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今回は、スウェーデンの教育について、お二人の先生からお話をいただきます。

1.スウェーデンの就学前教育-アウトドア教育を中心に(西浦和樹 宮城学院女子大学教授)
スウェーデンの学校教育は、1歳から5歳までの就学前教育(プリスクール)、6歳のプリスクールクラス、7-16歳の小・中学校(1年生から9年生)、16-19歳の高等学校、大学、大学院教育が行われています。公立と私立の給与面で差がなく、保育士不足も手伝って保育教諭の初任給は高水準(例えば、モタラ市で月給30万円から)となっています。
子育て環境は、子どもの権利が保障されるように手厚くなっています。教育費は無料、父親も母親も育児休暇が義務付けられている両親休暇は480日(その間、給与の80%保障、よって0歳児は家庭で育児)、医療費は18歳以下が無料となっており、子育てに関して経済的負担がかからない仕組みとなっています。
スウェーデンの幼児教育は、2016年度4月から実施された新しい子育て支援制度(幼保一体化、施設給付金など)と同様の仕組みが1998年に既に整備されていたことから、日本からみてスウェーデンは子育て先進国と考えてよいでしょう。
教育内容については、「アウトドア教育」のような特色ある教育、例えば、幼児期の科学教育(STEM教育:Science, Technology, Engineering, Mathematics)が実践されています。
本時では、2017年2月の宮城学院女子大学の海外研修の視察報告(プリスクール、ファミリーセンター、科学館、自然学校など社会制度設計の考え方)、2017年3月の宮城県訪瑞団の視察報告(グリーンツーリズム)、さらに2017年8月下旬から3週間のプレスクール実習を終えた学生からの報告を交えて、日瑞交流の今後に向けた話題提供を行います。

【参考文献】
シェパンスキー,Aら(著) 西浦和樹・足立智昭(共訳)『北欧スウェーデン発 森の教室-生きる知恵と喜びを生み出すアウトドア教育』 北大路書房(2016年)

2.スウェーデンの起業家精神教育(川崎一彦 東海大学名誉教授、ストックホルム在住)
北欧の就学前、初等教育における起業家精神教育とは、単にビジネスをスタートさせること(外的起業家精神教育)ではなく、 起業家的特徴または外的起業家精神の前提条件(内的起業家精神教育)で、具体的には、創造性、自己効力感(self-efficacy)、行動、勇気、協調性とネットワーク能力、ものごとを達成するモチベーション、常に学び続ける態度、空想性、豊かな発想、我慢強さなどを意味します。
内的起業家精神は、起業するしないに拘わらず、21世紀の社会では、たとえ大企業に勤めても、公務員でも、全国民に必要な資質と位置付けられてきました。
今回は、スウェーデンの就学前、初等教育における内的起業家精神教育について、とくに高い評価を受けているスウェーデン南部ヘルシングボリ市のプレスクールをケースとして取り上げます。
9月に静岡県私立幼稚園振興協会(千葉一道理事長)から派遣された田村都弥先生(追分幼稚園園長)及び大石竜士先生(静岡聖光幼稚園副園長)の新鮮な感想もお伺いします。

多くの方のご参加をお待ちしております。

● 講師 西浦和樹 宮城学院女子大学教授、川崎一彦 東海大学名誉教授
● 日時 2017年10月26日(木) 午後7時~9時(6時半開場) ※通常より遅い19時開始となります。
● 場所 スウェーデン大使館1階ノーベルオーディトリウム
● 参加料 研究所会員は無料 一般 1,500円、学生 1,000円(当日受付にて)

【今後の研究講座(予定)】
第201回 2017年12月7日(木) 川上玲子 インテリアデザイナー
第202回 2018年1月17日(水) 明治大学国際日本学部鈴木ゼミ
第203回 2018年2月20日(火) Chia Jonsson カール・ラーション・ゴーデン館長、Caroline Edman 同学芸員 (通訳 宮田宣子 カーリン&カールラーション友の会会長/一般社団法人スウェーデン社会研究所理事)

【おかげさまで満席となりましたので、ご参加受付を締め切らせていただきました。】

今回は、2013年から2015年にかけて在スウェーデン大使として日本とスウェーデンの関係発展にご尽力された森元誠二氏のご講演です。
森元様より、以下のご講演要旨をいただきました。

私は2013年から2015年にかけて、41年にわたる外交官生活の締めくくりとしてスウェーデンに駐在した。講演では、現地での経験を踏まえて、写真も交えながらスウェーデンという国とそこに暮らす人々を紹介していく。とりわけ、金髪碧眼を想像させるスウェーデン人が、和の心や中庸の精神、シンプルを愛でる審美眼といったような我々日本人と共通の資質を備えているとは意外である。と同時に、スウェーデンが極めて規範意識の高い国であって腐敗が少ない事実、またその高い意識に裏打ちされた目を見張る国内政策・外交政策の実例や、「小さな国」の国民が「大きな政府」に信頼を寄せている高福祉国家の実体にも着目する。
ただ、講演はスウェーデン礼賛に留まるものではない。同国が誇りとする、社民党政権が長年にわたって築き上げてきた福祉や教育の現場では今日歪が生じており、国民の不満が昂じて極右政党が国会における第三勢力にまで伸長している現状にも焦点を当てようと思う。近年の難民問題が吹き荒れることになるヨーロッパ政治混迷の底流は、既にスウェーデンで看取されていたのである。
講演の構成を考えるに当たっては、スウェーデンという国の全体像を幅広い視点から知ってもらうようにも心掛けた。200年に及ぶ平和を享受する国の背景にある「中立政策」や優れた武器の輸出国としての側面、ノーベル賞を生み出したイノベーションを重視する国民性、コンセンサスを得ながら高濃度放射性廃棄物処理場を確立する一方で原子力エネルギーに4割を依存する原子力発電大国としての側面、クリミア・ウクライナ情勢以降緊張を高める対露関係を背景に兵役義務を再導入しようとする動きやNATO加盟を容認する国民の声の高まりといった最近の動向、さらには特色ある地方都市の魅力などである。
様々な側面を踏まえることで、この興味深い国をより深く知ることができるわけだが、スウェーデンの今を生き抜く人々を描くコンテンポラリー・ドキュメントとしても面白くなるよう、講演では王族や政財界人などをはじめとして私の思い出に残る人々も紹介しようと思う。外交官ならではの観察眼に注目して欲しい。講演がスウェーデンという愛すべき国を訪れる際の一助になることを願う。

