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【Sweden.se日本語版】スウェーデンの民主主義

平等でオープン、かつメディアの厳しい目が向けられる。ここにスウェーデンの民主主義における10の特徴を示そう。

Young people walking outside the Swedish parliament building in Stockholm.
スウェーデンの国会に向かう。Photo: Anders Löwdin/Sveriges riksdag

1.議員選挙

スウェーデンは議会制民主主義である。つまり大統領選挙は無く、国会議員選挙のみが実施される。国会は、過半数の票を獲得した政党又は連立政党の中から、政府を率いる首相を任命する。

最後に1党のみで過半数票を獲得したのは1968年のことである。当時、社会民主党は50.1%の得票率を獲得した。

2.4%ルール

スウェーデンの国会で議席を獲得するには、1党につき少なくとも得票率4%か、全国のいずれか29選挙区で得票率12%以上を得なければならない。そのため国会には、小規模の政党がほとんど存在しない。

スウェーデンの国会には349議席がある。選挙が終わると、選挙管理委員会は各政党の得票数に比例するように議席を割り振る。また全国民が代表されるように、議席配分には各選挙区の選挙結果も考慮される。最大の選挙区はストックホルム県、最小の選挙区はゴットランド県である。

A polling station, where all we can see is three people's legs beneth green screens.

投票日である日曜日は、通常8時から20時まで投票所が開場する。Photo: Per Hanstorp/Scandinav Bildbyrå

サーミ議会

スウェーデンでは、先住民のサーミの人々は、サーメティンゲット(Sametinget)という独自の議会を有している。これは選挙による議会でも行政庁でもあり、現存するサーミ文化のための活動を主な業務としている。それには、たとえばトナカイ放牧のための中央行政や、サーミ語のための活動などがある。

3.高い投票率

2018年の総選挙では、スウェーデン国内の投票率は有権者の87.2%であった(訳注:原典には暫定値として87.1%と記されている)。この投票者数は1950年代以来、80%を下回ったことがない。

民主主義への信頼、選挙システムの尊重、総選挙が市・県の選挙と同日に開催されることなどの多くの要因によって、この高い投票率が実現している。市や県の行政当局は、その地方の投票者によって選ばれるのであり、首都ストックホルム(にある国会)の任命によるわけではない。

 4.外国人も地方では投票できる

スウェーデンの総選挙で投票するには、18歳以上でスウェーデン国籍を有し、スウェーデンに登録されている必要がある。しかし、市・県の選挙の有権者には。スウェーデン国民だけでなく、以下の人々も含まれる。

  • EU加盟国、アイスランドまたはノルウェー国民で、市や県に登録されている人
  • その他の国々の国民で、最低3年間スウェーデンに登録されており、市や県に登録されている人

なぜなら、市や県で選出された政治家は、国籍の有無に関わらず、当該地域に住む全住民の利益を考慮すべきだからである。

Three girls on a park bench. Someone passes by, blurred.

スウェーデンの多くの学校では、18歳未満の生徒が模擬投票をする学校選挙を実施している。Photo: Lieselotte van der Meijs/imagebank.sweden.se

不信任決議
(議席数の10分の1に当たる)35名以上の国会議員が、特定の大臣あるいは政府全体を信任しない場合、不信任決議を求めることができる。
もしも国会の過半数(175議席以上)によって首相の不信任決議が可決した場合には、政府は総辞職するか国会を解散し総選挙を行わなければならない。
特定の大臣の不信任決議が可決した場合には、その大臣は辞職しなければならない。
スウェーデンでは、そのような投票が行われることはあまりない。
(訳注:2021年6月21日に、スウェーデン史上初めて首相の不信任決議が可決された。)

5.若い人も投票する

スウェーデンでは、若年層の投票率も同様に高くなっている。学校では、18歳になる前の生徒が投票できるように、さまざまな政党の代表者を招いて、国の民主主義制度がどのように機能しているのか、各政党が何を支持しているのかを学べるようにしている。そうすることで、若者は比較して自分なりの結論を出すことができるのである。

また、18歳未満の生徒は、学校選挙(Skolva)という取り組みに参加できる。生徒たちは、大人と同じ投票用紙を使って投票を行う。これらの投票が本当の選挙の一部としてカウントされることはないが、その結果が「大人」の投票と非常に異なることがある。

例えば2018年の総選挙では、最大政党の社会民主党の得票率は28.3%であったが、学校選挙では19.5%にとどまっていた。逆に環境党の得票率は総選挙が4.4%であったのに対して学校選挙では10.3%、スウェーデン民主党の得票率は総選挙が17.5%であったのに対して学校選挙では15.5%であった。この年には、1,528校が学校選挙に参加し、約37万人の生徒が投票した。

