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スウェーデンでは、テクノロジーの進歩により、現金が過去のものとなりつつある。みなさん、準備はいいですか?

スウェーデンは長い間、銀行業務のイノベーションの最先端を走ってきた。ロンドンに世界初の自動現金支払機が設置されてからわずか1週間後の1967年7月、スウェーデン初の自動現金支払機が設置された。それ以降、決済手段の開発と簡素化は大きく進化してきた。

The counter of a café, with food and drink on the sides, machines for card payments on the counter and a woman looking into the camera behind the counter.

Photo: Love Strandell/Zettle

「スウィッシュできますか?」
新たな文化ができたことを実感するのはそれが日常の言葉になったときだ。swisha(スウィッシュする)」という動詞はその典型である。これはSwishというアプリを使って即時決済することを指す。スマートフォンに番号を入力するだけで、あっという間に振込みができてしまうのだ。

最近では、一部のカフェやショップ、スーパーなどで、客が携帯電話でQRコードをスキャンし直接支払いができるようになった。Swishアプリをはじめとする大小さまざまなイノベーションにより、スウェーデンはキャッシュレス社会が進んでいると評価されている。

モバイルバンクID

今日、スウェーデンの社会ではBankIDがとても重要になっている。これは、スウェーデンの個人識別番号(personnummer)と銀行口座を持っている人なら誰でも、すべてのデジタル公共サービスにアクセスすることでインターネットバンキングを利用し、さらに契約書に署名することができるアプリだ。

6桁のコード入力や、スマートフォンの指紋認証など、ほとんどすべてのことが指先で操作できる。このおかげで、スウェーデンでは、デジタルサービスにアクセスするために多くのパスワードを覚える必要がない。

日常生活の一部

キャッシュレス決済は、スウェーデン人のライフスタイルと密接に結びついている。

スウェーデン人がバーやレストランで会計を割り勘にすることが多いこともswichの人気に繋がっている。一人が支払い、残りの人が自分の分をswishで送金することが多い。

ウプサラ大学の民族学教授であるエラ・ヨハンソン氏は、これは友情とお金の関わり方に大きく関係していると語っている。

「スウェーデン人は、お金や借金のやり取りは友情を脅かすものであると考えています。例えばイタリアのような他の文化では、友情を維持するために、会計を自分がするのだと言ってもめることがあります。」

Shoppers at an outdoors flea market.
フリーマーケットですら、現金がどこも使えないことがよくある。Photo: Faramarz Gosheh/imagebank.sweden.se

A mobile phone with a page from the Klarna app on the screen.
キャッシュレス社会とともにフィンテックが成長している。Photo: Klarna

A cash machine in a wall by an empty street.
スウェーデンのATMは以前ほど使われなくなった。Photo: Bankomat

A square-shaped prototype with lots of different colours.
クラーナ未来ショッピングラボでは、未来のショッピングの姿を模索している。これは郵便ポストモジュラーの試作品である。Photo: Klarna

スウェーデンのフィンテック

キャッシュレス社会に向けた動きは、フィンテック(金融技術)によっても推進されている。国際的に有名なフィンテック企業の多くは、スウェーデンで設立された。例えば、2005年に設立された決済システムのスタートアップであるクラーナ(Klarna)は、世界で9,000万人以上の顧客を抱えている。

また、アイゼットル(iZettle)は小型で安価なカード決済端末を製造している。この端末でスマートフォンやタブレットの専用アプリに接続することで、お店で決済を行うことができる。

文字通り「手軽な」支払い

キャッシュレスを文字通り身につけてしまった人々もいる。彼らは手にマイクロチップを埋め込むことで、身分証明書からドアを開閉、電車の切符、さらには銀行カードまで、さまざまなデータを保存し、手をかざすだけ支払いができるようになった。

これはSF映画の話のように聞こえるかもしれないが、1000人以上のスウェーデン人が、この便利なバイオハッキンググッズをライフスタイルに取り入れている。銀行カード、身分証明書、会員証、鍵などはもはや持ち歩く必要がないのだ。

