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イケア(IKEA)とボルボ(Volvo)はスウェーデンの企業だとわかると思うが、このリストの残りの企業はどうだろうか


キーレス・キー Photo: Assa Abloy
1.アッサアブロイ(Assa Abloy)

 その名は知らずとも、誰しもがホテルのルームドアのカードキーをかざした経験はあるだろう。近年の解錠システムのグローバルリーダーとして、アッサアブロイのセキュリティロックは個人宅にも、多様な業界のビジネスにも使われている。1994年、スウェーデンのアッサ(Assa)とフィンランドのアブロイ(Abloy)が合併し、国際的な力を持つようになった。今日、アッサアブロイは世界70ヵ国以上の国に展開し、約49,000人の従業員を擁している。その入室システムは家庭用セキュリティドアやモバイルアクセスからバイオメトリックスその他の認識システムまで多岐に渡っている。


1964年に発売したルクソマティック(Luxomatic)掃除機の広告 Photo: Electrolux
2.エレクトロラックス(Electrolux)

 エレクトロラックスといえばすぐにキッチン家電を思い浮かべる人が多いと思うが、この会社が世界で十指に入る家電メーカーであることを知っている人は少ないだろう。創業は1919年で、元々は掃除機を販売し、後に冷蔵庫、洗濯機、食洗機など様々な家電製品が製造ラインに加わった。S&P Globalによるサステナビリティ・イヤーブックでは、家庭用耐久財部門で長年に渡り金賞、銀賞を受賞している。


シスタ(Kista)のエリクソン本社 Photo: Ericsson
3.エリクソン(Ericsson)

 電気通信技術市場の大手であるエリクソンは、モバイル技術やネットワークで世界的な知名度を誇り、世界の様々な大学や研究機関と強力なパートナーシップを結んでのイノベーションへのアプローチで、世界をリードしてきた。ラース・マグヌス・エリクソン氏は1876年のストックホルムで、後にエリクソンとなる会社を始めた。今日、同社は世界で約10万人の従業員を抱えている。


エシティは衛生上の重点項目の1つとして手洗いを推進している。 Photo: Melker Dahlstrand/imagebank.sweden.se
4.エシティー(Essity)

 赤ちゃんや小さなお子さんがいる家庭なら、ベビーケアとおむつのブランドであるリベロ(Libero)を知っているかもしれない。エシティはそのベビーケアのリベロ、フェミニンケアのリブレッセ(Libresse)、ティッシュペーパーのクッシェル(Cushelle)など多くのブランドを展開している世界有数の保健衛生企業の1つである。かつては1929年に創業した林業会社SCAの一部であったが、2017年に分社化し、今では自立した業界最大級の企業になっている。エシティのグローバルな取り組みは、月経衛生の日(Menstural Hygiene Day)や世界手洗いの日(World Hand Hygiene Day)への参加から、衛生関連の意識を高める写真展まで、多岐に渡っている。


ヴェステロース(Västerås)のH&M第1号店 Photo: H&M

東京のH&M旗艦店 Photo: H&M
5.H&M

 スウェーデンの典型的なミニマルかつシックなファッションを世界に発信しているへネス・アンド・マウリッツ、通称H&M。1947年にヴェステロースでヘネス(Hennes)という婦人服店としてスタートした創業者のアーリン・ペーション(Erling Persson)は、後に狩猟・釣り具店のマウリッツ・ウィドフォース(Mauritz Widforss)を買収し、公式の名称を正式に名前をへネス・アンド・マウリッツに改名し、1968年にはメンズとキッズの衣料品を加えた。それ以降、H&Mは世界各国に約5,000店舗を展開し、流行の服やアクセサリーを手頃な価格で展開しており、いくつかのサブブランドも加えてきた。H&Mは、児童労働や職場の安全問題などに関して、サブライヤーが行動規範を満たしているかの監査を受けることを約束している。
 また、2020年にH&Mは新しいリサイクルサービスとしてループス(Looop)を開始した。古くて不要になった衣類を機械で裁断し、古い繊維から新しい衣類を編む。この取り組みは、H&Mの完全な循環型社会の達成に向けた一歩となっている。


イケアでの買い物は、好きでもあり嫌いでもある Photo: Simon Paulin/imagebank.sweden.se
6.イケア(IKEA)

 1943年にイングヴァル・カンプラードが創業した家具の巨大企業イケアは、現在50カ国以上で460店舗近くを展開するまでに成長した。スタイリッシュなDIY(自作組み立て)インテリアや家具で知られるイケアは、人々の手先の器用さを引き出し続け、あまりお金のない多くの大学生にとって、なくてはならない存在となっている。1950年代に基本コンセプトである「フラットパック」を導入して以来、「クリッパン(Klippan)」「ポエング(Poäng)」「ビリー(Billy)」などのベストセラーを中心に、北欧テイストの家具を手頃な価格で提供することができるようになった。


ストックホルムの新カロリンスカ病院の巨大プロジェクト Photo: Skanska
7.スカンスカ(Skanska)

 スカンジナビア発祥をほのめかす名前であるスカンスカは建設と開発計画において世界をけん引する企業である。1887年に創業し、現在は約34,000人の従業員を持つ企業へと成長を遂げ、道路や橋、線路から病院やオフィス、空港に及ぶ、注目を浴びる建設計画に取り組んでいる。スカンスカのプロジェクトで興味深いものとしては、ストックホルムの新カロリンスカ病院、ニューヨークのラガーディア空港のターミナルB再開発、ニュージャージー州のメットライフスタジアム、デンマークへとつながるスウェーデンの有名なオーレスン橋(オーレスン・リンク)がある。


スポティファイのようなストリーミングサービスは、音楽をより身近なものにした。 Photo: CS/Sweden.se
8.スポティファイ(Spotify)

 オンライン上で著作権付きの音楽を共有することや配信することは熱心に議論されている問題だが、スウェーデンの企業であるスポティファイは海賊版の音楽ファイル共有サイトの代わりとして合法なオンライン上の音楽配信サービスを提供することにより、その架け橋をつくることを可能にした。ダニエル・エク(Daniel Ek)とマーティン・ローレンツォン(Martin Lorentzon)によって2006年に創業されたスポティファイはユーザーに数百万もの楽曲をコンピュータやスマートフォンといったような携帯端末で聞くことや、共有することを可能にした。この企業は世界中に3億8,100万人のユーザーがおり、そのうち1億7200万人が定額利用ユーザーであると推計している。


