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ドイツに本部を置くNGOのトランスペアレンシー・インターナショナルによる2019年版の「汚職(正確にいえば汚職がない)番付」によると、トップはデンマークとニュージーランドで、フィンランドが第3位、スウェーデンはシンガポール、スイスと並んで第4位、これにノルウェーが第7位と続いています。つまり北欧諸国は「清廉な国」という評価も受けていることがわかります。

資料:Transparency International

もちろんスウェーデンでも汚職がないわけではありません。人々の記憶に残っている例としては、1995年に、当時社会民主党のホープで、スウェーデンで初の女性首相になると目されていたモナ・サリーン副首相が、公費のカードで50,000クローナ(約65万円)ほどを使い込んだ「トブラローネ(不正な買い物の中に含まれていたチョコバーの名前)事件」で、一時政界を追われたのが有名です。

ただしこの事件は、日本では「その程度のことで政界を追われちゃうんだ…」と、むしろスウェーデンの清廉さを示すエピソードとして語られることが多いようです(それもどうか、とは思いますが…)。

2010年代半ばに中東・北アフリカ、特にシリアからの難民が大量にトルコとヨーロッパに流入しました。それは大変な社会的混乱を引き起こしましたが、それでもスウェーデンは他のヨーロッパ諸国に比べると極めて積極的に難民の受け入れに努力してきました。

注:OECD加盟37カ国中
出所:World Development Indicators

人口1万人あたり247人ということは、人口が1億2,600万人の日本でいえば、約311万人になる規模ですから、そのインパクトは計り知れません。その結果として、移民受け入れ反対を掲げるスウェーデン民主党が支持を広げ、政府も一定の受け入れ制限に踏み切ったというのも事実です。しかしそれでもこの問題から目をそむけることなく、真摯に向き合う姿は立派だと思います。

今回の難民問題が中東・北アフリカ地域の紛争に根差すものであることを考えれば、地理的にも文化的にも縁遠い日本で受け入れが少ないことを、ドイツやスウェーデンと比べて非難するのは違うと思います。しかし将来、もしも近隣地域で大量の難民が発生して、日本が大きな選択を迫られることがあるかもしれません。その時に、どのような問題が起こりうるのか、そしてそれらの問題をどうやって乗り越えるのかといった様々な教訓を、スウェーデンの経験から得ることができるのではないかと思います。

「女性活躍推進」が叫ばれて久しいですが、衆議院議員に占める女性の割合は9.9%と世界190カ国中で第166位、OECD加盟37カ国中では最低です。

注:二院制の場合は下院、OECD加盟37カ国中。
出所:Inter-Parliamentary Union, PARLINE database (2021年1月時点)

かたやスウェーデンの国会における女性議員の割合は47.0%とほほ半数。フィンランドやノルウェーでも4割を超えています。デンマークとアイスランドの女性議員の割合は3割台ですが、両国を含め、スウェーデン以外の北欧諸国の首相は全員女性です。

スウェーデンの政党はクオータ制を採用しています。スウェーデンの選挙は比例代表制なので、各党が候補者名簿を作成するわけですが、そこで男女を交互に配置することで、当選者に占める男女の割合がほぼ同数になるようにしているのです。ただしこの制度は国が法律で定めたものではありません。けれどもスウェーデンでは多くの政党が「わが党は男女平等である」ということをアピールするために、自主的に採用しています。つまり、多くの国民がそのような取り組みを評価しているということです。

スウェーデンへの留学や渡航を検討していて、「スウェーデン語が話せないけれど、大丈夫だろうか?」と不安に思う方がいらっしゃるかと思います。でも、スウェーデンを含めて北欧諸国では大多数の人が英語を普通に話せるので心配いりません。

資料:Education First

語学・留学関連サービスを世界的に展開しているEducation Firstが毎年発表している英語能力指数でも、北欧諸国が第2位から第5位まで並んでいます(アイスランドは調査対象に含まれていませんが、含まれていればきっと同様に高いと思います)。これはもちろん、北欧諸国の言葉と英語が言語的に非常に似ているということもありますが、小さな国が国際社会でやっていく上で英語が必須であるという認識を広く共有し、英語教育に力を入れていること、また小さな国であるがゆえに、アメリカの映画が(日本のように)吹き替えではなく、字幕でしか対応しておらず、自然と英語に触れる機会が多いことも忘れてはいけません。どの国にも英語を話す人はある程度はいますが、北欧諸国では社会的地位や教育水準がそれほど高くない人でも英語が話せるのが特徴的です。

もちろん、現地の言葉ができた方が生活する上で便利ですし、現地の人たちと打ち解けやすいのも事実です。現地で働きたいのであれば、もちろん現地語をマスターする必要があります。ただ、彼らはなまじ英語が上手であるために、ちょっとたどたどしい現地語を話すと、すぐに英語に切り替えられてしまうので、現地に長く住んでいても現地の言葉がなかなか上達しないかもしれません。逆に、真剣なビジネストークをしたい場合には、自分が現地語を話せてもあえて使わず、英語で話した方が、変になめられずに済む、という話もあったりします。

アメリカのコーネル大学やフランスのINSEADなどのチームが、教育・研究、科学技術の水準、さらに革新的なアイデアをビジネスにする土台としての制度的基盤などを総合的に評価したグローバルイノベーション指数において、スウェーデンはスイスに次ぐ世界第2位の評価を与えられています。

資料:The Global Innovation Index

ここでもやはり北欧諸国は強く、デンマークが第6位フィンランドが第7位、にランクインしています。資源に乏しく、労働コストの高い国では、いかに自国でイノベーションを促進できるかが成長のカギとなります。スウェーデンは、そのことをよくわかっています。日本は第16位で、ノルウェー、アイスランドよりは上位ですが、もうひと頑張りしてほしいものです。