どのくらいのスウェーデン人が現金を使っているか

スウェーデン中央銀行(Risksbank)によると、10年間で現金を使うスウェーデン人の割合は39%から9%へと低下した。現金の利用は多くの場合、少額の支払いや高齢者に限定されている。他の多くの国でもそうであるように、お店やカフェにおいて、「現金のみ」よりも「カードのみ」や「キャッシュフリー」としている方がより一般的となっている。

オンラインショッピングもとても人気だ。多くの小売業はウェブショップを通して十分な利益を得ている。EUの統計(Eurostat)によると、スウェーデン人口の82%がオンラインショッピングを行っており、この割合はヨーロッパの中でも上位となっている。

リスクと挑戦

しかし、スウェーデンのすべての人がキャッシュレス社会を歓迎しているわけではない。

73歳の男性であるステファンさんは、未だ現金支払いを好むと語っている。「特に酒屋(Systembolaget)に行ったときは、必ず現金で払っています。私がどのくらいワインにお金を費やしたか銀行に知られたくないからね。」

若いイタリア人の弁護士であるシルビアは2年間スウェーデンに住んでおり、電子決済は不正なお金や賄賂、その他犯罪行為を防ぐ良い方法だと語っている。しかしマイクロチップを体内に埋め込むことに関しては、懸念を示している。「私がマイクロチップを埋め込むことはないわ。生成される全ての個人情報のことを考えると、もし違う人の手に埋め込まれたらどうなってしまうのかと思うわ。」

より共通の課題として、支払い方法の変化に容易に順応していくテクノロジーに精通している若者と、未だに現金支払いを好む多くの高齢者の間の溝が深まるということがある。バスのチケットの例を考えてみよう。人々は多くの場合スウィッシュや銀行のカードと連動しているアプリを通してチケットを購入する。これはスマートフォンの使用に慣れている人達にとってとても便利だ。しかし古いタイプの携帯電話や携帯電話を持っていない人にとっては、大きな障壁となってしまう。

スウェーデンのキャッシュレスの未来とは?

銀行業務の未来はとてもハイテクであり、人工知能(AI)に注力しているように見える。ここまで述べてきたことに加えて、ティンク(Tink)やロッカー(Rocker、旧Bynk)といったフィンテク会社も急成長しており、さらに多くのスタートアップ企業も同様だ。バンキングアプリやスウィッシュもキャッシュレス社会への移行に向けたサービスの単純化や統合を行い、衰えることなく成長を続けている。

いつかすべての人が体に埋め込まれたマイクロチップで支払いをしているかもしれない。未来のバンキングシステムがどうなっていようと、スウェーデンは未来の支払い革命の最前線であり続けるだろう。

原資料掲載ページ:https://sweden.se/life/society/a-cashless-society
翻訳時点の最終更新日 2021年6月1日
翻訳 池田麻衣子、久保田竜希
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表はSweden.seに掲載されたものをそのまま転載しています。他サイトへのリンクは転載しておりません。

スウェーデンの所得税は、他のほとんどの国と比べて高い。その多くが、社会のワークライフバランスを提供するために使われている。これは、社会が日常生活の中で家族にやさしい解決策を提供できるようにみんなが貢献する、という考え方に基づいている。

国の補助による出産

普通、スウェーデンの女性は病院で出産する。出産や産後の入院費用は、ほぼ完全に税金によって運営されている。
出産における具体的な状況は病院によって大きく異なるが、あまり病院に見えないような「ホテル」が病院に隣接している場合がある。ここには、必要があればお母さんとそのパートナーが産後二、三日滞在することができ、看護師が母親の様子をチェックしたり、新生児の産後ケアを行えるようになっている。