スウェーデン北部のルーレ(Lule)川にあるポリュス(Porjus)水力発電所 Photo: Vattenfall

ハイブリット(HYBRIT)は化石燃料なしの製鉄を目指している。 Photo: Viveka Österman
9.バッテンフォール(Vattenfall)

 世界中に数百万もの顧客を持つヴァッテンフォールは100年以上の間、住宅や企業にガスや熱、電気を供給している大手エネルギー会社である。同社は化石燃料を漸次廃止することを約束し、一世代以内に化石燃料の使用をやめることを目指している。2020年8月に、ヴァッテンフォールと鉄鋼会社のSSAB、国有の鉱業会社であるLKABは共同で、化石燃料を使用しない鉄鋼製造であるHYBRIT(HYdrogen BReakthrough Ironmaking Technologyの略称)のために、世界で初めてのパイロットプラント(試験的生産を行う工場)を始動した。その目的は2035年までに製法を完全に脱炭素化すべく、製鉄において使用する燃料を石炭から水素に代えることである。2021年には、同じくスウェーデン企業であるボルボグループ(下記)に対して、HYBRITが脱炭素鉄鋼を供給したことが発表された。


ボルボは電気自動車の開発を進めている Photo: Volvo Trucks
10.ボルボ(Volvo)

 ミートボール並みにスウェーデンを象徴するボルボは、年間売上高において、依然としてスウェーデン最大の企業である。ボルボの名は、エステートカー(アメリカで言うステーションワゴン)の愛すべき代名詞として世界中の家庭で知られているが、同社は他にもおよそ190の製品で知られている。
 中国の自動車メーカージーリーホールディンググループ(Greely Holding Group)は、2018年に、ボルボグループのトラック、バス、建設機器を中心とした部門を買収した。ボルボ・カーズは2010年から所有している。ただしボルボの本社は、依然としてスウェーデンのヨーテボリにある。
 1927年に創業したボルボグループは、10万人近くの従業員を抱え、世界18カ国に生産設備を有している。さらにボルボ・カーズには、さらに約4万人が働いている。

編者による註
 本リストに掲載した企業は、編者が選択したものであり、いかなる公式のランキングに基づくものでもない。掲載はアルファベット順である。データの出所は、StatistaのSweden’s 20 largest companies by turnover、ForbesのThe World's Most Innovative Companies、Fast CompanyのWorld Changing Ideas Awardなどである。

原資料掲載ページ:https://sweden.se/work-business/business-in-sweden/10-companies-you-didnt-know-were-swedish
翻訳時点の最終更新日 2022年1月25日
翻訳 駒村英美、鹿野 葵、東 花子
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表はSweden.seに掲載されたものをそのまま転載しています。他サイトへのリンクは転載しておりません。


新型コロナウィルス流行に関する記者会見に臨むスウェーデンのレーナ・ハーレングレン厚生社会大臣 Photo: Magnus Liljegren/Regeringskansliet

新型コロナウイルスの流行に対するスウェーデンの対応の概要

 スウェーデンでコロナウイルスが流行している間、スウェーデン政府はコロナウイルスに打ち勝つため、いくつかの分野で多くの様々な対策を講じてきた。独立した専門の政府機関は提言を行い、政府は決定を下してきた。それらの決定が常に目的としていたのは、以下のことである。
・国内における流行の拡大を抑えること
・医療資源を十分に確保すること
・重要な社会サービスの影響を抑えること
・人とビジネスへの影響を軽減すること
・情報供給等により不安を軽減すること

 様々な対策が様々な時点で効果をもたらすと考えられるため、コロナウイルスの感染拡大に対するスウェーデンの対応は、適切なタイミングに適切な対策を取ることが常に検討されてきた。この国の対応は、自発的な行動を部分的に頼りにしてきた。例えば、政府は全国的なロックダウンを施行するよりも、症状が現れた場合は自宅療養し、他者と距離を保ち、可能な限り公共交通機関の使用を避けることなどを提案するという形を取った。

・新型コロナウイルス流行拡大に関する、より多くの公式情報はkrisinformation.seで確認すること。
・ビジネスに関する新型コロナウイルスの情報はverksamt.seで確認すること。

ワクチン

 スウェーデンの新型コロナウイルスのワクチン接種は2020年12月に開始された。2022年3月末の時点では、12歳以上の国民の87パーセントが少なくとも2回接種している。18歳以上の国民については、62パーセントが3回接種をしている。
 スウェーデンの公衆衛生庁(Folkhälsomyndigheten)によると、高いレベルのワクチン接種率が制限解除のために最も重要な条件である。
 公衆衛生庁はワクチン接種を国民に推奨し続けている。この提言には12歳以上の子どもたちと、上気道感染症に非常に弱い5歳以上の子どもたちを含んでいる。

制限措置

 スウェーデン政府は、2022年2月9日に新型コロナウイルス関連の制限措置の大半を解除した。
 公衆衛生局によると、高いワクチン接種率と深刻な病状がみられにくいオミクロン変異体の組み合わせのおかげで、医療システムの負担は軽減された。

 ただしいくつかの制限措置はまだ実施されている。
・12歳以上の人は新型コロナウイルスのワクチン接種を受けることが推奨されている。
・新型コロナウイルスが疑われる症状がある場合は、自宅待機をし、人との接触を避ける必要がある。
・ワクチン接種を受けていない人は、屋内での混雑や人ごみを避ける必要がある。
 その他の公式の情報はkrisinformation.seで確認すること。

渡航禁止令の解除 2022年4月1日

 2022年4月1日の時点で、制限が解除されすべての国からの入国が可能となっている。 またこれによって、旅行者がスウェーデンに入国する際に予防接種や検査証明書を提示する必要はなくなった。
 渡航禁止令に関するより詳細な情報はgovernment.seで確認すること。


