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スウェーデンでは、子どもたちは、どのように過ごしているのだろうか。ここではスウェーデンの学校制度や子どもの権利、そして子どもたちの自由時間の過ごし方について概観する。
#1 学校教育
1842年以降、スウェーデンでは、全ての子どもたちが学校に行く権利を法律で定めている。現在、義務教育は10年間で、これはFörskoleklass (0年生 - 未就学児に対する教育)、Lågstadie (1~3年生)、Mellanstadiet (4~6年生)、Högstadiet (7~9年生)の4段階で構成されている。その後、義務ではないが大半の子どもたちがアメリカの高校に相当する Gymnasium に進学し、18歳~19歳で卒業する。
6歳~13歳の子どもたちは学外の時間に学童保育に行くことができる。また先住民であるサーミ族の子どもたちは、義務教育としてサーミ学校 Sameskolor で学ぶことも認められている。
#2 法
スウェーデンの1,000万の住民の5分の1は18歳以下であり、スウェーデンの法は、子どもたち自身と彼らの権利が十分に守られることを保証している。
1993年、スウェーデン政府は子どもたちの権利を守るためのオンブズマンを任命した。スウェーデンの子どもオンブズマンは、1989年の「児童の権利に関する条約(UNCRC)」に従い、それをスウェーデン社会で遂行することを義務付けられている。スウェーデンはこの条約に原署名国の1つである。2020年の1月1日より、スウェーデンはこの条約を国内法に取り込むことになった。
1979年に、スウェーデンは子どもへの体罰を禁止した最初の国となった。民法の1つである両親法の中にその禁止規定を導入し、両親が育児の一環として暴力やその他の侮辱的な扱いをすることを禁止した。この法律は親たちに罪を与えるためではなく、子どもたちへの態度を変えることを目指したものである。とはいえ、子どもを殴ったり叩いたりするのはスウェーデンの刑法上、犯罪とされる行為である。
#3 援助と支援
子どもたちが困った際に頼れる機関や組織がスウェーデンにはたくさんある。その一つであるChildren’s Rights in Society (BRIS)は、電話のヘルプラインやチャット・メールによるカウンセリング等、様々な支援を行っている。
Friendsは学校内、またスポーツなどの校外活動外におけるいじめの根絶に力を入れている組織である。
Save the Children Swedenは子どもの権利を守る組織である。
#4 家庭生活
スウェーデンの子どもたちのほとんどは、親と生活している。親は結婚している場合も結婚していない場合もあり、子どもは1家庭に1人もしくは2人いるのが平均的である。ただし別居も珍しいことではない。今日では18歳未満の子どもの75%は自分が生まれた両親と一緒に暮らしているが、18%はどちらか一方と、5%は継母や継父とともに暮らしている。
また、スウェーデンにいる子どもの4人に1人は他の国のルーツがある家庭に生まれており、その場合はシリアやソマリア、イラク、アフガニスタン、ポーランドからきていることが多い。60%以上の子どもたちが一戸建てや長屋に暮らし、40%がアパートに暮らしている。
#5 働く両親
20歳から64歳の女性の80%が働いているという事実から、大半の子どもたちの母親が働いているといえる。また男性については、20歳から64歳までの85%が働いており、やはり大半の子どもの父親が仕事を持っていることがわかる。両親は子育てのために、子ども1人当たり480日間の育児休業を取得することができる。これは、子どもが8歳に達するまでに受給できる。育児休業の多くは母親が取得するが、父親の育児休業取得の割合も増えてきている。現在は育児休業の約30%を男性が取得している。
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スウェーデンでは、徒歩が自転車で学校に行く子どもが多い。
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#6 趣味と娯楽
世界のほとんどの子どもたちと同じように、スウェーデンの子どもたちも音楽を聴いたり友達と遊んだりして楽しんでいる。彼らは、自分の興味を深めるよう奨励されてもいる。歌ったり楽器を演奏したりするのは人気の習い事である。12歳~15歳の子どもたちの約4人に1人は、この半年以内にコンサートに行っている。これは男の子よりも女の子の方が多い。
誰もがスポーツをすることを奨励されており、12歳~15歳の子どもたちの66%がスポーツクラブに所属している。その中でも人気なのはサッカー、アイスホッケー、フロアボール (訳注:室内で行うホッケーのような競技) である。乗馬は女の子の間で特に人気である。全体としてみると、体操のような個人競技が最近人気を増やしている。これは女の子だけでなく男の子の間でも同様であるが、これはおそらくパルクール(訳注:しばしば街中や公園などで、特別な道具を用いずに、障害物を乗り越えたり素早く移動したりするスポーツ)のクラブが増えたことによる。
#7 インターネットとテレビ
スウェーデンの若者はテレビを見るよりも多くの時間をインターネットに費やしている。12歳~15歳の子どもたちのうち、テレビを1日3時間以上視聴している者は13%であるが、それと同じ時間だけネットサーフィンをしている者は半数を超える。12歳~15歳の男の子の30%が1日3時間以上ビデオゲームをしているが、その割合は女の子では5%にとどまっている。一般に動画の視聴は人気だが、何をするかは子どもたちの年齢や性別に応じて異なっている。