育児休暇-子どもとの絆を深める機会

スウェーデンでは、子どもが生まれたときや養子をもらったとき、両親は有給の育児休業を480日取得することができる。国際的な基準からみてもこの数字は高く、スウェーデンが子供にやさしいシステムであるという時に、おそらく最もよく引き合いに出されるものである。
有給の育児休暇を与えることは、親が仕事と家庭を結びつけられるようにする方法の一つである。子どもを持つということは、キャリアの終わりを意味するのではなく、単なる一時停止である。これは平等というだけではなく、国レベルでは、経済や労働力の可能性を最大化し、ひいては国の成長を高めることでもある。


Photo: OTW/imagebank.sweden.se

議論に上るジェンダー平等

スウェーデンの市や町を歩いてみると、父親がベビーカーを押し、カフェや公園で赤ちゃんにミルクをあげながら一緒にコーヒーを飲んでいる光景をみるだろう。そう、スウェーデンには「ラテママ」と「ラテパパ」の両方が存在する。あるジャーナリストの言葉を借りれば「ここでは、男性もすべて行うことができる」。
ジェンダー平等を達成するために、両親は480日の有給の育児休業のうち、それぞれ240日ずつを取得する権利がある。ただしそのうち90日分は固有の権利とされ、一方の親がその育児休業を取らないと決めても、それを他方の親のものにすることはできない。今日、スウェーデンの男性は有給育児休業全体の30%近くを取得しているが、政府はこの数値をさらに高めたいと考えている。


Photo: Lena Granefelt/imagebank.sweden.se

全て税金で賄われる、六歳からの学校教育

スウェーデンのほとんどの子どもたちは幼稚園と保育園を一元化した就学前学校(förskola)に通っている。親たちは、多くの場合、子どもが18か月ごろになると仕事に戻ることを選択するため、そのころから子どもたちは就学前学校に通い始める。その費用は最大でも毎月の児童手当SEK1,250クローナ(2019年時点)とほぼ同じくらいである。

スウェーデンの住民は、子どもの教育のための貯金の心配をする必要はない。6歳から19歳までの子どもたちのための学校(就学前学校から高校)は、完全に税金によって賄われている。これにはほとんどの場合、給食も含まれる。

EU域内の学生については、大学の学費も税金で賄われるが、EUやEEA以外からの留学生は学費を払わなくてはならない。

病気の子どものための欠勤

スウェーデンで働く親は、子どもが病気にかかったとき、看護休業を取得することができる。子どもが12歳未満の場合には、スウェーデン社会保険庁から休業補償給付が受けられる。12歳から15歳の子どもについては、医師の証明書が必要となる。

主に税金で賄われる医療サービス

スウェーデンのほとんどの医療サービスは税金で賄われている。20歳からは、住んでいる地域によって違いはあるが、かかりつけ医の受診は100SEKから300SEKの負担となる。専門医の受診は最大で400SEKとなる。ただし過去1年間に受診料の総額が1,100SEKに達した場合、高額医療費減免制度が適用され、残りの期間の医療費が無料となる。

地域によって多少システムが異なるが、20歳未満であれば医療費は基本的に無料である。また、ほとんどの歯科医療は24歳になるまで無料である。


Photo: Melker Dahlstrand/imagebank.sweden.se

児童のための図書館と文学

スウェーデンには子ども向けの図書館の強い文化がある。図書館には色々な言語の児童書があり、お絵描きや工作、歌などのアクティビティも開催される。

また、スウェーデンは世界的に有名な児童図書の作家である、アストリッド・リンドグレーンやノーベル賞を受賞したセルマ・ラーゲルレ―ヴを輩出している。

リンドグレーンは子供たちの中でもおそらく非常に印象深いキャラクターであろう、長靴下のピッピの作者である。彼女が遺したものは本だけではない。スウェーデンの北の町、ビンメルビューにあるアストリッドリンドグレーンワールドは彼女の作品をテーマとした場所である。そこではライブパフォーマンスが繰り広げられていたり、「屋根の上のカールソン」、「エーミル」などといった彼女の本に登場するキャラクターに会うことができる。