新型コロナウィルス流行における英雄の1人 Photo: Naina Helén Jåma/imagebank.sweden.se

感染流行の間は、ワークライフバランスの様子が少し変わった Photo:Melker Dahlstrand/imagebank.sweden.se

新型コロナウィルス流行暫定法

 2021年1月10日、スウェーデンは新型コロナウィルス流行暫定法を施行し、新型コロナウイルスの蔓延を制限すべく一時的な法的権限を政府に与えた。この法律によって、政府が人数や営業時間の制限を導入するなどの措置を講じることができるようになった。
 COVID19法は2022年3月31日まで有効であった。

責任の原則とは

 スウェーデンでは、危機管理は責任の原則の上に成り立っている。つまり、平時にさまざまな責任を持つ政府機関が、危機発生時においても同じく責任を持つということである。
 スウェーデンでは、政府機関は独立した専門家としての存在であり、新型コロナウィルスの感染拡大を抑え地域社会での感染拡大の影響に対抗するためにどのような対策が必要かを助言してきた。そしてその後に、政府が対策や方針を決定してきた。これらの機関は、感染管理に関する一定の独立した決定を行うこともできる。

政府機関への信頼

 スウェーデン社会では、一般に、政府機関に対する信頼が比較的強い。そのため一般市民や民間の関係者は、担当する機関のアドバイスに従う傾向がある。
 2020年3月以降、市場調査会社Kantar/Sifoは、一般市民の信頼、態度、行動を監視する「新型コロナウィルス世論調査(Covid-19 barometers)」を定期的に行っている。パンデミックの期間中、スウェーデンの最も中心的な機関の中には、国民からの信頼や支持が状況に応じて変動しているところがある。

スウェーデンにおける新型コロナウィルス流行期間中の学校生活

 スウェーデンの就学前学校と6歳から16歳までの基礎学校は、パンデミックの期間中も、いくつかの例外を除いて開校していた。スウェーデン公衆衛生庁は、スウェーデンの状況や社会全体に起こりうる影響を分析した上で、スウェーデンのすべての学校を閉鎖することは意味のある措置ではないとの判断を下したのである。
 スウェーデンの高校については、部分的に遠隔授業が推奨されたが、公衆衛生庁はこれを2021年4月1日に削除した。

原資料掲載ページ:https://sweden.se/life/society/sweden-and-corona-in-brief
翻訳時点の最終更新日 2022年4月1日
翻訳 飯島里彩、東 花子、和田安純
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表はSweden.seに掲載されたものをそのまま転載しています。他サイトへのリンクは転載しておりません。

スウェーデンの高齢者福祉システムは、人々の自立した生活の支援を目指している


多くの高齢者にとって、健康な生活には自立し続けていることが重要である。Photo: Moa Karlberg/imagebank.sweden.se

 高齢者へのヘルスケアとソーシャルケアはスウェーデンの福祉政策を語る上でとても重要なことである。スウェーデンの1,000万の人口に対し、20%が標準的な定年退職年齢である65歳を越えている。1940年代に出生数が多かったことから、この数値は2040年には23%まで上がると予想されている。

高い平均余命

 スウェーデンの平均余命は男性は81.21歳、女性は84.82歳と、世界的に最も高い水準である。スウェーデンの人口のうち5%は80歳かそれ以上である。この年代の国民はより健康に過ごせるようになり、彼らに対するケアの必要性は1980年代以降に下がっている。

主に税金でまかなわれている

 高齢者ケアは社会サービス法によって定められており、主に地方自治体の責任となっている。スウェーデンの高齢者ケアは主として地方税と国からの補助金でまかなわれている。2020年のスウェーデンの高齢者ケアにおける地方自治体の費用は1,353億クローナであった。高齢者自身が負担する医療費は公的な補助を受けている。

一緒に暮らす権利

 スウェーデンの社会サービス法においては、長年同居してきた高齢者のカップルは、そのうち一人が介護施設に引っ越す必要がある場合でも、同居し続けることができると定めている。

公的機関と民間事業者

 より多くの自治体が高齢者介護の一部を民営化することを選択しており、民間の介護提供者に運営を任せている。すべての利用者は、公的機関または民間事業者が提供する在宅介護または施設介護を選ぶことができる。ただし資金繰りや在宅支援、介護施設の提供については、地方自治体が常に全責任を負っている。

利用しやすい住居

 住宅供給や居住地区を計画しているスウェーデンの地方自治体は、高齢者や障害を持った人たちのニーズに見合う内容にすることが求められている。こうした住居の利用しやすさの要件は、長年の間に法令において明示されるようになってきた。
 「高齢者住宅」は、55歳以上の人々(70歳以上の場合もある)向けの通常の住宅であり、そのような住居では、利用しやすさが最優先される。新しく建てられたものもあるが、もともとあった普通の住居を、改築や修繕を経て利用しやすくしたものもある。

在宅介護は生活を楽にする

 高齢者や障害を持った人たちが、自立した人生を送れるようになることが高齢者支援の目標の1つである。これには、可能な限り自分たちの家に住むことも含まれている。
 自分の家に住み続けている高齢者は、生活を楽にするための様々な援助を受けることができる。例えば、スウェーデンのほとんどの自治体は、調理済みの食事の宅配を行っている。
 2020年には、在宅介護スタッフはおよそ23万6千人の65歳以上の高齢者を援助した。ほぼ半数の自治体は、デイケア施設で高齢者に給食を提供している。その一方で、いくつかの自治体では、高齢者を集めて自炊のための小さなチームを組織したりもしている。

個々に合わせた支援

 高齢者が毎日の生活ができなくなってしまった場合、市営の在宅介護サービスによる援助を申請することができる。そのような支援の範囲は、どれくらい支援が必要かに左右される。
 障害を持っている高齢者は24時間支援を受けることができる。つまり、ほとんどの人が、一生涯自分の家に居続けることができるということである。これは重い病気を抱えた人も同じで、ヘルスケア、ソーシャルケアを自分の家で受けることができるようになっている。

高齢者福祉を受けるために個人が負担すべき料金はどれくらいか?

