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スウェーデンでは、テクノロジーの進歩により、現金が過去のものとなりつつある。みなさん、準備はいいですか?

スウェーデンは長い間、銀行業務のイノベーションの最先端を走ってきた。ロンドンに世界初の自動現金支払機が設置されてからわずか1週間後の1967年7月、スウェーデン初の自動現金支払機が設置された。それ以降、決済手段の開発と簡素化は大きく進化してきた。

The counter of a café, with food and drink on the sides, machines for card payments on the counter and a woman looking into the camera behind the counter.

Photo: Love Strandell/Zettle

「スウィッシュできますか?」
新たな文化ができたことを実感するのはそれが日常の言葉になったときだ。swisha(スウィッシュする)」という動詞はその典型である。これはSwishというアプリを使って即時決済することを指す。スマートフォンに番号を入力するだけで、あっという間に振込みができてしまうのだ。

最近では、一部のカフェやショップ、スーパーなどで、客が携帯電話でQRコードをスキャンし直接支払いができるようになった。Swishアプリをはじめとする大小さまざまなイノベーションにより、スウェーデンはキャッシュレス社会が進んでいると評価されている。

モバイルバンクID

今日、スウェーデンの社会ではBankIDがとても重要になっている。これは、スウェーデンの個人識別番号(personnummer)と銀行口座を持っている人なら誰でも、すべてのデジタル公共サービスにアクセスすることでインターネットバンキングを利用し、さらに契約書に署名することができるアプリだ。

6桁のコード入力や、スマートフォンの指紋認証など、ほとんどすべてのことが指先で操作できる。このおかげで、スウェーデンでは、デジタルサービスにアクセスするために多くのパスワードを覚える必要がない。

日常生活の一部

キャッシュレス決済は、スウェーデン人のライフスタイルと密接に結びついている。

スウェーデン人がバーやレストランで会計を割り勘にすることが多いこともswichの人気に繋がっている。一人が支払い、残りの人が自分の分をswishで送金することが多い。

ウプサラ大学の民族学教授であるエラ・ヨハンソン氏は、これは友情とお金の関わり方に大きく関係していると語っている。

「スウェーデン人は、お金や借金のやり取りは友情を脅かすものであると考えています。例えばイタリアのような他の文化では、友情を維持するために、会計を自分がするのだと言ってもめることがあります。」

Shoppers at an outdoors flea market.
フリーマーケットですら、現金がどこも使えないことがよくある。Photo: Faramarz Gosheh/imagebank.sweden.se

A mobile phone with a page from the Klarna app on the screen.
キャッシュレス社会とともにフィンテックが成長している。Photo: Klarna

A cash machine in a wall by an empty street.
スウェーデンのATMは以前ほど使われなくなった。Photo: Bankomat

A square-shaped prototype with lots of different colours.
クラーナ未来ショッピングラボでは、未来のショッピングの姿を模索している。これは郵便ポストモジュラーの試作品である。Photo: Klarna

スウェーデンのフィンテック

キャッシュレス社会に向けた動きは、フィンテック(金融技術)によっても推進されている。国際的に有名なフィンテック企業の多くは、スウェーデンで設立された。例えば、2005年に設立された決済システムのスタートアップであるクラーナ(Klarna)は、世界で9,000万人以上の顧客を抱えている。

また、アイゼットル(iZettle)は小型で安価なカード決済端末を製造している。この端末でスマートフォンやタブレットの専用アプリに接続することで、お店で決済を行うことができる。

文字通り「手軽な」支払い

キャッシュレスを文字通り身につけてしまった人々もいる。彼らは手にマイクロチップを埋め込むことで、身分証明書からドアを開閉、電車の切符、さらには銀行カードまで、さまざまなデータを保存し、手をかざすだけ支払いができるようになった。

これはSF映画の話のように聞こえるかもしれないが、1000人以上のスウェーデン人が、この便利なバイオハッキンググッズをライフスタイルに取り入れている。銀行カード、身分証明書、会員証、鍵などはもはや持ち歩く必要がないのだ。