こんにちはお馬さん! そこにはコンクリートや町の騒音を越えた世界がある。
Photo: Alexander Hall/imagebank.sweden.se

赤ちゃんにやさしい公共エリア

スウェーデンにはたくさんの家族に優しい公共施設がある。例えば、ベビーカー用のスロープや遊び場、子ども専用の公園などである。ほとんどのショッピングセンターや図書館には乳幼児のための授乳室があり、共有トイレにはオムツの替え台が設置してある。

また図書館や博物館にもベビーカーを簡単に駐車できる専用の駐車場が設置されている。外食する際も、ほとんどのレストランでは子供向けの高い椅子が用意されており、トイレにはオムツの替え台もある。

さらにスウェーデンのいくつかの市では、ベビーカーに乳幼児を乗せている親は無料で公共バスに乗車することができる。バスには車体の真ん中に彼ら、彼女らが乗り込むための大きなドアがついている。したがって、親はベビーカーから離れてバスの運転手にわざわざチケットを見せる必要がない。

翻訳時点の最終更新日 2020年2月21日
翻訳 五十嵐彩華、藤井碧海
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表はSweden.seに掲載されたものをそのまま転載しています。他サイトへのリンクは転載しておりません。


インターネットへのアクセスは民主制の促進に役立っている。
Photo: Melker Dahlstrand/imagebank.sweden.se

スウェーデンは自由で開放的な社会である。人々には言論の自由と出版・報道の自由、そして権力者たちを精査する権利、デモに参加する権利がある。

開放性の保護

 開放性と透明性はスウェーデンの民主主義において重要な点である。民主主義社会は統治法、出版自由法、表現自由法、王位継承法という4つの基本法によって保護されている。これらの法律がスウェーデンの憲法を構成しており、他のいかなる法律にも先行する。

 スウェーデンの憲法は全ての国民に自由に情報を求める権利、デモを組織する権利、政党を結成する権利、そして宗教の教えを実践する権利があると定めている。

出版の自由

 出版の自由は、ほとんどの民主主義の礎となる表現と言論の自由に基づいている。1766年、スウェーデンは世界で初めて出版の自由を憲法に取り込んだ国となった。出版自由法では、権力者は必ず説明責任を果たさなければならないこと、そして全ての情報は自由に利用できなくてはならないと定めている。出版者や編集者、報道機関に情報を提供した者の身元は保護され、その情報源を明らかにするようにジャーナリストが強制されることは、決してあってはならない。

 しかし、意見を表明する権利は絶対的な権利ではない。濫用されると、言論の自由は攻撃的になったり、差別や暴力を煽動したり、また個人や社会に否定的な結果をもたらしてしまいかねない。出版や表現の自由に関する犯罪の容疑については、政治的な圧力とは切り離された司法庁(Office of the Chancellor of Justice)が取り扱う。

 2020年の国境なき記者団による世界報道自由度ランキングにおいて、スウェーデンは第4位であった。この順位は、各国のジャーナリストや報道機関の自由度やその保護のための官庁による努力の度合いに基づいている。

報道に対する補助金
 スウェーデンでは、新聞が他のメディアに対抗できるように税金による補助金で支援している。これによって多様性を促進し、多面的な情報入手を人々に確保している。

テレビとラジオの独立性
 公共放送のSVT(スウェーデンテレビ)とSveriges Radio(スウェーデンラジオ)は広告なしで様々な番組を提供している。多くの人はこれに加えて民間のチャンネルやストリーミングサービスにアクセスしている。

学術出版物への自由なアクセス
 オープンアクセスプログラムは、スウェーデンの高等教育機関における電子出版を支援し、研究者や教員、学生による成果へのアクセスと可視化を最大限に促進している。


2019年9月27日にストックホルムで行われた気候変動対策を訴えるデモ。
Photo: Jann Lipka/imagebank.sweden.se

情報の自由

 情報の自由の原理は一般大衆やマスメディアが公文書にアクセスすること、つまり国、地域、地方の全てのレベルで行政を精査する機会を有するということを意味する。
 透明性は権力が濫用されるリスクを減らすものである。