 高齢者福祉の利用料金は、それぞれの自治体が決めており、支援のレベルや種類、利用者の収入といった要因によって変わる。在宅介護やデイサービスその他のケアの利用料金の最大限度額は、月に約2,200スウェーデンクローナ(約29,000円)となっている。
 自治体は、心身に刺激を与えリハビリをする必要のある高齢者や障害者に対してデイサービスを提供している。これらは、主に認知症や精神障害を患っている人を対象としており、多くの人が自分の家に住み続ける一助となっている。
 スウェーデン赤十字といった組織のボランティアをはじめとした人たちが、家に住んでいる高齢者や施設にいる高齢者を訪ねることもある。お喋りしたり、歩いたり、一緒にお医者さんについていったりすることが、この訪問の目的である。

輸送サービス

 高齢者や障がい者は、タクシーや特別に装備された乗り物を交通手段として利用する資格がある。これは通常の公共交通機関を利用できない人々のためのもので、有料のサービスである。


多くの人が年をとってもアクティブに生きている。Photo: Sofia Sabel/imagebank.sweden.se

スウェーデンの高齢者福祉は、それぞれの人に適切なレベルの支援を見つけることを目指している。Photo: Folio/imagebank.sweden.se

スウェーデンの法律では、可能であればカップルが一緒に暮らせるようにすることを目指している。Photo: Susanne Walström/imagebank.sweden.se

寿命が長くなるほど、ヘルスケアと高齢者ケアの必要性は高くなり続ける。Photo: Maskot/Folio/imagebank.sweden.se
スウェーデンの年金制度

 全てのスウェーデン国民は退職後、国民退職年金を受け取る資格があり、62歳から年金の受け取りを開始できる。また68歳まで働く権利が法的に認められている。
 2010年から2021年までの間に、65歳から74歳で働く人の数は70%にまで増え、2020年の平均定年は65歳であった。
スウェーデンの年金はいくつかの異なる財源から構成されている。スウェーデンに住み、働いてきた人々は、スウェーデン年金庁が管理する国民年金を受給する。これは所得年金・保険料積立年金・保証年金から構成されており、年金の額は課税対象となる所得により決められている。
 2022年1月の平均年金受給額は14,000スウェーデンクローナ(約18万円)であった。これに加え、スウェーデンで働く大半の人は雇用先からの職域年金も受給している。
更なる生活の安定を得るために、多くの年金受給者は民間の年金貯蓄で退職後の収入を補っている。

高齢化への対策

世界中の国々と同様、スウェーデンでも高齢化が始まっている。そのため高齢者向けの福祉は重要な要素となってきており、政府はこの分野での将来の課題に対応するための措置を講じている。
 2040年には、人口の約4分の1が65歳以上になり、そのうちの多くは現役で健康であると予想されている。将来のニーズに応えることを目的としたいくつかの取り組みが、現在全国各地で行われている。福祉水準を低下させることなく、来るべき人口動態の課題に対応するためには、人々がより長く働かなければならないことは明らかであると考えられている。

予防的ケアは高齢者を健康に保っている

 近年、高齢者に効果的な新たな予防的ヘルスケアが紹介され、関心が高まっている。
 一つの例として挙げられるのは、予防や治療のための身体運動である。高齢者は、一般的な運動だけでなく、特定の身体活動が推奨される。時には投薬と組み合わせて、医師がその結果を観察することもある。
 高齢者の健康問題のひとつにケガがあり、転倒によるケガを減らすべく多くの努力がなされている。高齢者向けの情報提供、カーテン掛けや電球の交換を手伝うなど、自治体独自の「修繕屋」によるサポートが行われている。
 音楽、映画、読書、絵画などの文化的な活動を通じて刺激を得ることもまた、幸福に繋がるとされている。このことは高齢者介護施設でますます認識されており、多くの人が毎日少なくとも1回はこのような活動に取り組んでいる。

原資料掲載ページ:https://sweden.se/life/society/elderly-care-in-sweden
翻訳時点の最終更新日 2022年5月2日
翻訳 内田優理、鹿野 葵、高松奏音
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表はSweden.seに掲載されたものをそのまま転載しています。他サイトへのリンクは転載しておりません。

電気バスが走り蜂が飛ぶ-スウェーデンは気候中立に向かっている

1.新たにエコになった電動バス

スウェーデンのいくつかの都市では、排気ガスを放出しない電動バスの運用を開始した。電動バスとは、電気のみで走り、エネルギーを貯蔵するバッテリーを備えるバスのことである。再生可能電力を公共交通機関で利用することは、大気の質を改善し、住民に対する騒音を減らし、環境への負荷を減らすのに役立つ。

これらの理由はスウェーデンの電動バスへの移行を進める原動力となっている。ヨーテボリは2015年に電動バス路線を開始し、電動バスを早期に導入した。2021年には同市でおよそ150もの新しい電動バスの運用が始まった。ノールテリエ(Norrtälje)は全てのバスを電動にする取り組みを2018年に開始した。そして北部の町ピーテオ(Piteå)でも2021年に電動バスの導入を開始する計画がなされている。

Aerial view of lots of buses parked close together.

ヨーテボリの電気バス Photo: Jesper Wiberg

2.世界で最も高い木造建築の1つ

北部の町シェレフテオ(Skellefteå)はサーラ文化センター(Sara Cultural Centre)という普通でない新しい建物を建設しようとしている。この建物は完全に木で作られ、80メートルにも及ぶ世界で最も高い木造建築の1つになる。サーラ(Sara)という名前は有名なスウェーデンの作家であるサーラ・リドマン(Sara Lidma)から発想を得たもので、同センターは2021年秋の開業を予定している。

スウェーデンは真の森林の国である。事実、スウェーデンの3分の2は森林であり、木造建築の大きな可能性を秘めている。木材は再生可能・再利用可能な資源であるため、木造建築は持続可能性の観点からも完全に理にかなっている。20階建てのサーラ文化センターは、全ての木材が地元で調達されているので、輸送を不要とし、二酸化炭素排出量の減少にも役立っている。

スウェーデン全土では、2045年までにカーボンニュートラルを達成するという全体的な目標の取り組みの一環として、より多くの木造高層ビルが建設されている。

Sara Cultural Centre under construction. One photo with a towering building and a crane, one close-up of wooden walls.

