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ヨーテボリ Photo: Per Pixel Petersson/imagebank.sweden.se

スウェーデンに移住する際に気をつけるべき10のことを、時系列で紹介する

1.滞在許可証を取得する

 ほとんどの場合、これが最初のステップである。スウェーデンの移民局(Migrationsverket)は、移民、ビザ、許可証、市民権に関連した問題を取り扱っている。
 スウェーデン到着前に、仕事や家族、また勉強の目的で、合法的にスウェーデンに住み、働くために必要な滞在許可証をすでに取得している人もいるかもしれない。しかし許可証を更新する必要があるので、最寄りの移民局や移民局本部の場所を知っておく必要があるだろう。

2.税務署への登録

 新居住者として最も重要な要件は、スウェーデン税務局への登録である。この登録手続きにより、徴税、個人識別、婚姻状況の確認、郵送先住所の情報、社会保険のためのシステムに、あなたが加わえられたことが保証されるのである。
 税務署に登録することで、あなた固有の個人識別番号「personnummer」(日本でいうマイナンバー)が割り当てられる。
 この重要な番号は、スウェーデンにおいてあなたを法的に証明し、銀行口座の開設や雇用主からの給与の支払いなど、日常の公的業務に使用されることになる。

出発点
 officialswedishservices.seは様々な政府機関の情報が集まっており、スウェーデンに移住している人たちの良い出発点となっている。

引っ越しの際には考えることがたくさんある。 Photo: Lieselotte van der Meijs/imagebank.sweden.se

3.住まいを探す

 特にストックホルムやヨーテボリ、マルメのような大都市に住む場合は、できるだけ早く家を探す必要がある。
 スウェーデンでは「ファーストハンド」と「セカンドハンド」という賃貸契約がある。ファーストハンド(första hand)は、建物の所有者と賃貸契約を結ぶことを意味する。他方、セカンドハンド(andra hand)は、分譲マンションのの所有者や、ファーストハンドの賃貸契約をしている人と賃貸契約を結ぶことを指す。
 大都市でファーストハンドの契約を得るには、数年間を要するのが一般的である。
 セカンドハンドの契約に関しては、多くの賃貸物件用のウェブサイトがある。スウェーデン語のものがほとんどだが、英語のものも存在する。
 学生としてスウェーデンに移住する場合、まず留学先の大学に確認する必要がある。留学生向けの住宅を保証している大学もあるが、それはすべてではない。ほとんどの大学では、何らかの物件紹介サービスを提供している。

4.国民IDを取得する

 個人識別番号(日本でいうマイナンバー)を取得したら、“スウェーデン身分証明カード”(identitetskort もしくは ID-kort)をスウェーデン税務局より発行してもらう。
 スウェーデン身分証明カードは、スウェーデン国内での主要な身分証明書であり、例えば、銀行の口座開設、クレジットカードの使用、郵便局での荷物の受け取り、医療機関の受診などの際に必要となる。

5.銀行口座を開設する

 手続きはいたって簡単ではあるが、いくつか留意点がある。
①スウェーデンで銀行口座を開設する際には、先ほどの“スウェーデン身分証明書”が必要になる。少なくとも、個人識別番号と有効なパスポートを用意しなくてはならない。
②銀行では、クレジット・デビッドカードの取得や各種サービスが受けられる。銀行口座があれば、請求書や給与の支払いをオンラインで済ますことができ、非常に便利だ。
③スマートフォンにBankIDアプリをインストールし、利用している銀行からBankIDを必ず取り寄せなくてはならない。BankIDはスウェーデンで生活していく上で非常に重要であり、多くのオンライン証明がこれに基づいている。
④BankIDを取得できたら、Swishアプリのダウンロードもおすすめする。

ペットを連れてくるには
スウェーデンへの動物の持ち込みに関する規制については、Swedish Board of Agricultureで確認すること。
物品の持ち込み
食品、薬品、タバコ、酒、車、高価な物品の持ち込みについては、税関で確認すること。
6.仕事を探す、起業する

 滞在許可証で就労も許可されている場合は、スウェーデン公共職業安定所(Arbetsförmedlingen)に登録し、自分に合った仕事を見つけてもらうことも視野に入れたい。
 もしあなたが新たに自分の会社(eget företag)ビジネスを立ち上げたい場合は、税務署で“F-skatt”の身分を取得する必要がある(”F“はföretagare:企業家を意味する)。またスウェーデンの法人登記所(Bolagsverket)を通じて会社名を登録することも可能である。
 参考までに、Verksamt.seは、スウェーデンでビジネスを始める場合に役立つウェブサイトであるので参照してみるのはいかがだろうか。

7.託児所や学校を手配する

この記事を読んでいるあなたに、もしお子さんがいる場合には、様々な選択肢を検討した上で、お住まいの地域の市役所に連絡して、入学の手続きを始めよう。


入学の手続きについては、居住する市の市役所にたずねること。 Photo: Ann-Sofi Rosenkvist/imagebank.sweden.se

スウェーデンでは、国が助成するコースで無料もしくはごく少額でスウェーデン語を学べる。 Photo: Emelie Asplund/imagebank.sweden.se

子どもは1歳から保育を受けられる。 Photo: Melker Dahlstrand/imagebank.sweden.se
8.スウェーデン語を学ぶ

 上記のステップが済んでいなくても、今すぐ始めた方が良い。
 スウェーデン語の基本的な知識を持っていれば、社会に溶け込みやすくなるだろう。スウェーデンの個人識別番号を取得すれば、政府が監督する移民向けのスウェーデン語コース(SFI)に無料で参加して、スウェーデン語を学ぶことができる。