 公務員その他の政府で働く人々も同様に、メディアや第三者に情報を自由に提供することができる。ただし、たとえば国家の安全保障の内容に関わるような特定の文書は機密として守られる。

平等と人権

 スウェーデンでは人権は主に、統治法、出版自由法、表現自由法によって守られている。公権力は、すべての人々の平等、個人の自由や尊厳を尊重して行使されなければならない。

 法律やその他の規制は、いかなる市民に対しても、性別、トランスジェンダーのアイデンティティあるいは表現、民族起源、宗教、障害、性的指向あるいは年齢といったマイノリティに属することを理由として、不利益を与えることがあってはならない。


スウェーデンは、法令や規則によって全ての人が平等な扱いを受けられるように努力している。
Photo: Magnus Liam Karlsson/imagebank.sweden.se

人権に対する世界的な闘争

 欧州人権条約は1995年からスウェーデンの法律に組み入れられている。スウェーデンはまた、国際連合、国際労働機関、ヨーロッパ評議会の内で、いくつかの人権協定に署名し批准してきた。スウェーデンの外交政策のすべての領域、つまり安全、発展、移住、環境、貿易政策は、人権、民主主義、そして法律の規則に基づかなくてはならない。


多くのスウェーデン人にとって、ソーシャルメディアは日常生活の一部である。
Photo: Emelie Asplund/imagebank.sweden.se

インターネット上の開放性

 スウェーデン人の96%がインターネットの利用者である。1,000万人の人口のうち、98%が家でインターネットへアクセスできる(2020年)。スウェーデン政府は2025年までに、「完全に接続されたスウェーデン」を目指している。

スウェーデンの決済アプリSwishやBankIDという身元証明アプリなど、モバイルによるインターネット利用が、この発展を促進している。

スウェーデンのソーシャルメディア

 2020年時点で、スウェーデン人の10人に9人がソーシャルメディアを利用している。これはコロナ禍が促進している面もある。Facebookは81%の人が利用し、26~35歳にもっとも人気がある。Instagramは71%の人が利用し、16~25歳では90%に達している。またこの年代では91%がSnapchatを利用しているが、全年代では42%にとどまっている。Twitterの利用者はこの中では最も少なく24%に過ぎない。ただし最も若い世代では44%が利用している。

オープンエイド

 スウェーデンには、透明性という考え方に基づいて、政府のオープンデータをもとに作成された「openaid.se」というウェブサイトがある。「openaid.se」は、個人、NGOs、援助を受ける人や援助当局に、政府の公式データにアクセスし学ぶ機会を提供する。その目的は、人道的努力における透明性や開放性をさらに高めることと、他の期間に一般の人々に向けて透明性や開放性を高めさせることである。

オンブズマン
 オンブズマンという言葉はスウェーデン語から来ており、代表者として活動する人を意味している。

議会オンブズマンは、自分や他人が公的機関や公務員から誤った扱いを受けたという不服申し立てを扱う。スウェーデン国民か否かに関わらず、誰でも不服を申し立てることができる。
jo.se

法務官(The Chancellor of Justice)は、政府のために省庁や裁判所を監督する。
jk.se

平等オンブズマンは、差別と闘い、全ての人が平等な権利と機会を得るように努める。
do.se

メディアオンブズマンは、報道倫理を扱う。調査の結果さらなる処置が必要な場合には、スウェーデン報道理事会に送致する。
medieombudsmannen.se

消費者オンブズマンは、企業がマーケティングや製品安全に関する法令を遵守しているかを監視しており、誤解を招く広告や不適切な契約条件、誤った価格表示、危険な製品などを取り締まっている。
konsumentverket.se


子どもオンブズマンは子どもの権利と利益を守り、国連の子どもの権利条約が守られているかを監視している。
barnombudsmannen.se
Photo: Ann-Sofi Rosenkvist/imagebank.sweden.se

掲載ページ:https://sweden.se/society/openness-shapes-swedish-society/
翻訳時点の最終更新日 2021年2月12日
翻訳 押谷彩瑛、庄司弥奈、本澤由紀
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表は著作権上・技術上転載可能なもののみ転載し、他サイトへのリンクは転載しておりません。