年長の子どもたちは、学校の宿題、チャットやSNS、スマートフォンのアプリをして自由な時間を過ごすことが一般的である。小さな子どもたちはゲームをする傾向が強く、半数の2歳児がインターネットのゲームをしている。
#8 映画
スウェーデンの映画監督は子ども向けの映画を作る際にも難しいトピックを避けたりはしない。ロイダ・セケルソスRojda SekersözによるBeyond dreams (Dröm vidare, 2017) は大人になるというのがどういうことなのかを誠実に描いている。主人公ミリヤMirjaは盗難未遂で初めて禁固刑に服した。出所後に彼女は仕事につかなければならない。彼女は、病を患う母と、いつも自分の本当の家族でいてくれたかつての仲間たちとの間で板挟みになりながら、自分の進む道を探そうとする。
アレクサンドラーテレサ・ケイニングAlexandra-Therese KeiningによるGirls Lost (Pojkarna, 2016)は、3人の14歳の女の子が飲むと男の子になれる奇妙な花の蜜を見つける物語である。この映画はティーンエイジャーの不安を新しい視点で表現している。
Monky(2017)は、悲劇のあった翌日に家の裏庭に現れたサルと11歳のフランクFrank少年の物語である。このサルは普通のサルではないことがやがて明らかになり、その謎を探るべく、フランクとその家族はスウェーデンの小さな片田舎からタイのジャングルへと旅立っていく。
#9 本
アストリッド・リンドグレン Astrid Lindgrenは、長くつ下のピッピ Pippi Longstocking 、エーミル Emil、やねの上のカールソン Karlsson-on-the-Roof や他にもたくさんのキャラクターの生みの親である。彼女はスウェーデンで最も読まれている児童作家である。彼女の本はスウェーデン人作家の中でも最も広く普及している。100以上の言語に翻訳され、世界で約1億6,500万部の本が売れた。多くの作品が映画や演劇にもなっている。
グニラ・バーグストロームGunilla Bergströmは現実の世界を描きたくて、アルフィー・アトキンスAlfie Atkins (アルフォンス・オーベリAlfons Åberg)という小さな男の子の主人公を生み出した。彼女は物語を心理的なレベルのミニドラマとして描写した。いたずらをしたり、お化けを怖がったり、友達を恋しがったり、喧嘩をしたり、クリスマスが終わってしまったり…といった子どもなら誰でも共感できる瞬間を描いている。このシリーズは現在まで26作に及び、およそ30か国語で出版されている。
スベン・ノードクビスト Sven Nordqvist の ペッツソンとフィンダスの物語Pettsson and Findus storiesやアンダッシュ・ヤコブソン Anders Jacobsson とソーレン・オルソン Sören Olsson のスーネ Sune も広く読まれている。マーティン・ウィドマークMartin Widmark とヘレナ・ウィリス Helena Willis のジェリーマヤ JerryMaya (ラッセ・マヤ Lasse Maja)のシリーズは19か国語に翻訳されている。これらの本はベストセラーとなり、スウェーデンの図書館において最も人気のある児童書である。
自然と環境 スウェーデンはその大きさに比べて人口が少なく、1平方キロ当たり24.5人である(EUの平均は100人以上)。つまり多くの人にとって自然が非常に身近なものであり、自然を楽しむことが成長の過程で大きな割合を占めている。公共アクセス件により、誰もが田舎を自由に探索することができる。 クラブに参加する |
スウェーデンでの平均的な書籍の値段は120クローネ(約2000円)である。スウェーデンでは紙の本とオーディオ書籍は25%の一般消費税率ではなく6%の軽減税率が適用されている。
Photo: Lina Roos/imagebank.sweden.se
#10 イノベーション
スウェーデンの学校では様々な機関と協力し若者のテクノロジーや起業への興味を後押ししている。
Finn upp (発明の意)という青少年プログラムは、学校の子どもたちの知識への探究心を呼び覚ますような教育方法を用いている。同プログラムは学びの助けとして発明することを奨励している。同プログラムは12歳~15歳の若い発明家を対象に毎年コンテストを開催し、新しい世代の発明家やイノベーター、起業家たちにインスピレーションを与え、新しいアイディアを発表する場を設けることを目指している。同プログラムは、スウェーデンエンジニア協会(Ingenjörsamfundet)によって1979年に創設された。
非営利団体 Snilleblixtarna (‘the flashes of genius’ 天才の閃き) は未就学児から6年生を対象として設立された団体で、子どもたちにテクノロジーや自然科学、企業に興味をもってもらうことを目指している。同団体は教員や教育者に子どもたちの好奇心や知的探究心、批判的思考力を伸ばすような教育モデルやツールを提供している。
翻訳時点の最終更新日 2020年1月9日
掲載ページ:https://sweden.se/society/children-and-young-people-in-sweden/
翻訳 岩月万依、伊藤留美奈
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表は著作権上・技術上転載可能なもののみ転載し、他サイトへのリンクは転載しておりません。
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