スウェーデン語を学ぶ
SFI(Svenska för invandrare、移民向けのスウェーデン語)のコースは各地方自治体を通じて提供されている。
9.税金を払う

 ご存知の通り、スウェーデンは社会保障システムが充実しているが、移住したら、あなたも税金を払ってそのシステムを支えなくてはならなくなる。納税の管理をしているのは税務署であり、納税額は収入によって変わってくる。
 会社に雇用されている人の場合、税金は毎月の給料から自動的に差し引かれる。税務署のウェブサイトには英語の概要が載っている。
 自営業の人は、税金のシステムが少し複雑だ。個人事業主を始めようとしているなら、F-skateに登録しなければならない(Fというのは、企業家を意味する”företagare”の頭文字)。法人税に関するより詳しい情報は税務署のウェブサイトに載っている。
 スウェーデンの社会保障についてもっと知りたい人は、スウェーデン社会保険庁のウェブサイト(Försäkringskassan)を参照のこと。

10.スウェーデンの運転免許を取得する

 スウェーデンで運転をしようと思っている人は、現在の免許を使えるのか(スウェーデン語で運転免許はkörkort)、それとも新しいものを取得しなければいけないのかを確認する必要がある。スウェーデンの交通規則や標識、駐車規則などに慣れておかなければいけない。
 移住して一年経ったら、普通は運転免許が必要になってくるだろう。そのときは、スウェーデン交通当局(Trafikverket)に連絡すること。

原資料掲載ページ:https://sweden.se/work-business/moving-to-sweden/moving-to-sweden-in-10-steps
翻訳時点の最終更新日 2022年2月21日
翻訳 飯島里彩 高松奏音 田村元幹
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表はSweden.seに掲載されたものをそのまま転載しています。他サイトへのリンクは転載しておりません。


Photo: Ola Ericson/imagebank.sweden.se

6月6日、スウェーデン人は国旗を振り回し、王族と一緒に国家の日を祝う

 通常、スウェーデン国王と王妃は、国家の日にストックホルムの野外博物館であるスカンセンで行われるセレモニーに参加する。黄色と青のスウェーデン国旗をマストに掲げ、伝統的な農民服を着た子供たちが夏の花の花束を王室夫妻に贈るのだ。
 またスウェーデンの新市民を歓迎する特別な式典も、国家の日に各地で行われるのが通例である。

はじまり

 国民国家としてのスウェーデンに一般の人々が積極的に関心を寄せるようになったのは、国民ロマンの風が吹き、民俗学協会や郷土史博物館が設立された世紀の変わり目(つまり1900年頃)であった。
 6月6日が初めて祝祭日となったのは、その頃である。


国家の日を祝うイチゴケーキ Photo: Lieselotte van der Meijs/imagebank.sweden.se

国家の日にストックホルム市庁舎で行われる新市民の歓迎会 Photo: Simon Paulin/imagebank.sweden.se

スウェーデン南部でパラグライダー Photo: Simon Paulin/imagebank.sweden.se

楽しいグリルパーティー Photo: Vilhelm Stokstad/imagebank.sweden.se

祝いましょう! Photo: Simon Paulin/imagebank.sweden.se
2005年から公式の祝日に

 2004年にスウェーデン議会はこの日を祝日とすることを決議し、この日を祝福することに人々がより関心を持つようになった。この決議に至るまでに何十年も要し、歴代政権下で様々な案が検討されてきたが、2005年にようやく祝日となった。
 このほかにも、国民的お菓子や国民的料理を公式に導入するとか、キーバイオリン(ニッケルハルパ)を公式に国の楽器にすることを求める団体もある。こうした主張は罪のないものであるが、このような案が通るのはなかなか難しい。

スウェーデンの国家の日の起源

 1983年より、スウェーデンは6月6日を国家の日として祝っている。建国記念日としている。この日は、1523年にグスタフ・ヴァーサが国王に選出された日である。これによってスウェーデンが独立国家として成立する基礎が築かれた。重要な新憲法が採択されたのも、1809年の同じ日であった。
 この日を祝うという元のアイデアは、ストックホルムの野外博物館スカンセン(Skansen)を創設したアートゥー・ハゼリウス(Artur Hazelius)によるもので、スカンセンでは、すでに1890年代に6月6日を国家の日として祝っていた。
 他方、1893年のシカゴ万博において、スウェーデンは夏至祭の日をスウェーデンの国家の日として紹介していたので、1890年代のスウェーデンは、年に2回のお祝いを行っていたことになる。
 1916年には、6月6日がスウェーデンの国旗の日と定められ、1905年にノルウェーとの同君連合を解消したことを祝う日とされた。

原資料掲載ページ:https://sweden.se/culture/celebrations/the-national-day-of-sweden
翻訳時点の最終更新日 2022年4月6日
翻訳 田辺莞菜 田村元幹
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表はSweden.seに掲載されたものをそのまま転載しています。他サイトへのリンクは転載しておりません。


Photo: Asaf Kliger/imagebank.sweden.se

女性にとっても、男性にとっても平等な権力と影響力―それがスウェーデンの目指すところだ

権力と影響力
 スウェーデンは男女差別禁止法を掲げており、政府は自らをフェミニスト政権と宣言している。しかし企業の経営陣は依然として男性が主導権を握る形となっている。以下、詳しく見てみよう。