Photo: Helena Wahlman/imagebank.sweden.se

 スウェーデンのヘルスケアは主に税金で賄われ、誰もがヘルスケアのサービスを平等に利用できるシステムである。資金、サービスの質、効率性が課題となっている。

地方分権されたヘルスケア

 スウェーデンは290の市と21の県に分けられる。スウェーデンのヘルスケアは地方分権化されており、県議会が、そして場合によっては市議会や市役所が、責任を有している。これは保健医療サービス法によって規定されている。中央政府の役割は基準やガイドラインを設けたり、健康や医療の為の政治的目標を掲げたりすることである。

 県議会は国政選挙と同日に行われる4年に1回の地方選挙によって選ばれた代表たちによる政治機関である。

市や県の役割

 スウェーデンの政策は全ての県議会がその県民に質の高い保健と医療を提供し、全ての県民の健康を促進するために働くこととしている。2019年現在、県は23歳までの県民に対して歯科ケアの費用負担も行っている。24歳からは国からの補助を受ける形になる。

 スウェーデンの市は自宅や老人ホームで過ごす高齢者のケアを任されている。市の担う役割には、身体や精神に障害を持つ人々のケア、退院した人や学校保健に対しての支援・サービス提供も含まれている。

スウェーデンのCovid-19に関する保健アドバイス
・たとえ症状が軽くても、気分がすぐれなければ自宅にとどまる。
・高齢者との面会を避ける。
・カゼをひいている人と同居している場合は、自宅にとどまる必要はない。
・石鹸と消毒液で手を清潔にする。
・鼻をすすったり咳をする時にはヒジをつける。
・顔をさわるのを避ける。

スウェーデンでは、病院に行く必要がある人に検査を提供するのが基本である。
1177.seというウェブサイトで、一般的およびCovid-19に特定した保健アドバイスを行っている。
公共保険庁(Public Health Agency of Sweden/Folkhälsomyndigheten)がさらなる情報を提供している。


スウェーデンの高齢者は、自宅でケアを受ける権利を有している。
Photo: Kristin Lidell/imagebank.sweden.se

高齢化する人口

 他の先進国同様、スウェーデンの人々はますます長生きになっている。寿命の平均は現在、女性が84歳で男性は81歳。これは心臓発作や脳卒中の死亡率の低下が原因の1つといえる。約5人に1人は65歳かそれ以上。これはスウェーデンがヨーロッパの中でも相対的に高齢社会であることを示している。一方、スウェーデンに生まれる子供の数がほぼ毎年増えてきたのは1990年代後半以降のことである。高齢者の人口はスウェーデンの医療制度に圧力をかけている。


Photo: Melker Dahlstrand/imagebank.sweden.se

診察料の患者負担
-入院:1日最大100クローナ
-初期診療:0~300クローナ(県によって異なる)
-専門診療・救急診療:最大400クローナ

最大負担額
 1人の患者は12カ月間で1,150クローナ以上負担することはなく、それ以上かかった分は無料となる。
薬代は12カ月間で2,350クローナ以上負担することはない。

患者の安全と治療の質

 医療機関へのアクセス、サービスの質、効率性、資金といったスウェーデンの医療制度が直面する課題の多くは他の国々にも見られるものであるが、最も優先されるのは患者の安全である。2011年にスウェーデンは患者の安全についての新たな法律を制定した。この法律は患者やサービスの受け手、そしてその家族のメンバーが医療制度の質に影響を与えることができる新しい機会を与えるものであった。

 国民患者調査(National Patient Survey)は、患者がどのように医療制度の質を理解しているかについて、毎年調査している。その質問は、治療、治療方針への患者の参加、提供されるケアや情報への信頼度に関するものである。その結果は、県や市によってまとめられ、ケアの向上のために用いられている。

