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2010年代半ばに中東・北アフリカ、特にシリアからの難民が大量にトルコとヨーロッパに流入しました。それは大変な社会的混乱を引き起こしましたが、それでもスウェーデンは他のヨーロッパ諸国に比べると極めて積極的に難民の受け入れに努力してきました。

注:OECD加盟37カ国中
出所:World Development Indicators

人口1万人あたり247人ということは、人口が1億2,600万人の日本でいえば、約311万人になる規模ですから、そのインパクトは計り知れません。その結果として、移民受け入れ反対を掲げるスウェーデン民主党が支持を広げ、政府も一定の受け入れ制限に踏み切ったというのも事実です。しかしそれでもこの問題から目をそむけることなく、真摯に向き合う姿は立派だと思います。

今回の難民問題が中東・北アフリカ地域の紛争に根差すものであることを考えれば、地理的にも文化的にも縁遠い日本で受け入れが少ないことを、ドイツやスウェーデンと比べて非難するのは違うと思います。しかし将来、もしも近隣地域で大量の難民が発生して、日本が大きな選択を迫られることがあるかもしれません。その時に、どのような問題が起こりうるのか、そしてそれらの問題をどうやって乗り越えるのかといった様々な教訓を、スウェーデンの経験から得ることができるのではないかと思います。

「女性活躍推進」が叫ばれて久しいですが、衆議院議員に占める女性の割合は9.9%と世界190カ国中で第166位、OECD加盟37カ国中では最低です。

注:二院制の場合は下院、OECD加盟37カ国中。
出所:Inter-Parliamentary Union, PARLINE database (2021年1月時点)

かたやスウェーデンの国会における女性議員の割合は47.0%とほほ半数。フィンランドやノルウェーでも4割を超えています。デンマークとアイスランドの女性議員の割合は3割台ですが、両国を含め、スウェーデン以外の北欧諸国の首相は全員女性です。

スウェーデンの政党はクオータ制を採用しています。スウェーデンの選挙は比例代表制なので、各党が候補者名簿を作成するわけですが、そこで男女を交互に配置することで、当選者に占める男女の割合がほぼ同数になるようにしているのです。ただしこの制度は国が法律で定めたものではありません。けれどもスウェーデンでは多くの政党が「わが党は男女平等である」ということをアピールするために、自主的に採用しています。つまり、多くの国民がそのような取り組みを評価しているということです。

スウェーデンへの留学や渡航を検討していて、「スウェーデン語が話せないけれど、大丈夫だろうか?」と不安に思う方がいらっしゃるかと思います。でも、スウェーデンを含めて北欧諸国では大多数の人が英語を普通に話せるので心配いりません。

資料:Education First

語学・留学関連サービスを世界的に展開しているEducation Firstが毎年発表している英語能力指数でも、北欧諸国が第2位から第5位まで並んでいます(アイスランドは調査対象に含まれていませんが、含まれていればきっと同様に高いと思います)。これはもちろん、北欧諸国の言葉と英語が言語的に非常に似ているということもありますが、小さな国が国際社会でやっていく上で英語が必須であるという認識を広く共有し、英語教育に力を入れていること、また小さな国であるがゆえに、アメリカの映画が(日本のように)吹き替えではなく、字幕でしか対応しておらず、自然と英語に触れる機会が多いことも忘れてはいけません。どの国にも英語を話す人はある程度はいますが、北欧諸国では社会的地位や教育水準がそれほど高くない人でも英語が話せるのが特徴的です。

もちろん、現地の言葉ができた方が生活する上で便利ですし、現地の人たちと打ち解けやすいのも事実です。現地で働きたいのであれば、もちろん現地語をマスターする必要があります。ただ、彼らはなまじ英語が上手であるために、ちょっとたどたどしい現地語を話すと、すぐに英語に切り替えられてしまうので、現地に長く住んでいても現地の言葉がなかなか上達しないかもしれません。逆に、真剣なビジネストークをしたい場合には、自分が現地語を話せてもあえて使わず、英語で話した方が、変になめられずに済む、という話もあったりします。

Covid-19の流行により、大学生たちの日常も大きく変わりました。特に現在の大学4年生たちは対面授業の機会が大きく損なわれた上に、就職活動において大きな変更を迫られた者も少なくありません。
しかしそのような環境の変化にもめげずに、明治大学国際日本学部鈴木ゼミでは、日本社会とスウェーデン社会の比較研究にひたむきに取り組んで参りました。
今回は、例年のようにスウェーデン大使館のオーディトリウムの舞台に立たせてあげられないのが誠に悔やまれるところではありますが、オンライン開催の利点を活かして、下記の通り、3週間連続で発表会を実施したいと考えております。
また今回は無料の一般公開といたしますので、JISS会員の方はもちろんのこと、ご興味のある方に広くお声がけいただき、なるべく多くの方にご参加いただければと考えております。

【第1部 Covid-19流行下のスウェーデンから学ぶこと】
(2021年1月11日 20時~21時)
本郷雅也 『Covid-19が明らかにした政策評価と政府への信頼感の関係性』
井上葉月 『医療から見るスウェーデン~人々はどのように医療と向き合ったのか』
菅野岳史 『日本の未来のニューモデルとしてのスウェーデンの思考様式』
稲垣拓朗 『Covid-19報道に観るメディアと信頼の関係』
鈴木宗太郎『スウェーデンは「移民統合」に失敗したのか』

【第2部 スウェーデンのIT・教育・イノベーション】
(2021年1月18日 20時~21時)
市川莉子 『スウェーデンにおけるIT化と平等意識』
滝口奈菜 『主体性を形成するスウェーデンの教育』
三浦久実 『スウェーデン人の知的好奇心の高さとその理由』
上野彩夏 『イノベーティブな企業を数多く輩出する国から紐解く才能の育て方』

【第3部 スウェーデンの働き方と子育て】
(2021年1月25日 20時~21時)
川本春菜 『労働時間からみる日本とスウェーデンの働き方』
國立琳花・和田はるひ
『日本で女性管理職を増やすには~スウェーデンから得られるヒント』
荒原沙輝 『性別役割分業観と子育ての実態に関する日本とスウェーデンの違い』
野中梨沙・根本遥
『なぜスウェーデンの女性は仕事と子育てを両立できるのか』

● 開催場所 オンライン(Zoomミーティング)
● 参加費 無料(非会員の方もご参加いただけます)
● ご参加ご希望の方は、下記のフォームにご記入ください。それぞれご登録された回の前日までにZoomのリンクをお送りいたします。

本日の講座の受付は終了いたしました。

なお、年会費をお支払いいただいている会員の皆様におかれましては、研究講座を録画したビデオを後ほどご視聴いただけるようにいたします。
ご入会ご希望の方は、新規会員募集よりお申し込みください。
※当日の機器や通信状況によっては、配信に障害が発生することもございます。その場合にはご容赦いただきますよう、予めお願い申し上げます。

スウェーデンの公的機関であるThe Swedish Instituteのウェブサイト「Sweden.se」には、スウェーデンに関する様々な情報(ファクトシート)が掲載されていますが、それらの情報は全て英語です。そこで、日本でスウェーデンのことを少しでも多くの人に知ってもらおうと、在日スウェーデン大使館の許諾の下で、明治大学国際日本学部鈴木ゼミの学生が翻訳した日本語版を順次発表していきますので、よろしくお願いします。
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