スウェーデンの取り組み

 スウェーデンは長らく男女平等を主導する国として力を持ってきた。スウェーデンは性別に関わらず誰もが働けること、自分自身で生活していくこと、キャリアと家庭生活のバランスの取れた生活を送れること、虐待や暴力に怯えることなく生活できることを基本原則として掲げている。
 男女平等とはただ単に男女が社会のあらゆる場面で同じ数だけ配置されることを意味しているわけではない。男女両方の知識と経験が社会を良くするためのあらゆる面において活用されることを保証するという意味での、質的な面に関するものでもある。

「Fワード」を発信する

 スウェーデンの現政権は、自らの政権のことをフェミニスト政権と宣言しており、フェミニスト外交に専念している。この考え方については、国内外から称賛と批判の両方が寄せられている。フェミニズムという言葉や、その意味についてはスウェーデン国内でも議論がなされているが、この言葉は他の多くの国々ほど批判されているわけではない。この「Fワード」を使うことによって、政府は男女平等がいかに社会にとって重要か、またその実現のためにはもっと努力が必要ということを強調したいと考えている。
 首相を含む23人の大臣のうち12人が女性であるのは偶然ではない。1947年にカリン・コック(Karin Kock)氏が女性初の大臣になって以降、確実に状況は良くなってきている。現在のスウェーデンの議員のほぼ半数を女性が占めている。

ジェンダーの主流化

 スウェーデン政府はスウェーデン男女共同参画庁に委託し、政府機関のすべての業務にジェンダーの視点を取り入れることを支援している。この取り組みは「政府機関における ジェンダー主流化プログラム(Gender Mainstreaming in Government Agencies (GMGA))」と呼ばれており、各機関の仕事のあらゆる側面においてジェンダー平等を取り入れることを目標としている。

男性優位の経営陣-現状

 その一方で、ビジネス分野においてはまだ男性優位の体制が続いている。スウェーデン統計局による2020年からのジェンダー平等に関する2年に1度の報告書によると、ストックホル証券取引所の上場企業において、女性社長の割合は10%、女性取締役の割合は35%であった。政治家の中には経営におけるジェンダー平等を達成する手っ取り早い方法として女性のクォータ制を取り入れるのはどうかと提案する政治家もいる。またオールブライト財団(Allbright foundation)はテクノロジー系の起業における男女不平等に関する批判的な報告書を作成している。

職場におけるジェンダー平等

 職場において男女が平等に扱われるようになるまでの道のりは長いものであった。職場においての男女差別は1980年から違法とされている。2009年に制定されたスウェーデン差別禁止法では、雇用主に対して男女間における平等を積極的に促進するだけでなく、ハラスメントに対しても対策をするように求めている。2017年の法改正による法の適用範囲の拡大を受けて、雇用者の性別、トランスジェンダーのアイデンティティや表現、民族、宗教その他の信条、障害、性的志向、年齢といった、あらゆる差別に関連するハラスメントが防止活動の対象とされた。が含まれた。
 同法は、育児休業を取得中、取得した、もしくはこれから取得する雇用者や就職希望者を不当に扱ってはならないことも規定している。
 差別があった場合は、平等の権利を守る政府機関である差別オンブズマン(Diskrimineringsombudsmannen)に通報することができる。この「差別」には、育児取得に関連した雇用者からの不当な扱いを含んでいる。

世界的なジェンダー格差

 毎年、世界経済フォーラムという国際機関が、健康、教育、経済、政治の指標に基づき、男女格差についておよそ150の国をランク付けしている。2006年以来、スウェーデンは一度も5位を下回ったことがない。このグローバルジェンダーギャップ報告書と国際労働機関(ILO)によると、世界の労働市場はジェンダー平等とは程遠い。世界的に見ると、男性の約72%は労働力となっているが、女性は47%に過ぎない。
 2022年のグローバルジェンダーギャップ報告書(世界経済フォーラム、2022年7月)によれば、世界規模で男女格差が解消されるまでには、あと132年かかるようである。

経済的平等

 スウェーデンでは長い時間をかけて男女間の経済的平等を大きく進展させた。しかし給料にはまだ格差がある。このことはスウェーデンの男女平等における重大な課題の1つとなっている。

なぜ賃金が平等にならないのか

 2021年時点で、スウェーデンの女性の平均月収は男性の90.1%である。
 男女間の賃金格差は専門性、業種、職位、就業経験、年齢などの違いで起こると言われるが、それらの中には性別との関係が深いように見えるものがある。
 スウェーデン差別禁止法は、雇用主と従業員が、給料の平等の実現のために積極的に努力し、また給料を引き上げるべく男女の機会均等を促進すべきであると定めている。
 スウェーデン女性ロビー(The Swedish Women’s Lobby、Sveriges Kvinnolobby)は、性別に関わらず全員が平等な給与を得られるように保証する、などの目標を掲げている。2012年には、女性が基本的にフルタイム分の給料を得ていないという表現で差別を明らかにする「全日分の給料を払え(pay all day)運動」を始めた。この運動には女性政治連合、労働組合、女性運動協会が協力している。

要因の1つはパートタイム

 スウェーデンでは、女性の3人に1人、男性の10人に1人がパートタイムで働いている。その主な理由はフルタイムの雇用不足であるが、女性ではその次に育児、さらに親族の介護が大きな理由となっている。
 女性は子供がいる場合、男性に比べてパートタイムで働く傾向がある。これは女性の積極的なキャリア形成や、賃金の向上を妨げ、年金が少なくなるという問題を引き起こす。育児休業を取った後、10年間をフルタイムの50%で働き、さらに10年間をフルタイムの75%で働いた女性の年金は、全期間をフルタイムで働いた人の年金の71%分にしかならない。

