今回は、早稲田大学教授の福島淑彦先生をお招きいたします。以下は福島先生からのメッセージです。
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スウェーデンについて論じられる時に最もよく使われる表現は、「スウェーデンという国は高福祉高負担の福祉国家である」という表現であろう。国民が安心と安全を実感できるためには充実した社会福祉サービスが必要であり、充実した社会福祉―サービスを提供するためには国民の負担が必要である。さらに高福祉高負担の制度を持続可能なものにするには、すべての人が同じように社会福祉サービスを享受し、すべての人が社会福祉サービスの費用を誤魔化すことなく負担する必要がある。それには社会の透明性が高くフェアな社会でなくてはならない。社会の透明性を高めるためには、情報公開、個人情報の管理、不正行為の監視が必要である。
日本ではパーソナルナンバー(マイナンバー)への個人情報の紐付けを国家による監視だと否定的に論じる人もいるが、スウェーデンではパーソナルナンバーがあることによって税金を誤魔化したり、受給資格がない人が社会福祉サービスを不正に受給したりすることが困難となっている。もし政府が個人情報を有していないければ、不正をして制度にただ乗りするフリーライダーがどんどん増加してその制度はいずれ破綻してしまう。スウェーデンに住んでみると、個人情報がパーソナルナンバーに紐づけされていることで不安を感じるということはなく、むしろ便利であると感じる人の方が圧倒的に多いはずだ。
逆説的な言い方かもしれないが、スウェーデンは税負担が重いから政治の透明性も社会の透明性も高くフェアな社会が実現しているのである。つまり、税負担が重いので負担が公平になされているか、納めた税金が無駄なく使われているか、さらには税金の使い方を決める政治が不正なく行われているか、を国民は常に注意深く見守っている。その結果、国民全員が誤魔化すことなく税金を納める仕組みが構築され、無駄な税金の支出が極力抑えられ、高い政治の透明性と質の高い民主主義がスウェーデンでは実現しているのである。このことを記したのが、拙著「スウェーデンのフェアと幸福」(早稲田大学出版部)である。
日本の一人当たりGDPは低下し続け、賃金が上がらず、国民の幸福度も低下し続けている現状で、将来に明るい希望を持てないでいる日本人は増え続けていると思う。今こそ、我々日本人は真剣に日本の将来について考えなくてはいけないのではないだろうか。
本講義は「スウェーデンのフェアと幸福」(早稲田大学出版部)の一部を紹介する形で、スウェーデンで実現できている「安心・安全でフェアな社会」がなぜ日本で実現できていないのかを考えるキッカケを皆さんに提供できれば良いと考えている。
● 日時 2023年4月20日(木)18:00 - 19:00
● 講師 福島淑彦(早稲田大学教授)
● 開催場所 スウェーデン大使館オーディトリウム、およびオンライン(Zoomミーティング)
● 参加費 会員は無料。非会員は、一般1,500円、学生1,000円。非会員の方は、こちらからお申し込みください。
● なお、会員の方には、研究講座を録画したビデオを後ほどご視聴いただくこともできます。ご入会ご希望の方は、新規会員募集よりお申し込みください。
※当日の機器や通信状況によっては、オンライン配信に障害が発生する可能性があります。その場合には講演録画の配信等、代替措置を取らせていただくことがございます旨、予めご了解ください。