木造のサーラ文化センターは、シェレフテオの町の景色を支配している。Photos (collage): Martinsons/ Jonas Westling

3.都市農業によるサステナビリティ

スウェーデンで食べられている野菜の半分以上は輸入品である。おそらくそれが都市農業の人気がますます高まっている理由の1つである。しょう。これは農業を消費者へ近づけることなのだ。

1921年に発足した市民農園協会(Koloniträdgårdsförbundet)は、スウェーデンで最も古い市民運動の一つであり、現在は持続可能な食品消費行動に焦点を当てている。会員は全国の市民農園を利用できる。都市に緑地を持つことの最大の利点の一つは生物多様性の増加であり、市民農園の様々な作物のもとで様々な生物が繁殖している。

垂直農法の人気も伸びている(ダジャレです)。グロンスカ(Grönska)はストックホルム郊外を拠点にしている食品技術のスタートアップで、屋内でハーブや野菜を栽培し、高い棚に植物をつり上げている。その利点は、食物を消費者に近づけながら、土地と水をあまり使用せず、1年を通して生産できることである。

Shelves with green plants.

グロンスカによる垂直農業 Photo: Claudio Britos

4.フードバンク

スウェーデン人の食品廃棄物は年間およそ130万トンである。フードバンクは食品の再配分によって食品廃棄物の削減を進める、つまりレストランやスーパーマーケットからの食品の寄付を、困窮している人々に受け渡すものである。

スウェーデンの都市ミッション慈善団体(stadsmissioner)は、いくつかのフードバンクを国内の各地で運営している。ストックホルムではマートミッションネン(Matmissionen)を運営しており、食品を割引価格で販売している。ヨーテボリでは、草の根の活動団体であるソリダリティ・フリッジ(Solidarity Fridge)がボランティアの「フードセーバー」たちから寄付された食品を市内の冷蔵庫のネットワークに配達し、人々がそこから無料で入手できるようにしている。この活動はヨーテボリ近郊の町アルビカ(Arvika)にも広がっている。

A dairy fridge in the Matmissionen supermarket.

「我々の乳製品は賞味期限切れが近いものが多いが、パンケーキの材料にすれば変わらず美味しい。」マートミッションネンの冷蔵庫 Photo: Anna Z Ek

5.都市に蜂の力を!

スウェーデンの都市部では養蜂ブームが起きている。ビー・アーバン(Bee Urban) などのいくつかのスウェーデン企業が、都市部の生態系や生物多様性の保全に寄与することを目的として、蜂の巣箱を保有する機会を自治体、企業、個人に提供している。ミツバチは蜂蜜を作るだけでなく、私たちが口にする作物の3分の1の受粉に関わっている。しかしながら蜂たちは気候変動、現代の農業活動、生物多様性の破壊によって絶滅の危険に瀕している。そこで今、都市部の庭や建物の屋上に蜂の巣箱を設置し、蜂に優しい環境づくりが進められているのである。

ヨーテボリにある人気レストランのアッパーハウス(Upper House)は地上83メートルの場所に小さな屋上庭園を所有し、そこにエコ認証された蜂の巣箱を設置している。このレストランは、都市の健全な生態系の維持に寄与しながら、そのミツバチが作った蜂蜜を食材として提供している。

養蜂ブームはスウェーデンの蜂(Svenka Bin)という新たな団体の設立も促した。同団体は、どれだけ蜂が私たちの都市に必要かという知識や認識を広げる活動を行っている。

Bees in a beehive.

たまには蜂の好きにさせよう(Let it bee)Photo: Simon Paulin/ imagebank.sweden.se

6.温暖化防止に貢献するシェアと思いやり

南部の都市マルメにあるセーゲ公園(Sege Park)は、持続可能で環境に優しい都市開発の新たなモデルとなっている。ここでは、安価な住まいの提供と地域におけるシェア経済の構築とを組み合わせている。住民たちが物やサービスを共有しやすくなることで、所有するものを減らしつつ、より多くのものを利用できるようにする、というのが、このシェア経済の考え方である。

木造の駐車場もこの計画の一部に含まれている。車の駐車スペースだけでなく駐輪場もあり、住人が自転車の修理を行う「自転車キッチン」や、車や自転車をシェアする「移動手段プール」が設けられる予定である。

セーゲ公園プロジェクトの将来的な構想は、都市の中心地に近い緑の多い地域に新しい静穏なコミュニティーを作り、そこでは再生可能エネルギーを用いて二酸化炭素排出が無い地域を作るというものである。この古い病院のある公園地域は、改築や新築によっておよそ1,000件の新たな家を構える予定である。同プロジェクトはCEEQUALという根拠に基づく国際的なサステナビリティ評価システムにマルメ地域で初めて認証されたものである。

Illustration showing the vision for Sege Park: lots of green, people walking and children playing.

セーゲ公園の再開発構想 Illustration: Tyrens

Aerial view of the city Malmö, with Sege Park in the middle.

マルメ市の航空写真。前方に再開発前のセーゲ公園、後方に高層タワーのターニング・トルソ(Turning Torso)とエーレスンド(Öresund)橋が見える。Photo: Perry Nordeng

7.カンを見せよう

スウェーデンでは使用済みペットボトルや、アルミ缶の84%がリサイクルされている。誰でもペットボトルやアルミ缶を購入すると必ずデポジットを払わなければならないが、このデポジットは、リサイクルすれば戻ってくる仕組みになっている。

リサイクルの仕組みはかなり整備されているように見えるが、まだ改善の余地がある。目標は90%のリサイクルである。

スウェーデンのデポジットシステムは、小売店や飲料メーカーが所有する会社であるレトゥーパック(Returpack)が運営している。消費者はパントアウトマット(pantautomat)というスーパーなどに設置されている回収機にペットボトルや缶を入れる。消費者は多くの場合、デポジットを取り戻すか、その分をチャリティーに寄付するかを選ぶことができる。リサイクルされたボトルや缶はノルチェピング(Norrköping)市の回収拠点に運ばれ、リサイクルされて新たなボトルや缶に生まれ変わる。

この持続可能なリサイクルの仕組みはヨーロッパの中で最も古い施策の一つである。スウェーデンでは、消費を目的とした全ての飲料ボトルや缶は市場に出る前に、認可されたリサイクルシステムの中に組み込まれることが法律で義務付けられている。

Drink cans pressed together for recycling.