6.自分の政党を登録する

スウェーデンでは、政党を設立するのは非常に簡単であり、例えば、非営利団体として設立することができる。政党名は選挙管理委員会に登録することができるが、それは必ず行わなければならないわけではない。政党名が記されていない投票用紙が投票所に用意されており、そこに政党名を書くことで、その政党に投票したことになる。この投票も得票数にカウントされる。

近年の選挙では、9大政党以外のすべての政党の総得票率はわずか1%であった。

Photo: Anders Löwdin/Sveriges riksdag

7.男女共同参画社会-男女共同参画国会

2018年の選挙後、スウェーデンの国会には男性188名、女性161名が在籍している。これは男性184名、女性165名となった2006年の選挙以来、女性の割合が最も高い。また、現政権の22の閣僚ポストのうち、女性は外務や財務などの「一流」省庁を含む12のポストを占めている。

ちなみに、これは有権者のジェンダーバランスを反映したものとなっている。投票に行った男女の割合はほぼ同じなのである。

8.国会の多様性-国の反映?

スウェーデンの国会における多様性は、ジェンダーだけではなく年齢や生い立ちなどにも関連している。2018年の選挙時における最年少議員は22歳、そして最年長議員は85歳であった。国会議員の10分の6が50歳未満となっている。

また、所得と教育の水準も様々である。およそ4分の1が高卒で、大学教育を受けていない。国会はスウェーデンの実際の多様性を反映することを目指しているものの、国会の中は一般社会ほどの多様性を実現できていない。例えば、国会議員の方が学歴は高い。海外生まれの国会議員は全体の11.5%だが、スウェーデンにおける海外生まれの人々の割合は全体で19.7%なのである。

Sweden's freedom of the press act, as a book.

1766年、スウェーデンは出版の自由を憲法に記した世界で最初の国となった。Photo: Fredrik Funk/DN/TT

9.パブリックアクセスの原則

スウェーデンの憲法は、スウェーデンがどのように統治されるか定義する、統治法、王位継承法、出版自由法、言論自由法の4つの基本法から成り立っている。

出版自由法は公文書へのパブリックアクセスの原則を定めている。この原則は、国家や政府、人々が望むあらゆる公共機関の公文書を研究することを可能にしている。言い換えれば、権力者を調査する権利は、メディアに限らないということだ。

出版自由法におけるもう一つの原則は、情報伝達の自由である。スウェーデンでは誰もがメディアに公開されるべきだと感じる情報を提供する権利を持っている。資料の発行者は、個人が匿名を希望する場合、情報源を明らかにすることができない。

10.メディア-「第三の権力」

スウェーデンのメディアは「第三の権力」と呼ばれることがある。政府が第一の権力、国会が第二の権力であり、メディアはそれら二つを精査する役割を担うと考えられている。

多くの新聞はどのイデオロギーを代表しているのか紙面で宣言している。それらは社会主義、自由主義、独立主義などの可能性があるが、ここで重要なのは、それらが新聞の客観性に影響しないということである。ただしどのイデオロギーであるかを問わず、客観性は不可欠である。つまり、社会主義の新聞が社会民主党を批判する可能性も十分あるということである。

スウェーデンには、政府から独立した財団が所有し、家庭が支払うライセンス料を通して資金が供給されている公共放送がある。STV(スウェーデン・テレビ)は4つのテレビ局を運営し、Sveriges Radio(スウェーデン・ラジオ)は広告なしでいくつものラジオ局を運営している。また、UR(スウェーデン教育放送)は、教育あるいは一般知識に関わる番組を制作し放送している。

これらの公共放送は、国会の政党が任命したメンバーと、それとは独立した代表によって構成される特別役員会によって運営されている。これは独占的な管理からスウェーデンの公共放送を保護することを目的としている。。

原資料掲載ページ:https://sweden.se/life/democracy/democracy-in-sweden
翻訳時点の最終更新日 2021年6月1日
翻訳 田原朱理、鶴丸みなみ、臼井智美
監修 明治大学国際日本学部教授 鈴木賢志
本稿は在日スウェーデン大使館から許諾をいただき、作成・公表しております。適宜修正することがあります。記載内容によって生じた損害については、一切責任を負いかねます旨、予めご了解ください。写真・図表はSweden.seに掲載されたものをそのまま転載しています。他サイトへのリンクは転載しておりません。