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【Sweden.se日本語版】あなたらしくいられる権利のために


Photo: Maskot/Folio/imagebank.sweden.se

スウェーデンは世界で最もゲイフレンドリーな10か国のうちのひとつであり、人々はそのさらなる向上のために戦い続けている。

差別の余地なし

 私たちは法律や規制が日常生活に大きな影響を与えることを知っている。過去数十数年にわたり、スウェーデンはLGBTQコミュニティが他の人々と同じ権利や機会を享受できるようにするために重要な措置を講じてきた。

 最近では、ジェンダーに中立な結婚の法律(2009年)、ゲイやレズビアンのカップルの養子縁組の権利(2003年)、レズビアンの受精権(2005年)、そしてスウェーデンの憲法に追加された性的指向に基づく差別の禁止(2011年)などの法律が可決されてきた。

プライド

 ストックホルムプライドパレードには、通常約45,000人の参加者と400,000人の観客が集まる。これはLGBTQ(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クィア)コミュニティがスウェーデン社会に歓迎されていることの一つの表れだ。2020年、ストックホルムプライドはやむなくデジタルで行った。2021年は、マルメがデンマークの首都コペンハーゲンと共同でWorldPride を開催することが計画されている。このイベントはマルチスポーツイベントのEuroGamesと一緒に行われる予定である。

 国際レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、インターセックス協会(ILGA‐ヨーロッパ)のヨーロッパ支部は、レインボーヨーロッパと呼ばれる年次報告において、法整備の状況に基づいて世界各国をランク付けしている。

レインボーヨーロッパランキング-LGBTQの権利
ヨーロッパ諸国を0%(全く人権に違反し差別している状態)から100%(人権を尊重し完全に平等である状態)で評価した場合の上位10カ国

出所:Sweden.seウェブサイトより(原出所:rainbow-europe.org)

スウェーデンにおけるLGBTQの進展
1944年 同性愛関係の合法化
1972年 世界で初めて合法的な性別変更の容認
1979年 スウェーデン社会庁(Socialstyrelsen)が同性愛はもはや精神障害ではないと認定
1987年 企業や政府による同性愛者の差別禁止
1988年 同性愛者が同棲法の対象とされる
1995年 同性カップルの登録制パートナーシップ法が成立
1999年 LGBTの人々のためのオンブズマンであるHomOの設立
2003年 性的指向に基づくヘイトスピーチを違法とする憲法改正
2003年 同性カップルの養子縁組の権利の認定
2005年 レズビアンの受精権の認定
2009年 ジェンダーに中立な結婚法の施行
2009年 同性婚合法化
2011年 性的指向に基づく差別の禁止を憲法に追加
2013年 法的性別の変更に関する法律から不妊手術の義務化を削除
2019年 スウェーデンの基本法の一つである「報道の自由法」による、トランスジェンダーの人々へのヘイトクライムに対する法的保護の強化

トランスジェンダーの権利についての課題

 しかし法整備に関する国際的なランキングが高いから、スウェーデンに改善の余地がないと言うなら、それは自己満足に過ぎない。レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クィアのためのスウェーデンの権利団体であるRSFLによれば、トランスジェンダーの権利はそのような分野の一つである。法的な基準は最終目標ではなく、平等へと向かうスウェーデンの努力におけるステップなのである。

 1972年に、スウェーデンは性別の法的変更を認めた世界で最初の国となった。しかし残念ながら、このような大胆な動きがあったものの、2013年になってようやく法律から削除された不妊手術の義務化など、いくつかの欠点が残されていた。

未だに待ち受ける変化

 一般的に、スウェーデン人は政府当局に高い信頼を置いている。この信頼は公的機関の透明性、平等主義の政治、個人の権利を保護する法律や制度の長い歴史から生まれたものである。たとえば個人の利益を代表する公的機関であるオンブズマンシステムは1809年から施行されてきたものである。

 差別されていると感じた人は、あらゆる種類の差別に反対する政府機関である平等オンブズマンに相談することができる。

 平等オンブズマンが扱うケースとしては、たとえば、人々が医療センターでどのように対応されているか、というのがある。差別があってはならないことは法律で明確にされているが、時として無知と偏見が働いてしまう。たとえば、医療専門家は病気(普通の風邪でさえ)と患者の性同一性、または性表現との間に非論理的な関係性を作り上げることができてしまう。LGBTQ関連の問題に関する知識は、医療の専門家になる上では、全く要求されていないのである。

雇用における差別
 リンシェーピン大学で2020年に発表された研究では、スウェーデンの雇い主はトランスジェンダーの人々からの応募を不採用とする確率がより高く、その傾向は特に男性が支配的な職種において強いことが示された。トランスジェンダーの人々は、ジェンダーおよびトランスジェンダーのアイデンティティーや表現を理由に差別を受けている。
(出所:sciencedirect.com)


ストックホルムプライドが初めて行われたのは1998年のことであった。写真は2016年のプライドパレードの模様
Photo: Magnus Liam Karlson/imagebank.sweden.se

手を差し伸べること

 スウェーデンを世界で最もゲイフレンドリーな国のひとつにしているのは、さらなる向上のための人々の絶え間ない闘いだろう。

 RFSLに加えて、イベントやキャンペーン、情報、教育、サポートなどを行うLGBTQ団体が数多く存在し、それらはよく国際的な手助けも行う。ストックホルムプライドが有するストックホルムプライド国際連帯基金は2006年に設立され、他の国のプライドイベントを支えている。

 同性愛は未だ世界の約80の国や地域で違法行為とされているために、スウェーデンの多くの団体は、母国で迫害された人々がスウェーデンに亡命する権利のために戦っている(スウェーデンは1944年に合法化)。スウェーデンの法律は同様に、移民庁(Migration Agency)が性的指向や性別が原因で母国で迫害を受けた人々に対して亡命を認める、とも述べている。


ヨーテボリのプライドの模様
Photo: Sofia Sabel/imagebank.sweden.se

教会で行う同性の結婚式

 宗教はしばしば、人々が同性愛やトランスジェンダーの人々に反感を持つ理由として引き合いに出される。しかし、スウェーデン国教会は全ての形の愛を認めるという明確な態度を取っている。

 2009年にジェンダー中立な結婚法が施行されてからまもなく、スウェーデン教会は同性婚の挙式を許可した。各聖職者には抵抗する権利があるが、その場合は挙式を行う他の者を教区が見つけなければならない。

 スウェーデン教会はまた、レインボーミサを実施している。これは、LGBTQの観点からみて、全ての人々の平等な価値を反映することを目的としている。レインボーミサの聖職者、マリン・ストリンドベリはこう述べる。

「ほとんどの聖職者は、同性愛が他のどのような種類の愛情とも同じ価値があることを十分に理解している。」

著者 Rikard Lagerberg
掲載ページ:https://sweden.se/society/for-the-right-to-be-who-you-are/
翻訳時点の最終更新日 2020年8月26日
翻訳 押谷彩瑛、庄司弥奈、本澤由紀
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表は著作権上・技術上転載可能なもののみ転載し、他サイトへのリンクは転載しておりません。