新たな命が吹き込まれるのを待つ古いカンたち。Photo: Crelle Fotograf

8.走行中に充電できるスマート道路

スウェーデンのゴットランド(Gotland)島では、電気トラックやバスが走行中に充電できる世界初のワイヤレス電気道路が開通した。これはヴィスビー(Visby)空港と市内中心部を結ぶ短い道路で、電動歯ブラシの充電器の働きと同様に、電磁場を利用した誘導によって電気自動車に電力が伝えられる。

スウェーデンの気候に関する目標の1つは、国内交通機関からの排出量を、2030年までに2010年と比べて少なくとも70%削減することである。その一環として、スウェーデン運輸庁(Trafikverket)は、2030年までに国内で最も交通量の多い2,000kmの道路を電化する計画を託されている。

この目標を達成するために、スウェーデン国内のさまざまな場所で電気道路の実験が行われている。ストックホルム・アーランダ(Arlanda)空港近くの道路では、2017年から車道に設置された電気レールで貨物車を充電している。またすでに2016年には、スウェーデンの都市イエブレ(Gävle)とサンドビーケン(Sandviken)を結ぶ高速道路で、公道上の世界初の電気道路区間が開通している。この電気道路は架空電力線を使用し、トラックには路面電車のようにパンタグラフが搭載されていた。このプロジェクトは2020年に終了した。
*国内航空は、EUの排出権取引制度(EU Emissions Trading System)に含まれるため、ここでは取り上げない。

Left: workers installing a rail in a road. Right: An electric lorry driving on the rail.

ストックホルム郊外のイーロード(e-road)プロジェクトでは、道路に敷設された線路から電気トラックに電気を供給している。Photo: (collage): eRoad Arlanda

9.太陽電池式の水素充填ステーション

2019年、スウェーデンのマリエスタッド(Mariestad)という町に、世界初のオフグリッドの(=送電網につながっておらず自給自足の)太陽光発電による水素製造・充填ステーションが一般公開された。このステーションは、近くの太陽電池設置場からの太陽エネルギーのみで100%稼働している。

この太陽エネルギーを利用して、電力網のバックアップ電源として使用可能な排出ガスのない水素ガスを製造することで、太陽光発電によるエネルギーを四六時中供給することができる。この水素ガスは、自動車、トラック、電車そして将来的には飛行機の燃料としても利用可能である。

このように、水素は、電気自動車が使用する高価なリチウム電池を必要とせず、化石燃料も不使用の、競争力ある輸送用燃料源となる可能性がある。

Aerial view of the town of Mariestad.

マリエスタッドは、よりサステナブルなエネルギーの解決策を見つけるべく積極的に活動している。この町のオフグリッド水素ステーションは世界初の大きな一歩である。Photo: Tuana/ Mariestads kommun

10.廃棄物から地域暖房に

1948年にスウェーデンで最初の地域暖房システムが導入されて以来、家庭の暖房のためのエネルギー効率の高い方法を提供すべく、さまざまな努力がなされてきた。スウェーデンの2番目に大きな都市であるヨーテボリでは、ほとんどのビルや家が地域暖房システムの地下パイプやケーブルのネットワークに接続されている。

電気や石油で各建物を個々に暖房する代わりに、この気候に配慮した廃棄物をエネルギーにする方法は、ゴミを燃やしたり、工業生産やデータセンターから集めた余剰熱などの地域資源を利用して水を温め、システムに接続されているすべての人々に供給するというものである。これにより、システム内の全エネルギーの93%をリサイクルまたは再生可能な資源から調達している。

ヨーテボリ市は、市営のエネルギー会社であるヨーテボリ・エナジー(Göteborg Energi)社を通じて、この効率的な方法を先導している。この方法は、市内のアパートのほか、約12,000軒の個人住宅、多くの産業、オフィス、店舗、公共施設で使用される暖房の90%をカバーしている。

スウェーデンでは、地域暖房が最も一般的な暖房の熱源となっている。ストックホルムでは、暖房の80%が地域暖房による。地域暖房は、コスト削減や二酸化炭素の排出量の削減など、環境面で大きなメリットがある。

A distric heating facility in Gothenburg, a tall and wide tower to the left; a tall and slim tower to the right.

ヨーテボリはシャレを利かせることで有名であり、写真左の60メートルの高い蓄積タンクは「魔法瓶」と呼ばれている。このタンクは地域暖房システムの余剰熱を蓄え、必要に応じて再供給できるようになっており、あたかも魔法瓶で飲み物を保温するようになっている。Photo: Göteborg Energi CC

原資料掲載ページ:https://sweden.se/climate/sustainability/10-ways-to-a-greener-future
翻訳時点の最終更新日 2021年6月1日
翻訳 廣田啓、吉田杏香、雜喉恋子
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表はSweden.seに掲載されたものをそのまま転載しています。他サイトへのリンクは転載しておりません。

偉大な精神を持つ人は異なる考え方をする。ノーベル賞は優秀さを祝うものだ。

ノーベル賞は、世界で最も権威のある賞だと言われている。ノーベル賞は「前の年に、人類に最大の利益をもたらした者」に授与される賞である。物理学賞、化学賞、医学/生理学賞、文学賞、平和賞は1901年から、経済学賞は1968年から授与されている。

The Nobel Prize award ceremoni in Stockholm Concert Hall, with Queen Silvia, Prince Daniel, King Carl XVI Gustaf and Crown Princess Victoria seen to the right.