仕事と家庭の方程式は難しい! Photo: Liselotte van der Meijs/imagebank.sweden.se
スウェーデンにおける女性と男性の平均賃金の格差は縮小し続けている。 Photo: Sofia Sabel/imagebank.sweden.se
男性の子守り? いいえ、父親が育児休業を取っただけ。 Photo: Magnus Liam Karlsson/imagebank.sweden.se
育児休業

 スウェーデンの両親は有給で480日の休業を取得する権利がある。このうち90日はそれぞれの親が自分で取る必要がある。

仕事と家族

 スウェーデンは仕事と家庭の両立がかなりうまくいっている。スウェーデン人女性は平均1.7人(EU諸国の平均は1.5人)の子どもを生むが、それと同時に働く女性(15歳から74歳)の割合は比較的高く、64.4%に上る。

子供と仕事の方程式

 スウェーデンでは、男性も女性も同等の権利と義務を持ち働く親を支援するという家族政策によって、満足なワークライフバランスが実現しやすくなっている。
 保育は全ての親に保証され、保育園は誰にとっても手の届くものであることを目指している。共働き世帯の支援を促進するために、公共の保育園が改変・拡大されたのは、1970年代のことであった。

父親の育児はどうなっている?

 1974年に、スウェーデンは世界で初めて、女性に限られていた妊娠・出産休業を育児休業に置き換えた。いわゆる両親保険によって子ども1人あたり半年間の休業を得て、それぞれの親が半分ずつの日数を取得することが出来るようになった。しかしながら、父親は自分の休業日数を母親に譲ることが出来たため、その20年後には90%の育児休業が母親のみによって利用される結果となった。
 そこで1995年、最初の「パパの月」(pappamånad)が導入された。この制度は父親に30日間の休業を確保したものであり、もし父親がこれを利用しないと決めると、そのカップルは1ヶ月間の有給休業の資格を失うこととなった。2002年には、これが2ヶ月(60日間)に延長された。さらに2016年には3ヶ月(90日間)の有給休業が父親に確保され、今日では、両親の取得可能日数のおよそ30%を父親が利用している。
 外国のジャーナリストたちはスウェーデンにおける男性の育休取得率の高さを不思議に思っており、彼らのことを“latte dads”と呼ぶ者もいる。

買春という犯罪

 スウェーデンは1999年に性的サービスの購入を法律で禁止したが、売春した側を処罰せず買春を違法としたのは世界初であった。これは2005年にスウェーデン刑法典に統合された。

男性による女性への暴力

 国際的な指標によると、世界中でおよそ3人に1人の女性が身体的もしくは性的な暴力を受けたことがあり、そのうちの多くは夫婦などのパートナー間で発生している。スウェーデンでは女性と女子の権利を守り、強化するよう積極的に取り組んでいる。

レイプや性的暴行

 レイプの統計は、国によって犯罪の定義や登録方法に違いがあるため、比較が難しい。
 2018年にスウェーデンでは新たな性行為の同意に関する法律が適用され、明確な同意なしで行われる性行為は暴力や恐喝がなくてもレイプであるとした。
 スウェーデンは他の国々と異なり、報告されたレイプのひとつひとつが別々の犯罪として登録される。例えば、ある加害者が同じ被害者を3回レイプし、その3回の事件がすべて訴えられた場合、3件のレイプ事件が記録されることになる。また、被害者がそれを訴えようと思う気持ちも国によって異なる場合がある。スウェーデン国家犯罪防止委員会(Brå)はスウェーデンのレイプに関する統計を発表している。

犠牲の多い暴力

 スウェーデンでは、ここ数年で女性に対する暴力の報告件数が大幅に増加している。これは、今までよりも多くの女性が声を上げるようになったという意識の変化が一つの原因であるとされているが、報告されないケースも多く、女性に対する暴力が増えたかどうかを判断するのは容易でない。2021年、スウェーデンでは18歳以上の女性に対する暴力が約28,900件記録され、そのうちの81%のケースで、加害者はその女性が知っている人物であった。スウェーデンの「女性に対する暴力に関する法律」は1998年に施行され、女性に対する身体的攻撃や性的・心理的侮辱がそれぞれ考慮されるようになっている。
 なお犯罪統計の国際比較は非常に難しいことが知られており、注視する必要がある。より詳しくはスウェーデン国家犯罪防止委員会の説明を参照すること。

ガイ・トーク

 グローバル・ガイ・トークは、スウェーデンの非営利財団Make Equalが行っている活動である。スウェーデンで、#killmiddagというスローガンのもと始まり、現在では世界中に広まっている。そのコンセプトはシンプルで、グループで集まった男性がめったに話さないようなこと-弱さ・愛・友情など-について話そう、というものである。このプロジェクトは、男性が自分自身から始めることで、より平等な社会に貢献する機会を提供することを目的としている。

原資料掲載ページ:https://sweden.se/life/equality/gender-equality
翻訳時点の最終更新日 2022年7月15日
翻訳 内田優理 田辺莞菜 和田安純
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表はSweden.seに掲載されたものをそのまま転載しています。他サイトへのリンクは転載しておりません。