どのくらいのスウェーデン人が現金を使っているか

スウェーデン中央銀行(Risksbank)によると、10年間で現金を使うスウェーデン人の割合は39%から9%へと低下した。現金の利用は多くの場合、少額の支払いや高齢者に限定されている。他の多くの国でもそうであるように、お店やカフェにおいて、「現金のみ」よりも「カードのみ」や「キャッシュフリー」としている方がより一般的となっている。

オンラインショッピングもとても人気だ。多くの小売業はウェブショップを通して十分な利益を得ている。EUの統計(Eurostat)によると、スウェーデン人口の82%がオンラインショッピングを行っており、この割合はヨーロッパの中でも上位となっている。

リスクと挑戦

しかし、スウェーデンのすべての人がキャッシュレス社会を歓迎しているわけではない。

73歳の男性であるステファンさんは、未だ現金支払いを好むと語っている。「特に酒屋(Systembolaget)に行ったときは、必ず現金で払っています。私がどのくらいワインにお金を費やしたか銀行に知られたくないからね。」

若いイタリア人の弁護士であるシルビアは2年間スウェーデンに住んでおり、電子決済は不正なお金や賄賂、その他犯罪行為を防ぐ良い方法だと語っている。しかしマイクロチップを体内に埋め込むことに関しては、懸念を示している。「私がマイクロチップを埋め込むことはないわ。生成される全ての個人情報のことを考えると、もし違う人の手に埋め込まれたらどうなってしまうのかと思うわ。」

より共通の課題として、支払い方法の変化に容易に順応していくテクノロジーに精通している若者と、未だに現金支払いを好む多くの高齢者の間の溝が深まるということがある。バスのチケットの例を考えてみよう。人々は多くの場合スウィッシュや銀行のカードと連動しているアプリを通してチケットを購入する。これはスマートフォンの使用に慣れている人達にとってとても便利だ。しかし古いタイプの携帯電話や携帯電話を持っていない人にとっては、大きな障壁となってしまう。

スウェーデンのキャッシュレスの未来とは?

銀行業務の未来はとてもハイテクであり、人工知能(AI)に注力しているように見える。ここまで述べてきたことに加えて、ティンク(Tink)やロッカー(Rocker、旧Bynk)といったフィンテク会社も急成長しており、さらに多くのスタートアップ企業も同様だ。バンキングアプリやスウィッシュもキャッシュレス社会への移行に向けたサービスの単純化や統合を行い、衰えることなく成長を続けている。

いつかすべての人が体に埋め込まれたマイクロチップで支払いをしているかもしれない。未来のバンキングシステムがどうなっていようと、スウェーデンは未来の支払い革命の最前線であり続けるだろう。

原資料掲載ページ:https://sweden.se/life/society/a-cashless-society
翻訳時点の最終更新日 2021年6月1日
翻訳 池田麻衣子、久保田竜希
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表はSweden.seに掲載されたものをそのまま転載しています。他サイトへのリンクは転載しておりません。

スウェーデンの所得税は、他のほとんどの国と比べて高い。その多くが、社会のワークライフバランスを提供するために使われている。これは、社会が日常生活の中で家族にやさしい解決策を提供できるようにみんなが貢献する、という考え方に基づいている。

国の補助による出産

普通、スウェーデンの女性は病院で出産する。出産や産後の入院費用は、ほぼ完全に税金によって運営されている。
出産における具体的な状況は病院によって大きく異なるが、あまり病院に見えないような「ホテル」が病院に隣接している場合がある。ここには、必要があればお母さんとそのパートナーが産後二、三日滞在することができ、看護師が母親の様子をチェックしたり、新生児の産後ケアを行えるようになっている。

育児休暇-子どもとの絆を深める機会

スウェーデンでは、子どもが生まれたときや養子をもらったとき、両親は有給の育児休業を480日取得することができる。国際的な基準からみてもこの数字は高く、スウェーデンが子供にやさしいシステムであるという時に、おそらく最もよく引き合いに出されるものである。
有給の育児休暇を与えることは、親が仕事と家庭を結びつけられるようにする方法の一つである。子どもを持つということは、キャリアの終わりを意味するのではなく、単なる一時停止である。これは平等というだけではなく、国レベルでは、経済や労働力の可能性を最大化し、ひいては国の成長を高めることでもある。


