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今回は、ストックホルム郊外にあるセーデルトーン大学で国際交流担当職員として勤務している松本英久さんにご講演いただきます。松本さんは、都内私立大学で職員としての勤務を経て、2018年にストックホルム大学教育学研究科国際比較教育修士課程へ進学されました。大学院修了後、セーデルトーン大学での短期プロジェクトオフィサーを経て、2021年3月より同大学国際交流事務室において主に奨学金や留学生受入れ業務等に従事されています。
ご講演では、オンラインに切替わった授業やコロナウィルスに係る規制強化後の大学構内の様子、セーデルトーン大学でご自身が関わったアンケート調査(渡航規制による英語開講授業への影響)によって明らかになったこと、また職員という立場から見たコロナ禍における大学教育の現状と今後の課題等についてご報告いただきます。

● 日時 2021年4月24日(土)20:00 - 21:00
● 開催場所 オンライン(Zoomミーティング)
● 現在、年会費をお支払いいただいた会員の方のみをご参加可能としております。会員の方には、研究講座を録画したビデオを後ほどご視聴いただくこともできます。
ご入会ご希望の方は、新規会員募集よりお申し込みください。
※当日の機器や通信状況によっては、配信に障害が発生することもございます。その場合にはご容赦いただきますよう、予めお願い申し上げます。


インターネットへのアクセスは民主制の促進に役立っている。
Photo: Melker Dahlstrand/imagebank.sweden.se

スウェーデンは自由で開放的な社会である。人々には言論の自由と出版・報道の自由、そして権力者たちを精査する権利、デモに参加する権利がある。

開放性の保護

 開放性と透明性はスウェーデンの民主主義において重要な点である。民主主義社会は統治法、出版自由法、表現自由法、王位継承法という4つの基本法によって保護されている。これらの法律がスウェーデンの憲法を構成しており、他のいかなる法律にも先行する。

 スウェーデンの憲法は全ての国民に自由に情報を求める権利、デモを組織する権利、政党を結成する権利、そして宗教の教えを実践する権利があると定めている。

出版の自由

 出版の自由は、ほとんどの民主主義の礎となる表現と言論の自由に基づいている。1766年、スウェーデンは世界で初めて出版の自由を憲法に取り込んだ国となった。出版自由法では、権力者は必ず説明責任を果たさなければならないこと、そして全ての情報は自由に利用できなくてはならないと定めている。出版者や編集者、報道機関に情報を提供した者の身元は保護され、その情報源を明らかにするようにジャーナリストが強制されることは、決してあってはならない。

 しかし、意見を表明する権利は絶対的な権利ではない。濫用されると、言論の自由は攻撃的になったり、差別や暴力を煽動したり、また個人や社会に否定的な結果をもたらしてしまいかねない。出版や表現の自由に関する犯罪の容疑については、政治的な圧力とは切り離された司法庁(Office of the Chancellor of Justice)が取り扱う。

 2020年の国境なき記者団による世界報道自由度ランキングにおいて、スウェーデンは第4位であった。この順位は、各国のジャーナリストや報道機関の自由度やその保護のための官庁による努力の度合いに基づいている。

報道に対する補助金
 スウェーデンでは、新聞が他のメディアに対抗できるように税金による補助金で支援している。これによって多様性を促進し、多面的な情報入手を人々に確保している。

テレビとラジオの独立性
 公共放送のSVT(スウェーデンテレビ)とSveriges Radio(スウェーデンラジオ)は広告なしで様々な番組を提供している。多くの人はこれに加えて民間のチャンネルやストリーミングサービスにアクセスしている。

学術出版物への自由なアクセス
 オープンアクセスプログラムは、スウェーデンの高等教育機関における電子出版を支援し、研究者や教員、学生による成果へのアクセスと可視化を最大限に促進している。


2019年9月27日にストックホルムで行われた気候変動対策を訴えるデモ。
Photo: Jann Lipka/imagebank.sweden.se

情報の自由

 情報の自由の原理は一般大衆やマスメディアが公文書にアクセスすること、つまり国、地域、地方の全てのレベルで行政を精査する機会を有するということを意味する。
 透明性は権力が濫用されるリスクを減らすものである。

 公務員その他の政府で働く人々も同様に、メディアや第三者に情報を自由に提供することができる。ただし、たとえば国家の安全保障の内容に関わるような特定の文書は機密として守られる。

平等と人権

 スウェーデンでは人権は主に、統治法、出版自由法、表現自由法によって守られている。公権力は、すべての人々の平等、個人の自由や尊厳を尊重して行使されなければならない。