2020年万博のスウェーデンのパビリオンは「ザ・フォレスト」(下記のNo.13)と呼ばれた。 Photo: Johannes Edberg

ターニング・トルソ(Turning Torso)からツリーホテル(Treehotel)まで、25の素敵なスウェーデンの建造物を見ていこう

1.古いものと新しいもの

 ウィンゴーズ(Wingårdhs)のアウラ・メディカ(Aula Medica)は、1771 年に建てられた伝統的なコテージ、ステンブロッテット(Stenbrottet、採石場)の上にそびえ立ち、新旧のスウェーデン建築が融合している。医学または生理学のノーベル賞受賞者を選出する医科大学カロリンスカ研究所(Karolinska Institutet)のため、2013年に完成した。


ストックホルムにあるアウラ・メディカの講堂の座席は1,000席ある。 Photo: Cecilia Larsson Lantz/imagebank.sweden.se
2.ねじれた摩天楼

 サンチアゴ・カラトラバ(Santiago Calatrava)によって設計された、マルメ(Malmö)のターニング・トルソ(Turning Torso)は、世界初のねじれた超高層ビルであり、スカンジナビアで最も高い190メートルのタワーである。2015年に創立10周年を迎え、同年、高層ビルおよび都市居住者協議会(CTBUH)の「10年賞」を受賞した。

3.移動する教会

 1912 年に建てられたグスタフ・ウィックマン(Gustav Wickman)のキルナ教会は、スウェーデンで最も愛されている建物だ。大規模な採掘のため、北部キルナ(Kiruna)市の他の施設と一緒に、今後数年間で解体されて移動し、新しい場所に再建築される予定である。


キルナ協会は伝統的なスウェーデンの赤に塗られ、タールの臭いがする。 Photo: Hans-Olof Utsi/imagebank.sweden.se
4.顕微鏡

 ヨーロッパで最も精密な電子顕微鏡。振動、音、電磁場に非常に敏感で、独自の建物が必要な機器であるためチタン板で覆われている。リンショーピン大学のキャンパス内にあり、研究室や教室の中でも際立っている。


エレクトロン顕微鏡、別名オングストロムフセット(Ångströmhuset)はリンシェーピン大学にある。 Photo: Cecilia Larsson Lantz/imagebank.sweden.se
5.ミクロネーション

 ラテン語で「多すぎる」を意味するニミス(Nimis)は、1980年にラース・ヴィルクス(Lars Vilks)によって開始されたサイト・スペシフィック・アート・インスタレーションで話題となった。クーラベリ(Kullaberg)の自然保護区の架空の国ラドニア(Ladonia)に建設された印象的な建物である。2016年に大部分が焼失したが、再建された。流木でできた建物には、登ったり入ったりすることができる。


ニミスは自称の小国ラドニアの一部で、100カ国以上の国から23,000人以上の「市民」を受け入れている。 Photo: Thomas Olsson (CC BY-NC2.0)
6.リサイクルサウナ

 ヨーテボリのフリハムネン(Frihamnen)では新しい地区が開発されており、サウナ-スベッテショーカ(Svettekôrka、「汗の教会」)はその最初のステップになった。この壮大でありながら気取らない小規模なランドマークは、地元でリサイクルされた材料と地元のボランティアによって建設された。サウナはイェータ川(Göta älv)の一部である盆地に建てられており、無料で一般に公開されている。設計はベルリンを拠点とするラウムラボール(Raumlabor)事務所の、ジャン・リーゼガング(Jan Liesegang)とフランチェスコ・アプッゾ(Francesco Apuzzo)による。


これがヨーテボリの「汗の教会」スベッテショーカだ。一般的なサウナではない。Photo: Marie Ullnert/imagebank.sweden.se
7.趣のある市民ホール

 スウェーデンでおそらく最も豪華な市民会館(Medborgarhuset)は、南部の小さな町エスレフ(Eslöv)にある。1957年にハンス・アスプルンド(Hans Asplund)によって、若手建築家の最初の主要な建物として完成した。豪華な市民ホールの素材は、価格のみ、技術のみにこだわらず慎重に選ばれた。最初は批判されたが、市民ホールの素材と美しさは、今日ではこまやかで表現力があり、かつ空間を豊かに活かした市民建築の最高水準と見なされている。


エスレフの市民会館は、スウェーデンでおそらく最も有名な建築家であるグンナル・アスプルンドの息子であるハンス・アスプルンドによって、国連の建物に触発されて建てられた。 Photo: Ola Torkelsson/TT
8.木々に囲まれたホテル

 マイクロキューブ(Mirrorcube) は、スウェーデン北部のハラッズ(Harads)にあるツリーホテル(Treehotel)の6つの現代建築の楽園の1つだ。有名なスウェーデンの建築家タム&ヴィデゴード(Tham & Videgård)、シレン&シレン(Cyrén & Cyrén)、インレドニングスグルッペン(Inredningsgruppen)、サンデル・サンドベリ(Sandell Sandberg)が建物に携わっている。


マイクロキューブは、鏡の壁が周囲を映してカモフラージュしている4×4×4メートルの隠れ家だ。 Photo: Tina Stafrén/imagebank.sweden.se
9.橋

 エーレスンド橋(The Öresund Bridge)は、トンネルと人工島を含む構造で、スウェーデンとデンマークを結び、COWIによって設計された。世界最長のケーブルで結ばれた道路と鉄道の橋で、1999 年 8 月に完成した。2002年にIABSE Outstanding Structure Awardを受賞した。


エーレスンド橋は水上から水中に続くという劇的な形で始まって/終わっている。 Photo: Jan Kofod Winther/Öresundsbron
10.白樺の小屋

 2008年にラムンドベリエット(Ramundberget)で家族経営のスキーリゾートとして建造されたムルマン・アーキテクターズ・レストラン・トゥッセン(Murman Arkitekter’s Restaurang Tusen)は、地元料理とサーミ料理を提供している。この建物は、その高度で唯一生育できる地元の木である白樺で作られており、自然と調和している。


