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【Sweden.se日本語版】リサイクルとその先へ

スウェーデンは廃棄物ゼロの社会を目指している。これはリサイクルからリユースへのステップアップを意味する。

A father and his daughter in a kitchen by a drawer with recycling.

リサイクルは楽しい。Photo: Margareta Bloom Sandebäck/imagebank.sweden.se

早朝、31歳のダニエル・シルバーステイン(Daniel Silberstein)はアパートの物置に自転車を取りに行く。しかしその前にまず、空き箱と包装部分を共同地下室のコンテナに分別する。これは、彼も含めたスウェーデン人達が、1年間で、1人当たりリサイクルしている2トン分のごみの、ほんの一部である。

「リサイクルは非常に機械的に行います。基本的にゴミをどこに分類するかというのは自動的に行うことです。それは私たちが日々行う「消費」の一部に過ぎません。」とシルバーステインは言う。彼は妻と娘のチャーリーとストックホルムの中心部に住んでいる。

「リサイクルをするのは、娘が将来、どんな環境で生活していくのかを考えているから、というのが大きいです。私は1990年代に子ども時代を過ごしたので、私たちにとってリサイクルは異常なことではありません。しかしきっと、チャーリーの世代には、もっと先へ進んでいるでしょう。すでに彼女は空き箱をリサイクルのコンテナへ入れるのを楽しみにしているのですから。」

2025年の食品廃棄物の目標

スウェーデン政府は、食品廃棄物を2020年から2025年にかけて重量ベースで20%削減することを目標としている。

リサイクルを超えて

今日の問題は、多くの必要不可欠な製品の廃棄が難しいということだ。全てのものが何らかの形で再利用されるように保証しようとする新しい運動は、着実に支持を集めている。

循環経済とは、完全に再利用できる製品を利用する、つまり「ゆりかごからゆりかごまで」というアプローチである。2018年にスウェーデン政府は循環経済を政府の政策の柱の1つとすべく、循環経済のための代表委員会(Delegationen för cirkulär ekonomi)という特別諮問委員会を設置した。

行動を変える

この動きの最前線には、ストックホルムの活発なデザインシーンから飛び出したスタートアップ企業の存在がある。「Beteendelabbet(行動研究室)」は、サステナブルな生活を実現する為の革新的なソリューションを模索している。スウェーデンの工業デザインの蓄積を利用し、ストックホルムの有名なデザインスクールの出身者を採用しているこの会社は、スウェーデン人の生活が今後どのように変化していくかを見据えている。

イダ・ルモアン(Ida Lemoine)はBeteendelabbetの創業者である。「私たちは、正しいことを無理なく出来るようにするサービスが必要だと考えています」と彼女は語る。「私たち自身も消費者として、全ての小物、服や家具、ワークスペースや家までも、シェアしたりリユースしたりできるようにしていく必要があると思います。」

Fashion from forests

素材は変わってゆく。これはボーロース(Borås)大学のスマート・テキスタイルズ(Smart Textiles)が製作した100%紙でできたドレスである。Photo: Anna Sigge/ Smart Textiles/ imagebank.sweden.se

スウェーデンのリサイクル-主なデータ

  • 2020年に、4,839,430トンの家庭廃棄物が処理された。これは1人当たり年間467キロに相当する。
  • 2020年に、家庭用廃棄物の46%がエネルギーに変換された。
  • 2019年に、ボトル・カンの84%がリサイクルされた。政府目標は90%。
  • 包装材の70%がリサイクルされた。

出所: Swedish Waste Management Association, Swedish EPA

修理、リサイクル、研究

2017年にスウェーデン政府は、中古品の修理をより安く行えるよう、税制度を改革した。2020年から、ストックホルムにあるH&Mの客は、いらなくなった洋服を新しい服の素材としてリサイクルできるようになった。これは「ループ」と呼ばれ、衣服から衣服へというシステムの一つである。古い洋服は洗浄されたのち、繊維に細断、紡いで糸にし、それを編むことで新しいファッションに生まれ変わるのだ。

他方、研究者たちは環境負荷の少ない新しい素材の発見に尽力している。

A big glass cube in a room; inside are machines and people.

H&Mの「ループ」は、不要な洋服を新たなファッションに変える。Photo: H&M

リサイクルからのステップアップ

ルモアンは「まず初めに、日常の行動や習慣をどのように変えていけばよいかを考えるのが良いのです」と述べている。彼女とそのチームは「ナッジング(nudging)」という概念を使って、人々の身の回りやライフスタイルに小さな変化を与え、私たちがサステナブルに生きられるようにすることを目指している。

「大きな変化をもたらすために消費者ができることは、肉を食べる量を減らすこと、物を捨てるのをやめること、飛行機に乗るのをやめることの3つです。」と彼女は言う。

パント・システム(The pant system)

スウェーデンでは、アルミ缶は1984年から、ペットボトルは1994年から、リサイクルするとお金が戻ってくるカン・ボトルのデポジット制度を導入している。スウェーデンでは毎年、18億本のボトルやカンがリサイクルされているが、これはパント・システムと呼ばれている。これにちなんで、スウェーデン語には「パンタ」という動詞もある。

A man is holding a small child. Together they push a plastic bottle into a machine,

スウェーデン人はカン・ボトルの8割をリサイクルしている。Photo: Margareta Bloom Sandebäck/ imagebank.sweden.se

汚れ仕事を行う

スウェーデンのリユース革命は、ゴミ処理という文字通りの汚れ仕事をする人々がいなければ実現できない。

スウェーデン廃棄物処理協会(Swedish Waste Management Association)は、モノがより長く、より賢い方法で使用される循環経済への移行を促進している。例えば、市民や消費者が自分の行動を変えるように動機づけ、導いている。さらに人々が自分で必要な分別を行うために必要なインフラの整備も行っている。

気候変動の脅威のが高まりを受けて、スウェーデンでは、バスからアパートの暖房システムに至るまで廃棄物による発電を用いている。ゴミは低炭素焼却炉で燃やし、食品廃棄物は気候変動にやさしいバイオガス燃料の製造に利用されている。

A man is pushing a waste bin toward a truck.

ゴミ収集の電気自動車 Photo: Sofia Sabe/ imagebank.sweden.se

未来に向かって

ダニエル・シルバースタインとチャーリーにとって、未来は家庭から始まっている。

「お友達は路上にゴミをポイ捨てしたらダメだよね」とチャーリーが言い、父親がうなずく。

「いま私たちが化石燃料や埋め立て地を見るような目で、将来の私たちは古いリサイクルのやり方を見るのだろう。そしておそらく全てがおかしく見えることだろう。」

原資料掲載ページ:https://sweden.se/climate/sustainability/recycling-and-beyond
翻訳時点の最終更新日 2021年6月1日
翻訳 坂入圭吾、古瀬遥
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表はSweden.seに掲載されたものをそのまま転載しています。他サイトへのリンクは転載しておりません。