イーヘルス(eHealth)のビジョン
「2025年に、スウェーデンはデジタル化による機会とイーヘルスを活用において世界一となる。それによって国民が良質かつ平等な医療と福祉をより手軽に受けられるようにし、さらにより一層の自立と社会生活への参加のための方策を発展・強化する。」
出所:Vision for eHealth 2025 – common starting points for digitisation of social services and health care

90日以内の専門治療

 白内障や人工股関節置換手術などの前もって予定されている治療への待ち時間は長年にわたって不満の種であった。その結果、スウェーデンは2005年に治療保証を導入した。

 その内容は、全ての患者が助けを求めた当日に、地元の保健センターと連絡が取れるようにすること、そして3日以内に医療的な所見をもらえるようにするというものである。最初の診察を終え、どのような治療が必要か決まったら、すべての患者は90日以内に専門医に診てもらい、そのさらに90日以内に手術や治療を受けられるようにしなければならない。この待ち時間を超えた場合には、交通費も含めて追加負担なく、別の病院で治療を受けられる。

 2020年1月以降の統計によると、患者さんの88%は90日以内に専門医に診てもらい、82%はそのさらに90日以内に治療を受けるか、または手術を受けている。ただし、これらの統計はコロナウイルスのパンデミックによって変わるだろう。他国のようにスウェーデンもコロナウイルスとの戦いを目的とする治療を優先していかなければならないからである。


助産師が死亡率を下げている
 スウェーデンは長らくプロの助産師を重視してきた。これによって出産時の母親の死亡率が急激に減少したことが研究で示されている。
 出産時の死亡率は18世紀の時点で100件中でおよそ1人であったが、20世紀の初めには100,000件の出生で命を落とす母親の数は250人にまで減った。現在、スウェーデンは出産時の死亡率が世界で最も低い国の1つであり、死産は1,000件中3件未満、母親の死亡率は100,000件中4件未満となっている。
Photo: Simon Paulin/imagebank.sweden.se

治療への公共支出

 スウェーデンの国内総生産(GDP)に占める健康へのコストと医療費は他のヨーロッパ諸国に劣らずかなり安定している。2018年時点で、健康へのコストと医療費はGDPの中で11%である。スウェーデンの健康へのコストと医療費の大部分は県と市の税金でまかなわれている。これにさらに中央政府からの税金が加わり、患者自身の費用負担は非常に小さい。

 政府が保健、医療、社会的なケアに使う金額は2018年時点で78.4億クローネと、政府による最大の支出の1つとなっている。

民間の医療提供者

 県が民間の医療提供者からサービスを購入するという仕組みは、現在ますます普及している。2018年には13.5パーセントの医療について、県が資金を出し、民間の業者がケアを提供するという仕組みが取られている。民間の業者であっても、市が提供するケアと同様の規制や料金によって患者が保護されるということが協定によって保証されている。

 また現在は、患者と医師をつなぐアプリのように、多くのデジタルによる医療解決策も取られている。より詳しい情報は「10 innovations you didn’t know were Swedish」を参照のこと。

保健行政に関する国の組織
保健福祉理事会(The National Board of Health and Welfare/Socialstyrelsen)は中央政府の専門家・監督当局である。

スウェーデン地方当局・地域連盟(The Swedish Association of Local Authorities and Regions/SALAR)は、スウェーデンの290の自治体と21の地域協議会において保健行政や専門性、雇用に関わる問題を扱う。

医療責任評議会(The Medical Responsibility Board/Hälso- och sjukvårdens ansvarsnämnd)は、専門家が基準に違反したかどうかを調査する政府機関である。

保健技術評価・社会サービス評価庁(The Swedish Agency for Health Technology Assessment and Assessment of Social Services、SBU – Statens beredning för medicinsk och social utvärdering)は、患者にとって最善の治療法や資源の最も効果的な利用法を追求する。

歯科・薬科便益庁(The Dental and Pharmaceutical Benefits Agency、Tandvårds- och läkemedelsförmånsverket)は、薬剤・医療器具・歯科施術に対する国の補助の可否を定める役割を担っている。