レストラン・トゥッセンは、2009年の世界建築祭(ホリデー部門)で1等を受賞した。 Photo: Åke Eäson Lindman
11.フェリー・ターミナルビル

 マーゲ・アーキテクター(Marge Arkitekter)によって建てられたストロームカイエン(Strömkajen)のフェリー・ターミナルビルはストックホルムの群島への入り口。正方形の真鍮を使って建てられた三角錐の形をした船着き場は周囲の記念碑のような建物(王宮、グランドホテル、国立美術館)を引き立たせるよう、やや小さめである。


ストックホルムにあるマーゲ・アーキテクターのフェリー・ターミナルビルは、周囲の建物と水を反射している。 Photo: Johan Fowelin/Marge
12.アイスホテル

 北極圏より200キロメートル北にあるユッカスヤルビィ(Jukkasjärvi)の世界初のアイスホテルは1989年に作られた。新進の芸術家と氷の彫刻家が、毎年10月から12月までの8週間で部屋を新しく作る。1,000トンの氷と3万平方メートルの雪と氷からなるホテルは3カ月かけて解け、毎年春には元の自然の姿に戻る。ただしアイスホテルの一部(アイスホテル365)は太陽光エネルギーを用いて氷を十分に冷たく保っているおかげで、一年中提供されている。


アイスホテルは寒さをクールにする。 Photo: Asaf Kliger/imagebank.sweden.se
13.ザ・フォレスト

 本物の木の幹と森林のような雰囲気を主役にすることで、ドバイで開催された2020年万博(Expo 2020)に展示されたスウェーデンのパビリオンは、スウェーデンの森林体験を再現することを目的としている。建物は高さ18メートルであり全て木でできている。これはスウェーデンのアレサンドロ・リペリーノ・アーキテクト(Alessandro Ripellino Arkitekter)、フランスのアドリアン・ガーデレ・スタジオ(Studio Adrien Gardère)、イタリアのルイージ・パルド・アーキテッティ(Luigi Pardo Architetti)という3カ国の3チームによって設計された。

14.モール(エンポリア・ショッピングセンター)

 エンポリア(Emporia)の巨大な金の割れ目、大胆な色づかいと曲がった視線はショッピングセンターの常識を壊した。これはウィンゴーズ(Wingårdhs)が2012年に建てたもので、マルメ(Malmö)におけるオフィス・住宅・商業施設の多目的開発の都市計画プロジェクトの一部を成している。


エンポリアは数々の建築賞を受賞している。 Photo: Susanne Nilsson (CC BY-SA 2.0)
15.コンサートホール

 ヘニング・ラーセン・アーキテクト(Henning Larsen Architects)によって設計されたウプサラ・コンサート&コングレス(Uppsala Konsert & Kongress)は2007年に開業した。つやのある金属のような外見と回顧感のあるピアノ鍵盤はウプサラという歴史的な学生町の重要な集いの場となっている。


ウプサラ・コンサート&コングレスは、スウェーデンで最高のコンサート・会議場の1つである。 Photo: Magnus Hörberg
16.フラワーショップ

 マルメにある東方教会墓地(Östra kyrkogården)のそばにある、1969年にシグルド・ルヴェレンツ(Sigurd Lewerentz)によって建てられたブルータリズムのフラワーショップは、激しい賛否両論を引き起こしたスウェーデン建築物の象徴である。有名な建築家による小さく極端な建物は、ほとんどが立方体や黄金の区画からなっており、世界中の建築ファンをいまだに魅了している。


シグルド・ルヴェレンツによるマルメのシンプルなフラワーショップは、彼の最後の作品であった。 Photo: trevor.patt
17.スキーホテルThe ski hotel

 1950年に建造されたラルフ・エルスキン(Ralph Erskine)のボーガフェール(Borgafjäll)スキーホテル(ホテル・ボーガフェール)は、この有名な建築家の最も原点となるプロジェクトの1つである。周囲の気候の影響を受けて作られた長いスロープの屋根は、雪で覆われるとこの地方のラップランドの風景の一部となる。この屋根はスキースロープとしても使用することができる。


ホテル・ボーガフェールの建物は、その場所と条件に対応したものとして有名である。 Photo: Hotell Borgafjäll
18.ビジターセンター

 カルメン・イズキエルド(Carmen Izquierdo)は、ルンド大聖堂にあるビジターセンター、カテドラル・フォーラム(Domkyrkoforum)の設計者である。千年近い歴史を持つこの教会には、毎年約70万人の人々が訪れている。真鍮とガラスで覆われたビジターセンターには、芸術的なランタン窓があり、そこから外を眺めると、まるで絵画のように大聖堂を縁取ることができる。この建物により、イズキエルドは2012年に優れた建築に贈られるカスパー・サリン(Kasper Salin)賞を受賞した。


ルンドのカテドラル・フォーラムはカテドラルの訪問者を歓迎する。 Photo:Åke E:son Lindman
19.ザ・グローブ

 アヴィーチー・アリーナ(グローベンとして知られている)は、2021年にスウェーデンのミュージシャン、故アヴィーチーにちなんで改名された。それは世界で最も大きな球体の建物で、住宅地に囲まれた巨大なゴルフボールのように突き出ている。ベリ・アーキテクトコントール(Berg Arkitektkontor)によって設計されたアリーナは、1989年に開業し、直径は110メートル、高さは85メートルである。