ノーベル賞授賞式 Fredrik Sandberg/TT

アフレッド・ノーベル(Alfred Nobel)記念経済学賞は、1968年にスウェーデンの中央銀行(国立銀行)によって設立された。これは1968年に、スウェーデン中央銀行が銀行の300周年を記念してノーベル財団に贈った寄付をもとに作られた。この賞はノーベル賞と同じ原則に従い、スウェーデン王立科学アカデミーによって授与されている。

発表は10月

ノーベル賞の受賞者は毎年10月の初めに発表される。そして12月10日の「ノーベル・デー」に、スウェーデンの首都ストックホルムとノルウェーの首都オスロで受賞式典が開催される。
これまで受賞した発見には、X線や放射線、ペニシリンなどがある。平和賞の受賞者には、ネルソン・マンデラ(Nelson Mandela)やダライ・ラマ14世(14th Dalai Lama)がいる。文学賞の受賞者は、ガブリエル・ガルシア・マルケス(Gabriel García Márquez)の「百年の孤独(One Hundred Years of Solitude)」やドリス・レッシング(Doris Lessing)の「草は歌っている(The Grass is Singing)」といった作品があり、読者をワクワクさせている。

受賞者の統計

1901年から2020年までの間に、ノーベル賞と経済学賞は57人の女性に授与された。マリー・キュリー(Marie Curie)は女性で2回の受賞歴があり、1903年に物理学賞、1911年に化学賞を受賞した。1909年に文学賞を受賞したスウェーデンのセルマ・ラーゲルレーヴ(Selma Lagerlöf)は女性で初めてノーベル文学賞を受賞した。

これまでで最年長のノーベル賞受賞者は、2019年に97歳で化学賞を受賞したジョン・グッドイナフ(John B. Goodenough)である。

2014年に17歳で平和賞を受賞したマララ・ユスフザイ(Malala Yousafzai)が最年少の受賞者である。

これまで4人の受賞者が強制的に辞退させられた。ドイツ人のリヒャルト・クーン(Germans Richard Kuhn)とアドルフ・ブテナント(Adolf Butenandt)は化学賞の受賞を、ゲルハルト・ドーマク(Gerhard Domagk)は医学・生理学賞の受賞を、アドルフ・ヒトラーによって禁じられた。ボリス・パステルナーク(Boris Pasternak)は、1958年に文学賞を受賞したが、のちにソビエト当局によって辞退させられた。

ヒトラーによって辞退させられた3人のドイツ人はのちに受賞したが、受賞金は受け取らなかった。

2名の辞退者

ジャン・ポール・サルトル(Jean-Paul Sartre)は、従来より全ての公的な賞与を断っており、1964年のノーベル文学賞も辞退した。
レ・ドュク・ト(Lê Ðức Thọ)は1973年にノーベル平和賞を辞退した。この賞は、彼がアメリカ国務長官のヘンリー・キッシンジャーと共にベトナム平和条約の交渉に尽力した事に対してのものであったが、当時のベトナムの現状では平和賞を受け取ることはできないとして断ったのである。

賞の設立者

ノーベル賞はスウェーデンの科学者、エンジニア、発明家、そして起業家でもあるアルフレッド・ノーベルの遺産である。
彼は1833年10月21日にスウェーデンのストックホルムで生まれ、1896年の12月10日にイタリアのサン・レモで亡くなった。
彼が1895年に書いた最後の遺書に、「資産の多くを基金に寄付し、その基金からの利子を年に一度の賞与として分配する」と書いてあり、これを元にノーベル賞が生まれた。
ノーベル自身の発明品としては、ブラストキャップ、ダイナマイト、無煙火薬などがある。彼が世界的に有名になったのは、1881年にスイスのアルプスにあるセント・ゴットハード・トンネル(St. Gotthard Tunnel)が初めてダイナマイトを大規模に使用して作られたことがきっかけである。
死亡時に、ノーベルは様々な国に355の特許を保有していた。彼は20カ国以上に会社を持ち、約90の工場でその特許に基づきあらゆる爆薬が製造されていた。ノーベルはスウェーデン、ロシア、フランス、イギリス、ドイツ、イタリアなど、多くの国々で生活していた。

A painting of a man by a window.

エステルマン(E Österman)によるアルフレッド・ノーベルの死後に描かれた肖像画 Copyright © The Novel Foundation

A black-and-white photo of a pile of dynamite.

ノーベルはダイナマイトを自分の商売にした。Copyright © The Novel Foundation

A bust of Alfred Nobel in front of a wall of flowers.

アルフレッド・ノーベルはノーベル賞を通じて生きている。Copyright © Nobel Media AB 2016. Photo: Pi Frisk

Two hands holding a glass bottle with an old label and some dark fluid inside.

ノーベルの研究所にあったいくつかの古いボトルは保存されている。© Nobel Prize Outreach. Photo: Dan Lepp

A black-and-white photo of an old-looking laboratory.
「私が働いている場所が私の家であり、私はどこでも働いている」とノーベルは言った。これはイタリアのサンレモの研究所である。Photo: Image provided by the Novel Foundation

ノーベル財団

1900年にノーベル賞を授与する4つの機関がアルフレッド・ノーベルの意思に基づく民間機関であるノーベル財団の設立に同意した。ノーベル財団は、当時の通貨で3,100万クローナ、現在では46億クローナ(約600億円)以上となったノーベルの資産を管理し、公的な発表や授賞式の運営を行なっている。

ノーベル賞を授与する機関は4つある。
① スウェーデン王立科学アカデミー(Royal Swedish Academy of Sciences)
物理学賞、化学賞、経済学賞を授与。
②スウェーデン・アカデミー(Swedish Academy)
文学賞を授与。
③カロリンスカ研究所(Karolinska Institutet)ノーベル委員会
医学・生理学賞を授与。
④ノルウェーノーベル委員会
平和賞を授与。唯一ノルウェーにある機関で、ノルウェー議会によって任命された5人の議員で構成されている。

各ノーベル賞の賞金は、現在1,000万クローナである。各賞最大3人までが受賞でき、受賞者が複数の場合、賞金は受賞者の間で按分される。

ノーベル晩餐会
毎年12月10日のノーベル賞授賞式に続いてストックホルム市庁舎で晩餐会が開かれるのが伝統になっている。晩餐会には、約1,300人のゲストが招待される。

 

年表

ノーベル賞は、1901年から2020年までに603回の授与が行われ、962の人と組織が受賞した。

1901年
ヴィルヘルム・コンラッド・レントゲン(Wilhelm Conrad Röntgen)が✕線の発見により、初めてのノーベル物理学賞を受賞した。

1903年
マリー・キュリー(Marie Curie)が放射線の研究で女性初の物理学賞を共同受賞。彼女は1911年にも新元素ラジウムの発見によって化学賞を受賞している。