 法律やその他の規制は、いかなる市民に対しても、性別、トランスジェンダーのアイデンティティあるいは表現、民族起源、宗教、障害、性的指向あるいは年齢といったマイノリティに属することを理由として、不利益を与えることがあってはならない。


スウェーデンは、法令や規則によって全ての人が平等な扱いを受けられるように努力している。
Photo: Magnus Liam Karlsson/imagebank.sweden.se

人権に対する世界的な闘争

 欧州人権条約は1995年からスウェーデンの法律に組み入れられている。スウェーデンはまた、国際連合、国際労働機関、ヨーロッパ評議会の内で、いくつかの人権協定に署名し批准してきた。スウェーデンの外交政策のすべての領域、つまり安全、発展、移住、環境、貿易政策は、人権、民主主義、そして法律の規則に基づかなくてはならない。


多くのスウェーデン人にとって、ソーシャルメディアは日常生活の一部である。
Photo: Emelie Asplund/imagebank.sweden.se

インターネット上の開放性

 スウェーデン人の96%がインターネットの利用者である。1,000万人の人口のうち、98%が家でインターネットへアクセスできる(2020年)。スウェーデン政府は2025年までに、「完全に接続されたスウェーデン」を目指している。

スウェーデンの決済アプリSwishやBankIDという身元証明アプリなど、モバイルによるインターネット利用が、この発展を促進している。

スウェーデンのソーシャルメディア

 2020年時点で、スウェーデン人の10人に9人がソーシャルメディアを利用している。これはコロナ禍が促進している面もある。Facebookは81%の人が利用し、26~35歳にもっとも人気がある。Instagramは71%の人が利用し、16~25歳では90%に達している。またこの年代では91%がSnapchatを利用しているが、全年代では42%にとどまっている。Twitterの利用者はこの中では最も少なく24%に過ぎない。ただし最も若い世代では44%が利用している。

オープンエイド

 スウェーデンには、透明性という考え方に基づいて、政府のオープンデータをもとに作成された「openaid.se」というウェブサイトがある。「openaid.se」は、個人、NGOs、援助を受ける人や援助当局に、政府の公式データにアクセスし学ぶ機会を提供する。その目的は、人道的努力における透明性や開放性をさらに高めることと、他の期間に一般の人々に向けて透明性や開放性を高めさせることである。

オンブズマン
 オンブズマンという言葉はスウェーデン語から来ており、代表者として活動する人を意味している。

議会オンブズマンは、自分や他人が公的機関や公務員から誤った扱いを受けたという不服申し立てを扱う。スウェーデン国民か否かに関わらず、誰でも不服を申し立てることができる。
jo.se

法務官(The Chancellor of Justice)は、政府のために省庁や裁判所を監督する。
jk.se

平等オンブズマンは、差別と闘い、全ての人が平等な権利と機会を得るように努める。
do.se

メディアオンブズマンは、報道倫理を扱う。調査の結果さらなる処置が必要な場合には、スウェーデン報道理事会に送致する。
medieombudsmannen.se

消費者オンブズマンは、企業がマーケティングや製品安全に関する法令を遵守しているかを監視しており、誤解を招く広告や不適切な契約条件、誤った価格表示、危険な製品などを取り締まっている。
konsumentverket.se


子どもオンブズマンは子どもの権利と利益を守り、国連の子どもの権利条約が守られているかを監視している。
barnombudsmannen.se
Photo: Ann-Sofi Rosenkvist/imagebank.sweden.se

掲載ページ:https://sweden.se/society/openness-shapes-swedish-society/
翻訳時点の最終更新日 2021年2月12日
翻訳 押谷彩瑛、庄司弥奈、本澤由紀
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表は著作権上・技術上転載可能なもののみ転載し、他サイトへのリンクは転載しておりません。

ドイツに本部を置くNGOのトランスペアレンシー・インターナショナルによる2019年版の「汚職(正確にいえば汚職がない)番付」によると、トップはデンマークとニュージーランドで、フィンランドが第3位、スウェーデンはシンガポール、スイスと並んで第4位、これにノルウェーが第7位と続いています。つまり北欧諸国は「清廉な国」という評価も受けていることがわかります。

資料:Transparency International

もちろんスウェーデンでも汚職がないわけではありません。人々の記憶に残っている例としては、1995年に、当時社会民主党のホープで、スウェーデンで初の女性首相になると目されていたモナ・サリーン副首相が、公費のカードで50,000クローナ(約65万円)ほどを使い込んだ「トブラローネ(不正な買い物の中に含まれていたチョコバーの名前)事件」で、一時政界を追われたのが有名です。

ただしこの事件は、日本では「その程度のことで政界を追われちゃうんだ…」と、むしろスウェーデンの清廉さを示すエピソードとして語られることが多いようです(それもどうか、とは思いますが…)。