訪問者は2台の球場のゴンドラでアヴィーチー・アリーナの周りを巡ることができ、そこから何にも遮られることなくストックホルムを一望できる。 Photo: Tommy Andersson/imagebank.sweden.se
20.ストックホルム市庁舎

 ストックホルム市庁舎は、ラグナル・エストベリ(Ragnar Östberg)によるスウェーデンのナショナルロマンティシズムの代表作で、1923年に完成した。高さ106mの鐘楼には365段の階段があり、その尖塔にはスウェーデンの国章である黄金の「3つの王冠」があしらわれている。2010年には、その東側にホワイト・アーキテクター(White Arkitekter)によるサステナブルなストックホルム・ウォーターフロント・ビルが併設された。


ノーベル賞の晩餐会が開かれるストックホルム市庁舎は、ストックホルムで最も有名なシルエットの1つだ。 Photo: Werner Nystrand/Folio/imagebank.sweden.se
21.ネイチャーセンター

 水の国のビジターセンター(Naturum Vattenriket)は、クリスチャンスタッド(Kristianstad)の市街地から徒歩5分の湿地帯保護区にある。その建物は、訪れた人と湖畔をつなぐ窓口の役割を果たし、遊歩道を通じて市内から自然へと歩いていくことができ、様々な角度から湖の風景を探索することができる。スウェーデンには、自然保護区のビジターセンターである「ナチュールム(naturum)」が30カ所以上ある。


水の国のビジターセンターはクリスチャンスタッドの生物保護区にある。 Photo: Per Pixel Petersson/imagebank.sweden.se
22.高齢者施設

 トレッドゴーダルナ(Trädgårdarna、「ザ・ガーデン」)は、ストックホルムから数時間東に位置するエーレブロー(Örebro)にあり、これからの高齢者ケアの新しいスタンダードを示している。建築事務所のマーゲ・アーキテクター(Marge Arkitekter)は、実際に高齢者の視点を建物に取り入れたと評価されている。その結果、機能的でありながら、家庭的な雰囲気のある施設となった。


高齢者施設トレッドゴーダルナには温室の大きな庭がある。 Photo: Johan Fowelin/Marge
23.市立図書館

 グンナル・アスプルンド(Gunnar Asplund)によって設計されたストックホルム市立図書館は、天井高23mのロタンダ形式の円形図書館として有名である。比較的小さな建物であるが、円筒形の中央塔を3つの立方体の棟が取り囲むユニークな形状は、歴史的建造物としての性格を強く打ち出している。

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24.墓地

 グンナル・アスプルンド(Gunnar Asplund)とシグルド・ルヴェレンツ(Sigurd Lewerentz)によって1920年より設計された100ヘクタールの森の墓地(Skogskyrkogården)を訪れると、繊細なロマンを感じさせる美しく起伏した風景の中で、悲しく気品のある旅ができる。また、万聖節を過ごすには世界で最も幻想的な場所であるだろう。悲しいことに、森の火葬場に最初に埋葬されたのはアスプルンド自身であった。シンプルな石碑には「彼の作品は生き続ける(His work lives)」と書かれている。


ストックホルムにある森の墓地はユネスコ世界遺産における数少ない20世紀の建造物の1つである。 Photo: Larsson Lantz/imagebank.sweden.se
25.鉄道駅

 マルメのトリアンゲルンプロジェクト(Triangeln project)によって、エンジニア・建築家・環境技術のコンサルタント会社であるSwecoは、スウェーデンで3番目に利用客の多い駅を、当初の予定より6か月早く、また10%予算を削減して2010年に完成させた。外観は小さく見えるが、内部は広々としており、多くのスウェーデン人とデンマーク人が2つの国を行き来する上で重要な役割を担っている。


深さ25メートルのトリアンゲルン鉄道駅は、天井がガラスのドームとなった岩の洞窟のイメージである。 Photo: Werner Nystrand/Folio/imagebank.sweden.se

原資料掲載ページ:https://sweden.se/culture/arts-design/swedish-architecture
翻訳時点の最終更新日 2021年10月21日
翻訳 高木浩志 中村太星 福戸山実李
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表はSweden.seに掲載されたものをそのまま転載しています。他サイトへのリンクは転載しておりません。


ノーラ・キャビン Photo: Martin Edström/imagebank.sweden.se

スウェーデンの南から北へ、注目の宿泊施設10選を紹介する。今度行ってみてはいかが?

1.ファルクネステット(Falknästet)

 南部のクラーベリ半島にあるクーレン灯台(Kullens fyr)は、スウェーデンで最も高い場所に立つ灯台である。その足元にある「ファルクネステット(鷹の巣)」は、天井から丸いベッドがぶら下がり、パノラマウィンドウから夕日を正面から眺められるワンルームホテルである。結婚式の夜にも平日の夜にも使える。

2.ファブリケン・フリレン(Fabriken Furillen)

 ファブリケン・フリーレンは、古い石灰岩の採石場の真ん中に、コンクリートと堅木で作られた作品である。建物は、荒れた工業地帯を反映しながらも、そこから逃れるための居心地の良いシェルターとして機能している。ホテルの部屋にしても隠遁小屋にしても、このデザインホテルはゴットランド島のフリレン半島という人里離れた場所にあって、特別な滞在を経験させてくれる。