1905年
オーストリアの伯爵令嬢で作家のベルタ・フォン・スットナー(Bertha von Suttner)がドイツとオーストリアでの平和主義運動を評価され、女性初の平和賞を受賞。彼女は生前ノーベルと親交があり、平和賞の創設を促した人物として知られている。

1912年
スウェーデンの投資家で発明家のグスタフ・ダレンがAGA灯台の発明によって物理学賞を受賞。AGA灯台は以前のものよりガスの消費を90%の抑えることができた。

1914年〜1918年
第一次世界大戦により授与数が減少した。この間の唯一の平和賞は、負傷した兵士や捕虜、その家族を治療したとして赤十字国際委員会(International Committee of the Red Cross)が1917年に受賞した。赤十字国際委員会は、1944年、1963年にも平和賞を受賞している。1963年は赤十字社連盟(League of Red Cross Societies)との共同受賞であった。

1922年
アルバート・アインシュタイン(Albert Einstein)が理論物理学賞の研究・光学効果の法則の発見によって物理学賞を受賞。アインシュタインは1921年に受賞の知らせを受けていたが、実際の受賞は1922年であった(訳注 これにはアインシュタインがユダヤ人であったことも含め、アインシュタインの相対性理論の科学的有用性に対する批判が背景にあった)。

1939年〜1945年
第二次世界大戦のため、いくつかの賞が平時のように授与できなかった。

1945年
アレクサンダー・フレミング(Alexander Fleming)がペニシリンの発見によって医学・生理学賞を受賞。ペニシリンは20世紀後半に数百万人の命を救った。

1952年
セルマン・アブラハム・ワクスマン(Selman Abraham Waksman)が結核に効く初めての抗生物質であるストレプトマイシンを発見し、医学・生理学賞を受賞した。

1968年
経済学賞が新たに創設された。

1975年
腫瘍ウイルスと細胞の遺伝物質との相互作用に関する発見によりデビッド・ボルティモア(David Baltimore)、レナート・ドゥルベッコ(Renato Dulbecco)、ハワード・マーティン・テミン(Howard Martin Temin)が医学・生理学賞を共同受賞した。

1983年
アメリカ人のバーバラ・マクリントック(Barbara McClintock)は可動遺伝因子を発見したことによりノーベル生理学・医学賞を受賞した。

1993年
トニ・モリソン(Toni Morrison)が文学賞を受賞。スウェーデンアカデミーは「洞察力と詩的要素に性格付けられた彼の小説は、アメリカの現実の重要な側面に活気を与える」と述べている。

2004年
アーロン・チカノーバー(Aaron Ciechanover)、アブラム・ハーシュコ(Avram Hershko)、アーウィン・ローズ(Irwin Rose)は、ユビキチン介在性のたんぱく質分解を発見したことにより、化学賞を共同受賞した。

2010年
イギリスのロバートG.エドワーズ(Robert G. Edwards)が体外受精の開発により生理学賞・医学賞を受賞した。

2011年
スウェーデンの詩人であるトーマス・トランストマー(Tomas Tranströmer)が文学賞を受賞した。スウェーデンアカデミーは「彼は、濃縮された半透明のイメージを通じて、現実への新鮮な入り口を与えた」ことを受賞理由として述べている。

2018年
文学賞の授賞がなかった。当時危機の只中にあったスウェーデンアカデミーは、その年に賞を授与しなかった理由として、審査員の減員と国民の信頼の低下を挙げた。ただし2019年に、ペーター・ハントケ(Peter Handke)に授賞するのと並行して、オルガ・トカルチュク(Olga Tokarczuk)に2018年の文学賞を授与すると発表した。

2019年
エチオピアと隣の国のエリトリアの国境紛争の解決のために努力したとして、エチオピアの首相アビィ・アハメド・アリ(Abiy Ahmed Ali)に平和賞を授与した。この賞は、エチオピアと北アフリカ、東アフリカ地域で、平和と和解のために働いているすべての関係者に光を当てることも意図されていた。

他にも、マーティン・ルーサー・キング(Martin Luther King、1964年)、マザー・テレサ(Mother Teresa、1979年)、バラク・オバマ(Barack Obama、2009年)らが平和賞を受賞している。

2020年の受賞者
化学賞:フランスのエマニュエル・シャルパンティエ(Emmanuelle Charpentier)と、アメリカのジェニファー・A・ダウドナ(Jennifer A. Doudna)がゲノムの編集方法の開発によって受賞した。

文学賞:アメリカのルイーズ・グリュック(Louise Glück)が受賞した。その理由は、彼女の詩が「厳格で美しさを伴いながら、個人の存在を普遍的なものにする明白な詩的な声」であると評価されたことによる。

平和賞:国連世界食糧計画(WPF)が平和賞を受賞。「飢餓と戦う努力、紛争の影響がある地域に対して、平和のために状況を改善するための貢献、また、飢餓を戦争や紛争の武器として使用することを防止する原動力としての役割を果たした」ことが授賞理由である。

物理学賞:イギリスのロジャー・ペンローズ(Roger Penrose)、 ドイツのラインハルト・ゲンツェル(Reinhard Genzel)、アメリカのアンドレア・ゲズ(Andrea Ghez)が受賞。ブラックホールの構造が、相対性理論を強固に予測するものであるという発見をしたことによる。

医学・生理学賞:アメリカのハーベイ・J・アルター(Harvey J. Alter)、イギリスのマイケル・ホートン(Michael Houghton)、アメリカのチャールズ・M・ライス(Charles M. Rice)が受賞。 C型肝炎ウイルスの発見による。

経済学賞:アメリカのポール・R・ミルグロム(Paul R. Milgrom)とロバート・B・ウィルソン(Robert B. Wilson)が、オークション理論の改良と、新たなオークション形式を開発したとして受賞。

原資料掲載ページ:https://sweden.se/work-business/study-research/the-swedish-nobel-prize
翻訳時点の最終更新日 2021年6月1日
翻訳 若槻英里香、馬田萌水
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表はSweden.seに掲載されたものをそのまま転載しています。他サイトへのリンクは転載しておりません。