コンテンツへスキップ

「国境なき記者団」という団体が毎年発表している「報道の自由度」ランキングにおいても、北欧諸国は上位の常連です。特に2020年は上位4位までをスウェーデンを含めた北欧諸国が独占しました。

資料:Reporters Without Borders

スウェーデンで報道の自由に関わる法律である「出版の自由に関する法律」が制定されたのは、1766年のことでした。同法は現在、スウェーデンの憲法を構成する4つの基本法の1つとなっています。こうしたことは、スウェーデンにおいて報道の自由がいかに重視されているかを端的に示しています。
それに引き換え日本は、特に近年急速に順位を下げており、2020年は第66位と、北欧諸国がはるか遠くに感じられます。

天然資源ガバナンス研究所(Natural Resource Governance Institute)とブルッキングス研究所に所属するダニエル・カウフマン(Daniel Kaufmann)と世界銀行のアート・クレイ(Aart Kraay)が世界銀行の支援を受けて開発した世界ガバナンス指標(Worldwide Governance Indicators)の1つに、政府の効率性(Government Effectiveness)指標というのがあります。これは様々なデータを統合して政府の効率性を-2.5から2.5の範囲で示したものですが、ここでも北欧諸国が上位を占めており、スウェーデンは第7位です。

出所:The Worldwide Governance Indicators (WGI) project

広く知られているように、北欧諸国は高福祉高負担、つまり高いレベルの福祉は得られるけれども、その代わりに税負担の割合も高いです。しかし、その税金が効率的に無駄なく使われているのであれば国民はその負担を受け入れるということを、北欧諸国の例は示しています。これは逆に、国民に高い負担を求めるのであれば、政府は効率的でなくてはならないということでもあります。

負担の割合をどの程度に調整するかは、それぞれの国の判断によって異なりますが「高負担=悪」とは必ずしも言えないということは、私たちにとっての大きな教訓であるように思います。

 

アメリカのイェール大学やコロンビア大学などの研究機関が様々な分野で世界各国を評価し、それを総合したものを環境パフォーマンス指数として公表しています。2020年におけるトップはデンマーク。スウェーデンは第8位で、その前後に第7位のフィンランド、第9位のノルウェーが名前を連ねています。

資料:Environmental Performance Index

なお、研究チームは各国の現在の指数だけでなく、それが10年前と比べてどの程度向上したかについても示しています。それによるとスウェーデンの向上率は5.3%でした。これに対して日本の向上率は-0.5%、つまり10年前よりも後退しています。現在の順位は第12位と決して悪くはありませんが、非常に不安な状況です。

優れたビジネス環境を提供し、高福祉を維持しながら高負担を抑制し、男女平等を促進し、着実な経済成長を実現する。このような理想的な国家運営を実現している基盤となっているのが、選挙における高い投票率です。

注:OECD加盟37カ国中の順位。2020年3月時点で直近の議会(二院制の場合は下院)選挙における結果。
資料:International Institute for Democracy and Electoral Assistance

上のグラフは、OECD諸国において直近に実施された国会議員選挙の投票率の上位国と日本です。2018年に選挙が実施されたスウェーデンは87.2%で第4位。北欧以外の上位の国々(オーストラリア、ルクセンブルグ、ベルギー、トルコ、オランダ)では強制投票制度が採用されている、もしくはかつて採用されていたので、純粋に自発的な投票における投票率という意味では、北欧諸国の投票率が国際的にみて非常に高いことがわかります(ただしフィンランドは投票率68.7%、第17位にとどまっており、この点では例外的です)。

スウェーデンが「女性が働く国」であることは、よく知られています。15歳~64歳の女性のうち、高校生や大学生などを除き、実際に働いている、もしくは働きたくて仕事を探している人の割合(労働力参加率)を見ると、スウェーデンは81.1%と、84.4%のアイスランドに次ぐ高さです。

注:OECD加盟37カ国中の順位
資料:OECD, OECD Data

スウェーデンでは、結婚しても子どもが生まれても、働ける人は働くものとされています。その理由は単純で、パートナーが2人とも働かなければ、生活が成り立たないからです。国としても、高い教育を受けた優秀な労働力が、女性であるというだけの理由で家事労働しか行わないというのは、大きな損失です。その部分のロスが少ない(ただし全くないわけではありません)のが、スウェーデンの好調な経済を支えている理由の1つです。

もちろん、消費者としての国民は男女ほぼ半数ですから、商品開発その他の事業活動の意思決定が男性目線でのみ行われるというのは、そもそもおかしな話です。もちろん日本にもそのことに気がついて女性社員をうまく活用している企業が最近増えてきました。とはいえ、「わが社は女性の働く環境が整っている」と胸を張れる経営者は、この国にいったいどれだけいるのでしょうか。