ゴットランドのフリレンは、見た目がハードだが中は居心地が良い。 Photo: Furillen
3.72時間キャビン

 72時間キャビンは、当初は仕事でストレスを抱えた5人が3日間自然のそばで過ごしたら健康上どのような結果が出るかを経験してみるというプロジェクトであった。これらの木枠とガラスの家で過ごすというアイデアは、スウェーデンの自然の中にストレスを埋め込んでしまうというものであった。ダールスランド地方にある多くの湖の1つのそばにあるガラスのキャビンは、今では誰でも予約することができる。


72時間キャビンは自然に囲まれた、真にくつろげる場所である。 Photo: Jonas Ingman/imagebank.sweden.se
4.ホテル・アタイン(Hotell Utter Inn)

 ヴェステロース郊外のメーラレン湖に、一軒の赤いコテージが浮かんでいる。これは水中ホテル、ホテル・アタインの入り口だ。水上には炊事場があり、水面下には窓からは水中世界を眺めることができるベッドルームがある。ミカエル・ゲンベリ(Mikael Genberg)がアートプロジェクトとして立ち上げたアタインは、4月から10月のシーズン中、大変な人気を博している。


アタインはヴェステロースの水中ホテルである。 Photo: Pia Nordlander
5.ノーラ・キャビン(Nolla Cabin)

 ストックホルム群島にあるノーラ・キャビン(Nolla Cabin)は、ゼロエミッションを目指したものである。ロビン・ファルク(Robin Falck)が設計したこのキャビンは、太陽エネルギーで稼働し、現代の技術を利用して、どのように自給自足と再生可能エネルギー源の利用が達成できるのかを示している。
 持続可能なコテージのプロトタイプであるノーラ・キャビンは、自然を楽しむ時間を増やしながら、より少ないもので生活する方法を示す実験である。このキャビンはリーデ・ヴェルズフス(Lidö Värdshus)を通じて予約することができ、ネステ(Neste)という企業によるプロジェクト「ゼロ・アイランド(Zero Island)」の一環で建てられた。


ストックホルム郊外のノーラ・キャビンは炭素ガスの排出を最小限にする。 Photo: Martin Edström/imagebank.sweden.se
6.コラービン・エコロッジ(Kolarbyn Ecolodge)

 コラービン・エコロッジは、最も原始的なところがぜいたくである。その12棟のキャビンは泥と草に覆われ、屋根からはブルーベリーやキノコが生えている。電気やシャワーから逃れ、新鮮な空気、平和な環境、野生動物を体験してほしい。コラービンはストックホルムから車で2時間、スキンスカッテベリ(Skinnskatteberg)という村のすぐ郊外にある。


コラービン・エコロッジは、最も原始的なところがぜいたくである。 Photo: Johan von Helvert/Kolarbyn Ecolodge
7.自然の中でのキャンプ

 スウェーデンでは、公共アクセスの権利(allemansrätten、自然共有権)によって、自然の中のほぼすべての場所にテントを張る権利が認められている。ただし、人家からは一定の距離を保ち、農地には近づかないなど、いくつかのルールがある。
 スウェーデンのユニークな自然体験をするには、テントを持参し、野原や岩の上の人里離れた場所を見つけてテントを張り、静寂を満喫しよう。すべて無料である。


無料のキャンプ-スウェーデンらしさか? Photo: Erik Leonsson/imagebank.sweden.se
8.ツリーホテル(Treehotel)

 ツリーハウスがブティックホテルになったようなイメージで、森の中に広がる6棟のカスタムメイドのツリーハウスがツリーホテルだ。一流の建築家たちが、この自然の中に現代的なデザインの小さな隠れ家をつくり、訪れる人は手つかずの風景に浸ることができる。ルレオ(Luleå)から1時間ほど北に行くと、木立の中にあなたの家が見つかるだろう。


北スウェーデンのツリーホテルの鏡のキューブの部屋 Photo: Lola Akinmade Åkerström/imagebank.sweden.se
9.サーミネイチャーキャンプ(Sápmi Nature Camp)

 北極圏でキャンプ? サーミネイチャーキャンプは、世界遺産ラポニア(Laponia)地区のイェリヴァーレ(Gällivare)とヨックモック(Jokkmokk)の町の郊外にあり、サーミ式のグランピングを楽しみたい人のための施設だ。ラヴ(Lavvu)テント(ティピーのようなテント)には、ダブルベッド、ストーブ、自然やサーミの文化からインスピレーションを得た調度品が備えられている。食事は、魚、トナカイ、ヘラジカと地元のベリーやハーブを使ったサーミ料理が基本である。


サーミネイチャーキャンプの典型的なサーミのテント Photo: Lennart Pittja/Sápmi Nature/imagebank.sweden.se
10.アイスホテル

 毎年4月になると、ユッカスヤルヴィのアイスホテル全体、いやとにかく一部は、溶けてしまう。アイスホテルの一部は、一年中オープンしている。ソーラーパネルが太陽からエネルギーを得て、そのエネルギーを使って氷が溶けないようにしているのだ。残りの部分は溶けてしまい、寒い季節になると近くのトルネ(Torne)川の氷や雪を使って再び建てられる。アーティストが内装を飾り、ホテルはアート展にもなる。また、一年中暖かい宿泊施設も備えている。


おそらくスウェーデンで最も国際的に有名なホテル、アイスホテル。 Photo: Hans-Olof Utsi/imagebank.sweden.se (Artist: Petros Dermatas and Ellie Souti)

原資料掲載ページ:https://sweden.se/culture/arts-design/10-amazing-places
翻訳時点の最終更新日 2022年6月14日
翻訳 熊木裕一 平川鈴弓 布施香南
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表はSweden.seに掲載されたものをそのまま転載しています。他サイトへのリンクは転載しておりません。