https://sweden.se/culture/food/10-things-to-know-about-swedish-food
翻訳時点の最終更新日 2021年11月18日
翻訳 青木 瞳 小池桃佳 中村由芽
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表はSweden.seに掲載されたものをそのまま転載しています。他サイトへのリンクは転載しておりません。