Photo: OTW/imagebank.sweden.se

議論に上るジェンダー平等

スウェーデンの市や町を歩いてみると、父親がベビーカーを押し、カフェや公園で赤ちゃんにミルクをあげながら一緒にコーヒーを飲んでいる光景をみるだろう。そう、スウェーデンには「ラテママ」と「ラテパパ」の両方が存在する。あるジャーナリストの言葉を借りれば「ここでは、男性もすべて行うことができる」。
ジェンダー平等を達成するために、両親は480日の有給の育児休業のうち、それぞれ240日ずつを取得する権利がある。ただしそのうち90日分は固有の権利とされ、一方の親がその育児休業を取らないと決めても、それを他方の親のものにすることはできない。今日、スウェーデンの男性は有給育児休業全体の30%近くを取得しているが、政府はこの数値をさらに高めたいと考えている。


Photo: Lena Granefelt/imagebank.sweden.se

全て税金で賄われる、六歳からの学校教育

スウェーデンのほとんどの子どもたちは幼稚園と保育園を一元化した就学前学校(förskola)に通っている。親たちは、多くの場合、子どもが18か月ごろになると仕事に戻ることを選択するため、そのころから子どもたちは就学前学校に通い始める。その費用は最大でも毎月の児童手当SEK1,250クローナ(2019年時点)とほぼ同じくらいである。

スウェーデンの住民は、子どもの教育のための貯金の心配をする必要はない。6歳から19歳までの子どもたちのための学校(就学前学校から高校)は、完全に税金によって賄われている。これにはほとんどの場合、給食も含まれる。

EU域内の学生については、大学の学費も税金で賄われるが、EUやEEA以外からの留学生は学費を払わなくてはならない。

病気の子どものための欠勤

スウェーデンで働く親は、子どもが病気にかかったとき、看護休業を取得することができる。子どもが12歳未満の場合には、スウェーデン社会保険庁から休業補償給付が受けられる。12歳から15歳の子どもについては、医師の証明書が必要となる。

主に税金で賄われる医療サービス

スウェーデンのほとんどの医療サービスは税金で賄われている。20歳からは、住んでいる地域によって違いはあるが、かかりつけ医の受診は100SEKから300SEKの負担となる。専門医の受診は最大で400SEKとなる。ただし過去1年間に受診料の総額が1,100SEKに達した場合、高額医療費減免制度が適用され、残りの期間の医療費が無料となる。

地域によって多少システムが異なるが、20歳未満であれば医療費は基本的に無料である。また、ほとんどの歯科医療は24歳になるまで無料である。


Photo: Melker Dahlstrand/imagebank.sweden.se

児童のための図書館と文学

スウェーデンには子ども向けの図書館の強い文化がある。図書館には色々な言語の児童書があり、お絵描きや工作、歌などのアクティビティも開催される。

また、スウェーデンは世界的に有名な児童図書の作家である、アストリッド・リンドグレーンやノーベル賞を受賞したセルマ・ラーゲルレ―ヴを輩出している。

リンドグレーンは子供たちの中でもおそらく非常に印象深いキャラクターであろう、長靴下のピッピの作者である。彼女が遺したものは本だけではない。スウェーデンの北の町、ビンメルビューにあるアストリッドリンドグレーンワールドは彼女の作品をテーマとした場所である。そこではライブパフォーマンスが繰り広げられていたり、「屋根の上のカールソン」、「エーミル」などといった彼女の本に登場するキャラクターに会うことができる。


こんにちはお馬さん! そこにはコンクリートや町の騒音を越えた世界がある。
Photo: Alexander Hall/imagebank.sweden.se

赤ちゃんにやさしい公共エリア

スウェーデンにはたくさんの家族に優しい公共施設がある。例えば、ベビーカー用のスロープや遊び場、子ども専用の公園などである。ほとんどのショッピングセンターや図書館には乳幼児のための授乳室があり、共有トイレにはオムツの替え台が設置してある。

また図書館や博物館にもベビーカーを簡単に駐車できる専用の駐車場が設置されている。外食する際も、ほとんどのレストランでは子供向けの高い椅子が用意されており、トイレにはオムツの替え台もある。

さらにスウェーデンのいくつかの市では、ベビーカーに乳幼児を乗せている親は無料で公共バスに乗車することができる。バスには車体の真ん中に彼ら、彼女らが乗り込むための大きなドアがついている。したがって、親はベビーカーから離れてバスの運転手にわざわざチケットを見せる必要がない。