プロフィール
1951年生まれ。1975年3月東大法学部卒、4月外務省入省。在オマーンおよび在スウェーデン大使を歴任。現在、東京大学大学院総合文化研究科客員教授、富士通株式会社顧問。著書に『知られざる国オマーン:激動する中東のオアシス』(アーバンコネクションズ、2012年)、『スウェーデンが見えてくる:「ヨーロッパの中の日本」』(新評論、2017年)がある。

多くの方のご参加をお待ちしております。

● 講師 森元誠二 前駐スウェーデン日本大使
● 日時 2017年8月31日(木) 午後6時~8時(5時半開場)
● 場所 スウェーデン大使館1階ノーベルオーディトリウム
● 参加料 研究所会員は無料 一般 1,500円、学生 1,000円(当日受付にて)

【今後の研究講座(予定)】
第200回 2017年10月26日(木) 川崎一彦 東海大学名誉教授、西浦和樹 宮城学院女子大学教授 ※通常より遅い19時開始となります。
第201回 2017年12月7日(木) 川上玲子 インテリアデザイナー
第202回 2018年1月17日(水) 明治大学国際日本学部鈴木ゼミ

本研究所では、駐日スウェーデン大使をお招きしてのご講演が毎年の恒例行事となっております。今年は2014年9月のご就任以来、はや2年9カ月を過ごされたマグヌス・ローバック大使に、スウェーデン社会の近況や、大使として日ごろお感じになっていることをお話ししていただきます。
多くの方のご参加をお待ちしております。

● 講師 マグヌス・ローバック大使(英語)
● 通訳 鈴木賢志(明治大学教授/一般社団法人スウェーデン社会研究所代表理事・所長)
● 日時 2017年6月8日(木) 午後6時~8時(5時半開場)
● 場所 スウェーデン大使館1階ノーベルオーディトリウム
● 参加料 研究所会員は無料 一般 1,500円、学生 1,000円(当日受付にて)※今年度より料金が改定されました。

【今後の研究講座(予定)】
第199回 2017年8月31日(木) 森元誠二 前駐スウェーデン日本大使 『スウェーデンが見えてくる:「ヨーロッパの中の日本」』

 近年は毎年恒例となっておりますが、ソルトレークパラリンピックの銀メダリストで早稲田大学への留学経験もある、スウェーディッシュクオリティケアのエーミル・オストベリさんに、スウェーデンの障がい者福祉に関するお話をいただきます。
今回は特に、医療行為が必要な重症心身障害者に対する支援策と課題ということで、就学前教育や学校教育も含めて、ノーマライゼーションを実現できるためにどのような支援が行われているのかについて、主に焦点を当てます。

多くの方のご参加をお待ちしております。

● 講師 エーミル・オストベリ 氏 ※講演は日本語です。
● 時間 午後6時~8時(5時半開場)
● 場所 スウェーデン大使館1階ノーベルオーディトリウム
● 参加料 研究所会員は無料 一般 1,500円、学生 1,000円(当日受付にて)※今年度より料金が改定されました。

【今後の研究講座(予定)】
第198回 2017年6月8日(木) マグヌス・ローバック大使ご講演

 スウェーデンは、世界で男女平等が最も進んでいる国の一つと言われます。スウェーデンの国で暮らしていると、確かに男女平等だな、とも感じられますし、まだまだ女性の方が険しい道を進まねばならないのだな、とも思います。実際に生まれた時からこの国に暮らしているスウェーデンの人たちはどう思っているのでしょうか?
 子どもから大人まで12人のスウェーデン人と、スウェーデン企業の日本支社で人事に携わる日本人女性にインタビューしました。彼らの答から導き出されることは、システムが整っていても臨機応変の対応が必要なこと、男女平等をより浸透させるには社会のいろいろなところで意識的な働きかけが必要なことなどです。それらを踏まえてスウェーデンの男女平等の現状についてお話ししたいと思います。

多くの方のご参加をお待ちしております。

● 講師 三瓶 恵子 氏 
● 時間 午後7時~9時(6時半開場)※通常より1時間遅くなります。
● 場所 スウェーデン大使館1階ノーベルオーディトリウム
● 参加料 研究所会員は無料 一般 1,500円、学生 1,000円(当日受付にて)※今月より料金が改定されました。

【今後の研究講座(予定)】
第197回 2017年5月10日(水) エーミル・オストベリさんご講演(スウェーデンの保育、特に障がいのある児童のケアについて)
第198回 2017年6月8日(木) マグヌス・ローバック大使ご講演