医薬製品庁(The Medical Products Agency、Läkemedelsverket)は、医薬品の開発、製造、販売を規制・監視する責任を負う国の当局である。

掲載ページ:https://sweden.se/society/health-care-in-sweden/
翻訳時点の最終更新日 2020年5月5日
翻訳 野池真帆、堀口真緒
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表は著作権上・技術上転載可能なもののみ転載し、他サイトへのリンクは転載しておりません。


Photo: Tina Stafrén/imagebank.sweden.se

 衣料は長持ちし、その後リサイクルやリユースできるようにデザインすることで、ファッションは循環型の生産に向かう必要がある。スウェーデンのファッション産業はそのための研究に多くを投資し、より持続可能な方法の追求に努力している。

先駆的な企業

 スウェーデンのファッションは、一方通行型の産業を循環型に変えることを目指している。資材は使用後処分するのではなく、リサイクルや他の方法で使用する。そうすれば廃棄物の量を最低限に維持することができる。

 “ファッション”という用語を構成する要素を根本的に見直して再定義し、それに基づいた新しいビジネスモデルが現在模索されている。Klädoteketはそのようなビジネスモデルの1つである。これは「ファッションライブラリー」として、デザイナーブランドの衣料を借りることができるというものである。

ファッションライブラリー スウェーデンの物語

長期的な視野

 伝統的に、ファッションは変化や絶え間なく新しいデザインへの欲求によって定義づけられてきた。しかし現在は、企業においても、より長持ちするような衣料の開発を積極的に進めている。たとえそれが短期的に考えて、自社製品でお金を稼げないことを意味したとしても、である。また多くのブランドが、進歩のスピードを上げるべく、解決策の発見と知識の共有を目指して互いのコラボレーションを進め始めている。

 Mistra Future Fashionという野心的な研究プログラムにおいては、持続可能なファッションを目指して体系的な変化を実現する努力をしている。する。そこではデザイン、ユーザー、サプライチェーン、リサイクルという4つの分野に焦点が当てられている。また科学的な成果がファッション産業に行き渡り、H&M、Lindex、Eton、Nudie Jeansといったいくつかの重要な業界パートナーにおいて機能する仕組みを確立している。

https://vimeo.com/253938475

長持ちする衣料

企業に持続可能性を統合しているという意味で、Flippa Kはスウェーデンのブランドの 中で第一線を走っている。同社は2014年以来、「持続可能性は成長への道に通ずる」というモットーを掲げ、衣料の寿命にまず焦点を当てて事業を展開してきた。2015年には、前の季節の衣料を貸し出すというFlippa Kリースという新たなコンセプトを開拓した。同社はこれによって新しいビジネスモデルと、より持続可能な消費の方法を模索することができるようになった。

 Houdini Sportswear は、衣料の寿命を延ばし、修繕を提供し、レンタルと中古販売を実施することで、製品の半数を循環型にしようと努力している。同社はまた自社の製品んを堆肥化する実験を行っている。


ヌードジーンズの修繕店
Photo: Tina Stafrén/imagebank.sweden.se

古着を修繕する

 ヨーテボリに拠点を置くNudie Jeansは厳格な行動規範を設けて、委託するサプライヤーを厳選し、また継続的な報告、行動計画、認証の提出を求めている。

 また、彼らは古くなったジーンズを修理してくれるので、顧客は新しいものを買う必要がない。これはファッションが常に更新され、流行に乗っているべきだという考えに挑戦するものである。

ファッション・カウンシル
 ファッション・カウンシルは、1979年よりスウェーデンのファッション産業の発展の強化・促進・支援し、ファッション産業をあらゆる分野で持続可能なものとし、国際的な地位を確保するよう努めている。
swedishfashioncouncil.se

著者 Philip Warkander & Sweden.se
掲載ページ:https://sweden.se/culture-traditions/making-fashion-sustainable/
翻訳時点の最終更新日 2020年8月20日
翻訳 大久保咲季、横渡礼奈
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
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