翻訳時点の最終更新日 2020年2月21日
翻訳 五十嵐彩華、藤井碧海
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表はSweden.seに掲載されたものをそのまま転載しています。他サイトへのリンクは転載しておりません。

今回は、スウェーデンの教育研究をされている信州大学の林寛平先生に、教員として内側から見た基礎学校の話と、その後の「研究対象」として外側から見ている様子などをお話しいただきます。
 林先生は2003年に東京学芸大学からの交換留学生としてヨーテボリに派遣され、学業の傍らで近隣の基礎学校で算数と英語、体育を教えました。帰国後は東京大学大学院に進学し、スウェーデン教育の研究に取り組みながら、東京都の公立小学校で教員として勤務しました。2006年と2018年にはウプサラ大学で客員研究員として過ごしました。スウェーデンと日本の両国で実践と研究に携わった経験から、スウェーデンの教育現場についてお話しいただきます。

● 講師 林寛平氏(信州大学大学院教育学研究科准教授)
● 日時 2021年8月24日(火)20:00 - 21:00
● 開催場所 オンライン(Zoomミーティング)
● 参加費 会員は無料。非会員は、一般1,500円、学生1,000円。非会員の方は、こちらからお申し込みください。
● なお、会員の方には、研究講座を録画したビデオを後ほどご視聴いただくこともできます。ご入会ご希望の方は、新規会員募集よりお申し込みください。
※当日の機器や通信状況によっては、配信に障害が発生することもございます。その場合には講演録画の配信等、代替措置を取らせていただくことがございます旨、予めご了解くださいますようお願い申し上げます。

今回は、昨年4月に出版された『ぼくが小さなプライド・パレード 北欧スウェーデンのLGBT+』の著者である、ソフィア・ヤンベリさんをお迎えして、お話をうかがいます。
ソフィアさんは、ストックホルム大学日本研究学科在学中の2013年に初来日されました。南山大学に留学後、帰国してストックホルム大学を卒業後、再び来日して2016~17年に上智大学に留学、2018年~19年に北海道当別町のスウェーデン交流センターに勤務され、現在はスウェーデンに戻られています。
日本とスウェーデン双方の社会事情に詳しく、日本語も堪能な彼女が、セクシャル・マイノリティに関わる問題をどのようにとらえているのか、お話をうかがう貴重な時間にできればと考えております。

● 日時 2021年5月29日(土)20:00 - 21:00
● 開催場所 オンライン(Zoomミーティング)
● 現在、年会費をお支払いいただいている会員の方のみをご参加可能としております。会員の方には、研究講座を録画したビデオを後ほどご視聴いただくこともできます。
ご入会ご希望の方は、新規会員募集よりお申し込みください。
※当日の機器や通信状況によっては、配信に障害が発生することもございます。その場合にはご容赦いただきますよう、予めお願い申し上げます。

今回は、ストックホルム郊外にあるセーデルトーン大学で国際交流担当職員として勤務している松本英久さんにご講演いただきます。松本さんは、都内私立大学で職員としての勤務を経て、2018年にストックホルム大学教育学研究科国際比較教育修士課程へ進学されました。大学院修了後、セーデルトーン大学での短期プロジェクトオフィサーを経て、2021年3月より同大学国際交流事務室において主に奨学金や留学生受入れ業務等に従事されています。
ご講演では、オンラインに切替わった授業やコロナウィルスに係る規制強化後の大学構内の様子、セーデルトーン大学でご自身が関わったアンケート調査(渡航規制による英語開講授業への影響)によって明らかになったこと、また職員という立場から見たコロナ禍における大学教育の現状と今後の課題等についてご報告いただきます。

● 日時 2021年4月24日(土)20:00 - 21:00
● 開催場所 オンライン(Zoomミーティング)
● 現在、年会費をお支払いいただいた会員の方のみをご参加可能としております。会員の方には、研究講座を録画したビデオを後ほどご視聴いただくこともできます。
ご入会ご希望の方は、新規会員募集よりお申し込みください。
※当日の機器や通信状況によっては、配信に障害が発生することもございます。その場合にはご容赦いただきますよう、予めお願い申し上げます。